平成30年7月28日
台風12号どれほど危険?
特に要注意の地域は
強い台風12号は、28日午後には関東甲信地方に接近し、29日の明け方までに、東海地方または西日本に上陸する見込みとなっている。
多くの自治体の防災アドバイザーも務めている東京大学大学院・客員教授の松尾一郎さんに、注意点を聞いた。
◇さらに発達する台風12号の特徴
強い勢力を維持したまま接近する台風12号。
特徴として、まずは雨。
29日にかけて非常に激しい雨が降り、局地的に1時間に80ミリ以上の猛烈な雨になる見込み。29日昼までに多い所では、関東甲信地方で300~500ミリ、東海地方で300~400ミリ、近畿・中国地方で200~300ミリの雨量が予想されている。
さらに、28日昼すぎから29日にかけて、猛烈な風がふき、海はしけとなる見込み。また、高潮も心配されている。28日前後は満月で大潮の時期にあたるため、台風が接近する時間帯や満潮の時間帯を中心に、高潮の恐れがある。
◇松尾一郎さんに聞く、台風12号の注意点
■台風12号、危険は?
とても危険だと思う。
西日本豪雨災害も、実は台風7号にもたらされた雨だと思っているのだが、今回は、もしかしたら、場所によってはそれ以上の雨になる恐れがある。
加えて、風が強い。これは雨だけだった西日本豪雨の時にはなかったことだ。
今回は、風、高潮、さまざまな災害が起こる可能性がある。
■500ミリの大雨、何に注意が必要か
500ミリといってもピンと来ないかもしれない。
500ミリというのは、一様に雨が降るとすると、水がたまれば50センチになる。
これは相当な量になる。水は低い所に集まる訳だから、どんどんその50センチの水が川に集まってくると考えてください。
国土交通省が管理している河川について、これだけの雨が降ったならばあふれる、という、市町村のハザードマップの基となっている浸水想定区域図の計算降雨量は、荒川(関東)で431ミリ/1日、木曽川(東海)で295ミリ/2日、淀川(近畿)は261ミリ/1日。
500ミリが荒川にとってどれだけの量なのか、ということを考えるひとつの目安となる。
ただし、これは流域全体で一様に、例えば荒川では431ミリを超えたらあふれる、ということ。
今回の気象庁の予想は、一様ではなく、最大で500ミリ、ということではある。
それでもやはり、荒川などの例えば秩父で600ミリ降ったら間違いなく危険水位を超えるし、広域避難となるかもしれないので、安心してはいけない。
■暴風も心配?
風も、とても注意が必要だ。これまで風台風というのはたくさんあったが、街中の看板が飛んだり、電柱が倒れたり、木が倒れて車ごと被災された人がいるとか、オートバイで配達中に強い風にあおられ転倒して犠牲になったということもあった。
風というのは、暴風警報が発表される前、明るいうちの、早めの避難しかないと思う。
■高潮、沿岸部では…
高潮は今回、特に特徴がある。満潮の時期とタイミングがぶつかる。今回、西の方に台風が進路を変えて迫っていることを考えると、これから東海地方で東側にひらけている湾は注意が必要だ。
特に「三重県」は、名古屋を含めてゼロメートル地帯、低平地がたくさんある所だ。低地には高潮が発生すると浸水すると思う。三重県の東側については、高潮が起こるかもしれない、それに関しては気象庁が高潮警報を発表するので、発表されたら、あるいは前段階で警報の可能性も含めて発表されると思うので、自治体としても対応をとっておく、住民としても逃げる準備をしておく、といったことが必要だ。
◇西日本豪雨の被災地でもまとまった雨?
西日本豪雨では、広島県内で広い範囲にわたり土砂崩れが起きている。広島市安芸区の矢野東をとらえた衛星写真で被災前と後を比べると、地形が変わってしまっている様子が確認できる。また、坂町でも大規模な土石流が発生して、住宅地に土砂が押し寄せて来ているのがわかる。
さらに、現在も土砂崩れの危険性が指摘されている場所がある。京都大学防災研究所がドローンを使い調査した映像では、山の斜面に大量の土砂が今も流れきらずに不安定なまま残されている状況がわかる。土砂の上に大きな石がいくつか連なった状態で残っているとみられ、雨が降るとまた土石流となる可能性が指摘されている。
■被災した人が警戒する点は
被災地では、まだ被災直後のままで、上流の砂防ダムも治山ダムも壊れている。河川も、仮復旧はある程度できているが、まだ決壊している所がある。ということは、地形も含めて変わっている。川底にはたくさんの土砂がたまっているし、ちょっとまとまった雨が降るだけで氾濫する、土砂災害が発生する可能性がある。
だから、被災地では、自宅で避難する“垂直避難”ではなく、そこから離れる“水平避難”をする。行政も早めに避難所を開設した上で、安全な所に逃げていただく。場合によっては、一泊二日でもいいので“避難疎開”を考えた方がいいかもしれない。
被災地ではもう地形も含めて変わっているので、ハザードマップは使えないと思っている。この状況でハザード情報がないとなると、身を守るには早めに動く、これしかない。
気象庁の発表では「経験は通用しない」
台風12号どれほど危険?
