久々にプロレスねたをば。
1980年代のプロレスブームの立役者は、何んと行ってもタイガーマスクこと佐山聡だ。アニメの世界の主人公が、実際にリングの上に現われた。しかも、今まで見たことのない鮮やかな戦いぶりは、子供たちを熱中させるに足りうるものであった。
なにせ、あのプロレスのリングのロープの上を綱渡りして、リング下の相手に体当たり。多彩な蹴り技とアクロバティックな動きは、プロレス観戦歴の長い私も驚愕の演出だった。
天才という言葉を安易に使うことを厭う私だが、佐山タイガーはまさに天才だった。あれほど鮮やかにプロレスを展開させる演技ぶりは、まさに天才に値する。そして、その天才ぶり故に妬まれるほど人気を得て、その天才ぶりゆえに天狗になって滅びたレスラーでもある。
格闘技志向の強かったタイガーマスクは、同じ志向を持つ藤原、前田、高田、山崎、木戸らと第一次UWFという新しいプロレス団体を立ち上げる。しかし、興行的には難しかったようで、仲間割れを起こした挙句に古巣・新日本プロレスに吸収される。しかし、そのなかにタイガーマスクの姿はなかった。
理屈っぽくなるので、ここでUWFを論じることは避けるが、あれはやはりプロレスだった。どうあがいても、プロレスの宿命からは逃れ得なかった。だからこそ、佐山タイガーは弾かれた。
私は当時から佐山の失墜を予感していた。それはタイガーマスクとして新日本プロレスで活躍していた末期に、既に予感されたことだった。当時イギリスのジュニア・ヘビー級の強豪マーク・ロッコをイギリスから呼び、ブラックタイガーとして戦わせていた。ロッコは、佐山のイギリス修行時代のライバルとの触れ込みだったが、率直に言って佐山より強かった。
プロレスを演じてくれるダイナマイト・キッドやスティーブ・ライトと異なり、覆面を被っての悪役レスラーを演じることを楽しんでいたロッコは、佐山を散々いたぶった。真の実力者ブラックタイガー(マーク・ロッコ)の前では、タイガーマスクはその輝きを減じざるえなかった。天才は、その鼻っ柱をぶち折られてしまった。
真面目な青年、佐山聡は悩んだと思う。タイガーマスクを演じる自分と、格闘技を追い求めたい佐山聡個人との間で煩悶したはずだ。ヒーローを演じていられた間は我慢できた。しかし、ちょっと底意地の悪いマーク・ロッコに化けの皮を剥がされた。ロッコも仕事だから、ヒーロー役は佐山に譲っても、実力で勝るという自負が引き立て役を許さなかった。だから、タイガーマスクをリング上でいたぶった。
耐え切れなくなった青年、佐山は格闘技に逃げた。もっと、もっと強くなりたかったのだと思う。しかし、食べるためにはプロレスを演じる必要がある。矛盾に悩みながら、UWFのリングに上がる佐山には、もはや輝きはなかった。
UWF末期、佐山の姿は滅多に道場で見かけることはなかった。当時、佐山はスーパータイガー・ジムの経営に傾唐オていたからだ。私は茶沢通り沿いにあったそのジムを何度か見学に行ったことがある。汗にまみれ、熱心に指導する佐山の姿を見ながら、この人はもうプロレスには戻れないと確信していた。
案の定、UWFの仲間から裏切り者扱いされて、プロレス界を立ち去った。今も格闘技の世界で、ジム経営をしているようだが、かつての輝きはみられない。観客の視線を意識しなくなった佐山は、節制なく食べだし、太りだし、足が細く胴体がぶっといカブトムシのような容姿となってしまった。太った虎は、もはやタイガーマスクには戻れない。
格闘技に憧れた青年・佐山聡は、身体は十分に鍛えたが、精神の鍛錬が足りなかったと思う。そのかつての輝きを知るが故に、その失墜を残念に思わざる得ない。
