■今回の上州騒動の現場である群馬県5区でも、統一地方選挙が滞りなく終わり、5月連休に突入せんとする直前の4月27日に、東京地検特捜部の動きを報じたマスコミですが、その翌日に小渕優子代議士の元秘書の「国家老」と会計担当責任者の2名を在宅起訴処分の報道がありました。多くの人は「何でもかんでも、最後は秘書のせいにして終わりだ」と思った事でしょう。
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↑4月29日付東京新聞社会面記事。取材記者らに笑みを見せる「姫」の表情が印象的だ。↑
この突然の報道経緯を見ると、マスコミはいずれも「関係者によると」あるいは「関係者への取材によると」というふうに、情報源を曖昧に示していました。この「関係者」というのが、「東京地検特捜部」なのか「与党系の代議士」なのか、地元の「自民党県連所属の人物」を指しているのか、まったく分かりません。いずれにおいても、政府与党あたりから小出しにされるマスコミ向けの情報提供がうかがえます。
この中で、最初に小渕優子の政治資金問題についてスクープしたのは、2014年10月16日発売の週刊新潮でした。しかし、その当時、すでに一部の新聞社もこの情報を察知していたようです。次のブログ参照↓
小渕氏政治資金疑惑:週刊誌の特報を明記した新聞、しなかった新聞
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20141023-00040182/
■このように、「姫」の政治資金のインチキ収支報告事件をすっぱ抜いた週刊新潮ですが、昨日発売のGW特大号では、事件の結末を予想する記事を、わずか1ページで報じました。この記事の内容も、新聞社よりわずかに先行した感があります。さっそく見てみましょう。
**********週刊新潮2015年5月7・14日ゴールデンウィーク特大号(4月28日発行)
「小渕優子」政治資金で裏金造りを解明した「地検特捜部」の情けない結末
――――――――――
山には新緑が映え、足元には花々が色とりどりに咲きほこる。GWは人々の心華やぐ季節だが、今、この人の胸中はどのような色人染められているのか。小渕優子代議士(41)。昨秋に発覚した「デタラメ政治資金」問題は決着がつかないままだが、特捜部は裏金のしくみを解明していた。
――――――――――
未だに国会では、事実上の活動自粛状態である小渕議員。一方で自らの地盤固めには精力的で、この統一地方選でも、地元・群馬5区の候補者の元を広く応援に回っていたという。
後援会幹部の話。
「県議の候補者の出陣式にはだいたい出向いていました。ただ、挨拶では“ご迷惑をおかけして申し訳ありません”という、総選挙の時と同じセリフを繰り返すだけで、政治資金については、相変わらず、細かい説明は何もないままでした」
昨年10月、経産相を辞任する際、小渕氏は「説明責任を果たす」とカメラの前で声を詰まらせて誓った。あの涙は、記者の追及から逃げるための武器だったのか、と疑いたくもなるけれど、では、肝心の検察の動きはどうなのか。
「捜査は既にほぼ終わっています」
と言うのは、社会部記者である。
「あとは、いつ処分が行われるかだけの問題で、各社は当局への夜回りを増やしたり、群馬へ記者を出し、後援会関係者の取材を進めたりと、Xデーに向け“臨戦態勢”に入っています。GW前後にいつ、“大番頭”で、政治資金収支報告書の実際の作成者だった、折田謙一郎・中之条町前町長の刑事処分が下されてもおかしくはありません」
★裏山の手入れ
しかし、そうした報道陣の盛り上がりの一方で、実際の処分は腰砕けになりそうだ。地検の関係者によれば、
「小渕議員はお咎めなし。折田氏も略式起訴での罰金刑か、在宅起訴に留まりそうです」
最大の焦点である明治座での観劇会の収支の食い違いは合計で5000万円以上。巨額の金が闇に消えたのにその程度の処分で済むとは到底、納得できないが、
「この“裏金”がわいろに遣われていたり、誰かが私腹を肥やしたりしていれば、さらに重い罰に発展する可能性もあった。しかし、その形跡はなく、実際には、支援者の飲食費や、子飼いの地方議員へのモチ代といった、領収書の取れない出費に使われたと見られています。これだけでも十分悪質ですが、実はこうした“使い道”はこれまで何人もの政治家が当たり前のようにしてきたこと。公平性の観点から見て、小渕議員のケースだけ厳しい処分を下すというのは難しい、という結論なのです。
小渕氏サイドが検察の強制捜査の前に、パソコンにドリルで穴を開けて、“証拠隠滅”を図ったのは、周知の通り。それだけの工作をして一人の逮捕者もなしでは、「秋霜烈日」などという言葉もお題目に過ぎないのだ。
実際、こうした動きも知ってか、当の折田氏は。
「毎日家にいて、裏山の花の手入れに忙しい。“もう少ししたら、地域の仕事にも戻りますから”と周囲には語っています」(知人)
と余裕の言動。天下の特捜部も舐められたものである。
**********
■記事を読むと、週刊新潮の記者らの口惜しさが行間からにじみ出てくるようです。でも、この記事の内容が、まさか発売当日の4月28日に実行されるとは、同誌の編集長も、最終編集会議の時点では予想できなかったことでしょう。
今回の一連の出来事からハッキリしてきたことは、政治とカネの問題をチェックするための制度である公選法と政治資金規正法が全くザル法であり、それを取り締まる機関である検察組織がきちんと機能しないという実態です。
■もう一つ不可思議なのは、当会の「姫」と「国家老」に対する複数件の告発が、いずれも「預かり」という形のままで、東京地検特捜部から、「受理」という連絡がこないまま、「姫」は不起訴、「国家老」が在宅起訴という形での処分とされてしまっていることです。
