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山室川第2堰堤
「極度にいい天気だ。お前、昨日の呟きは『最後の役割』とかなんと、分からんことを言っていたな」
「あっ、先輩さま、それでござる。現在のような古い取水方法は、これから先のことを考えれば早晩、もっと新しいやり方にしなければならないと、それは間違いござらぬ。しかしそうなれば、先人の残してくれた尊い努力を知る者は、某(それがし)が最期の人間になるかも知れないと思い、あんなことを呟いたのでござる」
「なるほどな。いろいろな設備が古く、給水管というのはゴム製らしいな」
「いかにもでござる。劣化したからといって総取り換えをするなどということは、最早とても望めませぬ」
「ならばどうするのだ」
「某などには分かりませぬ。補修は続けますが、最終的には行政も含め、後に続く人たちに任せる他ないでござろうと」
「心細いことを言うではないか」
「いやいや、自分なりにやるべきことはやったし、これからもやりますが、某もここまで来るといろいろと・・・」
「年下のお前にそれを言われるのか」
「先輩さまは『不死身』だと常々仰っているではござらぬか」
などなどと、他愛もない会話があって、きょうと明日は上にいかず、里の用事が続く。牧場の仕事も、契約上は残すところ5日しかない。このごろは好天が続いてくれたお蔭で存分に秋を味わいながら仕事ができたし、その後夕暮れや星空を眺めながら帰る日が多かった。今年は林道沿いのコナシの枝打ちや、実生から生えた落葉松の処理などはやらないから、牧を閉じるまでにやり残したことはもうあまりない。せいぜい、冬に向かう穏やかな周囲の自然を思いっきり目の奥にまで留めておきたいと思っている。
「誰にも気兼ねなく」と言っていた旅には、今年も行けそうもない。
冬の営業に関する問い合わせが来るようになりました。近々に営業案内を用意するつもりでいます。
そろそろ快適な小屋の方をお勧めします。
営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。