ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「ハツカネズミと人間」 スタインベック

2008-07-10 12:11:26 | 
どうしようもない、哀しい選択って確かにあると思う。

人一倍身体が大きく、力も強いレニーは、残念ながらお頭が弱い。根は善人だが、力の加減を知らない。だから、小さくて可愛いハツカネズミをもらっても、いつのまにやら死なせてしまう。

心優しく、臆病ですらある巨漢レニーは、いつも相棒のジョージと一緒だ。ジョージは愚痴をこぼしつつも、レニーを連れて歩く。お荷物だと、面唐セと言いつつ、いつもレニーを気遣うジョージ。

ふと目を離した隙に、レニーがしでかした取り返しのつかない事件。司法制度が未発達で、憤る人々のリンチで殺されるはずのレニーを救う手はないのか?

助けを求めるレニーに対し、最善の手を尽くしたジョージの苦悶が脳裏に深く刻まれる。私にはジョージにかけてやる言葉が見つからない。今も見つからない。

夏休みの宿題に妹が選んだのが、この本だった。多分、薄っぺらで読みやすいと思い込んだのだろう。読んだら哀しくなって、とても感想文が書けないと泣き付かれた。私もあっという間に読みきったが、やるせない気持ちが邪魔して感想文など書けなかった。

だから、妹には書けない気持ちをそのままに書けとアドバイスした。私に代筆させたかったようなので不満そうだったが、字が下手な私と、何故か字は上手い妹ではすぐバレル。もっとも、後で先生に褒められたと言っていたから、分らないものだ。

多分、妹の感想文は理に適った文ではないと思うが、情緒に繊細な奴だから、そこが活きたのだろう。世の中、道理で割り切れることばかりではない。割り切れない人生には、割り切れぬ端数を曖昧に優しく包むやり方が相応しいこともあるのだと思う。

理に走りがちの私は、今でも苦悶するジョージにかけてあげる適切な言葉が見つからない。でも、きっと妹の奴ならそれが出来るのだろうな。進歩ないね、私は。
コメント (4)
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