「黒蜥蜴」

2013-04-20 15:04:53 | 
舞台じゃないです。戯曲の感想です。今Upすべきじゃないと思ったけど、ま、いいやね。

「黒蜥蜴」が再演されるにあたって改めてこの戯曲を読んだんですが、最初に読んだ頃には見えなかったものが見えてきて、改めてこの戯曲の素晴らしさを痛感してます。

最初の頃はそんなに面白いとは思わなかったのに、今なら分かる新たな発見もあり、もちろんまだ理解出来ていない部分もありますが、総体的に思ったのは、この黒蜥蜴、三島さんは最初から美輪さんをイメージに書いたのでは…と。

って思うくらい、この黒蜥蜴という役は美輪さんしか演じられんでしょ!?と思った。実際の舞台はまだ観たことないのですが、舞台写真(生プロマイドじゃないよ)を見る限り、美輪さんが演じることでキャラクター化され、タイトルロールだからではなく役に独立したアイデンティティーを持つというリアルさ(たとえば、寅さん、オスカルやアンドレ、シャルル、ブラック・ジャック等、実在しない人物があたかも実在するかのように存在すること)があって面白いと思う。

この作品は三島さんが所属していた文学座のために書いた作品ではないですが、そもそも「鹿鳴館」みたいに文学座で演じる作品じゃない。

文学座って、私のイメージは演技の基礎を観せてくれる劇団だと思っているので、役ひとつ取っても、その役の生い立ちや背景などのバックグラウンドやバックボーンを考えて創り上げていく…ま、これは文学座に限らないけど…、この「黒蜥蜴」に関しては、基本的な役作りに対するアプローチより、どれだけ三島哲学、いわば三島自身の脳ミソを理解しているかが重要なのではないかと思った。

美輪さんも雑誌のインタビューで言われてますが、どれだけ三島さんが書いた台詞の裏(真意)を詠めるかが重要だと思ったね。ぶっちゃけ、黒蜥蜴の生い立ちなんでさほど重要じゃないと思った。

三島さん、最初から文学座に喧嘩を売る気でこの戯曲を書いていたんじゃないかな…?ってくらい黒蜥蜴という役は“女性的”よりむしろ“知的さ”が重要視されてると思うんだよね。

ちなみに「喜びの琴事件」の真相をウィキペディアで読みました。ここで書くべきことではないのですが、三島さんの意見は正しいと思った。役者は偏った思想で演じてはいけない。人間が人間を演じるのが演劇。当たり前だけど、どんな役でも人間が演じれば人間。人間の世界にも天使も悪魔もいる。天使ばかりの世の中ではないということも伝えるのが演劇。天使も悪魔も演じてみせてこそ役者であり、演劇だと思う。毎回毎回ハッピーエンドな作品を演じても、それは本当のハッピーエンドではないということを見せないと演劇の意味はない。アングラ演劇、商業演劇、歌舞伎、宝塚等々が存在するということは日本の文化にはとても有意義なことなんだと思う。現実から目を背けることは不幸(の始まり)だと思う。

話が逸れました…m(__)m

普通にバックグラウンドを考えて演じてたら、そりゃつまらんと思う。ただの恋する乙女になってしまう。私からしたら、それは違う違う!と突っ込みたくなる。これはそんな恋愛戯曲じゃないもんね。いかに三島メタファーを具象化するか、あ、メタボじゃないですよ(笑)喩え・比喩・隠喩です。すみません、これが書きたかっただけですm(__)m

冗談はさておき、私もちゃんと理解してるとは言えないけども、これって、ただの女盗人と探偵の恋の駆け引きの作品じゃないやん。男と女の恋の駆け引きというより、むしろ三島哲学:唯物論と唯心論。女盗人・探偵・宝石商で喩えたり、人間とダイヤモンドで喩えた三島唯心論作品だと思うんですよ。見えないものの美しさを追求した作品なので、その観点ではスピの世界観とめちゃ共通するんですよね。

そういう意味でもこの黒蜥蜴という役は美輪さんの方が、ヴィジュアルも含め本物の女性よりも女性的で、妖しさもあり、美しいものに貪欲で、尚且つ三島哲学(文学)やスピにも精通している美輪さんが本当ピッタリだと思うんですよ。女優さんでこの役演じられる人は、咄嗟にイメージが浮かんだ人は麻実れいさんと、もう亡くなられた方けど、大地喜和子さんなんですが、実は意外と祐飛さんが一番しっくりくるかもしれないと睨んでます。ちょうど今の祐飛さんがピッタリかもね。女性でありながらも、男の気持ちが分かりそうな祐飛さんなら三島ワールドを体現出来ると思う。この黒蜥蜴は女性性よりむしろ中性的で抽象的な美輪さんの方が実は一番リアルな黒蜥蜴像なんだと思う。だから舞台も映画も美輪さんが演じることで大ヒットしたんだと思う。

ホント、今だから分かる「黒蜥蜴」の世界観に完全に魅了されてます(笑)スピとは何か?をちゃんと分かってなかった時に読んだ作品だったので、今、リアルに感動してます。

ちなみに私が三島さんの戯曲で一番好きなのが「近代能楽集」の「綾の鼓」なんです。「葵上」よりもね。「綾の鼓」は二人芝居にしたらめちゃ面白いのに!と思うくらい余計なものを取ったら見えてくるものもあるので、三島戯曲では「綾の鼓」が一番好き。

「黒蜥蜴」も「近代能楽集」も同じで、三島作品にスピ要素があることに今頃になって気付いて驚いてます(笑)

こんなこと書いたらなんですが、「近代能楽集」と「黒蜥蜴」はスピ好きな方に特にオススメやね!

三島さんて、テレビのVTRで見る三島さんと本の中の三島さんとは見事に別人なのが不思議。本の中の三島さんはめちゃくちゃピュアな方なのに…。

今日のまとめ:美輪さんの「黒蜥蜴」生観劇はまだまだ先ですが、さてさてこの予習が吉とでるか、凶とでるか非常に楽しみ!本当は何も予習もせず、純粋な気持ちで観ることが一番なのは分かっているんですが、「日の浦姫物語」の時もそうなんですが、無性に戯曲が読みたくなるんですよ(笑)多分、無意識に意地悪したくなるんですね(笑)