■高専組織がこれまで当会に対しおこなってきた悪質な情報黒塗りの数々について、その取消しを求めた第一次訴訟では、既報のとおり被告高専機構側もなりふり構わない抵抗を見せています。準備書面を裁判所にだけ速攻で提出し、一方で原告には送ったふりだけしておいて反論を書かせない法廷戦術を初手から披露してきた高専機構ですが、幸いそのような小手先の作戦は功を奏さず、2月18日の第二回口頭弁論では被告の主張内容に裁判長から厳しい指摘が相次ぎました。
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その1)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3055.html
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その2)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3056.html
○2019年12月30日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3101.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟での被告・原告の準備書面(1)と第二回口頭弁論の様子↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3129.html
そうした手厳しい指摘の数々を受けて、尻を叩かれた形の高専機構が、正確には高専機構が大金をはたいてすがる銀座の木村・藍澤・角谷弁護士トリオがどのような主張を見せてくるか注目されていました。
■すると、第二回口頭弁論で指示された提出期限である4月6日ちょうど、当会事務局に被告高専機構の準備書面(2)が送られてきました。内容は以下のとおりです。
*****被告準備書面(2)*****ZIP ⇒ 202004061aiqjfaxp4.zip
202004061biqjp5p10.zip
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分取消請求事件
原 告 市民オンプズマン群馬
被 告 独立行政法人国立高等専門学校機構
準 備 書 面 (2)
令和2年4月6日
東京地方裁判所民事第2部Bc係 御中
被告訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
同 角 谷 千 佳
記
訴状別紙不開示処分取消請求箇所(22頁,以下「別紙」という)の各項目の不開示事由に関する補充について
1 別紙1項について
(1)別紙1項の取消請求の対象箇所は,甲第3号証の国立高等専門学校長候補者一覧の不開示部分のうち各候補者の氏名を除く箇所であり,この候補者一覧には,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No,推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴や現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ごとに一覧表にまとめて記載されている。
(2)これらの記載のうち,候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)5条1号前段の個人識別情報に該当する。また,主な学歴,学位,職歴の項目も,現職に至るまでのものが複数記載されている。このため,氏名を不開示として学歴や職歴,専門分野のみを開示した場合でも,これらの記載を組み合わせてネットで検索する等の方法により,該当の候補者を特定することが容易に可能となる。このため,学歴,学位,専門分野,職歴,現職に関する記載についても,法5条1号本文前段にいう個人識別情報に該当する。
(3)また,甲第3号証の記載項目のうち,たとえば整理Noや職歴のうち現職に関する記載,推薦機関の種別のみを開示した場合には,個人を特定できる可能性は低いものの,当該候補者を推薦した機関や,推薦機関別(大学,被告が運営する高専,文部科学省)の候補者の多寡を判断することができる。これらの情報と,実際に就任した校長の職歴を比較すれば,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することも可能となる。このため,上記の項目を開示した場合,推薦機関が候補者の推薦を躊躇したり,推薦者の人数を減少させる,といった対応を取るおそれがある。さらに推薦機関が被告に校長候補者を推薦するにあたっては,候補者本人から推薦の内諾を得ているものと解されるが,学歴,経歴といった個人に関する事項が開示される場合はもちろん,推薦機関別の候補者の多寡といった情報が明らかになった場合でも,自身が登用されないことが明らかになることを嫌い,またそもそも校長に選定される見込みが低いといったことを考慮して,候補者が推薦の内諾を拒否するといった事態が生じることも考えられる。
このように,甲第3号証の不開示事由を開示した場合には,多数の有為な人材から校長を選任するという被告の円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある。同号証のうち,整理No,主な学歴,学位,専門分野,職歴や現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先),推薦機関の種類別といった項目は,人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものとして,法5条4号への不開示情報に該当する。
(4)さらに,甲第3号証の一覧表は,被告が各推薦機関から提供された校長候補者の学歴,職歴等の事項のすべてを記載したわけではなく,提供された情報のなかから校長の選定の考慮要素として主要と考えられる事項を整理して記載したものである。また,一覧表に記載された項目は、推薦機関ごとに若干異なっておいる(ママ)。このため,甲第3号証の一覧表に記載のある項目のすべてや,その並び順を開示すれば,被告における校長選定において重視される事項や,どの推薦機関の候補者をまとめた一覧表かを推測することが可能となる。これにより被告内外から校長の選考基準について容喙(ようかい)されるなど,被告における校長選考に関する自由な議論を阻害したり,推薦機関からの候補者の推薦に支障を来すことが考えられ,被告における公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ(法5条4号ヘ)がある。
