ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

130万円の壁

2015-12-14 12:05:00 | 経済・金融・税制

よくぞ、こんな間抜けな法案を出したものだ。

政府は、来年度、一定の賃上げをした企業に対して助成金を支給して、パート労働力を確保する意向を示しているとマスコミは報じている。

これは、アルバイトやパート従業員が、自分の収入を年間130万円以内に留めて、社会保険の負担を回避する傾向があることが背景になっている。その結果労働力不足となっているため、その改善策として助成金が検討されたようだ。

企業に補助金を出すことで企業の社会保険負担を軽減し、これらのパート従業員に更に働いてもらうことを目指しているらしい。これで実質所得の増加を目指すと報じている。

こんな間抜けな法案を、批判もせずに報道するマスコミって、どうかと思う。たしかに企業は社会保険の半額負担を嫌がっている。そのために正規労働者を減らしているのも事実である。しかし主婦などのパート従業員が、わざわざ年間の稼ぎを130万円以下に抑えるのは、社会保険の負担が嫌だからに他ならない。

企業に補助金を出しても、これら主婦のパート従業員は、勤務時間を増やして、収入を増やそうとはしない。あくまで年間130万円の範囲に留めようとするだろう。なぜなら、社会保険を負担したくないからだ。

私の試算では、主婦が自ら社会保険を負担した場合の負担額は年間で30万円近くになる。この負担に見合う収入は、おおよそだが年間180万円は必要だ。さらに所得税が天引き、翌年からは住民税も天引きとなると、結果手取り収入は130万円に届かない。

ならば、年間130万円の稼ぎに留めて、配偶者の社会保険に加入したままのほうがはるかに楽だ。つまるところ、いくら企業に補助金を出しても、パート労働力は増えない。

実に簡単な理屈である。この程度のことが分からないのが、天下のマスコミ様である。もちろん、法案を提出した役所の側は、補助金という新たな予算を確保できただけで満足である。その補助金が如何に使われ、どのような結果になろうと、それは役人の人事考課には影響しない。

そして、この法案を通せば、国会議員様はパート労働力の雇用確保に実績を挙げたと、来年の国政選挙で高らかに宣伝するであろう。私には十分、実績が挙がるとは思えないが、それを検証するマスコミ様は、多忙を理由にやらない可能性が高い。

おそらく数年後に、紙面のなかほどで、あの助成金はパート労働力の確保には役に立たなかったとの検証記事が出るかもしれないが、もう既に時遅しである。

新聞、TVなどの大手マスコミは、政府の広報紙に過ぎない。私はそう確信しています。

コメント
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