1980年代のプロレスブームの立役者は、何んと行ってもタイガーマスクこと佐山聡だ。アニメの世界の主人公が、実際にリングの上に現われた。しかも、今まで見たことのない鮮やかな戦いぶりは、子供たちを熱中させるに足りうるものであった。
なにせ、あのプロレスのリングのロープの上を綱渡りして、リング下の相手に体当たり。多彩な蹴り技とアクロバティックな動きは、プロレス観戦歴の長い私も驚愕の演出だった。
天才という言葉を安易に使うことを厭う私だが、佐山タイガーはまさに天才だった。あれほど鮮やかにプロレスを展開させる演技ぶりは、まさに天才に値する。そして、その天才ぶり故に妬まれるほど人気を得て、その天才ぶりゆえに天狗になって滅びたレスラーでもある。
格闘技志向の強かったタイガーマスクは、同じ志向を持つ藤原、前田、高田、山崎、木戸らと第一次UWFという新しいプロレス団体を立ち上げる。しかし、興行的には難しかったようで、仲間割れを起こした挙句に古巣・新日本プロレスに吸収される。しかし、そのなかにタイガーマスクの姿はなかった。
理屈っぽくなるので、ここでUWFを論じることは避けるが、あれはやはりプロレスだった。どうあがいても、プロレスの宿命からは逃れ得なかった。だからこそ、佐山タイガーは弾かれた。
私は当時から佐山の失墜を予感していた。それはタイガーマスクとして新日本プロレスで活躍していた末期に、既に予感されたことだった。当時イギリスのジュニア・ヘビー級の強豪マーク・ロッコをイギリスから呼び、ブラックタイガーとして戦わせていた。ロッコは、佐山のイギリス修行時代のライバルとの触れ込みだったが、率直に言って佐山より強かった。
プロレスを演じてくれるダイナマイト・キッドやスティーブ・ライトと異なり、覆面を被っての悪役レスラーを演じることを楽しんでいたロッコは、佐山を散々いたぶった。真の実力者ブラックタイガー(マーク・ロッコ)の前では、タイガーマスクはその輝きを減じざるえなかった。天才は、その鼻っ柱をぶち折られてしまった。
真面目な青年、佐山聡は悩んだと思う。タイガーマスクを演じる自分と、格闘技を追い求めたい佐山聡個人との間で煩悶したはずだ。ヒーローを演じていられた間は我慢できた。しかし、ちょっと底意地の悪いマーク・ロッコに化けの皮を剥がされた。ロッコも仕事だから、ヒーロー役は佐山に譲っても、実力で勝るという自負が引き立て役を許さなかった。だから、タイガーマスクをリング上でいたぶった。
耐え切れなくなった青年、佐山は格闘技に逃げた。もっと、もっと強くなりたかったのだと思う。しかし、食べるためにはプロレスを演じる必要がある。矛盾に悩みながら、UWFのリングに上がる佐山には、もはや輝きはなかった。
UWF末期、佐山の姿は滅多に道場で見かけることはなかった。当時、佐山はスーパータイガー・ジムの経営に傾唐オていたからだ。私は茶沢通り沿いにあったそのジムを何度か見学に行ったことがある。汗にまみれ、熱心に指導する佐山の姿を見ながら、この人はもうプロレスには戻れないと確信していた。
案の定、UWFの仲間から裏切り者扱いされて、プロレス界を立ち去った。今も格闘技の世界で、ジム経営をしているようだが、かつての輝きはみられない。観客の視線を意識しなくなった佐山は、節制なく食べだし、太りだし、足が細く胴体がぶっといカブトムシのような容姿となってしまった。太った虎は、もはやタイガーマスクには戻れない。
格闘技に憧れた青年・佐山聡は、身体は十分に鍛えたが、精神の鍛錬が足りなかったと思う。そのかつての輝きを知るが故に、その失墜を残念に思わざる得ない。