(5)原告は,被告が甲第8号証記載のとおり「校長の選考プロセスについては,理事長から高専,理工系または商船系の分野を有する大学,文部科学省に推薦を依頼し,(中略)推薦される候補者は概ね20人程度で,選考を経て,校長に登用される者は概ね10人程度」と設明したことを指摘して,推薦機関や全候補者数について被告が説明している以上,推薦機関や候補者の人数を開示しても,被告の人事管理に支障は及ぼさない,と主張する。
被告が甲第8号証における上記記載のとおり校長選考のプロセスを説明したことは,原告が指摘するとおりであるが,上記説明はあくまで校長選考のプロセスを一般論として説明したものに過ぎず,個別の推薦機関ごとの推薦者数や,推薦機関ごとの校長の登用数に言及したものではない(人数について言えば,退任予定の校長の数にもよるので,候補者数,登用数とも,年度により相当のばらつきがある)。原告は最低でも①各候補者の推薦機関,②当該年の全候補者数が分かる情報,③個別の項目名が分かる情報を開示すべき(訴状3頁)とするが,これらの情報を開示することにより校長の選考という人事管理に支障を生じるおそれがあることは前記のとおりである(候補者一覧は推薦機関別で作成しているため,推薦機関とは無関係に全候補者数を開示することはできない。校長に選任された者と,その者の前歴は各高専のホームページ等で集計できる以上,全候補者数を開示しようとすれば推薦機関別の候補者数を容易に推測できることになる。)
以上のとおり,原告が訴状別紙1項で不開示決定の取消を求める事項は,法5条1号本文前段の個人識別情報,ないし法5条4号への人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものとして,不開示とすることが相当である。
2 別紙2項について
(1)原告が別紙2項で取消を求めているのは,甲第4号証の群馬高専元校長の西尾典眞氏の印影及び退職理由に関する被告の不開示決定である。
甲第4号証は西尾氏の退職届であり,これらの記載は西尾氏の個人に関する情報として,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。さらに被告では,校長をはじめ教職員の退職理由を公開する慣行はなく,法5条1号ただし書イには該当しない。
(2)原告は,群馬高専担当者及び同校の山崎誠校長が,甲第9号証にあるように「(西尾校長が)人事交流という形で群馬高専の校長に着任しており,交流元(文科省)のほうでいろいろ調整があったので,交流元に復帰した」,「交流元が文科省なので,文科省に戻ったということ」,「要するに元に戻っただけ」と説明したことを指摘して,西尾校長の辞任届における退職理由が,法5条1号ただし書ハの「職務の遂行に係る情報」に当該する,と主張する。
甲第9号証にあるように,群馬高専担当者及び山崎校長が,西尾氏が人事交流で群馬高専に着任し,その後交流元の文科省に復帰したと説明したことは事実であるが,そのことと西尾校長の退任が職務の遂行として行われたものかどうかは,まったく別の問題である。
西尾氏は,文部科学省から群馬高専校長に就任したが,この就任にあたって被告と雇用契約を締結して被告の被用者となっており,文科省の所属から一旦離れている。甲第4号証の退職届は,被告との雇用契約を終了するという被用者としての意思を表示したものであって,この意思表示は,退職理由のいかんにかかわらず被用者の個人としての行為であることは明らかである。法5条1号ただし書ハにいう「職務の遂行に係る情報」は,独立行政法人等の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味することは答弁書3項(2)で指摘したとおりであり,被用者としての行為が職務を遂行する場合における活動とは考えられない以上,甲第4号証における退職理由の記載が法5条1号ただし書ハに該当するとの原告の主張は,失当である。
3 別紙3項について
(1)原告が別紙3項(1)及び(2)で不開示決定の取消を求める事項は,甲第5号証のうち,(1)につき氏名及び人事前後の職名に関する記載についての不開示部分,(2)につき常勤教職員に関する退職理由の記載である。
(2)このうち,別紙3項(1)の氏名及び人事前後の職名が不開示となっている職員は,群馬高専において補助的業務に就いている事務職員(以下「補助職員」という)である。被告では,内部基準に従って国立印刷局編「職員録」(甲第5号証作成当時は財務省印刷局編「教識員録」)に教職員を掲載して,ここに掲載された教職員かどうか,を教職員の異動等を外部に公開するか否かの一つの判断基準としている。甲第5号証のうち氏名を開示した教職員は,上記「教職員録」にも掲載されていることから,氏名等についても法5条1号イの,「慣行として公にされ」ている情報として開示する情報と判断した。
これに対して,補助職員は,上記「教職員録」に掲載されておらず,氏名や所属を公にする慣行はない。さらに,この補助職員は,群馬高専の各科(機械工学科等,5学科ある)に1名ないし若干名しかおらず,これらの者の退職時の所属や職名を開示した場合には,氏名を開示しなくても,群馬高専内外の者に,当該所属や職名が誰に関する記載であるか,容易に特定することが可能となる。このため,原告が別紙3項(1)で不開示決定の取消を求めている情報は,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。
なお,訴状別紙3項(1)の氏名及び人事前後の職名に関する記載は,本件訴訟に先行して原告が申し立てた審査請求に対する答申書別紙(乙2,11頁)における,1項の「技術補佐員に係る記載(特定刊行物に掲載されたものを除く)」,4項の「技術補佐員に係る記載(特定刊行物に掲載されたものを除く)」と,7項の「教員に係る部分」以外の部分である。情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という)は,当該記載は法5条本文1号前段の個人識別情報に該当し,法5条1号ただし書イないしハに該当すべき事情は認められないとして,不開示としたことは妥当と判断した。
