ヌマンタの書斎

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婚外子問題に思うこと

2013-07-25 12:14:00 | 社会・政治・一般

どうやら今回は違憲判決が出そうな気配がある。

ここで改めて婚外子問題の根幹にある民法について、憶測も含めながら書いてみたい。本来、民法というものは、その国で長年狽墲黷トきた慣習を元に法律として体系化され明文化されたものであるべきだ。

しかし、近代国家としての形づくりを優先した明治政府は、欧州視察の後にフランスの民法を末オ、それを日本の民法の手本として採用して、新たな近代日本の法律として施行するという、なんとも乱暴なことをした。

もちろんフランスと日本では生活習慣は大きくことなるため、帝国大学の法律学者を中心に少しずつ日本向けにすり合わせるという前代未聞の大事業であった。驚くべきことに、これは100年以上たった今でも続いている。

では、今回の婚外子の問題を改めて原点であるフランスの民法から見直してみたい。明治政府の視察団が日本の民法の規範となるべきだと判じたフランスの民法は、別名ナポレオン法典ともいう。もちろん、あの軍事の天才、コルシカの悪魔ことナボレオン・ポナパルトである。

日本では皇帝ナポレオンとの印象が強いかもしれないが、彼には共和国家の守護者としての顔も持つ。もっといえば、フランス革命の完成者がナポレオンである。その彼が編纂を命じて完成したがゆえにナポレオン法典と呼ばれている。

このナポレオン法典が民主主義と自由と人権を謳った近代法の嚆矢であるのは確かだが、もう一つ別の顔を持つ。それは富国強兵策を実現するための手段としての法律であることだ。

フランス革命以前、軍隊といえば王や貴族の私兵であり、いかに国名を振りかざそうと私兵の集合である事実に変わりはなかった。しかしフランス革命により作られた市民兵は違う。

この市民兵は、自ら国民としての義務を守るために軍に入り敵と戦ったがゆえに権利を取得したとの意識が強い。王のもとに集って戦った勇士ではない。共和制国家という新しい国を守るために集い戦った新しい形の兵士であった。

またナポレオンが編纂を命じた民法には、国民を産業国家育成の尖兵とするための仕組みが編みこまれていた。それが家族制度である。夫婦と子供2人の家族を一単位と考え、そのための住宅まで考案している。余談だが、高度成長期の日本に数多く建てられた2DKの団地というやつがその典型である。

すなわち夫は工場で働き、妻は家を守り、子供たちは義務教育により高度労働力の担い手として育て上げる。産業革命の成果を最大限活かすための手段として、家族を一単位として機能させる。これがフランスの考案した新しい家族の形であり、富国強兵策を実現するためにも家族は重要な要素となった。

だからこそ、この新しい民法は婚外子を冷遇する。国家の基本政策に家族が盛り込まれている以上、それを危うくさせる婚外子と、本来の嫡出子を平等に扱うわけにはいかなかったからだ。

もっとも200年前の話であり、現在では社会の在り方も、家族の在り方さえも変わってきている。当のフランスでは結婚しないカップルと、その子供たちは珍しい存在ではない。いや、結婚していても、婚外子の数は増える一方であり、さすがに現在は婚外子を冷遇するような法律は変えられている。

ところで問題は日本だ。ナポレオン法典に準拠した民法は様々な問題を孕みながらも、日本社会にある程度定着している。江戸時代より家族の構成を政府が把握することをやってきた日本にとって、家族を一単位として考える新しい民法はお似合いであった。

驚くべきことに戦前の旧習たる長子相続こそ無くなったが、婚姻により結ばれた家族を中心に考えるナポレオン法典の精神は見事に生き残った。いや、常識として人々の心に深く刻まれたといっても良いくらいだ。

だからこそ、婚外子の権利を妨げる民法の規定が今も残っている。核家族化が進み、昔ほど家に縛られることがなくなった現在の日本にあっても、やはり家族制度を大切に思う人は多いのだろう。

その一方、個人を単位として考えれば、婚外子の相続権を正規の子供の半分とする現行民法の扱いは、明らかに不平等だとの主張が出るのは分かる。分かるけど、この手の主張をする法曹関係者には、少なからず妙な平等思想が蔓延しており、夫婦別姓論者など従来の民法を否定する向きが強いことも知っている。

婚外子の相続権が制限されていることを不当に思う気持ちはあるが、家族制度の維持のための現行民法に馴染んでいる気持ちも強い。強いて言えば、婚外子を養子縁組させればいいだけのようにも思っている。まァ、これはこれで難しいのも確かだが、親が家庭の他に作ってしまった子供に罪はない。相続権を法律で制限することには、いささかの疑念があるのも確かだ。

そう思いつつも、一つの家庭、一つの家族というものを守りたい気持ちは、家族を持たぬ私でもある。これはこれで自然な気持ちなのだろう。

問題の根幹は、相続を法律でその持ち分までも定めてしまっていることだろう。すなわち配偶者は二分の一、子供はその残りを人数で均等に按分する。この法定相続分こそが、婚外子問題の大きな壁ではないか。

一つの解決案だが、遺言の効力を強めたらどうだろうか。まず亡くなった人の遺志を第一に考え、相続人がそれに不満ならば遺留分の減殺請求とする。法定相続分を無効化しろとまでは云わないが、現在の法定相続分第一の相続は、あまりに杓子定規すぎて弊害も大きいように思います。

コメント (2)
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