ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE

2015-12-11 12:14:00 | 映画

きっと誰かが見ているよ。

そう語りかけてくる映画だった。原作の漫画は、子供向け漫画ではあるが、実はけっこうキツイ。主人公のチャーリー・ブラウンは、やること、なすこと裏目に出る、可哀そうな少年でもある。

エースでピッチャーを務める野球チームは、勝つことがない弱小チームであり、いいところで必ずチャーリー・ブラウンは打たれ、ルーシーは必ず落球する。

勉強はダメだし、凧揚げの凧が上がった試しがない。片思いの赤毛の子には、その想いは決して届かない。なによりも、チャーリー・ブラウン自身が、自らの人生に対して悲観者である。

それでも彼はピッチャーマウンドに立ち、凧を引っ張り、ラブレターを書いては捨てる。その姿は、どうしても滑稽で笑いを誘われてしまう。

だが、私は確信している。この漫画を読む子供たちの幾人かは、きっとチャーリー・ブラウンに自分の姿を重ねている。アメリカにも、日本にも、どこにでもチャーリー・ブラウンは必ず居る。

思い通りにいかない人生を嘆き、やる気をなくし、投げ出したい気持ちになりながらも、それでも学校へ行く。そして、また悲哀を味わい、やり切れない思いを抱いて家に帰る。

そんなチャーリー・ブラウンには、彼とは正反対の性格のペットの犬がいる。夢想主義者で、お気楽で、いつも前向き。チャーリー・ブラウンにとっては、唯一無二の親友であるが、スヌーピーにとっては丸坊主の男の子に過ぎない。

それでも、スヌーピーはチャーリー・ブラウンの枕もとで眠り、彼に寄り添う。そんなスヌーピーを抱きしめながら、チャーリー・ブラウンは「僕は幸せだ」と自らを慰める。

まるで現実社会そのものである。似たような思いを抱いた子供時代を過ごした人は、決して少なくはないと思う。それは大人になっても遭遇する痛みであり、慰めでもある。

だからこそ、私は子供向けのお話には、大人の世界の厳しい現実をやんわりと伝えることが必要だと思っている。だからこそ、この漫画は長く続いたのだろう。

ところで表題の映画だが、そんな原作の漫画を3Dアニメ化している一方、エンディングでは珍しくハッピーエンドをもってきている。原作者のシュルツ氏は眉をひそめるかもしれないが、私はそれでもいいと思った。

たまには、チャーリー・ブラウンの笑顔で終わるのも良いと思う。それもまた人生の一面だしね。

コメント (2)
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