(3)原告は,準備書面(1)7から8頁で,甲第5号証の校報の年度に対応する群馬高専の年報(甲31) において,技術職員や技術補佐員について記載があることを指摘する。しかし,このうち技術職員は,前記の補助職員に該当せず,甲第5号証でも氏名等を開示している(甲5, 校報131号2頁,採用欄1行目等参照)。これに対し,技術補佐員は,前記の補助職員に該当し,氏名や所属,異動を公にする慣行はない。
また原告は,平成29,30年度の年報に,技術補佐員の退職挨拶が掲載されている(甲11,6頁)ことを指摘する。しかし当該技術補佐員の退職挨拶は,勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮した,という個別の事情によるものであり,技術補佐員が退職する際に年報に挨拶を掲載するといった慣行はなく,年報以外でも異動や退職を群馬高専の外部に公開していない。
以上のとおり,原告の各指摘は,法5条1号イの慣行として公にされている情報に該当することの根拠となるものではない。
なお群馬高専では,年報,校報のうち外部に公開する情報の内容を限定する見直しを行っており,甲第33号証と,甲11号証の両年報では公開対象とする情報が異なっている。
(4)また,別紙3項(2)の,常勤教職員の退職理由に関する情報は,甲第5号証のとおり,退職理由を不開示とした職員の氏名,所属が開示され,これと併記されている。このため,当該退職理由の記載は特定の個人に関する身分,地位に関する情報として,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。さらに,常勤職員であっても,退職理由を公にする慣行はなく,法5条1号ただし書イに該当しない。
この退職理由に関する情報は,前記答申書(乙2)別紙1項で開示すべき部分から除外された,「『退職理由』の欄の記載」に該当する情報であり,審査会は,法5条1号ただし書イないしハに該当すべき事情は認められないとして,不開示としたことは妥当と判断している。
4 別紙4項について
(1)原告が別紙4項で取消を求めているのは,甲第6号証の支払決議書のうち,「合計金額」,「支払金額」,「うち消費税及び配分金額」に関する被告の不開示決定である。原告が不開示決定の取消を求める「合計金額」等の項目は,被告代理人弁護士に対する訴訟委任に係る着手金,報酬金と訴訟関係費用(以下あわせて「弁護士費用」という)に関する項目,及び八王子税務署への支払金額に関する項目である。
このうち,弁護士費用は,被告が委任した弁護土の個々の具体的業務に対して支払われた報酬単価を内容とするものであり,これは特定の法律事務所の具体の案件処理に係る取組体制や実作業等の詳細な内訳等に基づき出される営業秘密に属する情報である。この情報を公とすることにより,当該特定法律事務所の事案処理に係る方針や費用算定の方針等が明らかとなり,当該特定法律事務所及び弁護士の競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあり,その旨の審査会の答申例(乙4)も複数ある。したがって,弁護士費用に関する「支払金額」,「うち消費税及び配分金額」は,法5条2号イの「公にすることにより当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当し,不開示とすることが相当である。
また八王子税務署への支払は,上記の弁護士費用に関する源泉徴収税の支払であり,その支払内容が明らかになることにより弁護士費用の額が逆算で明らかにすることができる。さらに,甲第6号証の支払決議書の記載金額のすべてが弁護士費用の支払いに関するものであるため,「全体金額」を開示することは個別の支払金額等を開示することと同義である。このため甲6号第証のうち八王子税務署への「支払金額」及び「全体金額」も,法5条2号イの不開示事由に該当する。
(2)乙第3号証は, 原告の情報開示請求に対して被告が平成28年度の支払決議書(甲第6号証の一部である)のうち一部を不開示処分としたことに対し,原告が審査請求を行ったことに対する答申書である。この審査請求について審査会は,弁護士費用の支払金額についての不開示処分に対し,「通常公にされることのない,弁護士が事業を行う上での内部管理情報及び個別具体の業務に係る報酬等の金額であることから,これを公にすることにより当該弁護士の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとする諮問庁の説明は否定しがたい。」として,当該部分が法5条2号イに該当し,被告の不開示処分が妥当である,と判断している(乙3 , 1 1頁)
5 別紙5 項について
( 1 ) 原告が別紙5項で取消を求めているのは,甲第7号証の事件・事故発生状況報告書(以下「本件報告書」という)のうち,日時に関する被告の不開示決定である。本件報告書が長野高専の学生の死亡事案に関するものであること,は開示部分の記載から明らかであり,事件・事故発生の前後の経過の概要の一部も開示されている。日時は,事件・事故の対応経過とあわせて記載されており,日時の記載が開示されれば,開示された対応経過とあわせて本件報告書に記載された事案をより具体的に特定することが可能となる。このため,本件報告書のうち日時の記載も当該死亡学生の個人に関する情報に該当する。また,本件報告書は,学生の死亡事案という希有な事件・事故を内容とする以上,氏名や学年,所属学科等が開示されていなくても,日時が明らかになるだけで,同時期の長野高専の学生や内外の関係者にとって,本件報告書に記載された死亡学生が誰かを特定することが容易に可能となる。このため,本件報告書のうち日時に関する記載は,特定の個人を識別することができるものとして,法5条1号前段の個人識別情報に該当する。
