(1)価値、価値観というのは様々で多様なものだ。まず「カネ」で、今日的社会は経済安全保障といわれるように政治、外交、軍事でも「カネ」の価値が大きな影響力を持つ時代だ。「能力」は知的財産権、技術開発が国家間の争い、保障になるなど情報化、情報戦争を迎えて、大きな意味をもつ。「人」は人種、民族、宗教で国家、地域,圏内をつくり思想、信条、理念で共同体を構成して、共同利益を守り勢力拡張を目指す。
(2)モノ、カネ、ヒトの自由往来を基本テーゼとするEUは政治、経済、平和の壮大な実験場として注目されたが、ヨーロッパ全体としては価値、価値観を共有できずにEU内に経済格差、債務国を抱えて、難民受け入れで問題で英国が離脱して不協和音も目立つ。
情報化時代、IT産業革命、社会を迎えてグローバル化が進み、EU理念の世界化がパラドックス(paradox)としてEU理念が狭い固執した国家観、国家圏として矛盾を抱えることになった。
(3)日米は核拡散防止条約(NPT)に関する共同声明を発表して、中国などの脅威に対抗する核軍縮とともに政治指導者らに「理解の向上、維持のために広島及び長崎を訪問するよう(日米が)要請する」(報道)ことを明記した。
被爆地広島選挙区選出の岸田首相の意向が反映したとされる。21日夜の岸田首相とバイデン大統領のテレビ会議方式の協議が行われ、今年前半に日米豪印4か国(クアッド)の首脳会議を日本で開催(報道)することで一致した。
(4)これにあわせてバイデン大統領の初めての来日が実現することになった。岸田首相は今年前半の訪米でバイデン大統領との面談での首脳会談を模索していたが、オミクロン株の日本を含めて世界的な感染拡大で早期実現は不可能と判断していた(報道)だけに、クアッド首脳会議を日本で開催することによりバイデン大統領の訪日という形で面談式による日米首脳会談が実現することになった。
(5)新年初頭から日米間外交の重要な大きな話題、成果が続いて、岸田首相としても存在感を示す好調な滑り出しとなったが、内容的には米国の世界戦略、対中国戦略に日本が組み込まれることになった外交事情だ。
たしかに日本と中国は尖閣領有権問題で深刻な歴史対立が続いているが、ともに発展するアジア経済圏を支えて世界経済に影響力を示して、日中国交正常化50年を迎えて経済関係のつながりもあり、クアッド首脳会議の日本開催となって早速中国は強く反発している。
(6)外交問題は国と国との関係なので注目度、関心も高く、成果だけにこだわっていると本質(essence)を見誤る危険性もあり、日本外交の価値(diplomatic value)、理念、主体性も問われる。
バイデン大統領は米国内では議会対策、党内対策の混迷で政策実現が進まずに、国民支持率も歴代大統領でトランプ前大統領に次いで低い(報道)といわれており、外交問題で打開を求めてくるものと思われる。日本、岸田首相としては「聞く耳」だけではない外交能力、価値も試されている。