■大同特殊鋼(株)渋川工場由来の鉄鋼スラグは、有毒物質であり産業廃棄物です。不法に投棄されている廃棄物は撤去し、片づけなければなりません。しかし、群馬県県土整備部や国土交通省、そして渋川市の3者は、「鉄鋼スラグ連絡会議」というおよそ廃棄物とは関係ない怪しげな組織を立ち上げ、撤去はおろか、アスファルト舗装により被覆する工事が行われました。
大同スラグ問題で当会は、群馬県東吾妻郡萩生川西地区の農道に不法投棄されたスラグについて、提訴し控訴審まで争った結果、「直ちに被害はない」などとして敗訴させられました。そうしたなかで大同の有毒スラグを巡り、当会の萩生スラグ裁判とは別の群馬県渋川市の市道(農道)に不法投棄されたスラグ裁判の判決で、8月5日に住民が事実上勝訴しました。
ところが、市民の生活環境保全を守るべき渋川市は控訴しました。さらに大同特殊鋼が補助参加し、11月6日付で22ページもの準備書面(1)を提出してきました。まるで裁判が大同に乗っ取られたと感じた渋川市民からの声がよせられたことから、当会は11月16日付で渋川市長に公開質問をすることにしました。
なお、この問題に関するこれまでの情報は当会の次のブログ記事を参考にして下さい。
〇2018年6月6日:【報道】大同有害スラグを斬る!・・・もう一つのスラグ訴訟始まる!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2661.html
〇2018年6月10日:【報道】大同有害スラグを斬る!・・・もう一つのスラグ訴訟始まる!(その2)↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2665.html
○2018年7月16日:大同有毒スラグを斬る!…毒物入スラグ撤去を求めない県・渋川市と撤去したがらない大同らの共通利害とは↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2698.html
○2020年8月6日:【速報】大同有害スラグ報道・・・スラグにアスファルトでフタすることは違法判決!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3186.html
○2020年8月13日:【大同有害スラグ問題】・・・“スラグにアスファルトでフタすることは違法”と断じた判決文について考察↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3189.html
○2010年10月9日:【大同有害スラグ問題】渋川市が控訴理由書を提出!そこになんと訴訟参加人として大同特殊鋼の名前が!!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3216.html
○2020年11月15日:【大同有害スラグ問題】渋川市の控訴は大同のシナリオ?訴訟参加人として準備書面(1)を出した大同の本性!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3238.html
■渋川市長あての当会の公開質問は次のとおりです。
*****質問書*****ZIP ⇒ 20201116r2asjixotij.zip
令和2年11月16日
〒377-8501 群馬県渋川市石原80番地
渋川市役所
市長 高木 勉 様
TEL: 0279-22-2111/FAX: 0279-24-6541
〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
市民オンブズマン群馬 代表 小川 賢
TEL: 027-224-8567(事務局・鈴木)/
090-5302-8312(代表・小川)
FAX: 027-224-6624
大同スラグ取扱いを巡る訴訟対応に係る貴見解問合せ
拝啓 日々益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
弊団体は、行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による一般国民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。その活動方法としては、行政事件に関わる住民監査請求や住民訴訟にまで及ぶことがあり、そのための情報の入手手段としては、住民等からの情報提供のほか、行政への公開質問や情報開示請求等を活用しております。
さて、大同特殊鋼株式会社由来のスラグを巡っては、平成27年9月11日に群馬県森林環境部は、大同特殊鋼が排出したスラグを廃棄物認定しました。また、結果的に不起訴処分に終わったといえ、同年9月7日、群馬県は廃棄物処理法等に基づき、大同特殊鋼を刑事告発しています。そして、群馬県の廃棄物認定を受け同年9月18日、大同特殊鋼株式会社は「鉄鋼スラグを使用した工事等のお問い合わせにつきまして」とする問い合わせ窓口を設置するなどスラグ廃棄物認定にまつわる対応を見せていました。
他方、貴殿が首長を務める渋川市は、廃棄物の監督官庁である群馬県森林環境部を差し置き、国土交通省・群馬県県土整備部と鉄鋼スラグ連絡会議を組織し、廃棄物処理法に基づかない特異なスラグ対策を行ってきました。
そこで貴市が控訴を行った事件番号「令和2年(行コ)第181号」、事件名「渋川市が産業廃棄物撤去請求等を怠る事実の違法確認請求控訴事件」(以下「本行政訴訟事件」という)についてスラグ=産業廃棄物を投棄した大同特殊鋼株式会社が補助参加人として本行政訴訟事件に参加してきたことについて、次の質問があります。
渋川市は、市民の生活環境の保全の観点から、しっかりと今回の大同スラグを巡る事件の事実関係の確認や抗議、再発防止の要請を原因者に対して行う権利があり、また可能な限りそのようにする義務があるものと捉えております。そのためこれらの問題について、当該自治体としてのご見解を確かめたく、下記のとおり質問をさせていただきます。
敬具
記
【質問1】
貴殿は、大同特殊鋼株式会社側に本住民訴訟事件に参加するよう依頼しましたか? それとも大同特殊鋼株式会社側から本住民訴訟事件に補助参加を求めてきたのでしょうか?