なお原告は,甲第7号証の記載のなかに,長野高専教職員に対して自死予防に関するカウンセラーの講演が行われていること等を指摘して,本件報告書記載の事案が自死事案であることがある程度周知されている,と指摘する。しかし,自死事案であることが周知されているかどうかと,上記のとおり事案経過の詳細が明らかになることは別の問題であり,しかもカウンセラーの講演はおよそ対象事案が「慣行として公にされている」ことの根拠となるものではない。原告の指摘は,法5条1号ただし書イに該当することの根拠とはなりえない。
( 2 ) また,本件報告書は学生の死亡事案に対応した長野高専の教職員から事情を聴取して長野高専の一定の管理職以外には秘密とすることを前提に作成した内部文書であり,捜査機関など被告外部への提出を念頭に作成したものではない。このため,日時の記載が開示される可能性があることが被告の教職員に認知されると,類似の事件・事故事案が発生して報告書を作成する際,自身の対応経過が明らかとなって批判の対象となることなどを懸念して,教職員が対応経過の詳細についての報告を控えるなど,被告が事件・事故に関する経緯の詳細を把握したり,報告書を作成することに支障が生じるおそれがある。
このため,本件報告書のうち日時の記載,は法5条4号柱書の独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより、当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの,に該当し,不開示とすることが相当である。
以上
**********
○被告証拠説明書 ZIP ⇒ 202004062i4j.zip
○乙4号証 ZIP ⇒ 202004063a4p15.zip
202004063b4p610.zip
202004063c4p1115.zip
またはhttps://www.soumu.go.jp/main_content/000476246.pdf
■このように、今回の被告の第一次訴訟・準備書面(2)は10ページにも及びました。かつて、同じく1か月半の反論期間を与えられて、お粗末な2ページ準備書面だけ作ってきた(https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2388.html)のと同じ弁護士事務所が書いてきたとは信じられない分量です。さすがに状況の不利を悟り、裁判長と高専機構に尻を叩かれる形で、「本気」を出して書いてきたものと思われます。
しかしその中身をつぶさに見ていくと、相変わらずの強弁とコピペまみれの木村・藍澤クオリティが散見されます。弁護士費用隠しの正当化に出してきた乙4号証の答申例も、かつて当会から審査請求を出した際に出してきたものをそのままもう一度出してきているだけで、何も新規主張がありません(参考:https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2530.html)。
とはいえ、裁判官も高専組織の仕組みや運営には全員素人なので、適当なハッタリだけかましておけば勝てるだろうという目算なのかもしれません。
■ところで当会が気になったのは、高専機構側が「ホンネ」を隠そうともしなくなっていることです。たいてい、暴かれたくない情報を不開示にした際には、そことは関係のない適当な屁理屈やこじつけ、論点ずらしをして、「別に都合の悪い事実があるから隠しているわけでは無い」という体裁で乗り切るものです。しかし、今回の準備書面をみると、もはやオブラートに包むことすら諦め、「都合の悪い事実を暴かれたくない」というどストレートな主張が随所に出てきていることが分かります。
例えば1項(3)では、高専校長候補者の推薦機関内訳すら明らかにできない理由として、「これらの情報と,実際に就任した校長の職歴を比較すれば,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することも可能となる。このため,上記の項目を開示した場合,推薦機関が候補者の推薦を躊躇したり,推薦者の人数を減少させる,といった対応を取るおそれがある。」などと言い出していますが、候補者の“出自”で選考を左右しているのでなければ、こんな主張は出てこないはずであり、そう自白しているに等しいものです。そして、そうした実態を暴かれたくない、とストレートに本音を出してきています。
また、5項(2)では、長野高専における自殺事案の日時情報を明らかにしない理由として、「日時の記載が開示される可能性があることが被告の教職員に認知されると,類似の事件・事故事案が発生して報告書を作成する際,自身の対応経過が明らかとなって批判の対象となることなどを懸念して,教職員が対応経過の詳細についての報告を控えるなど,被告が事件・事故に関する経緯の詳細を把握したり,報告書を作成することに支障が生じるおそれがある。」などと主張を始めています。記載のある日時が明らかになると批判の対象にされる、という理屈がよくわかりませんが、これは換言すれば、「当時の長野高専の対応が杜撰極まるものだったので、日時情報開示を足掛かりにその実態を暴かれたくない」という本音そのものです。
恐らく、当時の対応を明らかにしてほしい、と願う長野高専関係者らの姿を見て、絶対に明らかにされてたまるものか、と準備書面に盛り込んできたものと思われます。意味不明な形で突然、説明もされず学友を奪われた関係者の切なる想いを、真っ向から踏みにじりに来る高専機構と長野高専の姿勢は、まさに“人でなし”と評せるでしょう。
■さて、被告のこうした主張を検討して、原告オンブズマンとして更なる反論を作成していくことになります。しかし、先日ご報告のとおり、この準備書面を基にして4月14日に行われるはずだった第三回口頭弁論は、新型コロナウイルス緊急事態宣言の影響で中止・再日程不明という事態に遭ってしまいました。
○2020年4月7日:【お知らせ】新型コロナ緊急事態宣言のため高専過剰不開示体質是正訴訟の審理が一時中断↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3144.html
訴訟進行が大幅に遅れてしまうことは大変に遺憾ですが、ポジティブに捉えれば、被告高専機構と木村・藍澤弁護士が「本気」で書いてきた主張をじっくりと吟味できる時間が与えられたということであり、余裕があれば、第三回口頭弁論前の原告準備書面提出も視野に活動してまいります。
