優しい気持ちにされられるエンディングだった。
ヤングマガジン・アッパーズというマイナーな漫画雑誌に連載が始まったのが、1,998年であったから、約18年目での完結であった。もっとも、アッパーズは廃刊となり、コミック・モーニングに移っての連載であったが、休載されることが多く、完結が危ぶまれたほどである。
父さえ知らぬ娼婦の子である主人公が、森に捨てられたピアノに出会い、やがてそのピアノを捨てた師との出会い。ライバルとの出会いと別れ、不法地帯での差別と困難などを乗り越えて、目指すはショパン・コンクール。
私が長年愛読していた漫画であり、紙面から音楽が流れてきそうな見事な描写は見事としか言いようがありません。日本という国は、不思議なほどクラッシック音楽が普及しており、特にピアノに関しては、世界屈指の大国です。
なにせ、武骨な私でさえ、幼少期にピアノを習わされた覚えがあるほどです。もっとも、当時の私には他にやりたいことがあり過ぎて、とてもとても地味(バイエルね)な練習を続けることは出来なかった。
それでもピアノの音自体はかなり好きで、今でも車にはピアノ・ソロのCDを数枚常置しているくらいです。雑学趣味の私ですが、ピアノはもとよりクラシックそのものの知識は、たいしてありませんが、うん蓄抜きにしてもピアノ曲は好きなのです。
私がこれまでに聴いた最高のピアノ曲は、北アルプスの3000メートル近い稜線上のテントの傍で、手に届きそうなくらい近くに見える満点の星の下で聞いた、ショパンの「ポロネーズ」でした。
スピーカーの性能なんて、訊くだけ野暮な携帯用の小型ラジカセから流れてきた曲でしたが、星空の美しさとあいまって素晴らしい夏の夜の思い出になりました。
今週、最終巻である26巻が発売されたので購入。かなりの長編ですが、是非とも手に取って頂きたい名作です。特に幼少期のクライマックスである4巻から6巻あたりだけでもいいので、未読でしたら読んでみて後悔することはないと思います。