ウサギの耳は何故長い?
そう難しいことではない。ウサギは小柄で力も弱く、肉食動物にとって格好の獲物である。それゆえにいち早く危険な情報を聴覚により得るため、ウサギの耳は長く伸びた。
情報が自分の安全を守ることは、ウサギだって知っている。
先月以来、アメリカの元CIA職員スタージ氏が告発した個人情報入手問題だが、日本の場合騒ぎ方がオカシイと思う。まず、安全保障のために盗聴をするのは当たり前であって、どの国でも可能なら、可能な限りやっているだけのこと。
アメリカは日本大使館への盗聴なんざ、太平洋戦争のはるか前からやっている。同盟国であろうと敵対国であろうと、自国の安全のために必要な情報を得んとするのは、当然なのだ。むしろ、やっていない方がおかしい。ウサギに嗤われても仕方ないぐらいの常識だ。
ただし、やるなら秘密裏にやる。それが鉄則だ。別にロシアのプーチンだって今回の告発がなくたって、アメリカの情報機関が個人情報を不正に入手しているくらいは知っている。同様なことをロシアやフランスの情報機関だってやっているはずだしね。
私が滑稽だと思うのは、スパイ活動と称される情報収集をいけないことだとの前提で報じるマスコミの異常さだ。だいたいがマスコミ自体、日ごろからスクープを狙っての違法ギリギリの取材を繰り返しているではないか。
まして国家の安全保障のためならば、情報収集は必要不可欠なのは当然のこと。日本のように平和憲法とか称する欺瞞に束縛されているのなら、尚更情報収集に努めて平和を維持する努力を日ごろから絶やさぬ努力を惜しんではいけない。
スパイ活動といえば、映画007やミッション・インポッシブルなどの派手な場面を思い浮かべることが多いと思うが、実のところあんな派手なことは滅多にしない。むしろ地味で地道な目立たぬ活動が主となる。
たとえば戦争に必要不可欠な石油や食料の流通量などを地道に調べれば、戦争準備をはじめるとその流通量が飛躍的に増えるのは当然だ。そうなると輸送経路に負担がかかるため、鉄道ダイヤの変更や備蓄用倉庫需要の動きなどから察知することも可能だ。この手の情報は、公にされていることが多いので、わざわざ極秘文書を盗んだりする必要はない。
実際、スパイの情報収集は新聞や業界雑誌などおおっぴらに公開された資料を丁寧に分析することで相当な情報を入手できる。実をいえば、日本の商社はこの手の情報分析を得意としている。
私が以前に聞いた話では、情報が制約される共産圏でも、人事情報などは新聞に堂々記載されるので、それを元に組織の人事構成を調べることは可能だとのこと。こうして組織の動きを察知したり、予測したりして誰とつながりをもつべきか、あるいは手をきるべきかの判断材料の一つにしているという。
そういえば、日本でも官庁に納品するような業者は、日経に出る官庁の人事情報は必ずチェックすると言っていた。別に大企業でなくても、こんな形での情報収集は当然やっていることを思えば、国家の安全保障のためなら情報収集は当然の義務だろう。
いくら強大な軍隊をもっていても、闘うべき相手の情報なしでは戦えない。そして適切な情報さえもっていれば、実際に戦わなくても情報を活かすことで有利な交渉は可能となる。
平和を守るためには軍隊だけではダメだ。適切な情報を入手し、その情報を活かして交渉に有利に望む。スパイ活動もその一環に過ぎない。ただ、今回のスタージ氏の告発は、むしろ告発されてしまったこと自体が失敗だ。
その意味で、しっかりと職員の管理をしていなかったアメリカ政府の失態であることは間違いない。日本政府としては表向き抗議の必要はあるだろうが、それよりも自国政府の情報管理体制を見直すほうが大事でしょう。
私としては、日本軍を強大化させるよりも、まずは情報収集機関を強化させるほうを優先すべきだと思います。もっとも、平和幻想にお愛想笑いしている日本政府に、その情報を適切に使えるかは、いささか疑問ではありますがね。