第一次訴訟の再日程は、決まり次第またご報告いたします。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その1)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3055.html
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その2)↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3056.html
○2019年12月30日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3101.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟での被告・原告の準備書面(1)と第二回口頭弁論の様子↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3129.html
そうした手厳しい指摘の数々を受けて、尻を叩かれた形の高専機構が、正確には高専機構が大金をはたいてすがる銀座の木村・藍澤・角谷弁護士トリオがどのような主張を見せてくるか注目されていました。
■すると、第二回口頭弁論で指示された提出期限である4月6日ちょうど、当会事務局に被告高専機構の準備書面(2)が送られてきました。内容は以下のとおりです。
*****被告準備書面(2)*****ZIP ⇒ 202004061aiqjfaxp4.zip
202004061biqjp5p10.zip
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分取消請求事件
原 告 市民オンプズマン群馬
被 告 独立行政法人国立高等専門学校機構
準 備 書 面 (2)
令和2年4月6日
東京地方裁判所民事第2部Bc係 御中
被告訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
同 角 谷 千 佳
記
訴状別紙不開示処分取消請求箇所(22頁,以下「別紙」という)の各項目の不開示事由に関する補充について
1 別紙1項について
(1)別紙1項の取消請求の対象箇所は,甲第3号証の国立高等専門学校長候補者一覧の不開示部分のうち各候補者の氏名を除く箇所であり,この候補者一覧には,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No,推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴や現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ごとに一覧表にまとめて記載されている。
(2)これらの記載のうち,候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)5条1号前段の個人識別情報に該当する。また,主な学歴,学位,職歴の項目も,現職に至るまでのものが複数記載されている。このため,氏名を不開示として学歴や職歴,専門分野のみを開示した場合でも,これらの記載を組み合わせてネットで検索する等の方法により,該当の候補者を特定することが容易に可能となる。このため,学歴,学位,専門分野,職歴,現職に関する記載についても,法5条1号本文前段にいう個人識別情報に該当する。
(3)また,甲第3号証の記載項目のうち,たとえば整理Noや職歴のうち現職に関する記載,推薦機関の種別のみを開示した場合には,個人を特定できる可能性は低いものの,当該候補者を推薦した機関や,推薦機関別(大学,被告が運営する高専,文部科学省)の候補者の多寡を判断することができる。これらの情報と,実際に就任した校長の職歴を比較すれば,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することも可能となる。このため,上記の項目を開示した場合,推薦機関が候補者の推薦を躊躇したり,推薦者の人数を減少させる,といった対応を取るおそれがある。さらに推薦機関が被告に校長候補者を推薦するにあたっては,候補者本人から推薦の内諾を得ているものと解されるが,学歴,経歴といった個人に関する事項が開示される場合はもちろん,推薦機関別の候補者の多寡といった情報が明らかになった場合でも,自身が登用されないことが明らかになることを嫌い,またそもそも校長に選定される見込みが低いといったことを考慮して,候補者が推薦の内諾を拒否するといった事態が生じることも考えられる。
このように,甲第3号証の不開示事由を開示した場合には,多数の有為な人材から校長を選任するという被告の円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある。同号証のうち,整理No,主な学歴,学位,専門分野,職歴や現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先),推薦機関の種類別といった項目は,人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものとして,法5条4号への不開示情報に該当する。
(4)さらに,甲第3号証の一覧表は,被告が各推薦機関から提供された校長候補者の学歴,職歴等の事項のすべてを記載したわけではなく,提供された情報のなかから校長の選定の考慮要素として主要と考えられる事項を整理して記載したものである。また,一覧表に記載された項目は、推薦機関ごとに若干異なっておいる(ママ)。このため,甲第3号証の一覧表に記載のある項目のすべてや,その並び順を開示すれば,被告における校長選定において重視される事項や,どの推薦機関の候補者をまとめた一覧表かを推測することが可能となる。これにより被告内外から校長の選考基準について容喙(ようかい)されるなど,被告における校長選考に関する自由な議論を阻害したり,推薦機関からの候補者の推薦に支障を来すことが考えられ,被告における公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ(法5条4号ヘ)がある。