一方、マスコミ報道によれば、「小渕氏をめぐっては群馬県の市民団体が昨年10月、同法違反罪などで小渕氏らを東京地検に刑事告発。特捜部が折田氏の自宅などを家宅捜索して調べていた」(2015年4月28日15:58産経。下記URL参照)などとして、「告発」を受けた形で捜査を行った、と受け取れる形で報じています。↓
http://www.sankei.com/affairs/news/150428/afr1504280022-n1.html
しかし、東京地検特捜部からは、未だに告発状に関する「正式受理」の通知は全くありません。今回、「姫」と「国家老」に対する処分が確定し、この事件に関して終結宣言が出たらしいことから、近日中に何らかの説明が当会にあるかもしれません。
■前述の通り、週刊新潮最新号では、東京地検関係者からの情報として「小渕議員はお咎めなし。折田氏も略式起訴での罰金刑か、在宅起訴に留まりそうです」と報じられています。
まさに「姫」はお咎めなしの不起訴処分となりました。一方、「国家老」は、在宅起訴ということになりました。
不起訴処分というのは、検察官が「今回の事件を起訴しない」と決める処分のことです。不起訴処分になれば、刑事裁判が行われることも、有罪判決が下されることもありません。したがって、仮に罪を認め、逮捕や勾留されたとしても、不起訴になれば前科は付きません。冒頭の新聞記事写真に示されているとおり、小渕優子・代議士が不起訴処分となり、4月28日午後の国会で、報道陣に質問された際に、「姫」が思わず笑みをこぼしたのも、前科の付く心配がなくなったからだと思われます。
また、報道によれば、「姫」の不起訴処分理由は、「嫌疑不十分」とされています。本来、このことは、告発者に対して最初に通知されるはずです。しかし、当会は特捜部から処分結果についてさえ、何も連絡がありません。これは、当会の告発が、未だに受理された形になっていないことを物語っています。
「嫌疑不十分」というのは、「不起訴処分」の3つの理由である「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」のうちのひとつです。捜査の結果、裁判において有罪の証明をするのが困難と考えられる場合や、証拠が十分に集められないといった場合です。今回、当会が告発したことで、折田元秘書や小渕後援会は、自民党群馬県連を介して、慌てて警察や検察に顔の利く群馬県内で著名な弁護士事務所に駆けつけました。実際に当会も、高崎市内にある当該弁護士事務所の駐車場に多数の県連関係者の車が駐車したという目撃情報を得ていました。
こうして、「姫」について、検察に嫌疑不十分と判断してもらうために、おそらく県連は総力を挙げて当該弁護士と相談の上、捜査機関側が持っている証拠の量や内容を調査し、捜査機関側と交渉したに違いありません。その甲斐あって、首尾よく結果が引き出せたことになります。
■一方、「国家老」については「在宅起訴」処分となりました。これも、週刊新潮が「略式起訴での罰金刑か、在宅起訴に留まりそうです」と、最新号で報じた通りとなりました。
在宅起訴は、被疑者が捜査段階で身柄を拘束されていなかった場合に、その状態のまま起訴されることを意味します。また、事件が起訴されると、「被疑者」は「被告人」という立場に変わります。
在宅起訴の場合、起訴の種類としては、「略式起訴」と「公判請求」との二通りが想定されます。た、
「略式起訴」は、後半を開かずに書面での審理だけで、100万円以下の罰金か、または科料を求める形での起訴のことです。略式起訴の場合、罰金を科する命令が送達され、罰金を納付すれば終結するので、当然、起訴後も身柄拘束はされません。他方、「公判請求」は、公判を開き、証拠調べをして判決を出すことを求めるかたちでの起訴のことです。このどちらかになるのか、4月29日現在の報道ではハッキリしません。
週刊新潮の取材に答えた東京地検関係者によれば、「国家老」の場合は、略式起訴となる可能性についても示唆しています。おそらく、近日中に、どっちになるのか、方向が見えてくることでしょう。
■検察官によって事件が起訴されると、「被疑者」は「被告人」という立場になります。「国家老」は、在宅起訴であっても、これから「被告人」として記事に報じられるわけで、既にこの記事の末尾に掲げた東京新聞の4月29日付記事では、さっそく「折田被告」と表現しています。
しかし、公判請求の場合であっても、起訴前に身柄を拘束されていなかった以上、起訴後も身柄拘束はされないのが通常です。週刊新潮の最新記事にあるように、当の折田被告が、毎日家にいて、裏山の花の手入れに余念がなく、「もう少ししたら、地域の仕事に戻りますから」と余裕しゃくしゃくの風情なのも、頷けます。
昨年10月20日の当会の告発直後に、自らマスコミの取材に答えて、「責任は全て自分にある」と公言し、見事にその描いたシナリオどおりに自ら身代わりとなって、「姫」を窮地から救った「国家老」としては、さぞ満足のゆく結果に終わったことでしょう。
■それにしても、我が国で事件を起訴することができるのは、原則的に検察官だけです。今回は、政治家が関与した事件のため、警察ではなく、東京地検特捜部という、起訴独占権限を持つ組織が自ら捜査をしたわけで、それだけ政治関係者へのプレッシャーとしても、また政治とカネの問題で政治不信に陥りかけている国民へのメッセージとしても、非常に重要な事件でした。
しかし、最終的には、当会が懸念していたとおり、「大山鳴動して鼠がたった二匹」という結果に終わったのでした。