特に要注意の地域は
強い台風12号は、28日午後には関東甲信地方に接近し、29日の明け方までに、東海地方または西日本に上陸する見込みとなっている。
多くの自治体の防災アドバイザーも務めている東京大学大学院・客員教授の松尾一郎さんに、注意点を聞いた。
◇さらに発達する台風12号の特徴
強い勢力を維持したまま接近する台風12号。
特徴として、まずは雨。
29日にかけて非常に激しい雨が降り、局地的に1時間に80ミリ以上の猛烈な雨になる見込み。29日昼までに多い所では、関東甲信地方で300~500ミリ、東海地方で300~400ミリ、近畿・中国地方で200~300ミリの雨量が予想されている。
さらに、28日昼すぎから29日にかけて、猛烈な風がふき、海はしけとなる見込み。また、高潮も心配されている。28日前後は満月で大潮の時期にあたるため、台風が接近する時間帯や満潮の時間帯を中心に、高潮の恐れがある。
◇松尾一郎さんに聞く、台風12号の注意点
■台風12号、危険は?
とても危険だと思う。
西日本豪雨災害も、実は台風7号にもたらされた雨だと思っているのだが、今回は、もしかしたら、場所によってはそれ以上の雨になる恐れがある。
加えて、風が強い。これは雨だけだった西日本豪雨の時にはなかったことだ。
今回は、風、高潮、さまざまな災害が起こる可能性がある。
■500ミリの大雨、何に注意が必要か
500ミリといってもピンと来ないかもしれない。
500ミリというのは、一様に雨が降るとすると、水がたまれば50センチになる。
これは相当な量になる。水は低い所に集まる訳だから、どんどんその50センチの水が川に集まってくると考えてください。
国土交通省が管理している河川について、これだけの雨が降ったならばあふれる、という、市町村のハザードマップの基となっている浸水想定区域図の計算降雨量は、荒川(関東)で431ミリ/1日、木曽川(東海)で295ミリ/2日、淀川(近畿)は261ミリ/1日。
500ミリが荒川にとってどれだけの量なのか、ということを考えるひとつの目安となる。
ただし、これは流域全体で一様に、例えば荒川では431ミリを超えたらあふれる、ということ。
今回の気象庁の予想は、一様ではなく、最大で500ミリ、ということではある。
それでもやはり、荒川などの例えば秩父で600ミリ降ったら間違いなく危険水位を超えるし、広域避難となるかもしれないので、安心してはいけない。
■暴風も心配?
風も、とても注意が必要だ。これまで風台風というのはたくさんあったが、街中の看板が飛んだり、電柱が倒れたり、木が倒れて車ごと被災された人がいるとか、オートバイで配達中に強い風にあおられ転倒して犠牲になったということもあった。
風というのは、暴風警報が発表される前、明るいうちの、早めの避難しかないと思う。
■高潮、沿岸部では…
高潮は今回、特に特徴がある。満潮の時期とタイミングがぶつかる。今回、西の方に台風が進路を変えて迫っていることを考えると、これから東海地方で東側にひらけている湾は注意が必要だ。
特に「三重県」は、名古屋を含めてゼロメートル地帯、低平地がたくさんある所だ。低地には高潮が発生すると浸水すると思う。三重県の東側については、高潮が起こるかもしれない、それに関しては気象庁が高潮警報を発表するので、発表されたら、あるいは前段階で警報の可能性も含めて発表されると思うので、自治体としても対応をとっておく、住民としても逃げる準備をしておく、といったことが必要だ。
◇西日本豪雨の被災地でもまとまった雨?
西日本豪雨では、広島県内で広い範囲にわたり土砂崩れが起きている。広島市安芸区の矢野東をとらえた衛星写真で被災前と後を比べると、地形が変わってしまっている様子が確認できる。また、坂町でも大規模な土石流が発生して、住宅地に土砂が押し寄せて来ているのがわかる。
さらに、現在も土砂崩れの危険性が指摘されている場所がある。京都大学防災研究所がドローンを使い調査した映像では、山の斜面に大量の土砂が今も流れきらずに不安定なまま残されている状況がわかる。土砂の上に大きな石がいくつか連なった状態で残っているとみられ、雨が降るとまた土石流となる可能性が指摘されている。
■被災した人が警戒する点は
被災地では、まだ被災直後のままで、上流の砂防ダムも治山ダムも壊れている。河川も、仮復旧はある程度できているが、まだ決壊している所がある。ということは、地形も含めて変わっている。川底にはたくさんの土砂がたまっているし、ちょっとまとまった雨が降るだけで氾濫する、土砂災害が発生する可能性がある。
だから、被災地では、自宅で避難する“垂直避難”ではなく、そこから離れる“水平避難”をする。行政も早めに避難所を開設した上で、安全な所に逃げていただく。場合によっては、一泊二日でもいいので“避難疎開”を考えた方がいいかもしれない。
被災地ではもう地形も含めて変わっているので、ハザードマップは使えないと思っている。この状況でハザード情報がないとなると、身を守るには早めに動く、これしかない。
気象庁の発表では「経験は通用しない」