(5)原告は,被告が甲第8号証記載のとおり「校長の選考プロセスについては,理事長から高専,理工系または商船系の分野を有する大学,文部科学省に推薦を依頼し,(中略)推薦される候補者は概ね20人程度で,選考を経て,校長に登用される者は概ね10人程度」と設明したことを指摘して,推薦機関や全候補者数について被告が説明している以上,推薦機関や候補者の人数を開示しても,被告の人事管理に支障は及ぼさない,と主張する。
被告が甲第8号証における上記記載のとおり校長選考のプロセスを説明したことは,原告が指摘するとおりであるが,上記説明はあくまで校長選考のプロセスを一般論として説明したものに過ぎず,個別の推薦機関ごとの推薦者数や,推薦機関ごとの校長の登用数に言及したものではない(人数について言えば,退任予定の校長の数にもよるので,候補者数,登用数とも,年度により相当のばらつきがある)。原告は最低でも①各候補者の推薦機関,②当該年の全候補者数が分かる情報,③個別の項目名が分かる情報を開示すべき(訴状3頁)とするが,これらの情報を開示することにより校長の選考という人事管理に支障を生じるおそれがあることは前記のとおりである(候補者一覧は推薦機関別で作成しているため,推薦機関とは無関係に全候補者数を開示することはできない。校長に選任された者と,その者の前歴は各高専のホームページ等で集計できる以上,全候補者数を開示しようとすれば推薦機関別の候補者数を容易に推測できることになる。)
以上のとおり,原告が訴状別紙1項で不開示決定の取消を求める事項は,法5条1号本文前段の個人識別情報,ないし法5条4号への人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものとして,不開示とすることが相当である。
2 別紙2項について
(1)原告が別紙2項で取消を求めているのは,甲第4号証の群馬高専元校長の西尾典眞氏の印影及び退職理由に関する被告の不開示決定である。
甲第4号証は西尾氏の退職届であり,これらの記載は西尾氏の個人に関する情報として,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。さらに被告では,校長をはじめ教職員の退職理由を公開する慣行はなく,法5条1号ただし書イには該当しない。
(2)原告は,群馬高専担当者及び同校の山崎誠校長が,甲第9号証にあるように「(西尾校長が)人事交流という形で群馬高専の校長に着任しており,交流元(文科省)のほうでいろいろ調整があったので,交流元に復帰した」,「交流元が文科省なので,文科省に戻ったということ」,「要するに元に戻っただけ」と説明したことを指摘して,西尾校長の辞任届における退職理由が,法5条1号ただし書ハの「職務の遂行に係る情報」に当該する,と主張する。
甲第9号証にあるように,群馬高専担当者及び山崎校長が,西尾氏が人事交流で群馬高専に着任し,その後交流元の文科省に復帰したと説明したことは事実であるが,そのことと西尾校長の退任が職務の遂行として行われたものかどうかは,まったく別の問題である。
西尾氏は,文部科学省から群馬高専校長に就任したが,この就任にあたって被告と雇用契約を締結して被告の被用者となっており,文科省の所属から一旦離れている。甲第4号証の退職届は,被告との雇用契約を終了するという被用者としての意思を表示したものであって,この意思表示は,退職理由のいかんにかかわらず被用者の個人としての行為であることは明らかである。法5条1号ただし書ハにいう「職務の遂行に係る情報」は,独立行政法人等の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味することは答弁書3項(2)で指摘したとおりであり,被用者としての行為が職務を遂行する場合における活動とは考えられない以上,甲第4号証における退職理由の記載が法5条1号ただし書ハに該当するとの原告の主張は,失当である。
3 別紙3項について
(1)原告が別紙3項(1)及び(2)で不開示決定の取消を求める事項は,甲第5号証のうち,(1)につき氏名及び人事前後の職名に関する記載についての不開示部分,(2)につき常勤教職員に関する退職理由の記載である。
(2)このうち,別紙3項(1)の氏名及び人事前後の職名が不開示となっている職員は,群馬高専において補助的業務に就いている事務職員(以下「補助職員」という)である。被告では,内部基準に従って国立印刷局編「職員録」(甲第5号証作成当時は財務省印刷局編「教識員録」)に教職員を掲載して,ここに掲載された教職員かどうか,を教職員の異動等を外部に公開するか否かの一つの判断基準としている。甲第5号証のうち氏名を開示した教職員は,上記「教職員録」にも掲載されていることから,氏名等についても法5条1号イの,「慣行として公にされ」ている情報として開示する情報と判断した。
これに対して,補助職員は,上記「教職員録」に掲載されておらず,氏名や所属を公にする慣行はない。さらに,この補助職員は,群馬高専の各科(機械工学科等,5学科ある)に1名ないし若干名しかおらず,これらの者の退職時の所属や職名を開示した場合には,氏名を開示しなくても,群馬高専内外の者に,当該所属や職名が誰に関する記載であるか,容易に特定することが可能となる。このため,原告が別紙3項(1)で不開示決定の取消を求めている情報は,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。
なお,訴状別紙3項(1)の氏名及び人事前後の職名に関する記載は,本件訴訟に先行して原告が申し立てた審査請求に対する答申書別紙(乙2,11頁)における,1項の「技術補佐員に係る記載(特定刊行物に掲載されたものを除く)」,4項の「技術補佐員に係る記載(特定刊行物に掲載されたものを除く)」と,7項の「教員に係る部分」以外の部分である。情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」という)は,当該記載は法5条本文1号前段の個人識別情報に該当し,法5条1号ただし書イないしハに該当すべき事情は認められないとして,不開示としたことは妥当と判断した。