いずれにしましても、もしも、このまま当会の告発状に対して、東京地検から未通知の状態が続くようであれば、市民オンブズマン群馬としては、地検特捜部に対して公開質問状のような形で、事実関係を確認する必要があると考えています。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報
【4月28日夜からのマスコミ報道の様子(一例)】
**********NHK NEWSweb 4月28日 18時48分
小渕氏元秘書2人在宅起訴 本人は不起訴
小渕前経済産業大臣の政治資金を巡る事件で、東京地検特捜部はいずれも小渕氏の元秘書で群馬県中之条町の折田謙一郎前町長ら2人が、収支報告書にうその記載をしたなどとして、政治資金規正法違反の罪で在宅起訴しました。うその記載の総額は3億円を超えるとしています。
一方、小渕氏本人については嫌疑不十分で不起訴にしました。
在宅起訴されたのは、小渕氏の元秘書で群馬県中之条町の前町長、折田謙一郎被告(66)と小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」の会計責任者を務めていた元政策秘書の加邉守喜被告(62)の2人です。
東京地検特捜部の調べによりますと、折田前町長は加邉元秘書と共謀するなどして、小渕氏の資金管理団体が実際には小渕優子後援会などに寄付をしていないのに、平成21年から25年にかけて収支報告書に5600万円を寄付したとするうその記載をしたとして、政治資金規正法違反の罪に問われています。
また、折田前町長は小渕優子後援会などが開催した「観劇会」などを巡り、後援会など3つの政治団体で収入や支出を少なく記載するなどして2億6000万円余りのうその記載をしたとしています。
虚偽記載の総額は3億2000万円余りに上るとしています。
関係者によりますと、折田前町長は調べに対し「収支報告書に記載していない簿外の支出によって、報告書の記載と実際の資金の残高にずれが出たことを隠すため事実と違う記載をした」などと供述したということです。
一方、小渕氏本人については嫌疑不十分で不起訴にしました。
★小渕氏「一からやり直す覚悟」
自民党の小渕・前経済産業大臣は「事務所関係者2人が在宅起訴されたことを重く受け止めており、政治的、道義的責任を痛感している。去年12月の衆議院選挙では、もう一度、地元・群馬のために働けとの結果をいただいており、この温情に応えるべく、一からやり直す覚悟だ」というコメントを出しました。
また、小渕氏はコメントの中で「捜査に支障を来してはいけないとの考えから、これまでは、事件の詳細などについて事務所関係者に尋ねることは控えてきた。今後は、捜査や裁判の結果なども踏まえ、専門家の方々の意見を聞きながら、二度と今回のような事態が生じないよう、努めてまいりたい」としています。
★繰り返されてきた簿外支出
関係者によりますと小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」では収支報告書に記載されていない簿外の支出が以前から繰り返されていたということです。このため資金の残高が減り、収支報告書の記載を大きく下回る状態が続いていたということです。
関係者によりますと記載とのずれを解消するため、折田前町長ら元秘書2人は「未来産業研究会」から「小渕優子後援会」や小渕氏が代表を務める「自由民主党群馬県第五選挙区支部」に寄付をしたように見せかけて支出を増やしたとみられています。
特捜部によりますと収支報告書の記載では平成21年から平成25年にかけて寄付の額は合わせて5600万円に上りましたが、すべて架空だったとしています。
一方、特捜部によりますと「小渕優子後援会」など3つの政治団体では毎年開催していた後援会の観劇会について、収支報告書の収入や支出を実際より少なく記載するなどしていたということです。
「未来産業研究会」からの架空の寄付による収入と合わせると虚偽の記載は2億6000万円余りに上るとしています。特捜部は折田前町長が観劇会の収支の記載を操作し、帳尻を合わせようとしていたとみています。
★事件の経緯と折田前町長
小渕前経済産業大臣の政治資金を巡る問題は、去年10月に明らかになりました。
問題となったのは「小渕優子後援会」が主催した観劇会の収支です。
小渕氏の説明などによりますと観劇会は毎年、東京の劇場で開催され1回あたりおよそ1000人の支援者が参加し、1人あたり1万2000円の会費を集めていました。
ところが、収支報告書に記載された収支が大きく食い違っていました。中には収入支出とも全く記載されていない年もありました。
また、群馬県内の小渕氏の選挙区に住む男性に小渕氏の事務所からワインが贈られていたことなども明らかになりました。
一連の問題を受け小渕氏は大臣就任から1か月半で辞任しました。
小渕氏は会見で「信頼するスタッフのもとでお金の管理をしていただいていました。私自身が分からないことが多すぎます。何でこうなっているのかという疑念を持っています」と述べていました。
問題の収支報告書を作成したと名乗り出たのが小渕氏の元秘書で群馬県中之条町の折田謙一郎前町長でした。
折田前町長は取材に対し「私が収支報告書の総責任者なので、疑惑に問われている問題の説明責任を果たしたい。辞表を提出したことで町民の期待に背くことになってしまったことをおわびするとともにしっかりと調査を進めたい」と話していました。
特捜部は大臣辞任の10日後、折田前町長の自宅や小渕氏の後援会事務所など10か所以上の関係先を一斉に捜索しました。折田前町長ら小渕氏の元秘書や後援会の関係者、それに小渕氏本人からも任意で事情を聞いていました。
*********東京新聞2015年4月29日全国版一面
小渕氏元秘書2人 在宅起訴
東京地検 規制方位は、小渕氏は不起訴
