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過去に東京都が23区の清掃事業を行っていた経緯から、23区では清掃事業のうち、収集から清掃工場までの運搬を各区の事業とし、それ以降の処理を23区共同で設立した、「清掃一部事務組合(一組)」が行っています。
現在、この「清掃一部事務組合(一組)」と民間企業である東京ガスが6:4の割合で出資する資本金2億円の「新会社」設立準備が行われています。この4月には設立準備組織が発足し、一組職員7名と東京ガスの職員2名の専任チームで、今年10月登記、来年4月事業開始に向けて、定款作成、設立登記申請のための実務的作業を、既に飯田橋の一部事務組合の事務所でおこなっています。
このことについて、5月15日の総務財政委員会で、「新会社」についての説明を求めたところ、要求して初めて、委員会後、委員に資料の一部が配布されるという状況でした(多いですね。大田区は請求しないと大切な資料が出てきません)。
今年1月に示された一組の「経営改革プラン」には、23区との連携と透明性の向上と明示されていますが、一組も大田区もそうした意識を持っていないことがよくわかります。
しかも新会社の設立はこの経営改革プランになんら示されていないもので3月の区長会に突然提案されたものです。
その提案に「新会社」は、
①清掃工場の運営管理受託事業。具体的にはごみの受け入れや運転管理、軽微な保守点検作業。
②ごみ発電等を有償取得し電力小売と資産を活用する事業
のふたつの事業を行うと記されています。
運営管理事業を「新会社」が行うことの理由として、工場プラントメーカー系列の企業に委託すると競争原理が働かず、経費が高止まりになる恐れがあること。清掃工場から排出される電力の売買については、現状より高い売電収入が確保できるというのが提案の説明です。
この「新会社」設立は、西野善雄大田区長も過去に第二分科会座長であったことからメンバーの一員となっている一組の経営委員会から提案されたものであると設立準備組織より確認しました。
今回の議会において、「新会社」が、西野区長も名を連ねる経営委員会からの提案であり、西野区長も了承していることを確認しましたが、「一切関与していない」と、一部事務組合内で設立準備を行っている職員からヒアリングした内容とは異なった答弁となりました。
経営委員会からの提案を、経営委員会のメンバーである西野区長が「一切関与していない」と答弁するのはどういったことなのでしょうか。
さて、この「新会社」ですが、先ほど申し上げたように事業の柱が大きく分けて2つあります。
ひとつは、運営受託です。
清掃工場の運営経費削減のために民間委託したいが、メーカー系列以外に適当な委託先が無く、メーカー系列に委託すると競争原理が働かず経費が高止まりになる恐れがあるというのが、委託先として「新会社」を設立する理由です。
「新会社」は、一組の退職者、東京ガス、他のメーカーなど民間企業のプラント運転経験者を活用することにより15~20%の経費削減を想定しています。
「新会社」の競争力がつくまでの一定期間は随意契約により仕事を確保し、順次競争原理を導入しつつ受託工場を拡大していくというのがその具体的推進方法です。「新会社」は来年から5年間で6清掃工場の受託を見込んでいます。公正な競争市場を創出することを目的に「新会社」を設立しながら、メーカーと新会社が清掃工場ごとの受託先の住み分けを想定しているこの事業は、公正な競争市場の創出とは程遠いものです。
一組退職者などを活用し人件費が15~20%削減されるのであれば、初めから現在行われている競争入札に参入すればよいのであり、随意契約により一定期間「新会社」に優遇して運営を委託する必要はありません。しかも、この退職者の人件費を再雇用・再任用職員と比較したデータも全く示されていません。
現役を引退したはずの退職高齢者が主体の会社で、24時間稼動する工場を運営できるほどこの事業は簡単なものでしょうか。
一組のプラント運転経験者だけでなく東京ガスや民間企業プラント運転経験者を活用することを想定しているのであれば、民間企業が100%出資して、そうした企業を作り参入する。或いは、一組が100%出資し、その中で民間の人材を確保すればよいのではないでしょうか。なぜ東京ガスと合弁事業する必要があるのでしょうか。
しかも「新会社」はこの運営受託事業と電力の売買事業の双方を行います。運営受託事業と電力売買事業とは相乗効果の期待できるものでなく、別に考えるべきです。
「新会社」が売電事業と一体で行うことは各事業の独立採算性を曖昧にすることになりますが、一体で事業を行う理由は何か。また、清掃工場の運営経験や能力のないと思われる東京ガスに運営委託事業までの出資を求めるのは何故か。という質問も西野区長に対し行いましたが、それに対する答弁はありませんでした。
二つ目に、「新会社」は、清掃工場からでた電力を買い卸し小売する事業(電力売買事業)を行います。
2000年3月に電力会社以外から電気を買える「電力小売り」の自由化が始まり、対象が当初の大規模な工場、デパートなどから中規模、小規模と順次拡大し、いよいよ来年4月からは一般家庭もその対象となります。