【質問2】
廃棄物を投棄したことで群馬県より刑事告発処分された大同特殊鋼株式会社側に対して、なぜ貴殿は補助参加を求めたのでしょうか、あるいは補助参加を認めたのでしょうか? 理由をお聞かせください。
【質問3】
補助参加人は、令和2年11月6日に控訴人渋川市長高木勉の名前ではなく、「補助参加人訴訟代理人」として準備書面(1)を東京高等裁判所に提出した、と聞き及んでいます。あたかも本行政訴訟事件が乗っ取られたかのような印象を受けますが、このような補助参加人の独自の主張が許されるのでしょうか? 控訴を提起した主体である渋川市としてのお考えを聞かせてください。
【質問4】
補助参加人が提出した準備書面(1)は渋川市が依頼したものでしょうか? それとも渋川市が認めたものでしょうか? 貴見解をお聞かせください。
【質問5】
補助参加人名義による控訴審への参加が為されていることから、スラグの対応方針(案)を導き出した「鉄鋼スラグ連絡会議」を構成する国土交通省・群馬県県土整備部・渋川市の他、大同特殊鋼株式会社が補助参加しているとの印象を受けます。鉄鋼スラグ連絡会議の対応方針を考えるにあたり、大同特殊鋼株式会社に意見を求めたのでしょうか? 貴殿のご見解をお聞かせください。
以上、よろしくお願いします。なお、回答については、大変勝手ながら、書面で2020年11月27日(金)までに郵送あるいはFAXにて上記弊連絡先まで折り返し送達いただければ幸いです。
なお、何らかの事情によりこの期限までの回答が不能である場合は、大変お手数ではありますが上記弊連絡先までお伝えいただきたく存じます。
以上
**********
■本件控訴審に11月6日付で補助参加人として準備書面(1)を出した大同特殊鋼の主張は驚くべきもので、群馬県廃棄物リサイクル課がスラグを廃棄物認定した時には、何の文句を言わず従っておきながら、刑事告発時に、前橋地検が不起訴処分にしたことを奇貨として「スラグは(検察の不起訴により)廃棄物と見なされなかった。だからスラグは廃棄物ではない」などと、とんでもないこじ付けに加えて環境基準についても文句をつけてきました。
渋川市は一審ではスラグを廃棄物と認めているのに、渋川市を飛び越えて「廃棄物ではない」との主張が許されるのかどうか、いずれにせよ、渋川市は、大同渋川工場の企業城下町として、完全に大同のシモベに成り下がってしまったかどうか、渋川市民ならずとも渋川市長の回答が注目されます。
■その結果、回答期限日の11月27日付で渋川市長から回答書が届きました。内容は次のとおりです。
*****回答書*****ZIP ⇒ 20201128asjiiqj.zip
総第 157 号
令和2年11月27日
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
渋川市長 高 木 勉
記
平素、渋川市行政推進のため、ご協力いただき、誠にありがとうございます。
令和2年11月16日付けで送付のありました問合せについて下記のとおり回答いたします。
1 質問1について
本件住民訴訟事件に補助参加した件ですが、補助参加人が自ら補助参加について裁判所に申出をしたものと理解しています。
2 質問2について
補助参加の許否については、裁判所が行うものと認識しています。
3 質問3について
民事訴訟法上、補助参加人は自ら準備書面を提出することができると認識しています。
4 質問4について
補助参加人が提出した準備書面(1)については、補助参加人が自ら補助参加人として民事訴訟法上、認められている行為を行ったと認識しています。
5 質問5について
意見は求めておりません。
事務担当
〒377-8501 渋川市石原80番地
渋川市役所総務部総務課
TEL 0279 (22) 2111
FAX 0279 (24) 6541
**********
■これだけではよく判りませんので、質問書と回答書の項目ごとに対しさせてみてみましょう。さらに⇒緑字で当会のコメントも付記します。
*****Q&A*****
【質問1】
貴殿は、大同特殊鋼株式会社側に本住民訴訟事件に参加するよう依頼しましたか? それとも大同特殊鋼株式会社側から本住民訴訟事件に補助参加を求めてきたのでしょうか?