小渕優子元経済産業相(41)の関連政治団体をめぐる政治資金規正法違反事件で東京地検特捜部は二八日、政治資金収支報告書に虚偽の記入をしたとして、いずれも小渕氏元秘書の折田謙一郎・群馬県中之条町元町長(66)と、会社員加辺守喜・元会計責任者(62)=千葉県柏市=の二人を同法違反(虚偽記入)の罪で、在宅起訴した。特捜部によると、虚偽記入の総額は約三億二千万円。小渕氏については「刑事責任を問える証拠がない」として、嫌疑不十分で不起訴とした。
起訴状などによると、折田被告らは二〇〇九~一三年、小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」(東京都千代田区)が簿外処理していた飲食費などの経費をごまかそうと、未来研から小渕氏の地元・群馬県の関連政治団体に計五千六百万円を寄付したように偽装した。
さらに、この滑空の寄付を受けた関連政治団体の帳尻を合わせるために、東京・明治座で開いた支援者向けの観劇会に関し、実際よりも少なく収入を記載するなどして全体の収入額を調整し、各政治団体の収支報告書に虚偽の記入をしたとされる。
小渕氏は、有権者にワインなどを配ったとして公選法違反(買収)容疑でも告発されたが、特捜部は嫌疑不十分で不起訴とした。
*********東京新聞2015年4月29日全国版社会面
収支報告書虚偽記入 複数団体で資金操作
小渕氏「大番頭」立件で幕
小渕優子氏の関連政治団体をめぐる東京地検特捜部の操作は、小渕氏の父・恵三元首相(個人)と小渕氏の秘書を計三十年以上努めた「大番頭」の折田謙一郎・群馬中之条町元町長(66)らの在宅起訴で週けうつぃた。収支報告書の虚偽記入の総額はけいさんけいさん億二千万円に上ったが、小渕氏本人は昨年十月の経済産業相辞任以降、説明責任を果たしていない。
今回の事件で明らかになったのは、恵三元首相から引き継いだ未来産業研究会が会計外で処理していた飲食費などの経費の発覚を免れようと、小渕氏関連の四つの政治団体を使った違法な政治資金の処理だった。
関係者によると、未来産業研究会では長年、会計帳簿に計上されない簿外支出を作ってきた。折田被告は二〇〇八年ごろから、観劇会の収支の不適切な捜査を繰り返していたとみられる。ある検察幹部は「複数の政治団体で極めていいかげんな会計処理をしていた」と指摘した。
小渕氏は昨年十月の会見で、弁護士らでつくる第三者委員会に調査を依頼し、調査結果を公表する意向を示したが、昨年十二月の衆院選で当選後も明確な説明を避けている。
特捜部は、小渕氏の関与についても慎重に捜査したが、刑事責任を問えないと判断した。政治資金規正法で政治団体の代表者である政治家の刑事責任が問えるのは、会計責任者の選任と監督の両方に相当の注意を怠った場合と規定しており、立件のハードルは高いためだ。
政治資金の問題に詳しい東京大法学部の谷口将紀(まさき)教授(現代日本政治論)は「複数の政治団体を都合よく使い分け、収支の全体像を分かりにくくしていることが問題」と指摘。「政治家の関連政治団体が複数ある場合には各団体の収支をまとめて一目で分かるような連結決算として示す仕組みを導入すべきだ」と訴えている。
★「納得いく説明ない」 地元からも批判の声
小渕氏の地元・群馬県では二十八日、元秘書二人の在宅起訴に、小渕氏本人からの説明を求めるなど批判の声が上がった。一方、小渕氏の不起訴に胸をなで下ろす関係者もいた。
衆院・群馬5区で小渕氏の牙城である中之条町。元町議(64)は「これだけ大騒ぎして本人はおとがめなしでは、有権者は納得しない。検察は政治家に甘い」と厳しい見方を示した。
小渕氏は昨年十二月にあった衆院選で当選した際、疑惑を「説明していきたい」と話した。元町議は「納得のいく説明はしておらず、小渕さんも知らなかったでは済まされない」と批判する。町内の二十代後半の女性会社員は「折田被告は捜査に真実を語ってもらいた」と強調した。
一方、後援会女性部の元幹部は「小渕さんは折田被告を信頼しており、今回の件は知らなかったと思う」と言葉少な。この日、町内にある折田被告の自宅は静まり返ったまま。小渕氏の後援会事務所も夕方には明かりが消えておりインターホンにも応答がなかった。
<小渕氏のコメント>
政治資金をめぐる問題で事務所関係者二人が起訴されたことについては重く受け止めており、政治的、道義的責任を痛感しています。関係者の皆さまに多大なご迷惑とご心配をかけたことについては大変申し訳なく、深く反省しています。二度と今回のような事態が生じないよう努めます。
**********東京新聞2015年4月29日群馬版
政治資金規正法違反 「小渕氏、説明責任を」
元秘書在宅起訴 地元町民の指摘も
元秘書二人が東京地検に在宅起訴された小渕優子前経済産業相の関連政治団体をめぐる政治資金規正法違反事件。地元・中之条町では、小渕氏も説明責任を果たすべきだとの声も聞かれた。
元中之条町長でもあった折田謙一郎元秘書(66)らが在宅起訴されたことに、同町の中心商店街で六十代の自営業男性は「早くすっきりしてもらいたい。折田さんは最初から自分に責任があると言っているのだから在宅起訴は仕方ない。小渕さんは十分に説明していないので、国会などで説明責任を果たしてほしい」と指摘した。
折田被告の辞職に伴い後任に就任した伊能正夫町長は、在宅起訴について「町政と直接かかわりがあるわけではないのでコメントは差し控えたい」と説明。町役場では職員が通常通り業務にあたっていた。 (山岸隆)
**********
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↑小渕経産相辞任を報じる2014年10月20日付上毛新聞号外。 ↑