電力の自由化により多くの企業が電力事業に参入しています。自由化に伴い、余った電力をやり取りする「電力取引所」がスタートし電力の効率的な活用整備が進むと共に余った電気が有効活用され電力料金の引き下げ効果も期待されています。
一方で、新エネルギー法が改正され、電気事業者に対して毎年その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギーなどから発電される電気の利用が義務付けられています。
この新エネルギーには、清掃工場での廃棄物の焼却に伴う発電が含まれます。発電量のうち、プラスチックが混入していればその割合は新エネルギーからのぞかれますが。これにより、清掃工場からでる電力は「電気の価値」以外に「新エネルギー価値(権利)」が発生します。新エネルギーを発電する者は「電気」と「権利」を別の電気事業者に売ることも可能になり、普通の電気より売り手有利の電気となります。「新会社」が行う業務内容には、新エネルギーの売買を想定させる『資産を活用する事業』という一文が盛り込まれていながら、事業モデルにそのことが一切盛り込まれていないのはどういった意図からなのでしょうか。
現在は、ごみの焼却によりできる電力は競争入札により最も高値をつけた事業者に売却されています。
「新会社」の事業モデルでは、「新会社」が清掃工場から現在の価格より高く買い、23区の小中学校に現在の調達価格より安く売ることが経済効果として示されています。
この経済効果は、供給先を23区小中学校とし、清掃工場の電力を「新会社」に複数年一括売却すること、そして東京ガスの子会社である各発電会社から清掃工場の発電量ではまかなえない不足時の電力の購入を前提として算出している価格です。
しかし現在の行っている競争入札でも、複数年契約をすれば売却価格を上げることは可能です。また、この事業モデルでは小中学校の電力を新会社が供給し不足分を東京ガスの子会社である各発電所からまかなうことが示されています。
資料から逆算した小中学校の必要電力は2億8000万kW。それに対し、清掃工場での発電量は5000万kW弱ですから、結果として見えてくるのは東京ガス子会社の発電所が23区の小中学校に電力を供給する大きな販売ルートを確保できるということです。
本来ならば新会社にとって最も有利な電源構成を他の電力会社や電力取引所を通じて自主的に選択してくことが健全な会社経営からも当然のことでないでしょうか。東京ガスとの合弁の理由として発電設備を保有しているからとしていますが、その子会社から優先して調達することは、自治体が出資する公共性の高い会社として相応しいことでしょうか。
また電力の自由化とは、消費者が供給者を自由に選択できることであり、基礎的自治体である23区各区が、一方的に新会社と契約指定されるのは自治権の侵害です。
この自治権の侵害ではないかという質疑に対し、西野区長は、各区で決定する区の自主性、契約の問題であると答弁しました。
各区で使用する電力は、市場の原理の中、その時々に応じ、各区の判断で最適な事業者から調達することを選択できなくてはなりません。
「新会社」からの調達を固定化させ、競争原理を排除することは、各区にとって最もよい電気事業者を選択することは、できません。
一部事務組合は、ごみを焼却し、そこから出てくる有価物の販売のみを有利な競争入札で行えばよいのであって、ハイリスクの電気事業者になる必要はありません。清掃工場の電力をどこよりも高く買い、どこよりも安く23区の施設に売却する事業を「新会社」は必ず行えるというのでしょうか。
結果として、「新会社」の経営状況が悪くなったときには、誰がどのように責任を負うのでしょうか。
これに対し西野区長は、株式会社である新会社への出資の問題を引き合いにし、一部事務組合の出資ではなく各区が資本金2憶の6割=1憶2千万円を1/23ずつ出資することを1対22になっても主張すると答弁しました。
「新会社」が行う清掃工場から出る電力の購入と売却は、一部事務組合が行うべき事業ではなく、「経営改革プラン」記載のとおり競争入札により「電力」と「権利」を売却すればよいもので、一部事務組合が出資して取り組む事業ではないと考えます。
電力の売電事業は消費者側の設備投資がいらないため消費者側の選択性が高く、電気事業者間の価格競争が激しく、電気事業も専門性の高いものと言われております。一組のような経験も能力のないものが成功するほど甘い話はありません。進出すべき分野ではありません。
それでも地方公共団体である一部事務組合や23区が電気販売事業に出資し経営参入をする理由はなんなのでしょうか。
「新会社」は経営委員会からの提案であり、西野区長は経営委員会のメンバーでありながら、「一切関与していない」と否定するとともに、清掃工場の電力を高く買い区施設に安く売却することが「新会社」の設立のメリットであるとうたわれているビジネスモデルのうちの、区施設が電力を購入する部分についても各区の判断であるとして否定しました。
提案者である区長が、提案していないと答弁し、しかも、提案されている書面の内容を否定したとするならば、「新会社」の提案自体の見直しも必要なのではないでしょうか。
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