高齢化が急速に進む中、認知症など、判断能力の不十分な方々の福祉・医療から財産管理まで、権利擁護のため2000年に法整備されたのが「成年後見制度」です。
成年後見制度は、他にも、知的などの障がい者にも必要なしくみですが、なかなか普及していません。
利用されるのも、認知症になってからの家族などの申し立てにより行われる「法定後見」がほとんどで、依頼者を指名し、希望すれば、葬儀など死んだ後のことまで依頼できる「任意後見制度」利用者は少ないままです。
10年以上前に法整備されていながら、定着していない後見制度ですが、現状の制度と課題について、高齢福祉における市民活動の草分け的存在であり、最近、市民後見事務所をオープンした大田区のNPO「はせさんず」からうかがいました。
一人暮らしの高齢者が増える中、詐欺や悪徳商法などの問題も深刻で、地域で安心して暮らしていくためにも後見制度を積極的に周知していかなくてはなりません。
「法定後見」は四親等内の家族等からの申し立てによりますが、四親等の親族がいない、あるいは、縁が薄いなどの方が増えているなか、自治体の長の申し立てにより行うことができますが、大田区の場合、昨年1年間で13件とあまり多くありません。
これが、予算の関係で13件となっているのであれば、問題ですが、それでは、今後も「区長申し立て」による後見を普及させればよいかと言えば、そうではありません。
自分で、自分の人生を判断し、選択できる状況を作っておくことが何より重要で、そのためにも、任意後見の普及が望まれます。
後見制度には、大きく分けて、法定後見、任意後見の二つがあります。
法定後見
本人の判断能力が衰えてから、本人、配偶者四親等以内の親族が家庭裁判所に申し立てて家裁が後見人を選ぶ。
・後見人の希望を出すことはできるが、最終的に決めるのは家庭裁判所のため他の人になることがある。
・死亡時に後見は終了する。
任意後見
本人に十分な判断能力があるうちに、万一に備えて自分で任意後見人を選んでおける制度。公正証書を作成し、契約しておく。本人の判断能力が低下したら任意後見人が家庭裁判所に後見開始を申し立てる。
・後見の内容を記載することで、してもらいたいことを指定できる。死後の葬儀などについても依頼できる。
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弁護士や司法書士など専門家を中心に担い手となっている後見制度ですが、費用も高く、認識も広まっていないことから浸透していません。
任意後見は、家族、知人、専門家など生前に後見人を選び公正証書を作成してその意思を法的に担保しておくしくみです。それぞれの状況に応じ、謝礼など含め、必要、可能な範囲で決めることができます。
資産の状況や何を依頼するかなどにより、誰に依頼するか予め決めることのできる「任意後見」は、まだ大丈夫と思っている今だから考えられることでもあります。
今後急速に進む高齢化と高齢世帯の単身化ですが、後見制度などの活用により誰もが安心して地域で歳を重ねることが可能になります。
財産も関ることであり、後見制度の浸透・普及に行政の関与は欠かせません。