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↑加辺守喜・元秘書が会計責任者の平成24年未来産業研究会収支報告書。h24miraisangyokenkyukaishushihoukokusho.pdf↑
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↑4月29日付東京新聞社会面記事。取材記者らに笑みを見せる「姫」の表情が印象的だ。↑
この突然の報道経緯を見ると、マスコミはいずれも「関係者によると」あるいは「関係者への取材によると」というふうに、情報源を曖昧に示していました。この「関係者」というのが、「東京地検特捜部」なのか「与党系の代議士」なのか、地元の「自民党県連所属の人物」を指しているのか、まったく分かりません。いずれにおいても、政府与党あたりから小出しにされるマスコミ向けの情報提供がうかがえます。
この中で、最初に小渕優子の政治資金問題についてスクープしたのは、2014年10月16日発売の週刊新潮でした。しかし、その当時、すでに一部の新聞社もこの情報を察知していたようです。次のブログ参照↓
小渕氏政治資金疑惑:週刊誌の特報を明記した新聞、しなかった新聞
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20141023-00040182/
■このように、「姫」の政治資金のインチキ収支報告事件をすっぱ抜いた週刊新潮ですが、昨日発売のGW特大号では、事件の結末を予想する記事を、わずか1ページで報じました。この記事の内容も、新聞社よりわずかに先行した感があります。さっそく見てみましょう。
**********週刊新潮2015年5月7・14日ゴールデンウィーク特大号(4月28日発行)
「小渕優子」政治資金で裏金造りを解明した「地検特捜部」の情けない結末
――――――――――
山には新緑が映え、足元には花々が色とりどりに咲きほこる。GWは人々の心華やぐ季節だが、今、この人の胸中はどのような色人染められているのか。小渕優子代議士(41)。昨秋に発覚した「デタラメ政治資金」問題は決着がつかないままだが、特捜部は裏金のしくみを解明していた。
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未だに国会では、事実上の活動自粛状態である小渕議員。一方で自らの地盤固めには精力的で、この統一地方選でも、地元・群馬5区の候補者の元を広く応援に回っていたという。
後援会幹部の話。
「県議の候補者の出陣式にはだいたい出向いていました。ただ、挨拶では“ご迷惑をおかけして申し訳ありません”という、総選挙の時と同じセリフを繰り返すだけで、政治資金については、相変わらず、細かい説明は何もないままでした」
昨年10月、経産相を辞任する際、小渕氏は「説明責任を果たす」とカメラの前で声を詰まらせて誓った。あの涙は、記者の追及から逃げるための武器だったのか、と疑いたくもなるけれど、では、肝心の検察の動きはどうなのか。
「捜査は既にほぼ終わっています」
と言うのは、社会部記者である。
「あとは、いつ処分が行われるかだけの問題で、各社は当局への夜回りを増やしたり、群馬へ記者を出し、後援会関係者の取材を進めたりと、Xデーに向け“臨戦態勢”に入っています。GW前後にいつ、“大番頭”で、政治資金収支報告書の実際の作成者だった、折田謙一郎・中之条町前町長の刑事処分が下されてもおかしくはありません」
★裏山の手入れ
しかし、そうした報道陣の盛り上がりの一方で、実際の処分は腰砕けになりそうだ。地検の関係者によれば、
「小渕議員はお咎めなし。折田氏も略式起訴での罰金刑か、在宅起訴に留まりそうです」
最大の焦点である明治座での観劇会の収支の食い違いは合計で5000万円以上。巨額の金が闇に消えたのにその程度の処分で済むとは到底、納得できないが、
「この“裏金”がわいろに遣われていたり、誰かが私腹を肥やしたりしていれば、さらに重い罰に発展する可能性もあった。しかし、その形跡はなく、実際には、支援者の飲食費や、子飼いの地方議員へのモチ代といった、領収書の取れない出費に使われたと見られています。これだけでも十分悪質ですが、実はこうした“使い道”はこれまで何人もの政治家が当たり前のようにしてきたこと。公平性の観点から見て、小渕議員のケースだけ厳しい処分を下すというのは難しい、という結論なのです。
小渕氏サイドが検察の強制捜査の前に、パソコンにドリルで穴を開けて、“証拠隠滅”を図ったのは、周知の通り。それだけの工作をして一人の逮捕者もなしでは、「秋霜烈日」などという言葉もお題目に過ぎないのだ。
実際、こうした動きも知ってか、当の折田氏は。
「毎日家にいて、裏山の花の手入れに忙しい。“もう少ししたら、地域の仕事にも戻りますから”と周囲には語っています」(知人)
と余裕の言動。天下の特捜部も舐められたものである。
**********
■記事を読むと、週刊新潮の記者らの口惜しさが行間からにじみ出てくるようです。でも、この記事の内容が、まさか発売当日の4月28日に実行されるとは、同誌の編集長も、最終編集会議の時点では予想できなかったことでしょう。
今回の一連の出来事からハッキリしてきたことは、政治とカネの問題をチェックするための制度である公選法と政治資金規正法が全くザル法であり、それを取り締まる機関である検察組織がきちんと機能しないという実態です。
■もう一つ不可思議なのは、当会の「姫」と「国家老」に対する複数件の告発が、いずれも「預かり」という形のままで、東京地検特捜部から、「受理」という連絡がこないまま、「姫」は不起訴、「国家老」が在宅起訴という形での処分とされてしまっていることです。
