きょうもまた牛の話になるが、さんざん考えた挙句、怪牛マッキー奴を囲い罠の中に閉じ込めることにした。そうできれば他の牛は、草の豊富な共用林野である国有林の第5牧区へ移すことができる。種牛さえいなければ、他の牛のことはどうにでもなる。
今や牛たちは草不足で、早晩瘦せだすのは間違いない。そうなれば、里へ降りた牛を見て畜主は呆れるばかりか怒るだろう。牧場の評判がまた落ちる。そういうことがこの仕事を始めた最初の年に実際にあり、その後、悪評が瞬く間に広まった。いわく「入笠牧場に牛を上げると瘦せて帰ってくる」と。
しかしながら、種牛を囲い罠の中に入れることは簡単なことではない。かなりの危険も伴う。以前から呟いているように、マッキー奴はハーレムの王様気取りで、雌牛以外の侵入を極端なほど嫌う。ちゃんとした調教をせずにそれを赦してしまったことが一番の問題だが、それを今言ってみても始まらない。
案の定、奴は巨体をもって威嚇してきた。自分の方が強いと勝手に思っている。しかし、こちらにはかなり個人差はあるとはいえ、人間には牛よりかは考える力があると信じたい。クマスプレーも持っている。クク。
そして今、奴は鹿さえも逃げることができない囲い罠の中にいる。どうやってそうできたかを呟いてみようとしたが、話がややこしくなるだけで恐らくは伝わらない。諦めた。その他の牛の殆どは、これまた予定通り第5牧区に移すことができた。時々妙な咆哮を聞かせてくれるが、草をふんだんに食べているはずだ。
下牧日は26日、長くても今月一杯、残り約10日と少々である。いや、これでどれほど気持が楽になり肩の荷が下りたことか。これでもう草のことも、牛の体型、体重も気にしないで済む。上出来だ。もう脱柵など気にしない。したかったら、どこへでも探しにいってやるから好きにしろ、と大きな声で叫んでやりたいほどだ。
折角作った弁当を忘れたが、そんなことはもう、どうでもいい。
今週末の3連休、どうも好天を期待できそうにないようですが、今見えているような秋霖に煙る森も味わいがあります。今年はあれだけ雨が降ったのに、驚くほどキノコは不作です。
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