ヌマンタの書斎

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クイックシンク

2023-04-27 09:45:53 | 社会・政治・一般
前から書いているが、日本のマスコミは軍事音痴である。

本当に重要な情報には気が付かずにいることが多々ある。その一つにJDAMがある。一言で云えば、命中率を飛躍的に向上させた爆弾である。

太平洋戦争の時、アメリカ軍の巨大な爆撃機B29から投下された爆弾によって国土を焦土化された日本である。空中から投下された爆弾の恐ろしさを痛感しているはずなのだが、いつのまにやら忘れていたようだ。

実のところ爆弾の命中率はかなり低い。爆撃機に搭載された光学式の計測器を使っても、その命中率は1%に満たなかった。その後、レーダー水準器やコンピューターによる性能向上が図られたが、それでも1990年代においてさえ4%程度であったとされる。

ミサイルの方が命中率は高いのだが、破壊力は劣るし、なにより高額だ。爆弾を沢山投下したほうが安上がりだとの認識は、そう間違ってはいなかった。だが、それで満足しないのが戦争大好きなアメリカ様である。

JADMとはJoint Direct Attack Munitionの略でジェイダム、統合直接攻撃弾とも云う。無誘導爆弾に精密誘導能力を付加する装置のシリーズ名である。2000年前後にアメリカ合衆国で開発・実用化され、米軍を主体に数ヶ国の軍隊が保有している。

一発2000ドルの爆弾に、このJADM(4万ドル程度)を付けることで命中率が格段に上がる。それも既存の爆弾に装着できるため、極めて利用価値が高い。これもまた軍事費削減に大きく貢献している。

ちなみにヴェトナム戦争の頃から使われているスマート爆弾(誘導型爆弾)はレーザーや無線で目的物を正確に狙って攻撃するのだが、いかんせん高額な兵器でもある。だからこそ低額なJADMは歓迎された。

2000年代以降、主に地上の敵施設の攻撃に利用されてきたのだが、新たに敵艦船向けのJDAMが開発された。それがクイックシンクである。

戦艦にせよ空母にせよ、爆弾で攻撃して命中させるのは難しい。数千発の爆弾を落としても命中するのは、ほんの数発である。だからミサイルか魚雷での攻撃が使われた。

しかしイージス艦の登場により艦船の対空防御力は向上し、ミサイルでは迎撃されてしまう可能性が高まった。だからこそロシアやシナは超音速対艦ミサイルを開発してアメリカを威嚇した。これは日本のマスコミも大々的に報じているのでご存じだと思う。

だが肝心のアメリカ軍は超音速ミサイルについては、あまり熱心ではない。理由は明示されてないが、考えられるのは超音速ミサイルの命中精度の問題であり、また高額な製造価額だと思われる。

なにせアメリカ軍は、既存の爆弾にJDAMを装着させて敵艦を一発で撃沈させる技術を開発成功したからだ。軍艦というものは、案外と上空からの攻撃に対しては強い。フォークランド戦争でエクゾセ・ミサイルで沈没した頃とは違い、対空兵器が充実している。だからこそ、ロシアは超音速対艦ミサイルを開発した。

しかしアメリカはクイックシンクという新しい戦術を開発している。軍艦に限らず艦船は真下からの衝撃には弱い。艦体構造を支える竜骨部分を攻撃されると一発で船は沈む。

アメリカは船に直接命中させるのではなく、艦船の真下へ爆弾を誘導して爆発させることで攻撃を成功させた。しかも真新しい兵器ではなく、既存の爆弾にJDAMを装着して、安上がりの高性能兵器に変身させているのだ。

ただし対艦ミサイル同様に、敵艦船の防御兵器により破壊される可能性もあるため、対艦ミサイルなどと併用して敵を混乱させるなどの方策を練っているらしい。命中させるのが難しい超音速対艦ミサイルよりは遥かに安上がりであり、かつ効果が期待できる。

まったくもってアメリカ軍は油断できないと思いますよ。
コメント
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