一方、マスコミ報道によれば、「小渕氏をめぐっては群馬県の市民団体が昨年10月、同法違反罪などで小渕氏らを東京地検に刑事告発。特捜部が折田氏の自宅などを家宅捜索して調べていた」(2015年4月28日15:58産経。下記URL参照)などとして、「告発」を受けた形で捜査を行った、と受け取れる形で報じています。↓
http://www.sankei.com/affairs/news/150428/afr1504280022-n1.html
しかし、東京地検特捜部からは、未だに告発状に関する「正式受理」の通知は全くありません。今回、「姫」と「国家老」に対する処分が確定し、この事件に関して終結宣言が出たらしいことから、近日中に何らかの説明が当会にあるかもしれません。
■前述の通り、週刊新潮最新号では、東京地検関係者からの情報として「小渕議員はお咎めなし。折田氏も略式起訴での罰金刑か、在宅起訴に留まりそうです」と報じられています。
まさに「姫」はお咎めなしの不起訴処分となりました。一方、「国家老」は、在宅起訴ということになりました。
不起訴処分というのは、検察官が「今回の事件を起訴しない」と決める処分のことです。不起訴処分になれば、刑事裁判が行われることも、有罪判決が下されることもありません。したがって、仮に罪を認め、逮捕や勾留されたとしても、不起訴になれば前科は付きません。冒頭の新聞記事写真に示されているとおり、小渕優子・代議士が不起訴処分となり、4月28日午後の国会で、報道陣に質問された際に、「姫」が思わず笑みをこぼしたのも、前科の付く心配がなくなったからだと思われます。
また、報道によれば、「姫」の不起訴処分理由は、「嫌疑不十分」とされています。本来、このことは、告発者に対して最初に通知されるはずです。しかし、当会は特捜部から処分結果についてさえ、何も連絡がありません。これは、当会の告発が、未だに受理された形になっていないことを物語っています。
「嫌疑不十分」というのは、「不起訴処分」の3つの理由である「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」のうちのひとつです。捜査の結果、裁判において有罪の証明をするのが困難と考えられる場合や、証拠が十分に集められないといった場合です。今回、当会が告発したことで、折田元秘書や小渕後援会は、自民党群馬県連を介して、慌てて警察や検察に顔の利く群馬県内で著名な弁護士事務所に駆けつけました。実際に当会も、高崎市内にある当該弁護士事務所の駐車場に多数の県連関係者の車が駐車したという目撃情報を得ていました。
こうして、「姫」について、検察に嫌疑不十分と判断してもらうために、おそらく県連は総力を挙げて当該弁護士と相談の上、捜査機関側が持っている証拠の量や内容を調査し、捜査機関側と交渉したに違いありません。その甲斐あって、首尾よく結果が引き出せたことになります。
■一方、「国家老」については「在宅起訴」処分となりました。これも、週刊新潮が「略式起訴での罰金刑か、在宅起訴に留まりそうです」と、最新号で報じた通りとなりました。
在宅起訴は、被疑者が捜査段階で身柄を拘束されていなかった場合に、その状態のまま起訴されることを意味します。また、事件が起訴されると、「被疑者」は「被告人」という立場に変わります。
在宅起訴の場合、起訴の種類としては、「略式起訴」と「公判請求」との二通りが想定されます。た、
「略式起訴」は、後半を開かずに書面での審理だけで、100万円以下の罰金か、または科料を求める形での起訴のことです。略式起訴の場合、罰金を科する命令が送達され、罰金を納付すれば終結するので、当然、起訴後も身柄拘束はされません。他方、「公判請求」は、公判を開き、証拠調べをして判決を出すことを求めるかたちでの起訴のことです。このどちらかになるのか、4月29日現在の報道ではハッキリしません。
週刊新潮の取材に答えた東京地検関係者によれば、「国家老」の場合は、略式起訴となる可能性についても示唆しています。おそらく、近日中に、どっちになるのか、方向が見えてくることでしょう。
■検察官によって事件が起訴されると、「被疑者」は「被告人」という立場になります。「国家老」は、在宅起訴であっても、これから「被告人」として記事に報じられるわけで、既にこの記事の末尾に掲げた東京新聞の4月29日付記事では、さっそく「折田被告」と表現しています。
しかし、公判請求の場合であっても、起訴前に身柄を拘束されていなかった以上、起訴後も身柄拘束はされないのが通常です。週刊新潮の最新記事にあるように、当の折田被告が、毎日家にいて、裏山の花の手入れに余念がなく、「もう少ししたら、地域の仕事に戻りますから」と余裕しゃくしゃくの風情なのも、頷けます。
昨年10月20日の当会の告発直後に、自らマスコミの取材に答えて、「責任は全て自分にある」と公言し、見事にその描いたシナリオどおりに自ら身代わりとなって、「姫」を窮地から救った「国家老」としては、さぞ満足のゆく結果に終わったことでしょう。
■それにしても、我が国で事件を起訴することができるのは、原則的に検察官だけです。今回は、政治家が関与した事件のため、警察ではなく、東京地検特捜部という、起訴独占権限を持つ組織が自ら捜査をしたわけで、それだけ政治関係者へのプレッシャーとしても、また政治とカネの問題で政治不信に陥りかけている国民へのメッセージとしても、非常に重要な事件でした。
しかし、最終的には、当会が懸念していたとおり、「大山鳴動して鼠がたった二匹」という結果に終わったのでした。
いずれにしましても、もしも、このまま当会の告発状に対して、東京地検から未通知の状態が続くようであれば、市民オンブズマン群馬としては、地検特捜部に対して公開質問状のような形で、事実関係を確認する必要があると考えています。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報
