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昨日は朝早くから花見に出掛けた。桜前線は北上しているようで、一昨日だったか、ここより北の松本も開花宣言が出たと記憶にあった。行く先は名のある花見場所ではなく、車で天竜川に沿って国道を南へと下っていくことに決めた。そうすれば、走るにつれて沿道の花が少しづつ開花の勢いを強めるはずで、どこまで行けば花の盛りに出会えるだろうかという期待感もまた、背中を押してくれた。
ところが驚いたことに走り出してすぐ、ここら辺りでもすでに、桜の花は咲き始めていた。たった3日前、入笠から帰りに確かにその兆しを目にしたが、それにしてもわずかの間にさらに一段と明度を増した風光は、より明るく華やいでいた。桜の花ばかりかコブシの純白、そして柳の新緑、特に天竜川と三峰川の合流点では萌え出したばかりの淡い緑や、対岸の長い土手にも生え始めた草の薄緑が目に爽やかだった。
南下するにつれ期待した花ばかりでなく、残雪の映える中央アルプスの峰々が挑発するように迫ってきた。空木、仙崖嶺、南駒、越百、アイゼンの履き方も知らないK氏とこの山嶺を越えていった昔のことを思い出した。しかし、もう一方の南アルプスは生憎、深い霞の中に隠れてしまっていた。
2年ぶりだったが、見覚えのある風景や桜を追っていたら、いつの間にか松川まで来た。もうそれ以上、南下する必要はなかった。いたるところ春は爛漫、桜は満開の花を咲かせていていた。後はそこの温泉で一風呂浴びれば、花見は完結する。
帰路は千人塚、与田切、駒ケ根の各キャンプ場を回り、よそ様の設備や管理、料金などを調べた。一番行きたかった宮田高原は、まだ通行止めのため断念したが、どこも営業はこれからのようで閑散としていた。各キャンプ場や付属設備はよく管理されていたが、それだけにどうしても人工的な公園の中にいるようで、ありのままのは自然はやはり入笠牧場だろうと、正直安堵した。何としても、建物などの工作物が自然と融合するには長い時間がかかる。そのことを幾つかの場所で、今回も感じた。
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長い一日の終わりが近付いていた。夕暮れの風がそう感じさせるのか、温くなった大気のせいか、あるいはどこからか匂う花の香か、ともかく春の宵はそこでも妖しく、艶(なま)めかしかった。小さな湖を囲むも赤松の林の向こうにその正体があるように思えたが、それ以上奥に進もうとしない者に、明かしてくれるわけではなかった。