もうだいぶ前のことだが、ロンドンの大英博物館に行きたくてヒースロー空港行の英国航空の旅客機に乗った時のことだ。
なにが驚いたって、乗客の大半が女性、しかも単身がほとんどであったことだ。たまに数人のグループもいたが、お喋りしているので静かな単身女性の間にあって凄く目立つ。一方、男性はスーツを着込んだビジネスマン風の人ばかりで、私のような寛いだ私服姿は稀であった。
日本女性が海外旅行好きなのは知っていたが、国内旅行を女性一人でする人はあまり多くないことを思うと、海外旅行での女一人旅の多さには驚かざるを得なかった。
みな、旅慣れた感じで、空港に着いてもテキパキと行動し、あっとうまに離散してしまった。うち数人とはロンドン市内のホテルの食堂で再会し、少し話をした。海外のミュージシャンの追っかけであったり、仕事の打ち合わせであったりと事情は様々だが、えらく凛々しく見えた。
逆に私のように単身で観光を楽しんでいる日本人男性は珍しいらしい。彼女たちからあれこれ尋ねられ、大英博物館とターナーの絵が目的と知ると納得してくれた。妙に詮索してこないので、こちらも気軽に話せたが、みんな自分の人生を自らの意志で楽しんでいるように思えて感心してしまった。
私見だが、女性が単身で世界各国を旅行するのは、案外と日本独特ではないかと思っている。夫婦で、あるいは友人とグループを組んでの女性旅行なら、けっこう多いが女性単身は珍しいと思う。
これを水と安全がタダの国、日本という温室育ちゆえの無謀と取る向きもあるが、日本女性の逞しさの顕われとみるほうが分かり易い。もちろん危険もつきものだが、私のみるところ、一人である時よりも集団でいる時のほうが油断しやすいのかトラブルに遭いやすい。
実際、私自身海外を単身で旅行している時は無意識にも警戒するので、深刻なトラブルに巻き込まれた経験はない。おそらく女性は私以上に警戒しながら旅行していると思う。
ところで表題の漫画は、映画「テルマエ・ロマエ」の大ヒットで世に知られるようになった原作者のヤマザキ女史のプライベートを描いた作品である。この人も逞しい。
個人の資質とか、生い立ちもあるのだろうが、私には到底真似できない破天荒な暮らしぶりだ。もっともそれは当人も感じているようで、腹立ちまぎれに漫画のネタにしたと作品中で言っているが、まず間違いなく本音であろう。
ちなみにこれは続編で一作目の「もーれつイタリア家族」も面白い。出来たら一作目から読んだ方がより楽しめますが、こちらからでも大丈夫。
それにしても当人は大変だと思うが、傍で見ている分には面白い。まさに他人の不幸は蜜の味。でも、振り返ってみれば、ヤマザキ女史もけっこう楽しんでいるのだろうな。どんな境遇にあっても、その状況を楽しめる心意気。それこそが大事なのだと思いますね。