(1)中国のパンダ外交は動物園でのパンダ見学で子どもたちに人気はあるが、日本人の中国を好きという調査比率はかなり低い。尖閣領有権を巡って連日のように中国公船が日本の領海侵犯をくり返して威圧的であり、福島第一原発処理水の海洋放出はあるが日本からの魚介類全面禁輸の対抗措置をとるなど中国は日本に対して対決姿勢を強めていることが中国への低い評価、好きでない人が多いことにつながっている。
(2)今年8月に二階前幹事長が会長の超党派の日中友好議員連盟が訪中するその前日に、中国偵察機が日本の領空圏に接近して旋回をくり返して一時日本の領空圏の一部に進入して外交、軍事問題となった。日本政府の抗議に中国外務省は会見で調査中と述べている。
日中友好議員団が訪中する前日に中国偵察機が日本の領空圏を侵犯する意図は不明だが、中国軍機の技術的問題でもなければ尖閣問題、台湾問題と外交、軍事問題を抱えて日本側をけん制したものなのか、不慮の事故では技術的な問題が露呈して軍事的、政治的意図があったことは考えられる。
(3)日中間に緊張をもたらす行為であり、パンダ外交で日中友好をはかる中国の思惑とはかけ離れている。そこで中国の王毅外相はその後北京での日中友好議員連盟の二階会長らと面会した際に緊張緩和を配慮してか、ジャイアントパンダ貸与について「自分の責任で送りたい」と意欲を示して「日本を早く訪れたい」意向を示した(報道)といわれる。
(4)中国軍機の領空侵犯がパイロットの技術的ミスと考えられる配慮のようでもあり、王毅外相の本意には11月の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲くことに対する警戒心、対策として日本に接近して友好関係を強めたい意向があるようにも思える。
トランプ大統領時代には米中貿易、経済戦争激化により互いに高関税を課す対決姿勢をくり返して世界経済に品不足、物価高騰の影響を及ぼして、習主席も日本に活路を求めて接近外交(日本も応えて習主席の国賓待遇での訪日が計画された)を試みた経緯がある。
(5)今回の王毅外相のパンダ貸与に王毅外相訪日の意向もトランプ対策としての中国の意図、意向がみえるものだ。理由はどうあれアジア経済をけん引する日本と中国が友好関係を維持することは重要で必要だ。
台湾問題は中国国内問題として別にして、尖閣領有権、領海、領空侵犯、魚介類の輸入禁輸に中国国内での日本人の安全身分保障など改善すべき問題について王毅外相の訪日で話し合うことは重要で必要だ。
(6)パンダが取り持つ日中外交は8月、夏休みで終わりだ。政治の季節が始まる。