11月12日撮影
曇天、今にも白いものがちらつきそうな天気だ。もしそうなれば、雪の到来はちょっと記憶にないくらいの早い年となる。これはあくまで生気のない冬枯れの外を眺めた印象で、まさかとは思うが、さてどうだろうか。
人から入笠の初雪を問われると、大体11月の中旬だと応えている。そんな古い記憶に対して、近年はさらに遅い気がする。
子供のころのように雪を待っているわけではないし、むしろ遅いことを願っているくらいだが、幾日も好天が続いたせいかきょうの一転した侘しい色彩の沈んだ外の様子、その雰囲気には少々気圧され気味になっている。
秋と冬の変わり目を今年は、きょうの11月12日としよう。灰色の空を鳥が一羽、忙し気に飛んでいく。美しくも静穏な秋、感謝。
車の音が聞こえた。予約していた人が来たようだ。きょう考えていたことは客を待ちつつ露天風呂の煙突を外し、その後は浴槽の掃除と、一冬を越すために必要な養生をするつもりでいた。
「ついに、また来た」、二人のうち一足遅れて着いた彼はしみじみそう言って、周囲の風景を感慨深めに懐かしそうに眺めた。そしておもむろに「今夜は風呂をお願いします」と言った。
一瞬、返す言葉を失って、多分苦笑いを浮かべただろう。一昨日の単独者も同じことを求めたが、やはりこの陽気や気温であれば、風呂の温もりが欲しくなるのは温泉行をして帰ってきたばかりだから余計に分かる。しかしこの時は、凍結がいつ始まってもおかしくない状況、それに入浴できるまでには2時間以上かかることを話し、断念してもらった。
一方、彼らは毎年来てくれるお馴染みさん、そこら辺のことは充分承知の上だ。しかもキャンプ大好き人間たちで、年間何十日もあの地、この地のキャンプ場を訪ね歩き、まさにさすらい人とでも言いたくなるような面々。わがキャンプ場もお気に入りの一つに入れてもらっていて、当然、風呂にも入れると決めて来ている。そんなことをあれやこれや思うと、ついに断り切れなくなってしまった。
霙の舞うような天気、最初は露天風呂から「最高!」の叫びが上がった。しかしこちらの頼み事で少し入浴が遅れたもう一人は、その間にも湯温が上昇したらしく、気の毒に熱過ぎて悲鳴を上げた。
そして今は静寂、物音ひとつしない。(11月12日記)
ゲー、雪が降った、初雪。
本日はこの辺で