ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ペレ

2023-01-17 11:50:40 | スポーツ

未だにカタールでのワールドカップにおける日本代表の話題が尽きることはない。

それは日本だけに留まらないのだから、サッカーというスポーツの影響力の大きさが如何に凄いかが分る。しかしサッカーは最初から世界的な人気をもっていた訳ではない。むしろ欧州の帝国主義の国々と、その植民地を中心に行われていた特殊なスポーツであった。

それを変えたのがブラジルのペレだ。アフリカからブラジルに連れてこられた祖先をもつペレは、見た目そのままの黒人選手である。しかもスポーツ選手としては、決して大柄ではない。しかし、その身体能力は素晴らしく爆発的な跳躍力を活かしたヘディングを得意とした。また卓越したボールコントロールの持ち主で、敵DFに囲まれながら、ボールをポンポンと浮かせて動き回り、一瞬の閃きでゴールを決める。

機会があれば、ユーチューブにアップされている1960年代のペレのプレーを視て欲しい。白黒映像ではあるが、唖然とするほどの凄まじい技量に目を奪われると思う。

まさに異次元のサッカーであり、当時としては一人だけ別次元でプレーをしていた。そのペレがアフリカ各地をサントスFCと共に試合をして回った。アフリカの人々はペレのサッカーに熱狂した。その熱狂ぶりは、戦争を停戦させてしまうほどの熱気を伴っていた。貧しく未来に希望を持てない黒人の子供たちにサッカー選手という夢を与えた男、それがペレであった。

ペレなくして、今日の世界的なサッカー人気はあり得ない。その意味で最も偉大なサッカー選手である。

更にもう一つペレには功績がある。それがイエローカード、レッドカードに代表されるラフプレーに対する罰則である。実は当初、サッカーにはラフプレーに対する罰則がなかった。そのため卓越したストライカーであるペレは常に相手チームから暴力的な行為を受ける立場にあった。そのためペレは若くして引退を何度かしている。ペレをサッカーの世界に引き戻す為設けられたのがラフプレーに対する罰則である。

かくも偉大な功績を遺したペレが昨年亡くなった。世界中が嘆いたとされるが、実は必ずしもそうではないことにお気づきであろうか。実はペレに否定的もしくは嫌悪しているサッカー関係者も少なくない。

ペレはサッカー界を代表する政治的な顔を持つ。そのために必然的に偽善的であったり、傲慢であったりしたことが確かにあった。それはペレがあまりに知名度が高いため、良くも悪くも利用され続けてきたことへの必然的な結果であった。

簡単には評価できないが、ペレは悪意ある人ではなかったと思うが、悪用されがちな人ではあったと思う。あまりに突出した選手であったがゆえに、その長いとはいえないキャリアは、随分と歪められた気もする。

ただ、これだけは確かだ。ペレがいたからこそ、今日の世界的なサッカー人気はあるのだと。

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文明の海洋史観 川勝平太

2023-01-16 12:25:28 | 

私の歴史好きは中学生の頃からだ。

高校への進学予定がなかった私なので、勉強そのものに興味がなかった。しかし、読書好きであったからか歴史は好きな授業だった。歴史の教科書だけは、授業の進度とは関係なく、勝手に読み進めていた。

好きな分野だからこそ気が付かなかった。歴史って分野は、凄まじいほどに政治的であることに。

最初のきっかけは、代々木ゼミの武井先生の世界史の講義であった。世界史とは、遅れて近代化したドイツにおいて提唱された学問で、その目的はヨーロッパによるアフリカ、アジアの侵略に歴史的な正当性を与えることであった。

白状すると、その時は驚きはしたが、その意味するところを理解するだけの知性が私にはなかった。歴史という学問が、実は政治的な志向性の強いものであることに自身で気が付いたのは、難病の療養中であった。

毎日、大量の薬を飲むために食事を摂り、後は寝ているだけの生活に飽き飽きしていた私の数少ない楽しみが、週に一度の図書館通いであった。世界史、日本史、軍事史、経済史、動物や植物、爬虫類、鳥などの博物ものと、とにかく知識欲を満たす為の読書に没頭した。

20代半ばを過ぎてようやく私はマルクスの唯物史観から足を抜けつつあった。同時にシナの中華正統史の歪みにも気が付き始めていた。学校教育から離れてようやく、私は自分の頭で物事を考える勉強の楽しみを覚えるようになった。

ただWV部での登山に明け暮れた大学時代に、専門的な勉学の仕方を知らずに過ごした為、系統だった知識の整合には苦労した。おかげで気が付かなかったことが多々あったことに還暦過ぎて気が付く有り様である。

育ちの問題もあった。私は東京の原住民であり続けたため、関西のアカデミズムに無縁であった。だから京都奈良の地勢を実感できないので、古代日本史に関して知識が薄っぺらい。また東大を頂点としてアカデミズムに慣れ過ぎて、京都の西田幾太郎、今西錦司、梅棹忠夫にも疎かった。

