前提が間違っているように思えて仕方ない。
ミサイル発射やら、核実験やらできな臭い朝鮮半島の独裁国家である北朝鮮は、平和を求めている訳ではない。しかし、戦争をやりたがっている訳でもない。
では、何を求めているのか。ここが分からないと、北朝鮮情勢は分からなくなる。
実のところ、北朝鮮には国家総力戦を行う体力がない。兵器も足りないし、食料も不足している。弾薬や火薬のみならず燃料も不足している。半世紀前の朝鮮戦争は、最初はロシアの支援があり、次にシナの支援があったからこそ戦えた。
しかし、北朝鮮単独で戦争をするだけの力はない。それは半世紀後の今日でも変わりはない。では、世界との平和を求めているのか。いや、求めていない。むしろ、戦争の危機を必要としている国である。
言うまでもないが、北朝鮮はマルクス主義国家でもなければ、社会主義国家でもない。金一族により支配された金王朝が、その実態である。この国では、如何に国民が金正恩を熱烈に支持しているように振る舞おうと、それは表向きの姿に過ぎない。安全に生きていくために必要なポーズに過ぎない。
国民の大半は、日々の暮らしに追われ、貧困に喘ぐだけだ。国家に対する忠誠心などある訳なく、ただ身の安全の為のポーズとしての熱烈な忠誠心をアピールしているだけ。
そのことは、誰よりも金正恩自身が分かっている。だからこそ、世界から孤立している必要がある。世界は敵であり、金王朝だけが頼りになる社会である必要がある。なにより大事なのは、特権階級として金一族とその取り巻きたる支配階級の豊かな生活が維持されることだ。
もし、和平路線に舵を切れば、自国の惨めな状況を国民が知ってしまう。それは断固避けなければならない。だからこそ、世界と対立する状況が必要なのだ。
国としては貧しいが、おそらく一割に満たない特権階級は、それなりに豊かな生活を享受してきている。残りの9割の国民が貧困に喘ごうが、それは古来より変わらぬ半島の伝統的な姿に過ぎない。国民みんなを豊かにする必要など、まったく感じていない。
貧しい者が多数ならば、少数の特権階級の生活は安泰である。相対的に豊かさを感じるのは、国を閉鎖しているからこそだ。もし、世界に国を開いてしまったら、世界の豊かな国々と比較されて、劣等感から惨めな想いをするだけだ。
だからこそ、世界と対立している方がいい。そのための弾道ミサイルであり、核実験である。
初代の金日成には多少は野心があったようだが、二代目の正日、三代目の正恩には、半島統一の野心すらなく、あるのはひたすらに自分たち特権階級の暮らしを守ることだけだ。
そのためには世界から無視されない程度の武器が必要であり、世界から注目される軍事的危機が必要となる。素人政治家のトランプが勘違いしてミサイルを打つ可能性はあるが、朝鮮半島が戦禍に包まれる可能性は低いと思います。