お坊ちゃまは喧嘩が下手。
これは必ずしも悪い事ばかりではない。基本的に争いごとを厭う温和な人が多いし、それはそれで美徳でもある。また、当人が争いを嫌うので、争う前に対策を練って、争うわぬようなかたちにもっていく。金持ち争わず、とは本当だと感心したことが何度かある。
育ちの悪い私は、幼少期より高校まで、あまりお坊ちゃんたちとは縁がなかった。特に幼少期は庶民というには、いささか品が悪すぎる悪童との付き合いが主で、中流家庭の子弟でさえ少数派であった。高校くらいになって、ようやく普通の連中と付き合いだしたぐらいだ。
まして、お坊ちゃん、お嬢ちゃんとは、ほぼ無縁に近かった。ところが、何を間違えたのか、大学が所謂良家の子弟が数多く通うので有名な学校であったので、そこで初めてお目にかかった。
いや、ホント、驚きの連続でしたね。100円ライターの付け方を知らないのは序の口で、狡すっからい世間をどうやって渡ってきたのか不思議で仕方なかった。
よくよく付き合ってみると、私が棲息していた下種な世界とは、あきらかに違う世界で生きてきた連中だと分った。正直言えば、内心馬鹿にしないでもなかったが、悪い奴らでないことも確かだった。
お坊ちゃまなんて、甘っちょろいぜと思っていたが、案外根性のある奴らが多く、それが真っ当すぎて私には分らなかった。なにせ、真正面から、道の真ん中を堂々と歩むが如き生き方を、当たり前のようにする奴らでもある。
裏道、抜け道をかいくぐる人生を送ってきた私からすると、目から鱗の落ちるような新鮮な感覚を味わった。白状すると、それは悪いものではなかった。
もし、このお坊ちゃま、お嬢ちゃま連中と出会わなかったら、私は違う人生を送っていた気がする。私は脱法行為や、倫理にもとることに対する敷居が低いので、一歩間違えれば裏道人生を送っていた可能性は少なくなかった。
彼らと知り合うことにより、私は自分の危うさを自覚せざる得なかった。私の見るところ、彼ら良家の子弟って奴は、危ないことに関しては無知だが、その危うい部分に踏み込まない慎重さがある。これは大事なことなのだろう。
ただ、それゆえに危うい世界に踏み込んでしまった場合、どうも鴨にされやすい。
民主党の鳩山・元総理などは、この典型だと思う。この人の資金なくして、民主党が与党になることは難しかったはずだ。いわば、民主党のスポンサーといってもいい。だからこそ、首相になれた。
しかし、喧嘩が下手だ。先週の不信任騒動なんざ、その典型だと思う。成り上がりの菅のしぶとさと狡さにより、ものの見事に鴨にされた。
小沢が怒っているようだが、鳩山の首に縄をつけなかったのが悪い。そのあたり、いささかレベルは低いが、小沢もお坊ちゃまだと云わざる得ない。
見事に、不信任を乗り切った菅は、可能な限り首相の椅子にしがみ付くのは間違いない。出来るならば、後継を自分の手で決めて院政さえやりかねない。やはり危ない男だったな、菅は。