だからこそ川勝氏の提唱する海洋史観とも無縁であった。正直考えたこともなかった。本当は表題の書を読んでもらうのが一番だが、前提となる大陸史観について一言書き添えたい。

従来の世界史、すなわち欧州で生まれた世界史では、世界史を新大陸の発見及びインドとの交易をもって新世界の始まりとする。しかし海洋史観に立てば、アジアとイスラムは、それ以前より東南アジアを介して新世界を構築していたこと。

ユーラシア大陸に囚われると、イスラムとシナとの海洋交易が見逃されてしまい、却って歪んだ世界史となってしまうこと。ユーラシア大陸の両端にあるイギリスと日本という島国が、何故に近代史のなかで重要な役割を果たしているのかは、海洋史観に立たないと分からない。

私は川勝氏が提唱している海洋史観を全面的に支持してはいませんが、既成の枠組みを外して、新たな歴史観、世界観を呈示してくれたものとして学ぶに値すると考えています。

少し脱線しますが、歴史家として十分な見識を持ちながら、静岡県知事という政治の場に立つと、何故にこの人おかしくなるのでしょうかね・・・どうも晩節を汚しているとしか思えないのですけど。

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驚きの高校サッカー選手権

2023-01-13 11:41:52 | スポーツ

久々に驚かされたのが、今年の高校サッカーであった。

正直期待していなかった。昨年の青森山田高校の圧倒的なパフォーマンスからして、高校サッカーにも相当な格差が生じているのではないかと推測していたからだ。

実際、大会が始まると神村学園や佐野日大、国学院久我山などが既にプロ入りどころか、海外チームへの加入が決まっている有望選手を揃えたチームが順調に勝ち進んでいった。個人の技量差が年々強く感じる。

ところが国学院久我山がPKで敗退した。相手は岡山学芸館高校?はて、あまり聞いたことのない学校だ。ダイジェストの試合を視ると、良く走りチーム一丸となって守り切り、PK戦に持ち込んでの勝利。まァ弱小チームの王道的勝ち方である。

別に馬鹿にしてはいない。むしろ徹底的にチームで守るやり方を押し通す意志統一の図れた良いチームだと思った。特段優れた選手は見当らなかったが、チーム戦術が徹底していたと感じた。

ただ、いずれは破綻する戦術だとも思えた。何故なら攻め手に強さが感じられなかったからだ。だから優勝候補の一角である神村学園を破ったと知った時は驚いた。なにせ卒業後はブンデスリーガの古豪ボルチアに入団する福田選手の攻めを封じ切ってのPK勝ちである。

チームにはJリーグのジュニアユースの選手いない。年代別日本代表選手もいない。Jリーグに加入が決まっている選手もいない無名の選手ばかり。そんなチームではあるが、とにかく良く走る。小柄な選手ばかりだが、出足が良く、しかも動き続ける選手ばかり。

これは相当に地味だがきついトレーニングを積み重ねているはずだ。この年代の選手は、褒めるだけでもダメ、叱るだけでもダメ、指摘して、考えさせて、納得させて鍛えないと成果が出ないはず。無名のチームだけにコーチ陣も私はまったく知らぬ人ばかり。

だが決勝で東山を3-1で破っての優勝。見事というか素晴らしい。昨年の優勝校である青森山田のような圧倒的強者感はなかったが、高校生らしい全力プレーの清々しさが心地よい。

気になって調べてみたら現在の高校サッカーでは、地域ごとにリーグ戦を開催して真剣勝負の場を増やしているそうだ。相手は近隣の高校チーム以外にも、Jリーグの下部チームが参加しているケースもある。こうして経験値を増やして強化しているようなのだ。

その成果が出ているからこそ、選手だけではなく、監督やコーチまで含めて日本の高校サッカーの進歩を感じさせる、そんな選手権でした。この試合をみて、今は無名でもいつかは日本代表へと胸を高鳴らした若手がきっといるはず。

十代の頃は無名であった中沢や長友、中村憲剛、三笘といった日本代表の看板を背負える有望な若手がきっと出てくる。そんな嬉しい予感を感じたのが今年の高校サッカー選手権でした。

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誰だ、投票したのは

2023-01-12 14:09:00 | 社会・政治・一般

民主主義には良い点もあれば、悪い点もある。

選挙により自分たちの意見を代弁してくれる議員候補に投票でき、そのなかで多数票を獲得したものが政治家となる。この仕組み自体は悪くない。

しかし投票する有権者が愚かな場合、単なる人気投票というイベント化してしまうことがある。その結果、選ばれたのが元アナウンサーだとか芸能人だとか知名度だけはあるボンクラが混在している。