(3)原告は,準備書面(1)7から8頁で,甲第5号証の校報の年度に対応する群馬高専の年報(甲31) において,技術職員や技術補佐員について記載があることを指摘する。しかし,このうち技術職員は,前記の補助職員に該当せず,甲第5号証でも氏名等を開示している(甲5, 校報131号2頁,採用欄1行目等参照)。これに対し,技術補佐員は,前記の補助職員に該当し,氏名や所属,異動を公にする慣行はない。
また原告は,平成29,30年度の年報に,技術補佐員の退職挨拶が掲載されている(甲11,6頁)ことを指摘する。しかし当該技術補佐員の退職挨拶は,勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮した,という個別の事情によるものであり,技術補佐員が退職する際に年報に挨拶を掲載するといった慣行はなく,年報以外でも異動や退職を群馬高専の外部に公開していない。
以上のとおり,原告の各指摘は,法5条1号イの慣行として公にされている情報に該当することの根拠となるものではない。
なお群馬高専では,年報,校報のうち外部に公開する情報の内容を限定する見直しを行っており,甲第33号証と,甲11号証の両年報では公開対象とする情報が異なっている。
(4)また,別紙3項(2)の,常勤教職員の退職理由に関する情報は,甲第5号証のとおり,退職理由を不開示とした職員の氏名,所属が開示され,これと併記されている。このため,当該退職理由の記載は特定の個人に関する身分,地位に関する情報として,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する。さらに,常勤職員であっても,退職理由を公にする慣行はなく,法5条1号ただし書イに該当しない。
この退職理由に関する情報は,前記答申書(乙2)別紙1項で開示すべき部分から除外された,「『退職理由』の欄の記載」に該当する情報であり,審査会は,法5条1号ただし書イないしハに該当すべき事情は認められないとして,不開示としたことは妥当と判断している。
4 別紙4項について
(1)原告が別紙4項で取消を求めているのは,甲第6号証の支払決議書のうち,「合計金額」,「支払金額」,「うち消費税及び配分金額」に関する被告の不開示決定である。原告が不開示決定の取消を求める「合計金額」等の項目は,被告代理人弁護士に対する訴訟委任に係る着手金,報酬金と訴訟関係費用(以下あわせて「弁護士費用」という)に関する項目,及び八王子税務署への支払金額に関する項目である。
このうち,弁護士費用は,被告が委任した弁護土の個々の具体的業務に対して支払われた報酬単価を内容とするものであり,これは特定の法律事務所の具体の案件処理に係る取組体制や実作業等の詳細な内訳等に基づき出される営業秘密に属する情報である。この情報を公とすることにより,当該特定法律事務所の事案処理に係る方針や費用算定の方針等が明らかとなり,当該特定法律事務所及び弁護士の競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあり,その旨の審査会の答申例(乙4)も複数ある。したがって,弁護士費用に関する「支払金額」,「うち消費税及び配分金額」は,法5条2号イの「公にすることにより当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当し,不開示とすることが相当である。
また八王子税務署への支払は,上記の弁護士費用に関する源泉徴収税の支払であり,その支払内容が明らかになることにより弁護士費用の額が逆算で明らかにすることができる。さらに,甲第6号証の支払決議書の記載金額のすべてが弁護士費用の支払いに関するものであるため,「全体金額」を開示することは個別の支払金額等を開示することと同義である。このため甲6号第証のうち八王子税務署への「支払金額」及び「全体金額」も,法5条2号イの不開示事由に該当する。
(2)乙第3号証は, 原告の情報開示請求に対して被告が平成28年度の支払決議書(甲第6号証の一部である)のうち一部を不開示処分としたことに対し,原告が審査請求を行ったことに対する答申書である。この審査請求について審査会は,弁護士費用の支払金額についての不開示処分に対し,「通常公にされることのない,弁護士が事業を行う上での内部管理情報及び個別具体の業務に係る報酬等の金額であることから,これを公にすることにより当該弁護士の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとする諮問庁の説明は否定しがたい。」として,当該部分が法5条2号イに該当し,被告の不開示処分が妥当である,と判断している(乙3 , 1 1頁)
5 別紙5 項について
( 1 ) 原告が別紙5項で取消を求めているのは,甲第7号証の事件・事故発生状況報告書(以下「本件報告書」という)のうち,日時に関する被告の不開示決定である。本件報告書が長野高専の学生の死亡事案に関するものであること,は開示部分の記載から明らかであり,事件・事故発生の前後の経過の概要の一部も開示されている。日時は,事件・事故の対応経過とあわせて記載されており,日時の記載が開示されれば,開示された対応経過とあわせて本件報告書に記載された事案をより具体的に特定することが可能となる。このため,本件報告書のうち日時の記載も当該死亡学生の個人に関する情報に該当する。また,本件報告書は,学生の死亡事案という希有な事件・事故を内容とする以上,氏名や学年,所属学科等が開示されていなくても,日時が明らかになるだけで,同時期の長野高専の学生や内外の関係者にとって,本件報告書に記載された死亡学生が誰かを特定することが容易に可能となる。このため,本件報告書のうち日時に関する記載は,特定の個人を識別することができるものとして,法5条1号前段の個人識別情報に該当する。
なお原告は,甲第7号証の記載のなかに,長野高専教職員に対して自死予防に関するカウンセラーの講演が行われていること等を指摘して,本件報告書記載の事案が自死事案であることがある程度周知されている,と指摘する。しかし,自死事案であることが周知されているかどうかと,上記のとおり事案経過の詳細が明らかになることは別の問題であり,しかもカウンセラーの講演はおよそ対象事案が「慣行として公にされている」ことの根拠となるものではない。原告の指摘は,法5条1号ただし書イに該当することの根拠とはなりえない。
