
いつもながら牧の朝は早い。今朝はまだ6時前だというのに小屋へ出入りする撮影関係者の声が響き、ひとしきり慌ただしい朝となった。しかし今は、ほとんどが現場に行ったらしく、いつもの入笠牧場らしい静かな朝に戻った。
下にいても起きる時間は変わらないが、風呂に入ったり何かしているとすぐ出発の時間が来る。ところがここにいると朝が長く、今朝は久しぶりに眩い朝の日を浴びながら、塩を欲する牛の声に急かされて重い腰を上げようとしている。普段なら、ここへ着くのは8時過ぎ、この時間から仕事を始めるとなると1日は長い。

素晴らしい秋日和となった。第1牧区の入り口にはノコンギクの花が咲き、牧草の遥か彼方の真っ青な空には御嶽山が望まれた。牧区の中に入ると塩鉢のある小高い丘に続く緩やかな登りは昨夜の雨で鮮やかさを増した緑の草原と、深い、大きな空だけしかない。写真にはなりそうもないが、この単純な構図が気に入っている。
進むに従い視界が広がり、中アから北アルプスの峰々が正面から右手にかけて空と、大地のちょうど中間に正しく超ド級のパノラマとなって広がり、それをほしいままにできる。
車の音を聞き付けたらしく、遠くの方から牛の声がした。それに応えて警笛を鳴らし、大きな声で呼んでみたら、しばらくして下の方から和牛5頭と、ジャージー牛のチビの姿が現れた。和牛を大人と見れば、チビは子供もこども、いくら塩が欲しくても我慢して、大人の後に恐るおそる頂戴するしかない。それを不憫に思い、軽トラの荷台の煽りを下げ、荷台に塩を置いてやったら最初は警戒していたが、やがて厚意は通じた。

一昨日、昨日と二日続けて「キノコの森」へ行った。以前は「畑」と呼ぶほどたくさん採れたが、最近はそれほどでもない。まだ時期的には早いから、様子を伺うだけにしておいたが、例年並み、といったところだろう。
それよりあの森には小さな沢があって、その流れが実にいい音を立てている。時折霧も流れ、森はなかなかの演出家でもある。山桜の葉は黄色が目立つようになった。
営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。