私はすべてのタレント議員が駄目だとは云わない。まァ9割方ダメだとは思っているが、有権者が選んだ以上、それは甘受すべき苦痛だと我慢している。

昨年ごろからだが、例のNHK党の議員として参議院選挙に当選したのがガーシーとかいうタレントだった。白状すると、まったく見知らぬタレントだった。お笑いなのか歌手なのか、さっぱり分からなかった。ただガーシー砲とかいって、雑誌やネットに芸能人の醜聞を吐きだしているらしきことは分かった。

多分、ネタ切れしたマスコミが濫用する口の悪いタレントなのかしらんと勝手に思い込んでいた。元々芸能界自体に関心がないので、どうでもいい情報だと切り捨てていた。

昨年末は、手術での入院やらコロナでの自宅待機などで家でゴロゴロしていることが多かった。なので日頃ほとんど切り捨てている報道に目を向けると、しばしばこのガーシー議員とやらの情報を散見した。

どうやら芸能人を客に据えて店舗を拡げ、最後は失敗した飲食店経営者らしい。その過程で耳にした芸能人の醜聞をネタに騒いでいる御仁で、現在はカタールのドバイ在住とのこと。

つまり参議院選挙当選後も海外に居て、芸能人の醜聞を声だかに騒いでいるだけの人らしい。

誰だ、こいつに投票した馬鹿は?

政治家や高級官僚、はたまた外面だけはご立派な経済人の醜聞を叫ぶならば、まだ価値はある。ところが誰なのかよく知らない程度の芸能人の醜聞を騒ぎ立てる程度なので、日本の国政にはまったく寄与しない。

もしかして、このガーシーが日本の政治を変えてくれると期待した馬鹿が30万人ちかく居たのか。だから当選したのか。日本人の知的水準の低さを示す生きたサンプルだとしても、あまりに無意味な実例だと思う。

まァ衆愚といってよい人たちがこのくらいは実在することを立証したという点だけは評価しても良いでしょう。でも国税でこいつを養っていると思うと、本気で腹が立ちますね。

民主主義には確かに悪い点がある。まァ投票した一部の衆愚が悪いのですけどね。

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呪術廻戦 芥見下々

2023-01-11 10:39:59 | 

もしかしたら少年誌での連載ではないほうが良かったかもしれない。

そう思ったのが表題の作品だ。日本どころか世界中で人気を博した「鬼滅の刃」の後を牽引することを期待された週刊少年ジャンプ誌の看板漫画なのだが、思ったよりも人気が延びずにいる。

年末年始、じっくりと原作を読んでみたのだが、面白いかと問われればまァ面白いと思う。ただ明るさが足りない。主人公の設定は良いと思う。なにか出生に秘密がありそうだが、それはおいおい楽しませてもらう。

ただ、この作品の要は「呪い」であることが致命的だ。しかも呪いを祓うことにあまり重点が置かれていないため、ストーリー全体に重ぐるしさが漂うのは避けられないと思う。

呪いをテーマに置いてしまうと、そこからハッピーエンドを導き出すのは難しい。呪いとは反ハッピーエンドを目指すものであり、そのベクトルを反転させるのは難しいというか、主題を損ねてしまう。

これが憎しみとか怒りならば、愛と寛容に導くことは王道となるが、呪いの先行きは暗く重い。せめて子供向けではない雑誌連載であるならば、今少し明るいエンディングを期待できたと思う。

実際問題、この作品アニメ化されてそこそこ人気はあると思うが、子供たちの間での人気は「鬼滅」に遠く及ばない。

少し脱線するが、この作品のもう一人の主人公かもしれない両面宿儺を呪いの王だと設定したことも拙かった気がする。資料の少ない古代日本史に登場する名だが、おそらくは大和朝廷に逆らう地方の豪族もしくは異民族であった可能性が高い。

古代日本史には土蜘蛛とか怪しい名称の存在がしばしば記述されているが、これは日本列島各地に暮らしていた非・大和朝廷系の民に対する呼称であり、シナが日本を倭と呼んだのと同様の蔑称に過ぎない。

北から南まで細く長く、しかも山脈に分断される日本列島には現在でさえ方言や独特の文化が散見される。大和朝廷による征服が終わってもなお、地方には独特の文化構造が残っており、今も不完全ながらその独自性が見受けられる。

私は妖怪や魔物の類いとしての両面宿儺はまったく知らない。異星人としての宿儺ならば読んで記憶がある程度だ。呪いの王ではなく、大和朝廷から排斥された少数部族としての両面宿儺ならば、もう少しハッピーエンドを期待できたと思ってしまう。

ただ見方を変えれば、今後のストーリー展開によっては従来のダークファンタジーにはない新しいエンディングも期待できる。作者と編集部の健闘を願いたいものである。

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