4日ぶりだか5日ぶりだかで里に下ったら、たったそれだけの間にもう稲刈りの終わった田が大分目に付き驚いた。昨日の朝の気温は今季最も低かったと里の人も言っていたがそれはここも同じで、これから季節はさらに進み、深まり、自然界は人を様々な思いに誘うに違いない。喜びもあれば、哀しさや侘しさもあるだろうし、出会いもあれば別れもあるだろう。
虫の声がする。多分今年初めて耳にする懐かしい秋の声である。
下から持ってきた配合飼料に塩を混ぜて、囲いの中に行ってみた。4頭の牛は上部にいて姿はが見えなかったが、声を出し、人が近付いていくことは教えておいたつもりだ。互いの顔と顔が見えた段階で、やはり4頭は一列になって走り出した。
驚かしたり、恐怖心を与えてはまずいから追わず、再びそこから100㍍ばかり離れた塩場まで下りてきて、手にした飼料を塩鉢に残して少し様子を見ることにした。
4頭はまとまって行動しているようでいて、実際はそうではない。あの牛たちの中では最も警戒心を持たない牛が32番で、しかしこの牛は性格の悪い他の3頭に連れ回されているだけに見える。この中では角の曲がった30番が一番いけないワルだ。
牛の見せる自己中心的な態度と、この地球に存在する多くの独裁国家の主たちとは、よく似ていると思う。進化の遅れたせいだろうか。
しばらくしてその場を離れた。何かを持ってきたことは牛にも分かったはずで、それが好物の餌だと知れば相手の態度も変わると、これが今までに成功したやり方、算段だが、これは時間もかかるし根気も必要になる。そういう資質を持たない、同じく進化の遅れた者とっては、短気を起こさずに果たして思惑通りにいくのかどうか。
今また餌場に行ってみたら、呆れたことに2羽のカラスが配合飼料に入っているトリキビを啄んでいた。牛たちは少し離れた所にいるが近くに水場もあるから、そこまで行けばいくら何でも餌鉢の中の物が分かるだろう。
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本日はこの辺で。