ノーブル・ノーズの花の穴

麗しき本音のつぶや記
~月に1度ブログ~

サラバ、白内障

2023-03-15 09:28:06 | Weblog

クソッ、見えん!!
この焚き火の中にいるような感じ。
夕方になると、更にまっ白になる。

メガネの度数も、
とっくに合わなくなっている。
もう、限界だ。
決めた。
やる事にする。

白内障の手術

スマホを使い始めた月に、
急に左目の中心部分が、
白っぽく見えるようになった。

眼科では、以前からなっていたと言われたが、
右目はそうでもないので、
コロナ禍を機に、
検診を、何年かさぼっていた。

ある日、鎌倉の炎天下で、
自撮りしていたら、その日のうちに、
右目も白く見えるようになった。

近視で老眼なので、
裸眼では、手元を見るのがやっと。
本来なら、北海道の景色だって、
もっと綺麗に見えるはずだったのに。

私は、いったん気持ちが決まると、
行動が早い。

最初に診断した眼科の、
口の悪い女性院長が、以前、
「腕のいい医者を、いくらでも知っている。」と言っていた。

そこで手術はしないと分かっていたので、
直接、手術をやる眼科に行った方が早いのだが、
大腸ポリープ同様、
万一、ヘタクソに当たったら嫌なので、
紹介してもらう事にした。

総合病院が2つと、個人クリニックが1っ。
「えっ、もっと個人医を知ってるんじゃなかったの?」と思ったが、
執刀医が1人の、個人クリニックにした。

ビルの2階にある小さいクリニックは、
モダンな内装で、待合室が、やたら広かった。
よく見たら、壁がグレーの鏡になっていて、
患者が倍に映っていただけだった。(笑)

そして、これは鏡に映っているのではなく、
本当にスタッフが多い。
検査ごとに、看護師が変わる。
同じ日に、2人の医師の診察を受けた。

大腸ポリープの時と同様、
患者は、ほとんどが年寄りで、
番号で呼ばれても、知らんぷりのおばあさんは、
名前じゃないと反応しない。

白内障の手術は、
レンズを取り替える恐怖の他、
医療費の高さにもビビるのだが、
何より、私がピリピリしていたのは、
レンズを、どの距離に合わせるかだ。

自由診療の多焦点レンズだと、
メガネ不要になるが、片目55万なんてのもある。

しかし、それだと、
結局、どこもクリアには見えない。
これは、遠近両用のメガネを使用している私には分かる。
漠然と見ていると、疲れないという良さもあるのだ。

私は、保険適用の単焦点にする事には迷いはなかった。
後は、近距離、中距離、遠距離の選択だ。

いつ、相談できるのだろう。
そう思っていたら、
手術の説明をし始めた看護師が、

「近距離に合わせます。」

何だと?
何で、テメーが決めるんだよ!

「選択肢があるんじゃないんですか?
それが一番重要で、相談したいんですよ。」
看護師は、少したじろいで、
「その話は、後にしましょう。」と、
もう二度と触れなかった。

別な検査で、別な看護師が又、
「近距離に合わせます。」と言ったので、
今度は、さすがにイラッとした。
「何でですか?選べるんですよね?」

その看護師は、もっとマヌケな事を言った。
「じゃあ、次の診察の、〇月〇日までに考えておいて下さい。」
「家に持ち帰っても、何も変わりませんよ。
何も聞けないんだから、決まらないでしょう!!」
「先生の診察(相談)を、受けますか?」
「本当は、受診は無かったんですか?」
「そうです。」
「なら、受けます。」

診察室に入ると、人を小ばかにしたように、
甘ったるいしゃべり方をする女医が、
「どのくらいの距離が見たいんですかぁ~?」
私は、しばらく呆れて、黙っていた。
「見たいって、色々ですけど。」

女医の横で、私の話をタイピングしている女がいた。
クレーム対処だろうか。

女医からは、
看護師が決めつけた事に対する謝罪があった。

「誰でも、朝起きたら、クリアに見えるっていう憧れがあるんですよねぇ~。」
おっしゃる通り。
でも、白内障でレンズを替えても、
乱視は残ると言う。

確かに、作業上、
手元がクリアに見えたら嬉しいのだが、
乱視が残るなら、むしろ、
メガネで調整した方が、よくないか?

