(1)首相の国家観(national view)、国家像(national image)というのは、基本的思想、理念であり、国家の指標となるものだ。岸田首相が通常国会で初めての施政方針演説を行った。平易なわかりやすい言葉で綴られているが、目指す国家観、国家像がみえてこない。
(2)「憲法改正」について述べているが、自衛隊をどう位置付けるのか、安倍元政権時代に安倍元首相の独自の憲法解釈、判断で集団的自衛権の行使を容認して憲法学者、国民からの反対、反発も大きかったが、戦力不保持、交戦権を有しない憲法理念の中で自衛隊の海外派遣を含めて憲法改正で国益を守る方法についてどう対処しようというのか国家観、国家像がみえてこない。
(3)「新しい資本主義」は骨格がこれからで「成長と分配の好循環」を目指して「賃上げ」、「生きがいある社会」、「人への投資」を述べているが、時代、社会は非正規雇用、労働、生活保護世帯が増え続けて賃上げ、生きがいある社会、人への投資とどうかかわるのかつながるのか、最低賃金1000円に取り組むと述べているがそれだけで増え続ける非正規雇用、労働、生活保護世帯の身分保障、早期社会復帰の社会問題解消につながるのか国家観、国家像がみえてこない。
(4)「気候変動」では50年カーボンニュートラル実現を目指すとしているが、世界から批判を受けている火力発電は脱炭素技術開発で継続するとして、原発再稼働は将来エネルギー計画に盛り込まれて、持続可能な開発目標(SDGs)の再生可能エネルギーとはどう取り組むのか国家観、国家像がみえてこない。
(5)「被爆地広島出身の総理大臣として『核のない世界』」を追求していくと述べているが、国連の核兵器禁止条約には参加せずに米国の傘の下の安全保障の中では国家観、国家像がみえてこない。
(6)岸田政権はオミクロン株水際対策、共通1次試験の受験指針で「朝令暮改」内閣を露呈して政権ガバナンスに問題があり、岸田政権として「何が出来て」、「何が出来ない」のか国民にはまだわからない状況であり、これに答える施政方針演説ではなく、所信表明演説同様に「教科書」テンコ盛り演説で岸田首相の国家観、国家像がみえない行き当たりばったりの不安はぬぐえない。