幸せを測る尺度はない。
一人一人、誰もが幸せを願っているが、その内容は人それぞれだ。客観的で公平な尺度で幸せを測ることは無理だと思う。
私は仕事が好きだし、仕事に集中している時は、ある種の酩酊感すら感じる。だが全ての仕事が好きな訳もなく、内心嫌々やっている仕事だってある。でも、仕事がない人生はちょっと考えにくい。
しかし私の本性はナマケグマである。忙しい最中に、サボる悦楽を知っている。足早に歩き、的確かつ合理的に行動して物事を片付けることを目指している。でも、なんの制約もなく、だらしなく寝転んで本を読むのも大好きだ。
自営業故に自分のやりやすいように仕事が出来るが、申告期限と顧客満足は絶対の指標であることは自覚している。アップダウンの激しい生き方だと思うが、あまり不満はない。
だからこそ自由度の高い今の生き方が出来る現状を受け入れている。喜んで受け入れている。その自由度を許しているのは、日本が立憲民主主義国家であり、市場経済であり、法治が行き届いた国家であるからだ。日本に生まれ、日本で育ち、日本で生きていけることは幸せだと思っている。
この幸せを乱す戦争とか天災などを恐れ、憎み、警戒している。なにせ日本には日本を否定することが幸せだと信じ込んでいる輩が横行しているからだ。それ故に選挙は決して馬鹿にしていない。
私が馬鹿にしている政治屋が数多いることを口惜しく思っているが、それもまた民意の反映である以上、受け入れざるを得ない。自由とは時として不自由なものだ。異なる意見が存在することを許容することもまた、民主主義の義務であるから。
私は民主主義を決して馬鹿にしてはいないが、さりとて最上の政治制度だとは思っていない。民主主義がそれなりに機能するためには、本来の主権者たる有権者が適切な判断をする必要がある。その判断のベースとなる情報を提供するマスメディアが、適切な情報を提供しなければ、選挙制度は決して上手くいかない。
そして困ったことに、我が日本に於いては、このマスメディアこそが適切とは言いかねる情報提供をしているのが実情なのだ。政治がおかしくなるのも必然である。国内報道だけならまだしも、国外報道でもやらかしているから頭が痛い。
そんな一例が「幸せの国ブータン」であった。2011年ブータンの国王夫妻の来日は日本政府大歓迎である。アジアでも有数の小国なんですけどね。
そして当時、何故だか知らねど、やたらとブータンをマスコミが持ち上げていた。私は大政翼賛会かと思ったほどに、右から左まで一致して賛美するのである。気持ち悪いったらありゃしない。
行ったこともなく、ブータン人に知人もいない私だが、幸せという概念が多様であり人それぞれ違うのが当然だと考えているので、この「幸せの国ブータン」というフレーズには違和感を感じざるを得なかった。
かつて朝日や岩波が「労働者の天国、北コリア」と賛美したことがあったが、ブータンの時は朝日から読売、産経までもが絶賛しているのである。つまりイデオロギー関連ではない。しかし、なんらかの意図は感じる。
非常に気になって、こつこつと調べている。いったい、誰が主導してのブータン礼賛なのかは、未だに分からずにいる。でも、ある程度裏事情が分かってきた。古代から中世はいざ知らず、近代に入ってからのブータンはイギリスの植民地であった。
第二次大戦後、イギリスが植民地を放り出した時、インドの強い影響下に置かれたのがブータンだ。しかし北には貪欲なシナが待ち構えていた。たいした資源のない国ではあるが、冬虫夏草という珍しい漢方の材料が採れる。またインド洋への野心を持つシナには、インド政府に圧力をかける絶好のポジションにあるのがブータンである。
ブータンは軍隊が世界最小と云われている国なのだが、実際の防衛はインドの軍隊が駐留して代替している。中華思想で凝り固まったシナに唯一対抗できるのが、プライドだけはイギリス以上と云われるインドである。そのインド兵を国内に抱えるブータンが幸せの国だと?
自分の国の防衛を外国の軍隊に任せている場合、その外国の軍人たちは横柄になる。横須賀でも佐世保でも那覇でもその実例はいくらでもあることは、日本のマスコミ様は重々ご存じのはずだ。よくぞまァ「幸せの国」なんてフレーズをつかえたもんだ。
ブータンを旅する外国人には必ずブータン観光局のガイドが付く。まさに北コリア並の情報統制をしているのが幸せの国ブータンである。この手の国は、概して外国人には見せたくない何かがある。
では、そんな怪しい国ブータンを何故に日本政府は歓迎したのか。ここに疑問を感じないジャーナリストがいるとしたら、相当にボンクラだと思う。
もっとも疑問を感じつつ、未だ真相が分からずにいる私もたいがいだと思う。正直、日本政府の外交は対米追随が基本で、後は事なかれ主義が横行している国際的恥辱ものの低レベル外交官ばかりだ。
私は常々日本の外務省を有害省だと唾棄している。しかし、何故だか日本の外交にあまり関わりのない小国相手だと、わりと良心的な外交をしている事実があることも認めている。
実はブータンとは戦前から日本と縁があった。それは細く目立たぬものであったが、小国ブータンにとっては貴重な蜘蛛の糸的なものであったらしい。ブータンの国際連合加盟に際し、日本は提案国として助力している。
ブータンの国王夫妻がわざわざ日本を歴訪の地に選んだのも、その歴史的経緯から理解は出来る。そしてその歓迎ムードを日本のマスコミが一致して支持し、協力していたのが真相かもしれない。もちろん憶測に過ぎないので、他になんらかの理由があるのかもしれない。
そんな訳で私は未だこのインドの北にある小国に関心を持ち続けています。