B級は確かだが、この完成度ならば十二分に満足できる。
この映画は、巨大蟻に襲われる人間といったSFパニックもので、ホラーではない。また予算もあまりかけていないことがバレバレの安い造りである。当然に出演者もメジャーな俳優は誰一人いない。
またシナリオだって、長年のSFファンの私を満足させるようなものではない。調べたらコンピューター・ゲームが原作となる映画化らしい。そりゃシナリオに期待するのは無理がある。
しかし私は、観終わった後に満足した。もちろん細かい点では不満もあるが、それを口にする気はなかった。なにが気に入ったのかといえば、意外なことに主人公たちの成長する姿だった。
頭はいいがオタク青年のブライアンと、容姿も運動能力もあるが頭が残念なルーカスの二人の関係が良い。どちらも自分の欠点を強く認識している一方で、相手の長所を尊敬し合っている。そこにブライアンが片思いしているリサという美女が上手く絡んでいる。
ネタばれはやりたくないので、これ以上は明かさないけど、苦境を機に助け合い、本音を晒しての必死の行動は清々しい。特にヒロインのリサが敵ボスである巨大女王蟻に向かって「女王様は私だけで十分よ」と言いながら武器を撃ちまくる姿がいい。
いや、彼女決して高飛車高慢なのではなく、照れ隠しだと思うほどに、この娘イイ子。
本来、B級映画の面白さは怪物やら化け物やらがスクリーンの主役を如何に張るかがメインだと思う。余計な人間ドラマは、むしろ邪魔なことが多い。ところが本作はモンスターの暴れっぷりよりも、3人の若者たちのドラマこそが面白い。
言い換えれば巨大蟻のモンスターぶりが物足りない。だから何時もならば、ダメ出しする映画なのだが、本作に関しては、モンスターの力不足に不満を抱かせない作りであることに感心した。
あまりヒットしなかった作品ですけど、機会がありましたら是非どうぞ。