雲行きが怪しくなってきた。
日本国の軍隊(自衛隊と称される)の構成は、極めて歪なものになっている。それは日本を軍事的に従属下に置こうと考えるアメリカの意思が強く働いているからに他ならない。
一言でいってしまえば、日本列島駐在のアメリカ軍を補完する構成になっている。まず陸軍は、本国以外では最大の武器保管場所であり、兵站拠点であり、情報収集機関でもある在日アメリカ軍基地を防衛するためにある。
海軍は、アメリカの軍事的覇権の基盤である空母艦隊を敵対的潜水艦から守るため、対潜水艦部隊と、長距離攻撃を主とするミサイル攻撃艦(なぜかイージス艦と呼ばれている)から構成される。
さらには、西大西洋の広大な空域を支配するため、超音速で長距離飛行を可能とする戦闘機と、空飛ぶレーダー基地の役割を果たす航空機を中心とした空軍を日本に持たせている。
率直に言って、日本国を守る軍隊として、その構成は必ずしも適切とは言いかねる。もっとも、西欧の古豪であるドイツでさえ事情は似たようなものだ。それが敗戦国の現実というものであろう。
アメリカは二度と逆らうことがないよう、ドイツと日本を厳しく統制下に置く意思を変えてはいない。だからといって、ドイツも日本も自国を守る意思を放棄したわけではない。
日本の場合、公にその意思が明らかにされることは稀だが、防衛省だけでなく、自衛隊自らも独自の国家防衛の意思を実践しようと足掻いている。
その一つが武器の国産化だ。輸入された武器に頼ることは、必然的に武器輸出国の意向に逆らうことを難しくさせる。実際、日本はアメリカ以外の国の兵器を輸入することは不可能に近い。
一部スウェーデン製やスイス製の兵装を使っているが、それはアメリカ軍も採用しているからこそで、間違ってもロシア製やフランス製の武器は使えない。
アメリカ製の武器は優秀なので、困ることは少ないが、日本軍が備蓄している武器弾薬は、せいぜいが一週間に満たない量でしかない。これはアメリカ軍から武器弾薬の補給を受けることを前提としているが故だ。
ある意味、非常に現実的な選択であり、非情なまでに哀れな選択でもある。その反発から、何度も主力兵器の国産化が密かに推し進められてきたが、その成果は微々たるものだ。
広大な海域を領有する日本にとって、主力戦闘機は極めて有益な武器である。現在は国内でライセンス生産しているF-15を配備している。優れた戦闘機であったが、ステルス化には程遠くいささか陳腐化している。
そこで次期主力戦闘機と目されていたのがアメリカのF-22ラプターであったが、アメリカ議会が輸出を拒否したため頓挫している。
こうなると、現在開発中のF35になる予定であったが、この開発が予想以上に難航している。そこで浮上してきたのが、アメリカ海軍が第一線配備しているF-18だ。
1980年代に開発され、Fー16との競争に敗れたF-17を海軍向けに改良したのがF-18だった。その後、度重なる改良を経て、現在のF-18となっている。実績は十分な高性能機であることは否定しない。
軍事音痴の日本のマスコミは、まるで報道していないようだが、実はこの高性能機、いささか問題がある。現在の戦闘機に必要とされるのは、ステルス性能だけではない。
なによりも電子兵装の充実こそが求められる。高性能なレーダーであり、複数の兵器を的確に選び、運用するコンピューターがなければ、絵に描いた餅に終わってしまう。ちなみにF-15の開発が遅れている最大の理由が、この電子兵装であるらしい。
F-18は、F-15とF-22の間に開発されたものだけに、その電子兵装は操作が極めて難しいものとなってしまっている。性能が低いのではなく、操作が難しいため、パイロットが難儀しているらしい。
以前、ディスカバリーチェンネルで戦闘機の特集をしていた際に、専門家が「ヒューマン・フェイス」の問題だと評していた。あまり的確な訳語が見当たらないが、要するに機械と人間とのやり取り(情報交換)が円滑ではないらしい。
実際、F-18を操縦できるパイロットには、かなり高度な訓練が必要であるらしく、コソボ紛争などでもパイロットの人材不足が、かなり問題に上がっていたそうだ。
日本の自衛隊のパイロットの技量は、決して低くないし、学力も高いほうだと思うが、果たしてこの難しい戦闘機を使いこなせるのだろうか。
シュミレーション訓練の機器は、アメリカから輸入せざる得ないと思うが、おそらくは相当な高額であるばかりでなく、維持管理費用も相当にかさむと予測できる。
防衛省は、このF-18を暫定的に運用する意向なようだが、果たしてコスト意識はあるのだろうか。F-22よりは安く済むと思っているとしたら甘いと思う。
ハードよりもソフトに金がかかるのは、民間商品でも兵器でも同じこと。むしろ、金はかかっても日本が開発したF2をバージョンアップさせたほうが、将来的には良いのではないか。
私は国産兵器に関しては、きわめて辛口だが、それでも同じ金をかけるなら・・・と思わざるえません。F-22なら文句はないのですが。
この屈辱的であるだけでなく、危険でもある状況から、少しでも改善するため、ライセンス生産から自国内生産を目指して、少しずつでも国産化率を上げる努力がなされている。
正直言って、無理な国産化は金がかかる。おまけに実戦投入の機会がないため、欠陥を改善する機会もなく、戦場で使えない国産兵器があまたあるのが実情だ。
まだ当面は、アメリカは戦略拠点としての日本列島を手放すことはしないと思われる。しかし、それが永遠でないことも確かだろう。なれば、将来への布石として、そろそろ本格的に主力戦闘機の国内開発に手をつけるべきではないか。
それもアメリカの反発が少ないかたちで、だ。F-16をベースに国内開発されたのが支援戦闘機F2なのだから、この際、現主力攻撃機のF-15を大幅に改造してみた試作を作ってみたらどうか。
たいへん素性の良い機体だけに、エンジンなどをリニューアルするだけでも相当な性能アップが期待できる。エンジンの国産化こそ、国内開発の要だしね。それに、どうせ兵器管制システムはアメリカ製だ。
高性能であっても操作の難しいF-18に投資するぐらいなら、未来を見越した防衛戦略に踏み出すべきだと私は思います。