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建築士を騙り、神奈川県内で54件、大田区内1件の建築確認申請にみる規制緩和の影響

2018年05月10日 | 都区制度・大阪都構想

「神奈川県在住非建築士が、実在する建築士を騙り、神奈川県内で54件、大田区内1件の建築確認申請等を行う事件が発生。大田区は、当該建築物の安全性の検証を進める」というメールが届きました。

→メール本文はこちら

 神奈川県在住の非建築士が、実在する建築士を騙り、神奈川県内で複数の建築確認申請等を行う事件が発生しました。神奈川県及び関係特定行政庁で調査したところ、非建築士が関与した物件は、神奈川県内54件、大田区内1件となっています。大田区は、当該建築物の安全性の検証を進めてまいります。詳細については別途所管委員会でご報告いたします。


大田区の建築主事と話しました。

実在する建築士と共同経営しているといって、確認申請をしていたそうです。

本来、建築士が届けている住所に確認済証など送付すべきですが、複数の建築士を抱える事務所の場合、いくつか事務所があるようで、そちらに送っていて、名義を使われていたことが発覚しなかったようです。


大田区も神奈川県でも、まずは、建物の安全性を確認するということで、できた建物が使えるかどうか、(壊さなければならないか)確認しているということです。

いちばん気になるのは、再発防止ですが、
【建築主に建築士が実在するか確認するよう求める】、と神奈川県では言っているようです。
まあ、これも、やって悪いとは言いませんが、ここには、関係者が4者いるわけですね。

・建築主(建物を建てて、とお願いした人)
・建築士(設計者)
・民間検査機関(建築確認した機関)
・建築主事(建築確認を行うため自治体に設置されている役割=公務員)

規制緩和で、それまで建築主事など、自治体が行っていた建築確認を民間検査機関でもできるようになりました。

正確性や安全性が求められる建築確認の分野に、営利企業の参入を許したことで、姉歯の耐震偽装などの入る余地を作った側面があると私はみています。
厳しく、丁寧に、チェックすれば、スピーディーな確認を求めるデベロッパーからは、歓迎されない部分もあります。


実際、姉歯事件以降、確認をより正確にとなったら、確認が滞ったという影響もありました。
そしてその反動で、また速くなったりもしています。


確認の速さは、必ずしも、正確性・安全性の確保という要素だけで動いているわけでは無いということです。

今回の手続きの隙間をぬった違法行為を、建築主に責任を負わせる【建築主に建築士が実在するか確認するよう求める】だけで済ませてはならないと思います。
最終的な責任は、耐震偽装の際の判例で、建築主事になっています。

それでは、建築主事(自治体)は何ができるのか。
民間確認検査機関は、設けるだけで、確認業務における責任は果たさなくてよいのか。
しかも、民間検査機関に確認作業を求めれば、それが人件費として上乗せされ、コスト(確認手数料)に跳ね返ることもあり得ます。

民営化と言っても、安全や正確性といった私たちの社会を支える基盤を守る作業を「営利システム」に委ねても、必ずしもコスト削減にはならないということです。

そもそも、建築事務所は、すべて、建築士の資格を持った方たちが最初から最後まで設計にかかわっているのでしょうか。

補助、補佐、誰がどこまでやってもよいのか、最後のチェックが資格のある建築士なら、資格をもった建築士の仕事になるのか。


「名義貸し」などあってはならないことですが、看板に有名建築士を掲げだ事務所が手掛ける設計は、その有名建築士がすべてでデザインしているでしょうか。
事務所が大きくなり、受ける仕事が増えれば増えるほど、すべてというわけじゃないのかなあ、とも思えます。


資格を騙るなどもってのほかですが、規模が大きくなることでの弊害ということで言えば、こういうところにも潜んでいるわけですね。


建築というと、建物を建てること、だけに目が向きがちですが、社会の重要なインフラであり、住宅であれば、私たちが生きる上での社会福祉に組み込まれるべき、住宅施策であり、福祉の基盤となる都市をかたちづくるものでもあります。

その建築が、営利システムの中に巻き込まれているなあ、と感じるのですが、いかがでしょうか。


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