【4月28日夜からのマスコミ報道の様子(一例)】
**********NHK NEWSweb 4月28日 18時48分
小渕氏元秘書2人在宅起訴 本人は不起訴
小渕前経済産業大臣の政治資金を巡る事件で、東京地検特捜部はいずれも小渕氏の元秘書で群馬県中之条町の折田謙一郎前町長ら2人が、収支報告書にうその記載をしたなどとして、政治資金規正法違反の罪で在宅起訴しました。うその記載の総額は3億円を超えるとしています。
一方、小渕氏本人については嫌疑不十分で不起訴にしました。
在宅起訴されたのは、小渕氏の元秘書で群馬県中之条町の前町長、折田謙一郎被告(66)と小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」の会計責任者を務めていた元政策秘書の加邉守喜被告(62)の2人です。
東京地検特捜部の調べによりますと、折田前町長は加邉元秘書と共謀するなどして、小渕氏の資金管理団体が実際には小渕優子後援会などに寄付をしていないのに、平成21年から25年にかけて収支報告書に5600万円を寄付したとするうその記載をしたとして、政治資金規正法違反の罪に問われています。
また、折田前町長は小渕優子後援会などが開催した「観劇会」などを巡り、後援会など3つの政治団体で収入や支出を少なく記載するなどして2億6000万円余りのうその記載をしたとしています。
虚偽記載の総額は3億2000万円余りに上るとしています。
関係者によりますと、折田前町長は調べに対し「収支報告書に記載していない簿外の支出によって、報告書の記載と実際の資金の残高にずれが出たことを隠すため事実と違う記載をした」などと供述したということです。
一方、小渕氏本人については嫌疑不十分で不起訴にしました。
★小渕氏「一からやり直す覚悟」
自民党の小渕・前経済産業大臣は「事務所関係者2人が在宅起訴されたことを重く受け止めており、政治的、道義的責任を痛感している。去年12月の衆議院選挙では、もう一度、地元・群馬のために働けとの結果をいただいており、この温情に応えるべく、一からやり直す覚悟だ」というコメントを出しました。
また、小渕氏はコメントの中で「捜査に支障を来してはいけないとの考えから、これまでは、事件の詳細などについて事務所関係者に尋ねることは控えてきた。今後は、捜査や裁判の結果なども踏まえ、専門家の方々の意見を聞きながら、二度と今回のような事態が生じないよう、努めてまいりたい」としています。
★繰り返されてきた簿外支出
関係者によりますと小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」では収支報告書に記載されていない簿外の支出が以前から繰り返されていたということです。このため資金の残高が減り、収支報告書の記載を大きく下回る状態が続いていたということです。
関係者によりますと記載とのずれを解消するため、折田前町長ら元秘書2人は「未来産業研究会」から「小渕優子後援会」や小渕氏が代表を務める「自由民主党群馬県第五選挙区支部」に寄付をしたように見せかけて支出を増やしたとみられています。
特捜部によりますと収支報告書の記載では平成21年から平成25年にかけて寄付の額は合わせて5600万円に上りましたが、すべて架空だったとしています。
一方、特捜部によりますと「小渕優子後援会」など3つの政治団体では毎年開催していた後援会の観劇会について、収支報告書の収入や支出を実際より少なく記載するなどしていたということです。
「未来産業研究会」からの架空の寄付による収入と合わせると虚偽の記載は2億6000万円余りに上るとしています。特捜部は折田前町長が観劇会の収支の記載を操作し、帳尻を合わせようとしていたとみています。
★事件の経緯と折田前町長
小渕前経済産業大臣の政治資金を巡る問題は、去年10月に明らかになりました。
問題となったのは「小渕優子後援会」が主催した観劇会の収支です。
小渕氏の説明などによりますと観劇会は毎年、東京の劇場で開催され1回あたりおよそ1000人の支援者が参加し、1人あたり1万2000円の会費を集めていました。
ところが、収支報告書に記載された収支が大きく食い違っていました。中には収入支出とも全く記載されていない年もありました。
また、群馬県内の小渕氏の選挙区に住む男性に小渕氏の事務所からワインが贈られていたことなども明らかになりました。
一連の問題を受け小渕氏は大臣就任から1か月半で辞任しました。
小渕氏は会見で「信頼するスタッフのもとでお金の管理をしていただいていました。私自身が分からないことが多すぎます。何でこうなっているのかという疑念を持っています」と述べていました。
問題の収支報告書を作成したと名乗り出たのが小渕氏の元秘書で群馬県中之条町の折田謙一郎前町長でした。
折田前町長は取材に対し「私が収支報告書の総責任者なので、疑惑に問われている問題の説明責任を果たしたい。辞表を提出したことで町民の期待に背くことになってしまったことをおわびするとともにしっかりと調査を進めたい」と話していました。
特捜部は大臣辞任の10日後、折田前町長の自宅や小渕氏の後援会事務所など10か所以上の関係先を一斉に捜索しました。折田前町長ら小渕氏の元秘書や後援会の関係者、それに小渕氏本人からも任意で事情を聞いていました。
*********東京新聞2015年4月29日全国版一面
小渕氏元秘書2人 在宅起訴
東京地検 規制方位は、小渕氏は不起訴
