悲しいことに歴史の授業を嫌う学生は多い。
歴史好きの私だが、正直無理はないと思っている。だって年号と歴史上の史実だけを丸暗記するだけの勉強が面白い訳がないと痛感していたからだ。私が歴史を好んだのは、歴史小説を先に読み、歴史を面白いと思っていたからで、歴史の授業は大学予備校で武井先生や山村先生の講義を受けるまではつまらないと思っていた。
日本の学校の歴史の授業がつまらない最大の理由はマルクス主義である。共産党宣言で名高いマルクスは、自分の主張を裏付けるために歴史を科学で化粧した。すなわち事実と年号だけで歴史を組み立てた。マルクス主義には同意できない歴史学者も、この科学的な歴史には惹かれてしまった。これを唯物史観という。
しかし、この科学的偽装こそが歴史をつまらなくさせた最大の原因である。
いい国作ろう(1192年)鎌倉幕府では歴史は分からない。なぜ源頼朝は幕府を開いたのか。なぜ京都でも奈良でもなく、関東の海沿いを本拠地にしたのか。天皇家と貴族たちで構成された政府となにが違うのか。
唯物史観で書かれた歴史教科書では肝心なことがさっぱり分からない。歴史の上澄みだけで本質からは遠ざかるばかりである。これでは歴史が分かる訳がないし、学んで楽しい訳がない。
歴史とは人の営みの連続により造られる生々しいものであり、喜怒哀楽といった非論理的な要因が大きく影響している。それだけでなく地形や気候変動も歴史に大きな影響を与えている。年号と事象の組み合わせで歴史が分かる訳がない。
こんなこと、歴史の教壇に立つ先生たちには常識だった。しかし日本では歴史教科書の書き換えは遅々として進まなかった。なぜなら日教組の抵抗があったからだ。若い人は知らないかもしれないが、日教組は日本共産党の強い影響下にある。日本におけるマルクス主義の総本山が、そうそう唯物史観からの脱却を許すはずがない。。
そのため既に唯物史観から脱却している欧米の歴史学に大きく水をあけられてしまった。近年刊行されている欧米の歴史書「銃・鉄・病原体」ジャレド・ダイヤモンド著などがその典型だ。そして日本でも唯物史観から離れた歴史書が出版されるようになってきた。
表題の書はその一例だ。なるべく分かりやすく書かれたせいか、いささか物足りないが歴史をつまらないと考える人が多い日本の現状を思えば、けっこう入門書として良いと思いますよ。
追記 近いうちに文部科学省における歴史教科書の大々的な方針変更について書き記したいと考えています。