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最初の1、2年目は千代田湖経由で来ることが多かった。現在使っている芝平を通る山道は、「車がこわれる」と言われれるほどの悪路だったからだ。
千代田湖を登り切ると道は二手に分かれるが、近年作られた道路ゆえこの峠には名がない。しかし、舗装路を左に少し下ると「枯木峠」という名の、かつては芝平の住人が大切にした、いまでは忘れられた古道がある。
この名のない峠の少し手前の林で、来る日も来る日も切り捨てられた灌木を、ノコギリや鉈を使って山掃除している老人がいた。ここを通過する朝の8時を少しまわったころには、その老人はすでに幾つかの薪の束を作って、道路脇に停めた軽トラックの傍に積んであった。
偶々声をかける機会ができて「毎日まいにちよくやりますね」と言うと、老人もこっちのことは気付いていたようで「みんなはもう知らんかもしらんが、これで風呂を沸かすといい湯になるだよ」と言って笑った。まるで、入浴のために、この老人の一日があるかのようだった。
しかし、今なら分かる。わずかな入浴時間に味わう喜びとそのためにする労働が、実はこの老人にとっては等価であったことを。その日の労働を終えて、薪で沸かした風呂の中のご満悦な老人の幸福が分かる、目に浮かぶ。
そのご見かけたことはないが、老人は今でも健在で、今日あたりは家の近くの畑でジャガイモ畑の草取りでもしていればよいのだが。いや、きっとそうしているだろう、働き者のお爺さんだったから。
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