「聖なる鹿殺し」

2018-03-30 17:28:54 | ニコール・キッドマン
いや〜、めちゃ後味悪っ!

でも、めちゃ良く練られた作品でした。

カンヌで脚本賞は納得!作品賞は、道徳的にね…。

ラストの後味の悪さで、書こうと思ってたことが全てふっ飛んでもうた!(笑)

ということで、やっとやっと上映終了間際になって観ることができました!

実は、ホラー作品と知っていたので今作に限ってはスルーしようかと思っていたんですよ。

4月から業務形態が変わるので、通常業務をしながら、新しいことを覚えたり、新しい人に教えたり、修正したり、作成したり…と、することが多くなったので、気分的にホラー作品は避けようと思っていたんですが、

春だし、せっかくの休みだし、家に引きこもっても運は良くならないので、観ることにしたのであります。

結果は、観て正解でした!

ホンマ、後味は悪いです!でも作品としては面白い!脚本がいい!見せ方も上手い!あと、感想を書かれた方の文章にまんまと騙された!(笑)

実は、既に、結論以外のネタバレありのあらすじを知った上で観たので、想像と違う展開になっていて少し面食らった面はありましたが…。あ、その方は全く嘘は書いてませんよ。単純に、観る側に想像を膨らませるような含みを持たせた書き方をされてただけです。

それも含めて、面白かった!そして、リアルに怖かった!目を背けたくなるシーンが冒頭から…。

もうね、この作品の監督&脚本を兼ねたヨルゴス・ランティモスが凄い!

これは間違いなく、この監督は、スタンリー・キューブリックのファンだと思うよ!いや、断言するよ!!!(笑)

それくらいテイストがキューブリック風だった!

音楽の使い方、効果音、曲のセンス、不条理な設定、あとニコールの起用。

ニコールの役もそうですが、夫役のコリンの役柄が医者であること。そう、キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」と同じ。しかも変態?プレイもある。キューブリックほどではないけども、ノーマルなプレイではない!

あ、エロい作品ではないですよ。完全にホラーです。リアルホラー。あ、スプラッター系ではなくエクソシスト系です。ま、どっちもさほど変わりませんが…。

精神系のホラーなので、深層心理を突くリアルな怖さがあるんですよ。

個人的にも、職場においてコリンの役に似た状況がありまして、あまりの仕事のストレスや4月からの不安材料で精神的に一杯一杯になって部下の態度にキレてしまって…。まさにコリンの役柄と一緒!ま、いつもの如く、めちゃ導かれた感はあるんですが…(汗)ま、冷静になって自己対峙させてもらったって感じですね。逆にさっさと観てたらキレることはなかったのか…と思ったほど。ホンマ映画を観ながら自己対峙してました(笑)

それはさておき、

マーティンの復讐?呪い?でコリン&ニコール夫妻の息子の足が動かなくなる。次に娘の足が。そして…。決して、マーティンが何か薬を飲ませたりした訳じゃないのに足が動かなくなる。マインドコントロール的なものかな?

と思って観ていたんですが、そうじゃない感じ。謎が深まる一方。どうやって動かなくさせたのか、いや、動かなくなったのか、その種明かしは最後までない。ただ観客に想像を委ねてるだけ。ワタクシの想像では、マーティンのお父さんがその手の人なのかな?と思った。←その手の人ってどんなんなんや!?

もう、ラストの展開は不条理!!!ありえない!!!

映画だから許せる面はありますが、ホンマ後味悪いです!リアルに、えっ何で!?と誰もが思うはず!な内容です。ラストの展開で監督に道徳心があるのかないのか分からなくなりました!

でも、見せ方は上手い!2時間の上映があっという間の展開!先の展開を想像しながら観てたら、まんまと裏切られまくり!

この作品を見ながら、アルコールやタバコの危険性、嘘はダメとか、それらがもたらす弊害への警告とも取れる展開が、ラストでオジャンになりました。書こうと思ってたことが、整合性がなくなってしまい書けなくなってしまった。いつも整合性ないけどね…(汗)なんか、全否定された感じ。

あ、若い子にオジャンと言ったら通じなかった(笑)オジャンとは、台無しになる、の意味です。

ラストがオジャンになっても、見る側に道徳心があればそれでいいかな?と思いました。

あえて具体的なネタバレはしませんが、コリンが究極の選択をしたとき、世情的によろしくない表現ですが、完全に証拠隠滅したら脚本的に筋が通る?オチがスッキリするのにそれをしなかった。

あ、このシーンはめちゃ悲劇的なのにコリンの存在は滑稽でした。コレは監督のセンスが光った!ここだけでなく監督のセンスは随所に散りばめられてます!