小渕優子元経済産業相(41)の関連政治団体をめぐる政治資金規正法違反事件で東京地検特捜部は二八日、政治資金収支報告書に虚偽の記入をしたとして、いずれも小渕氏元秘書の折田謙一郎・群馬県中之条町元町長(66)と、会社員加辺守喜・元会計責任者(62)=千葉県柏市=の二人を同法違反(虚偽記入)の罪で、在宅起訴した。特捜部によると、虚偽記入の総額は約三億二千万円。小渕氏については「刑事責任を問える証拠がない」として、嫌疑不十分で不起訴とした。
起訴状などによると、折田被告らは二〇〇九~一三年、小渕氏の資金管理団体「未来産業研究会」(東京都千代田区)が簿外処理していた飲食費などの経費をごまかそうと、未来研から小渕氏の地元・群馬県の関連政治団体に計五千六百万円を寄付したように偽装した。
さらに、この滑空の寄付を受けた関連政治団体の帳尻を合わせるために、東京・明治座で開いた支援者向けの観劇会に関し、実際よりも少なく収入を記載するなどして全体の収入額を調整し、各政治団体の収支報告書に虚偽の記入をしたとされる。
小渕氏は、有権者にワインなどを配ったとして公選法違反(買収)容疑でも告発されたが、特捜部は嫌疑不十分で不起訴とした。
*********東京新聞2015年4月29日全国版社会面
収支報告書虚偽記入 複数団体で資金操作
小渕氏「大番頭」立件で幕
小渕優子氏の関連政治団体をめぐる東京地検特捜部の操作は、小渕氏の父・恵三元首相(個人)と小渕氏の秘書を計三十年以上努めた「大番頭」の折田謙一郎・群馬中之条町元町長(66)らの在宅起訴で週けうつぃた。収支報告書の虚偽記入の総額はけいさんけいさん億二千万円に上ったが、小渕氏本人は昨年十月の経済産業相辞任以降、説明責任を果たしていない。
今回の事件で明らかになったのは、恵三元首相から引き継いだ未来産業研究会が会計外で処理していた飲食費などの経費の発覚を免れようと、小渕氏関連の四つの政治団体を使った違法な政治資金の処理だった。
関係者によると、未来産業研究会では長年、会計帳簿に計上されない簿外支出を作ってきた。折田被告は二〇〇八年ごろから、観劇会の収支の不適切な捜査を繰り返していたとみられる。ある検察幹部は「複数の政治団体で極めていいかげんな会計処理をしていた」と指摘した。
小渕氏は昨年十月の会見で、弁護士らでつくる第三者委員会に調査を依頼し、調査結果を公表する意向を示したが、昨年十二月の衆院選で当選後も明確な説明を避けている。
特捜部は、小渕氏の関与についても慎重に捜査したが、刑事責任を問えないと判断した。政治資金規正法で政治団体の代表者である政治家の刑事責任が問えるのは、会計責任者の選任と監督の両方に相当の注意を怠った場合と規定しており、立件のハードルは高いためだ。
政治資金の問題に詳しい東京大法学部の谷口将紀(まさき)教授(現代日本政治論)は「複数の政治団体を都合よく使い分け、収支の全体像を分かりにくくしていることが問題」と指摘。「政治家の関連政治団体が複数ある場合には各団体の収支をまとめて一目で分かるような連結決算として示す仕組みを導入すべきだ」と訴えている。
★「納得いく説明ない」 地元からも批判の声
小渕氏の地元・群馬県では二十八日、元秘書二人の在宅起訴に、小渕氏本人からの説明を求めるなど批判の声が上がった。一方、小渕氏の不起訴に胸をなで下ろす関係者もいた。
衆院・群馬5区で小渕氏の牙城である中之条町。元町議(64)は「これだけ大騒ぎして本人はおとがめなしでは、有権者は納得しない。検察は政治家に甘い」と厳しい見方を示した。
小渕氏は昨年十二月にあった衆院選で当選した際、疑惑を「説明していきたい」と話した。元町議は「納得のいく説明はしておらず、小渕さんも知らなかったでは済まされない」と批判する。町内の二十代後半の女性会社員は「折田被告は捜査に真実を語ってもらいた」と強調した。
一方、後援会女性部の元幹部は「小渕さんは折田被告を信頼しており、今回の件は知らなかったと思う」と言葉少な。この日、町内にある折田被告の自宅は静まり返ったまま。小渕氏の後援会事務所も夕方には明かりが消えておりインターホンにも応答がなかった。
<小渕氏のコメント>
政治資金をめぐる問題で事務所関係者二人が起訴されたことについては重く受け止めており、政治的、道義的責任を痛感しています。関係者の皆さまに多大なご迷惑とご心配をかけたことについては大変申し訳なく、深く反省しています。二度と今回のような事態が生じないよう努めます。
**********東京新聞2015年4月29日群馬版
政治資金規正法違反 「小渕氏、説明責任を」
元秘書在宅起訴 地元町民の指摘も
元秘書二人が東京地検に在宅起訴された小渕優子前経済産業相の関連政治団体をめぐる政治資金規正法違反事件。地元・中之条町では、小渕氏も説明責任を果たすべきだとの声も聞かれた。
元中之条町長でもあった折田謙一郎元秘書(66)らが在宅起訴されたことに、同町の中心商店街で六十代の自営業男性は「早くすっきりしてもらいたい。折田さんは最初から自分に責任があると言っているのだから在宅起訴は仕方ない。小渕さんは十分に説明していないので、国会などで説明責任を果たしてほしい」と指摘した。
折田被告の辞職に伴い後任に就任した伊能正夫町長は、在宅起訴について「町政と直接かかわりがあるわけではないのでコメントは差し控えたい」と説明。町役場では職員が通常通り業務にあたっていた。 (山岸隆)
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↑小渕経産相辞任を報じる2014年10月20日付上毛新聞号外。 ↑
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↑加辺守喜・元秘書が会計責任者の平成24年未来産業研究会収支報告書。h24miraisangyokenkyukaishushihoukokusho.pdf↑