『二丁目通信』、カバーは薄いベージュで、表紙は落ち着いた水色、栞は青い。
二丁目通信、と黒いゴシック文字で書かれ、
作者名などは水色の明朝体である。
何の装飾もなくて、すっきりとしている。
先生の愛情あふれる跋。
「最初に会ったときの具体的なあれこれはどうも記憶にないのである。
『作品にぴったりの人だなあ』という印象以外は。」
と書いていらっしゃったので、思い出した。
私は4年前の横浜の全国大会で初めてお目にかかって、
以前に資料のコピーをいただいていたお礼に
「海軍カレー」をお渡ししたので、よく覚えているのだ。
その時の会場であったベイ・シェラトンホテルの売店で買った。
なんとなく痩せていらっしゃるような気がしたので、カレーにしたのだ。
私は痩せている人を見ると、何故だかわからないが、
「何か食べさせてあげなくては」という気持ちになるのだ。
あっと思って、すれ違うときに名札で名前を確認した。
「F島さん?」訊ねると「はい」
硬い表情で、くぐもったテノール。
半袖の白だったか水色だったかのシャツを着ていらした。
思ったよりも小柄な、丁寧な方だった。
身を縮めてお辞儀をなさる様子が、困惑した招き猫みたいだと思った。
以前に短歌研究の新人賞の候補にもなってらして、
そのときのタイトルが「二丁目通信十二月号」というのだった。
それからK賞も受賞なさって、かなり重い症状の父上の
介護をなさっているのを知った。
辛い生活と思うのに、明るくて面白い方なのだった。
結社のネット歌会を積極的に牽引なさって、
東京歌会でも進んでお役をなさっていて、皆さんもそうだろうけれど、
私もどんなに助けていただいたか分からない。
このたび歌集を編まれて、一挙に高みにジャンプなさったような気がして
少々さびしくもあるのだけれど、今までだって、
ちっともいばられないから気付かなかっただけで、
実は全然違う高みにいらした方なのだ。
仲間うちで歌集が出されるのは初めてなので、
(何故か私のまわりは歌集に消極的・否定的な方が多い)どきどきする。
これから10首を選んだり、感想を書いたりして、皆と勉強会をする。
すでに歌会で読んだり、投票したり、批評したことのある歌が結構あって、
推敲・改作のあとを探すのも楽しい。
緩んだ箇所が確実に締められていて、唸ってしまう。
いつかF島H憲論を書くことが、万が一にでもあったら、
初出と改作の違いだけは書くことが出来ると思う。
読了して、Rちゃんは「愉しかった」というけれど、私は泣いた。
まず先生の跋に泣いたが、それよりももっと切なかった。
二丁目の「彼」は三丁目に住む彼とは若干違うらしいのだ。
二丁目の「彼」を差し出されたからには、二丁目の「彼」と付き合おう。
三丁目の彼とどう違うのか?
考えてみても詮ないことである。
彼を代表する歌ではないけれど,大好きな歌の一つを。
・せりなずな春の菜ものを湧水に洗うは楽しすずなすずしろ
二丁目通信、と黒いゴシック文字で書かれ、
作者名などは水色の明朝体である。
何の装飾もなくて、すっきりとしている。
先生の愛情あふれる跋。
「最初に会ったときの具体的なあれこれはどうも記憶にないのである。
『作品にぴったりの人だなあ』という印象以外は。」
と書いていらっしゃったので、思い出した。
私は4年前の横浜の全国大会で初めてお目にかかって、
以前に資料のコピーをいただいていたお礼に
「海軍カレー」をお渡ししたので、よく覚えているのだ。
その時の会場であったベイ・シェラトンホテルの売店で買った。
なんとなく痩せていらっしゃるような気がしたので、カレーにしたのだ。
私は痩せている人を見ると、何故だかわからないが、
「何か食べさせてあげなくては」という気持ちになるのだ。
あっと思って、すれ違うときに名札で名前を確認した。
「F島さん?」訊ねると「はい」
硬い表情で、くぐもったテノール。
半袖の白だったか水色だったかのシャツを着ていらした。
思ったよりも小柄な、丁寧な方だった。
身を縮めてお辞儀をなさる様子が、困惑した招き猫みたいだと思った。
以前に短歌研究の新人賞の候補にもなってらして、
そのときのタイトルが「二丁目通信十二月号」というのだった。
それからK賞も受賞なさって、かなり重い症状の父上の
介護をなさっているのを知った。
辛い生活と思うのに、明るくて面白い方なのだった。
結社のネット歌会を積極的に牽引なさって、
東京歌会でも進んでお役をなさっていて、皆さんもそうだろうけれど、
私もどんなに助けていただいたか分からない。
このたび歌集を編まれて、一挙に高みにジャンプなさったような気がして
少々さびしくもあるのだけれど、今までだって、
ちっともいばられないから気付かなかっただけで、
実は全然違う高みにいらした方なのだ。
仲間うちで歌集が出されるのは初めてなので、
(何故か私のまわりは歌集に消極的・否定的な方が多い)どきどきする。
これから10首を選んだり、感想を書いたりして、皆と勉強会をする。
すでに歌会で読んだり、投票したり、批評したことのある歌が結構あって、
推敲・改作のあとを探すのも楽しい。
緩んだ箇所が確実に締められていて、唸ってしまう。
いつかF島H憲論を書くことが、万が一にでもあったら、
初出と改作の違いだけは書くことが出来ると思う。
読了して、Rちゃんは「愉しかった」というけれど、私は泣いた。
まず先生の跋に泣いたが、それよりももっと切なかった。
二丁目の「彼」は三丁目に住む彼とは若干違うらしいのだ。
二丁目の「彼」を差し出されたからには、二丁目の「彼」と付き合おう。
三丁目の彼とどう違うのか?
考えてみても詮ないことである。
彼を代表する歌ではないけれど,大好きな歌の一つを。
・せりなずな春の菜ものを湧水に洗うは楽しすずなすずしろ