入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「冬ごもり」 (44)

2020年01月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今朝は薄氷が張っていた。天気は曇りだが、午前8時の室内の気温は3度、最近では珍しく、夜中に何度か目が覚めた。

 以前にも呟いたことがある人のことだが、黒部で出会った素朴なあの人Kさんは「山があるから生きていく張り合いがある」と断言して、笑った。短い夏休みを無駄にしたくないからその足で次は妙高へ行くと言いながらも、魚津の駅まで同行し、見送ってくれた。50歳を過ぎていたのではなかっただろうか、ただそれでも足は速かった。黒四ダムへ行くつもりが通行止めになり、阿曽原から引き返す際、水平歩道を先に行くその人に追い付くまでにかなり時間がかかり、それで声をかけた。
 あの人ほど、何のてらいも、気取りも、見栄も感じさせずに、当たり前のように山への思いを語った人を他に知らない。奥さんと娘さんがいて、東京近郊の製造会社で働いていると言っていたが、その時被っていた古ぼけた帽子やシャツには、その人が働いている会社のものなのだろう、社章らしきが目に付いた。
 別れて、直江津に向かう北陸本線の車窓から、茫洋とした日本海を眺めながらKさんのことを思い出すと気持が和んだ。あのころは好きな時に、それも結構長く、自由に山に行ける境遇だったが、それに比べあの人はそうではなかった。それでも、それが少しも不満そうではなく、得体の知れない男の気ままな山旅を羨むわけでもなかった。
 きっとKさんなら、休暇をギリギリまで山で過ごしたら張り切って山を下り、もの寂しさの代わりに、満足感を胸一杯にして堂々と家族の許へ帰っていくだろうと思った。

 入笠牧場でこれほど長く働くとは思ってもみなかった。今年で14年目にもなる。早かった。仕事を終えて、夏ならまだ明るいが、晩秋になれば長い夜道を帰ることになる。そういう時、清々しい気持ちで月や星を眺めながら、その夜の独酌を楽しみに家路を急ぐことも少なくない。HAL以外に待っていてくれる家族はいないが、胸を張り、堂々と、満足感まで覚えながら道中を走る。笠原の堤まで来ると伊那の平和そうな夜景が眼下に広がり、そこでも快い疲労に一息入れたくなる。
 もしかしたら今頃になってようやく、Kさんの域に近づけたのかも知れない。

 かんとさん、NASA spacescapes て知ってますか? 何だか分からないけれどこの頃になって、美しい天体映像が下のPCのデスクトップ上に見られるようになりました。1月24日からの天体観測、天気が良いといいですが、どうでせうかね。

今年度の「冬季営業」の詳細については、下線部をクリックしてご覧ください。
 
 
 
 
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