令和5年5月25日
統一選 多様な人材生かす仕組みを
第20回統一地方選が23日、9道府県知事選の告示を皮切りにスタートした。
知事選や6政令市長選、41道府県議選、17政令市議選の前半戦は4月9日に、市区町村長・議員選は同23日に投票が行われる。
今回の統一選の意義や首長、地方議会の在り方などを地方政治に詳しい東北大大学院の河村和徳准教授に聞いた。
―今回の統一地方選の焦点や争点は何か。
統一地方選は野党の栄枯盛衰の歴史だ。
野党が議席を増やすと、国政に影響して与野党伯仲の形になることがある。
2007年は民主党が伸ばし政権交代につながった。
今回は立憲民主党が名実ともに野党第1党になれるのか。
日本維新の会が関西以外の議席を得て国政でも存在感を増すのか。
一方、自民党は「1強」であるが故に一枚岩になり切れないことが弱点だ。
同じ県内でも地方と都市部の議員間で意見がまとまらないということも出てきている。
新型コロナウイルスの流行を経て、これまでの社会システムが問われている。
さまざまなデジタル化が叫ばれる一方で、機器を使えない高齢者もいて、どう折り合いをつけるのか。
選挙戦でも世代間闘争という側面がある。
インターネットによる選挙運動が盛んになっており、後援会などの組織の力から候補者自身の力量が試されるだろう。
―女性の地方議員は増加傾向だが、比率は15%程度にとどまる。
1986年に男女雇用機会均等法が施行され働く女性は増えた。
しかし、議会にこの流れが届くまでに30年以上のタイムラグが起きた。
議員はもともと高齢男性ばかりで世代交代に時間がかかり、ハラスメントも横行していたためだ。
社会が変わってようやく政治も変わり始めたという段階だろう。
ただ、世襲などの地盤のない女性が新規参入するには非常にハードルが高い。
政党などが女性候補に対してバックアップしていく必要がある。
また、自治体の審議会や行政委員会といった公的な会議のメンバーに女性を増やし、女性参画の機運をつくっていくべきだ。
―地方議員の成り手不足が深刻化している。
国政選挙の政党公認候補であれば活動費などが党から支給されるが、地方議員に立候補する場合、
個人の財産に依存していることが多い。
落選したら「ただの人」で、当選しても議員に対する世間の目はとても厳しくなっている。
立候補することに対するリスクがとても高いのが現状だ。
さらに、町村議員の報酬はそれだけで生活していける額にはなっていないところも多い。
成り手不足を指摘するのであれば、議員の在り方や報酬、候補者に対するサポートを再度考えていくべきだろう。
女性や若者といった多様な人材が議会で活躍できる働きやすい制度、仕組みが求められる。
―首長の多選が増えている。
例えば、新幹線の開業など大きなプロジェクトがあると、国とのパイプを維持したいという地元の意識が働き、
当選を重ねるという構造があった。
3期目にもなると自身を支援した有力議員も引退し、当初は丁寧だった議会対応も強気になる。
職員も自分より年下ばかりになり、忖度(そんたく)が働くようになる。
いわゆる「無敵モード」に入ってしまい、長期政権となることが多かった。
近年、多選の知事が落選するケースもあったが、大型案件が終わり県内地域間の経済格差といったことに
県政のテーマが移り、保守分裂が起きた結果だろう。
―多選自粛条例を廃止する事例も相次いでいる。
条例制定は改革派や次世代をアピールするため、その場限りのパフォーマンスだったのだろう。
就任から10年もたてば、当初主張していた「多選の弊害」について「自分はそんなことはない」と考えるようになり、条例を撤回するようになる。
「自分は正直ではない」と言っているようなものだ。
本来であれば、多選をどうするのかということを広く丁寧に議論していくべきだった。
―「強い首長」に対して議会が「追認機関」になっているという指摘もある。
さまざまな場面で効率化が求められている時代だが、「トップダウンで物事を決めればいい」という議会不要論が出てくるのは一番良くない。
二元代表制は手間も時間もかかるが、首長に権力を集中させない仕組みだ。
議会は、独任制の首長が見えにくいところを複数の議員が多角的に質問や提案をすることができる。
多様性が認められ、いろいろな情報を共有し議論を尽くすというのが民主主義や議会の本質だ。
そのことを議員も有権者も改めて考えてもらいたい。