そういう意味でも、不条理なラストはギリシャ悲劇と類似してますね。あ、ちなみに監督はギリシャ人です。うん、納得、納得!

ニコールの役は、「アイズ〜」と被る役柄?シーン的に被る。ニコール演じる役は、医者でもあり妻でもあり母親でもある。我が子のために奮闘するが、結局はそんなにいい人間ではない。究極の選択を迫られたときの人間のサガを上手く表現してました。

よくぞ、この役を引き受けた!と思うくらい、近年では演じてこなかった役でしたね。ま、「ドッグヴィル」に近いかな。「ドッグヴィル」の方がまだ同情の余地があったね。今回の役は、人間のサガやからね…。さすがに同情は出来ませんが、女優ニコールとしてはリアルに演じてました!素晴らしかったです。作品というオーケストラを編成する見事な楽器を担ってました!

人間のサガを演じるという点では、コリンも素晴らしい!「ビガイルド」ではイケメンでしたが、今作は見事にオッサンでした!いや〜、全くの別人!見事な演じ分けでした。このギャップはワタクシの大好物でございます!(笑)

そう、コリンが息子のために泣くシーンがあって、もうメチャ感情移入させる見せ方だったのに対し、究極の選択のシーンで見せたコリンの振る舞いの滑稽ぶりに、監督のセンスに脱帽!見せ方としては本当に上手い!

この作品のピアノ的存在のマーティン役の男の子がリアルに怖い!上手い!バリー・コーガン君、将来が楽しみな俳優さんです!役と同じ10代男の子だと思ったら、なかなかの歳でビックリ!めちゃバケモノの要素があってホント将来が楽しみ!老婆心ながら、今後、私生活に役が引きずられないことを祈ってます。それくらい将来性がある!

娘役の女の子も、息子役の男の子も上手かったです。一応名前を挙げますが、ラフィ・キャシディちゃんとサニー・スリッチ君も将来ヤバイかもね!サニーの転けぶりはリアルに上手かった!ちゃんとサポーターしているとは思うけどほんまリアルでした!ここも監督のセンスが光ってた。

いや〜、めちゃ、本筋に関係ないことばかり書いて1人興奮気味ですが、もしワタクシの感想を読んで気になったら、オススメします!観るなら映画館やね。

今日のまとめ:ホンマ、自己対峙させられる内容でした。最近の出来事はコレを観るための現象だったのか!?と思うほどです。視覚的だけでなく、個人的にもリアルに痛い内容でもありました。これもマーティンの仕業か!?コワッ!

でも、あのラストは…。ええんか???(笑)

ご覧になられた方の感想を改めて読もうとしたら、めちゃくちゃ観られているか方が多くてビックリ!ありがたいことに、ギリシャ悲劇の「アウリスのイピゲネイア」のあらすじを書いてくださっている方もおられ、興味深く読ませて頂きました。実は、ワタクシ、エウリピデスの戯曲持ってるの忘れてました(汗)あ、後日談としてクリュタイメストラが愛人と一緒になってアガメムノンを殺し、そして今度は、クリュタイメストラが…。展開が極端過ぎるけどよく出来た話や。

生贄ね〜。ついつい罪の償い方がちゃうやろ!?と言いたくなるね。ニコールの台詞じゃないけど、なんで罪のない家族が犠牲にならないといけないのか?ホンマ不条理やわ〜。でもよく出来てる!

ギリシャ悲劇もそうですが、欲にまみれた、これぞ人間のサガ。コリンと同じ立場なら、貴方ならどうします??と問い突き詰められた感じです。いや〜、ヨルゴス監督、恐ろしい人!ニコール、この作品を選んでくれてありがとう!

追記:ヨウツベでバリー君のインタビューを観ました。役のイメージのまんまでした。ウィレム・デフォーのような知的怪優さんではなく、天然怪優さんでした。ちと残念…。あ、バリー君ゴメンよ!m(_ _)m