ノーブル・ノーズの花の穴

麗しき本音のつぶや記
~月に1度ブログ~

死んでないだけ

2023-04-19 09:24:56 | Weblog

大腸ポリープ切除に続き、
院長とすったもんだあった、白内障の手術も完了した。

最初にやった右目は、
院長ではなく、Y医師が執刀した。

「何だよ。保険診療に対して、
サービス(インフォームドコンセント)しないのは分かったけど、
手術もしてくれないのかよ。」

執刀医が、院長1人だと思って、
選んだクリニックだったので、がっかり。
(しかし後から、Y医師は院長から、
「あの人は天才だ!」と言われていると聞いた。)

手術直前に待たされる部屋は、アロマの匂いがした。

手術室の椅子が倒されると、
腹の上に、黄色いテディベアが載せられた。
患者のリラックスの為だと言う。

顔にカバー、目の周りをテープで固定。
下半身の手術とは違い、緊張して、
しゃべるどころか、固まっていた。

かと言って、尖った物が、
目の前に迫ってくるとかではない。
ただ、ライトの影が変化したり、
ピンクや緑の輪が、濡れるように動いているだけだ。

まるで、UFOに連れ去られ、
人造人間にされているようだった。

10分くらいかかると聞かされていたが、
本当に長いと感じた。
Y医師は、落ち着いて執刀していた。

翌朝、自分で、ガーゼを取るのが恐かった。
ちゃんと見えるのか、不安だった。

術前の血圧が高かったので、
精神安定剤を注射されていた。
寝る時に、息が浅くなり、
このまま死ぬんじゃないかと思うほど眠かった。

左目はまだ、真っ白な視界で、ド近眼なので、
ちぐはぐな感じはしたが、
単焦点とはいえ、右目に透明感があると、
室内も屋外も、ある程度は見えた。

想定していた見え方だったので、皆が言うように、
「世界が変わった。」というほどの感動は無かった。

決められた順番・回数で目薬をさし、
普段は保護メガネをかけ、寝る時は保護カバーをつける。
しばらくは、洗顔も洗髪もできない。
だから、夏を避けたのだ。

一週間後、左目の手術の直前に、
準備室で初めて、院長が執刀すると知った。
何だか、気まずかった。

アロマの部屋にいた時、「手を動かさないで!」と、
術中の患者を注意する声がしたので、
院長は、今日もピリピリしているなと思った。

呼ばれて、サッサと椅子にもたれると、
院長は、私の左まぶたを、ガシガシと思いきり消毒し、
カバーで鼻を押さえつけたので、一瞬、息ができなくなり、
目を開く為のテープを、ベリッと勢いよく張り付けた。

「やばい! 院長って雑!」

私は、技術よりも、その扱いに恐怖を覚えた。(笑)

前回、何なのか分からなかった英語の音声が、
南国系の歌だと、この時はっきり分かった。

院長は、自分の方に顔を傾けて動かすな、と指示した。

Y医師の時とは違い、看護師がやたら、私のデータを読み上げ、
「○○先生の紹介です。」と、手術に関係ない情報まで言う。
院長も、今やっている事を、しゃべりながら執刀した。

「痛くないですか?」と聞くので、
「圧痛が…。」と言うと、それに対する回答は無し。
じゃあ、聞くなよ。(笑)

「注射するから、チクッとします。」くらいならいいが、
「今、レンズを吸い出してます。」は、
気持ち悪いから、言わないでくれ。
よけい恐くなる。

看護師が、「○○、狙います。」と言ったが、何の事だろう。
レンズを入れる時の、要領でもあるのだろうか。

院長が、最後に珍しく、
「よく我慢しましたね。
痛かったところは無かったですか?」と気遣うので、
もはや、どうでもよかったが、
「注射が痛かった。」と答えると、
それは感染を防ぐ為だと、ピシャリと説明された。

院長の手術は、早かった気がしたが、
後で、看護師に聞いたら、
Y医師も院長も、同じ5分で終わっていたと言う。

右目を手術した4日後に、診察した女医が、
洗顔、洗髪してもかまわないと言うので、
シャワーで流してしまったのだが、
注意書には、1週間は保護メガネ、とある。

ああ、もっと慎重にするんだった!
そのせいか、後からやった左目より、右目の透明感が劣る。

禁止期間を過ぎても、ノーメイクでいたが、
久しぶりに、裸眼で見た自分の顔は、
改めてブサイクだと思った。

精神安定剤の注射による筋肉痛が、長引くので恐い。
調べたら、もむと組織が壊死すると書いてある。
もんではいないが、効き目がキツかったので不安。

白内障ロス

何だかんだ言って、
院長が執刀した左目の方が、予後が良かった。

事務的な部分もあったが、
色々話してくれる看護師もいて、面白かった。

続けてクリニックに通ったり、
検査するのは、面倒だったが、
無料サーバーのアップルティーは、美味しかった。

クリニックを去る時、なぜか寂しくなった。

「月曜から夜ふかし」で、
中国人のおばあさんが、長寿の秘訣を聞かれ、
「生きてるってより、死んでないだけだ。」と、
答えたのには爆笑したが、哲学だと思った。

金が無かろうと、不安が残ろうと、
四の五の言わずに、クリアな視界を取り戻す。

1つのミッションに向かって集中していると、
日々の嫌な事は、考えずにいられた。

こうやって、パーツを取り換え、
アンドロイド化しながら、生きていく。

小さな何かを、クリアしていく事で、
毎日をやり過ごす。

本当に、死んでないだけだ。

 


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