つくづく日本は恵まれている。
この夏、世界ではウクライナ戦争以上の脅威だと怖れられているのが、世界規模で起きている干ばつである。世界に食料を輸出しているアメリカでは、記録的な干ばつと灌漑用水の不足で、農業生産に多大な影響が出ている。
干ばつはアメリカだけでなく欧州でも起きており、農業国であるフランスやスペインなどでは水不足から、大幅な減産が予想されている。アフリカでは干ばつに加えて、昨年からの蝗害による農業被害が深刻であり、既に食料危機となっている。
また世界中に大豆を供給してきた南米でも、干ばつは常態化しており、大豆の価格は1922年以来の高値を続けている。大豆の9割以上を輸入に頼る日本にも相当な影響が生じている。
このように世界中で起きている干ばつの影響は、日本にいると実感しずらい。一つの理由は、高温多湿で世界屈指の降雨量を誇る日本では、干ばつ自体が局所的で、生活のなかで実感しづらいことがある。
もう一つの理由は、世界に冠たる巨大商社の存在がある。それも世界中に支店を持つ総合商社という珍しい存在でもある。世界各国へ日本の商品を売りさばく一方で、食料品や原材料などを買い漁って輸入するだけではない。
今や日本の総合商社は、日本を介さない第三国間の貿易にも数多く関与している。かつて経済評論家の故・長谷川慶太郎は日本の総合商社の情報力を、CIA、KGBに匹敵すると賞賛していた。
日本国内の警察、公安、防衛庁あるいは自衛隊の世界に対する情報力は情けないほど微弱なものだが、長谷川慶太郎は商社の人材を活用すれば、たちまち優秀な情報組織が作れるはずだと断言していた。
その優秀な商社の力をもってしても、この世界的な干ばつには抗しきれず、昨年くらいから徐々に食料品を中心に値上げが相次いている。特に今年の秋以降は、この数十年なかったほどの値上げラッシュである。
既にアメリカではこの値上げの結果、インフレが発生してその抑制のため金利上昇が繰り返されている。日本は基本的にアメリカの後を追う傾向が強く、現在の商品の値上がり状況を鑑みると、デフレからインフレへの移行が確実視される。
問題は日銀が何時、インフレ対策を取るかである。現時点では日銀はインフレを公認しておらず、必然利上げの気配もない。日銀の鈍感ぶりは有名だが、おそらく内々ではインフレを認識しているはずだ。
しかし決断が出来ない。金利の上昇は市場に大きな影響を与える。なにしろ物価が上昇気味なのに、賃金は停滞しており、庶民の暮らしは切迫するのみ。おまけにこの十数年、拡大一方であったリートと呼ばれる不動産投資信託に金利上昇は大きな影響を与えます。それも悪い方向に。
賃金が上がらない状況下で、その上不動産市況が低迷してしまう金利上昇政策へと、日銀が舵を切れるのか。正直、私はかなり疑問です。
黒田バズーカと呼ばれた現・黒田日銀総裁ですが、彼の権威は自民党が背後で支えていたからこそのもの。基本的には、黒田氏もやはり役人に過ぎず、大胆な方針変換を決断できる実力はありません。
今、日本は世界的な干ばつの結果である食料品の値上げにぶつかっています。この30年以上なかった生活必需品の大量値上げは、日本政府に大きな決断を迫ると思われます。
私としては、日持ちのする食料品を小まめに買いためるしか対策の取りようがない現状に、いささか辟易としています。
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