ヌマンタの書斎

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義務のたらいまわし

2022-12-06 14:44:58 | 社会・政治・一般

日本では戦国時代末期の刀狩以来、庶民が武器を持つことを禁じることが当たり前になっている。

これは国内の治安維持には役立っていることは理解できる。銃規制が緩い国、たとえばアメリカなどをみれば、日本の治安の良さは美点だとさえ思う。

日本では武器を持って良いのは警察と自衛隊と称する軍隊だけである。競技用の散弾銃や、狩猟用のライフルなどが例外的に認められているだけ。一般の国民に武器の所持を禁じる以上、国家が国民の安全を守るのは当然のことだ。

しかし、この当然は守られていない。

現在、北海道で話題の巨大ヒグマ、OSO18である。この5年あまり牧場の牛を襲い続けているが、恐ろしく警戒心が強く、未だ罠にもかからず、猟友会の追跡も逃げ躱している。

このOSO18はこれまでに例がないほど狡猾で、罠を見破り、深夜に素早く牧場の牛を襲って、すぐに立ち去ってしまう。猟友会のベテランの猟師たちも困惑するほどに狡賢い。だから苦労するのも分る。

分るけど、おそらく現在の猟師たちは昭和の頃に比して技量が落ちている。何故かと云うと、昭和の頃はヒグマを毎年春先に駆除していたのが、動物保護の観点から止めてしまっていたことが大きい。

まだ樹木が葉を付ける前、冬眠明けで動きの鈍いヒグマは狩り易い。しかし、この慣例の狩猟を止めたことで、猟師たちの技量が落ちた。加えて猟師の高齢化による引退がある。

困ったことに警察による猟銃保持は制限が厳しくなる一方であり、若い猟師が育ちにくい環境となっていることも大きい。日本は未だ「刀狩り」の伝統が活きており、警察は規制することが正義だと信じ込んでいる。

ならば、クマの駆除は警察がやるべきだと思う。銃器の規制をしている以上、猟師たちに代わって警察がクマの駆除をするのは当然の義務だ。

でも、警察には出来ない。まず警官が携行する拳銃程度では、クマを殺せない。クマのような大型獣を殺傷するには、それなりに威力の高い小銃(ライフル銃)が必要となる。警察は小銃を持ってないし、訓練もしていない。

では自衛隊はどうかというと、実は自衛隊の持つ小銃は対人用であり、やはりクマなどの大型獣には不向きだ。ちなみに自衛隊の入り口に小銃をもって警護している隊員の姿をみたことがあると思うが、それには実包は装填されていない。警察同様、あるいはそれ以上に銃器の管理は厳密である。

現状、やはり民間人から構成される猟友会の猟師たちにクマの駆除を依頼するしかない。それなのに、銃器規制は厳しくなる一方である。どうも日本政府は、国民を守る義務をお座なりに済ませているとしか言いようがない。

多分、クマにより政府の要人などが食い殺されるのどの事件が起きない限り、この義務の放棄は続くと思いますよ。自分自身に危険が及ぶ恐れがない限り、危機感のないデスクワーカーたちは動かないでしょう。

平和ボケは軍事だけではないようですね。


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