体感時間、1時間もない。あっという間に終わり、そこで終わる!?的なラスト。
自然との共存と調和をテーマにした、とても現実味があり、リニア新幹線工事問題ともめちゃくちゃリンクしていた。
環境破壊という環境問題だけでなく経済を回すという意味でも社会問題を扱った作品だと思って観ていたら、
それだけに留まらず、未来の大人たち(今の子どもたちやこれから生まれてくる者たち)を憂う監督の警告にも感じた。
ほんと、現実的なストーリー展開だと思いきや、ラストのファンタジックな展開、いや、メタファーと解釈、は圧巻としか言いようがない。
そう、これはドキュメンタリー映画ではなくエンタメ要素がある映画作品であることを痛感させられるラストだった。
ということで、やっとこさ濱口竜介監督最新作を観てきました。
世界の映画祭や映画賞を席巻した「ドライブ・マイ・カー」の濱口監督の最新作なのに、なぜ大手のシネコンじゃなく、単館系、しかも単館系でも大きなテアトル系列ではない更に小さな単館系の映画館での上映であることに違和感しかありませんでしたが、
配給のことは全く分かりませんが、人を選ぶ作品であることには間違いないと思った。
あと、これは私の勝手な想像ですが、ま、どれも私の勝手な想像、というか、感じたことですが、単館系の映画館を盛り上げたいという意図を感じました。
なんせ、客層が全然違う。根っからの映画ファンが集ってる印象を受けた。
それはさておき、
作品としては、本当に、昨今のリニア新幹線着工問題とめちゃくちゃリンクしていて、めちゃくちゃリアリティーがあった。
私はてっきり、開通は間もないと思っていたので、まさか最近になって、前静岡県知事の発言だけなく、井戸水枯渇など急に問題が明るみになって驚いた。2030年開通も怪しくなっている。
リニア新幹線の問題は、まさに映画の中で住人が提起していることと何ら変わりはしない。
映画ではまだ着工すらしていないが、現実社会では、着工後に問題が発覚している。
映画では、グランピングの施設建設を巡って、生活排水が井戸水に混じり飲料水が汚染するのではないか問題が取り上げられている。舞台は長野県ではあるが、この長野県の川や地下水の水は愛知県や他県の生活用水になっているから、もはや長野県だけの問題ではないのではある。
関西なら琵琶湖の水と同じなのである。
水に限らず、観光客による山火事が起きるのではないか問題も提起されている。
生活用水を汚染させてまでグランピング施設を建てる必要性があるのか?都会からの客を呼んでまで経済を回す、潤す必要性があるのか?トンネルを掘るだけ掘って但し駅はなし、地元住民の経済はどうやって潤すの?と同じ。めちゃくちゃリアルな問題として描かれている。
なのに!
もう片方では、ラストで明白になるが、鹿が作品の鍵を握る存在になっていて、
野生の鹿は人間を襲わない、絶対に。だが、仔を守るためなら親鹿は人を襲う。それを専門用語を使って言ってましたが聞き取れなかった…。
それがラストの伏線になっていた。
映画内では、主人公親子が住む土地では鹿狩りが行われている。彼らも、土地に住む住人もそこで生活しているわけだから排泄もすれば、生活排水も出す。
経済を回すためにグランピング施設を建てるのと何ら変わりはしない。見方によっては、住民の意見には矛盾が生じている。
そこを踏まえた上でのファンタジックなラストだと思うんですよ。
住民は、野生の鹿と同じ。この土地だから生活(生存)しているモノたちなのである。たとえ移住者であっても。
もはや、花ちゃんの失踪からのラストの展開は、濱口監督のメッセージとしか解釈できない。
あそこにリアリティーを求めたらただの理解不能作品になってしまう。え゙っ、そこで終わり???はぁ??!!ってなってしまう。
そういう意味でもエンタメ要素を感じて、私は凄く好き!
ま、濱口監督の意図はさっぱり分からんけどね…。
役者陣は、地元の方なのか素人ぽい演技が地元感が出ていて良かった。プロの役者さんだったらマジ天才!芸能事務所のマネージャー?役の方だけがプロっぽかった。あえて検索してないけど…。
あと、あんなに長回しを多用していたのに、体感時間がめちゃくちゃ短く感じた。「ドライブ〜」もしかり、これは濱口監督の映像マジックやね。マジ凄い!
この作品、確かに、人を選ぶ。いや、映画館を選ぶ(シネコンしか知らない人には先ず到達しない場所という意味)
だけども、多くの方が観るべき作品であることには間違いない。
タイトルの、悪は存在しない、
確かに見方によっては、鹿目線(自然目線)なら、本能であったり自然現象であったりと、悪は存在していないかもしれないが、
人間目線だと、間違いなく悪は存在している
と私は解釈した。
追記:
昨日、YouTubeでLiLiCoさんがオススメしていたスウェーデン映画の「幸せなひとりぼっち」を配信で観た。
精神が弱っていたのか、最初から泣きっぱなし。
めちゃくちゃ良かった!
出会いと別れは必然。
人生は死ぬまで学びと成長を繰り返し。
そう、人間は、お役目と課題があって生まれてくるんだよ。そう簡単には死なせてはくれない。
何気ない登場人物や猫やアイテムが作品を盛り上げる伏線になっていて、伏線の意味を凄く考えさせられた作品でもありました。
トム・ハンクスの「オットーという男」のオリジナル版とのことですが、
オリジナルであんなに泣いたら、リメイク版なんて観れるかな~って感じ。
超オススメ!!
追記2:
浦井氏で「天保十二年のシェイクスピア」再演決定!!
初演の大阪公演は中止になって観られなかったからな~。でも、DVDで拝見済…藁
今度は、初演で高橋一生君が演じた三世次!
おー、悪役か!?
めちゃくちゃ楽しみ!!