ヌマンタの書斎

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浅田真央の引退

2017-04-13 16:15:00 | スポーツ

10年後を見てみたい。

長きにわたり日本のフィギュアスケートの女子第一人者であった浅田真央が、遂に引退を発表した。記者会見ではなく、自身のブログで発表したあたりが、彼女らしい。

お疲れ様と云いたいが、正直、私は彼女にはいささか不満がある。ジュニア時代の輝きを知っていただけに、身体が成長してからの演技には決して満足できない。でも、一番、そのことを自覚し、かつ、煩悶し、悩み、苦しみ、模索していたのは彼女自身であることは明白であった。

フィギュアスケートは、その華麗な演技とは裏腹に、堅いコンクリートのような氷上で身体を酷使する過酷なスポーツだ。とりわけ近年、必須の技術である回転を伴うジャンプは、店頭はもちろん、普通に着地するだけでも、身体に過大な負担を強いる。

幼い頃の浅田選手は、体重も軽いが故に、その過大な負担を軽々と乗り切れた。しかし、成長して重くなった体で、あのジャンプを繰り返すことは相当な負担であったはずだ。おそらく膝や腰はボロボロではないかと思う。

だから、ジュニアで活躍した選手は、シニアになると演技に磨きをかける。技術の正確さだけでなく、観客を魅了する演技にも重点を置くことで、高い得点を獲得して世界に挑む。

私の想像だが、浅田選手はスケートが大好きなのだと思う。その想いは誰にも負けないほど(かなりの負けず嫌いだと、私は確信している)深く、濃く、彼女を縛り付けた。

純粋にスケートが好きなだけに、他のことには無関心に近かったのではないかと思う。年頃の娘さんだけに、いろいろあるはずだが、浅田選手はスケート以外に夢中になれるものはなかったと思う。

その目標は、ジュニアでの世界大会優勝と同じレベルであるはずだ。皮肉なことに、それが彼女をむしろ制約してしまったと思う。女子選手で誰よりも華麗なジャンプを持ちながら、そのジャンプに頼りすぎて、他が疎かになり、結果的に全体の得点が伸びない。

その事が、自身分かっていながら、あくまで自分のスケートに拘り、それが裏目に出たのが彼女の競技人生であった。迷いもしたし、模索し、新たな挑戦も厭わなかった。だが、どこかが足りなかった。

ライバルであったキム・ヨナはジュニア時代、常に浅田選手の後塵を拝した。その悔しさから、徹底して得点を取るスケートに切り替えたキム・ヨナの覚悟は、他から嫌われようと、意に介せぬ覚悟があった。

おそらく一つ、一つの技術なら浅田選手のほうが上であろう。また、当時の女子フィギュア選手としては最高のジャンプ技術を持ち、かつ、その上を狙う向上心を持っていたのも浅田選手であった。

しかし、敢えて全体の完成度を高めるため、得点を高くとるスケートに徹したキム選手の覚悟には及ばなかった。また、キム選手には野心があったように思う。それはスケートだけでなく、その後の人生設計をも求めたもののように思う。

その点、浅田選手はフィギュアスケート一筋であった。それ以外の活動(CMや芸能活動)は最低限にし、ひたすらスケートを高めることに傾倒した。その一途さは尊敬に値するが、同時に彼女のスケートにおける演技を狭めたと思う。

だからこそ、私は彼女の十年後を見たいと思う。一人の社会人として、また女性として様々な経験を積み、成熟した魅力を見せるスケートを見せて欲しい。多分、今の浅田選手には出せなかった魅力が出ると、私は信じています。

コメント (5)
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