ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「ナイト・ボート」 ロバート・マキャモン

2008-12-10 12:33:54 | 
ゾンビが嫌いだ。

なんたって潔くない。死んだのなら死んだで、大人しくしてろ。死んだくせに、甦って生きている人を襲い、人間を食べるだなんて、人様の風上にもおけない。

なかでも嫌なのは、生きている時の怨念を抱いて人間に襲い掛ってくるゾンビだ。死んだのだから、諦めろと言いたくなる。まったくもって、未練がましい連中だ。

ただ、まあ、操られているのなら仕方ない。カリブ海のハイチに伝わるブードゥー教は死者を操ると言われる。ホラー映画では定番の一つだ。

ところが、ホラー小説では案外とブードゥーものは良作が少ない。あるにはあるが、正直駄作が多いと思う。そのなかでも数少ない逸品が表題の作品だ。

カリブ海の海底に横たわる沈没したUボードが甦り、ゾンビを載せてやってくる。陳腐な設定だとは思うが、そこはあのマキャモンだ。ストーリー展開といい、最後のどんでん返しといい、十分読者を楽しませる。

もっともマキャモン自身は、この作品を駄作だと言い切る。たしかにマキャモン独特の疾走感はゆるい。長編が多いマキャモンからすると、短すぎて力量が十分発揮されなかったのだとも思う。

それでも、私としてはゾンビものとしては、十分良作に値すると思う。不気味な太鼓の響きとともに、海底から浮かび上がるボロボロの潜水艦。その潜水艦から現われ、朽ち果てたナチスの制服を着た生ける死体たちが、静かに南国の楽園生活を楽しむ人々を恐怖のドン底に落とし込む。

できるなら、海辺で読んで欲しい一作です。この冬休みに南国リゾートへ行く予定がありましたら、旅行鞄のなかに是非どうぞ。
コメント (6)
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