「じゃあ、1mくらいにしましょうかぁ~?」
私が、不安でブツブツ言うと、
「思ったより、手元が見えないって言う方もいますけどぉ~。」

今の自分の視力に焦点を合わせて、
後はメガネで見るというのが、
慣れているので、楽なのだと言う。

そもそも、距離の設定がどうなっているのか教えてくれないので、
こちらから聞いた。
遠距離が5m、中距離が1m、近距離は聞かなかった。

「もう、いいですかぁ~。」
退室を促された。
面倒な患者だと思われたのだろう。
ふてくされた態度で、黙ってドアを閉めた。

どうせ、年寄りばっかり相手にしているから、
説明が面倒で、いつも勝手に決めているのだろう。

希望が絶望に変わった。

取り替えができないなら、もっと情報が欲しかった。
私の母にしても、「よく見える。」しか言わないし、
周りの人伝えは、「世界が変わった。」が共通で、
ネガティブな情報は無い。

自分でも、ネットで調べた。
単焦点でも、もっと細かい距離に対応しているクリニックもあった。

本当に、その人の生活によって、
選択は様々だ。
遠くに合わせて失敗したと、後悔する人もいれば、
元々、視力が良いのに、
新聞が読みたいので、手元に焦点を合わせ、
遠くが見えなくなって、メガネになっても、
満足した人もいたそうだ。

不安とイライラで、私は、
まだ一度も会っていない執刀医の院長と、
紹介した方の女医に、手紙を書いた。

何で、最初から決めつけるのか。
パンフレットには、
「インフォームドコンセントに努め…、」と書いてあるのに、
何で、相談にのってくれないのか。

診察日ではない日に、手紙を渡しに行ったら、
受付や看護師には、
手紙を渡していいかどうかの決定権も無いと言う。

すごく待たされて、
「院長が診察できるというので、手紙は自分で渡して下さい。」と言われた。

院長室がある5階へのエレベーターには、
鍵がかかっていて、
呼ばれた人でないと行けないようになっていた。

扉が開くと、黒とグレーを基調にした、
オシャレヤクザなサロンのようなフロア。

そこでも待たされたので、5階から2階の受付に、
「次の受診日に、院長の診察があるなら、
今日じゃなくてもいいんですけど。」と、電話してやったら、
聞こえたのか、院長が現れた。

やっと相談できると思ったら、
いきなり、私の目を診ようとするので、
「私の手紙は、読んでもらえないんですか?」と、
かましてやった。

手紙を読んだ院長は、開口一番、
「あなたは、勘違いをしています。」
続けて、保険適用の範囲とは、
くもったレンズを取り替える事で、
度数を決めるのは、そのついでであると言うのだ。

「つまり、オマケに対してのサービスはしない、という事ですね?」
「そうです。」
パンフレットに書かれているインフォームドコンセントについては、
「自由診療の人にはする、という事ですか?」
「そうです。」

院長は、この方針について、
「ドライだと思われるかもしれないけど…。」

私は理解し、スッキリした。
院長の診察後、
「全然、ドライじゃないです。」と、
頭を下げて帰った。

自分では、面倒見がいい方だとは思うが、
私も又、オーバーワークはしない主義なのだ。
年寄り相手なら、なおさらキリがない。

このクリニックでは、
必要以上の事はしないと言うなら、それでいい。
焦点は、自分で決めるしかない。

その後、ある人の例を読んで、私はハッとした。
近視で老眼の人が、遠距離に焦点を合わせたと言うのだ。
その理由は、水泳が趣味だったからだ。

そういえば、トマムのホテルのプールや露天風呂、
年に数回行く、万葉倶楽部の風呂も、
メガネ無しだとぼやけてしまい、全く面白くなかった。

裸眼で見たい景色が、私にはあった。

この選択が、失敗だったとしても、悔いは無い。
望みを賭けて、合わせる焦点は、

中距離1m、これが、ファイナルアンサーだ。

 

 


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