( 2 ) また,本件報告書は学生の死亡事案に対応した長野高専の教職員から事情を聴取して長野高専の一定の管理職以外には秘密とすることを前提に作成した内部文書であり,捜査機関など被告外部への提出を念頭に作成したものではない。このため,日時の記載が開示される可能性があることが被告の教職員に認知されると,類似の事件・事故事案が発生して報告書を作成する際,自身の対応経過が明らかとなって批判の対象となることなどを懸念して,教職員が対応経過の詳細についての報告を控えるなど,被告が事件・事故に関する経緯の詳細を把握したり,報告書を作成することに支障が生じるおそれがある。
このため,本件報告書のうち日時の記載,は法5条4号柱書の独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより、当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの,に該当し,不開示とすることが相当である。
以上
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○被告証拠説明書 ZIP ⇒ 202004062i4j.zip
○乙4号証 ZIP ⇒ 202004063a4p15.zip
202004063b4p610.zip
202004063c4p1115.zip
またはhttps://www.soumu.go.jp/main_content/000476246.pdf
■このように、今回の被告の第一次訴訟・準備書面(2)は10ページにも及びました。かつて、同じく1か月半の反論期間を与えられて、お粗末な2ページ準備書面だけ作ってきた(https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2388.html)のと同じ弁護士事務所が書いてきたとは信じられない分量です。さすがに状況の不利を悟り、裁判長と高専機構に尻を叩かれる形で、「本気」を出して書いてきたものと思われます。
しかしその中身をつぶさに見ていくと、相変わらずの強弁とコピペまみれの木村・藍澤クオリティが散見されます。弁護士費用隠しの正当化に出してきた乙4号証の答申例も、かつて当会から審査請求を出した際に出してきたものをそのままもう一度出してきているだけで、何も新規主張がありません(参考:https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2530.html)。
とはいえ、裁判官も高専組織の仕組みや運営には全員素人なので、適当なハッタリだけかましておけば勝てるだろうという目算なのかもしれません。
■ところで当会が気になったのは、高専機構側が「ホンネ」を隠そうともしなくなっていることです。たいてい、暴かれたくない情報を不開示にした際には、そことは関係のない適当な屁理屈やこじつけ、論点ずらしをして、「別に都合の悪い事実があるから隠しているわけでは無い」という体裁で乗り切るものです。しかし、今回の準備書面をみると、もはやオブラートに包むことすら諦め、「都合の悪い事実を暴かれたくない」というどストレートな主張が随所に出てきていることが分かります。
例えば1項(3)では、高専校長候補者の推薦機関内訳すら明らかにできない理由として、「これらの情報と,実際に就任した校長の職歴を比較すれば,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することも可能となる。このため,上記の項目を開示した場合,推薦機関が候補者の推薦を躊躇したり,推薦者の人数を減少させる,といった対応を取るおそれがある。」などと言い出していますが、候補者の“出自”で選考を左右しているのでなければ、こんな主張は出てこないはずであり、そう自白しているに等しいものです。そして、そうした実態を暴かれたくない、とストレートに本音を出してきています。
また、5項(2)では、長野高専における自殺事案の日時情報を明らかにしない理由として、「日時の記載が開示される可能性があることが被告の教職員に認知されると,類似の事件・事故事案が発生して報告書を作成する際,自身の対応経過が明らかとなって批判の対象となることなどを懸念して,教職員が対応経過の詳細についての報告を控えるなど,被告が事件・事故に関する経緯の詳細を把握したり,報告書を作成することに支障が生じるおそれがある。」などと主張を始めています。記載のある日時が明らかになると批判の対象にされる、という理屈がよくわかりませんが、これは換言すれば、「当時の長野高専の対応が杜撰極まるものだったので、日時情報開示を足掛かりにその実態を暴かれたくない」という本音そのものです。
恐らく、当時の対応を明らかにしてほしい、と願う長野高専関係者らの姿を見て、絶対に明らかにされてたまるものか、と準備書面に盛り込んできたものと思われます。意味不明な形で突然、説明もされず学友を奪われた関係者の切なる想いを、真っ向から踏みにじりに来る高専機構と長野高専の姿勢は、まさに“人でなし”と評せるでしょう。
■さて、被告のこうした主張を検討して、原告オンブズマンとして更なる反論を作成していくことになります。しかし、先日ご報告のとおり、この準備書面を基にして4月14日に行われるはずだった第三回口頭弁論は、新型コロナウイルス緊急事態宣言の影響で中止・再日程不明という事態に遭ってしまいました。
○2020年4月7日:【お知らせ】新型コロナ緊急事態宣言のため高専過剰不開示体質是正訴訟の審理が一時中断↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3144.html
訴訟進行が大幅に遅れてしまうことは大変に遺憾ですが、ポジティブに捉えれば、被告高専機構と木村・藍澤弁護士が「本気」で書いてきた主張をじっくりと吟味できる時間が与えられたということであり、余裕があれば、第三回口頭弁論前の原告準備書面提出も視野に活動してまいります。
第一次訴訟の再日程は、決まり次第またご報告いたします。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】