1 質問1について
本件住民訴訟事件に補助参加した件ですが、補助参加人が自ら補助参加について裁判所に申出をしたものと理解しています。
⇒【当会コメント1】大同が勝手に補助参加人としてでしゃばってきたのは、渋川市にもろくに真意を伝えないまま、カネにあかせて都内の弁護士に補助参加手続きを取らせた結果と思われます。ただし、渋川市は、「大同がこのようなことをすると、何も思っていなかった」と釈明するのであれば、それは不自然です。なぜなら、控訴したのは渋川市なので、大同が訴訟参加するかもしれないということは、可能性として事前に察知していたはずだからです。それだけに、大同特殊鋼は原審判決に相当の危機感を抱いており、事の重大さを認識して、焦りを隠そうとしていません。渋川市道スラグ裁判で、「撤去すべし」との判決が確定した場合、少なくとも、安中市内の例のビックカメラのメガソーラーにおけるスラグ埋設については、安中市もビックカメラに対して「大同に撤去させるよう求める」といっており、他にも、大同の企業城下町である渋川市はともかく、それ以外の市町村の関連事業現場や民間ベースで投棄した現場でも同様に大同に対して撤去要請が噴出するものと見られます。となると、コスト的にも手間的にも大同にとって更なる経営圧迫要因になるからです。
【質問2】
廃棄物を投棄したことで群馬県より刑事告発処分された大同特殊鋼株式会社側に対して、なぜ貴殿は補助参加を求めたのでしょうか、あるいは補助参加を認めたのでしょうか? 理由をお聞かせください。
2 質問2について
補助参加の許否については、裁判所が行うものと認識しています。
⇒【当会コメント2】当会からの「補助参加を認めたのか?」いう問いに対し、渋川市長は「裁判所が補助参加の諾否を決める」と回答し、自らの認否を避けました。常識的には、控訴人である渋川市が大同の補助参加を認めたわけですから、それを前提に裁判所が判断するのでしょうから、「補助参加の諾否を裁判所が行う」という渋川市の回答は、いささか判断に苦しむところです。仮に、控訴人の渋川市が黙認した上で、裁判所が判断を下すと考えれば、渋川市の回答はあまりにも他人事で、いったい誰が控訴審を考えて戦っているのかと思わざるを得ません。渋川市の訴訟代理人は、田島義康弁護士(田島義康法律事務所。〒370-0862 群馬県高崎市片岡町1-15-4)が担っていますが、きちんと弁護士に指示をしてアドバイスを受けているのでしょうか。渋川市民としては、「単に弁護士にまかせっきりではないでしょうね」との感想を抱いてしまうかもしれません。市民のことを考えて市政を行っている渋川市の職員はいないのでしょうか。渋川市民ならずとも心配なところです。また原審判決は、渋川市が所有する道路の管理という財産管理の問題について判決を言い渡しており、その財産に、被害を与えている原因者の大同特殊鋼の訴訟参加を黙認していたとなれば、渋川市の対応は明らかに大同の言うなりとしか言いようがありません。原審判決で裁判長が、悩みに悩んで下した判決に対して、控訴すること自体、住民の福祉を優先すべき地方公共団体としてありえない行為です。しかし、それを敢えて控訴したところに、大同スラグの抱える問題の深さと闇があるのだと思います。
【質問3】
補助参加人は、令和2年11月6日に控訴人渋川市長高木勉の名前ではなく、「補助参加人訴訟代理人」として準備書面(1)を東京高等裁判所に提出した、と聞き及んでいます。あたかも本行政訴訟事件が乗っ取られたかのような印象を受けますが、このような補助参加人の独自の主張が許されるのでしょうか? 控訴を提起した主体である渋川市としてのお考えを聞かせてください。
3 質問3について
民事訴訟法上、補助参加人は自ら準備書面を提出することができると認識しています。
⇒【当会コメント3】原審判決は、市が所有する道路の管理という財産管理の問題について判決を言い渡しており、その財産に、被害を与えている相手方が独自の主張を展開するのを、他人事のように放置する態度はおかしいと思います。このように、渋川市の回答が、他人事のような書き方なのは、大同のやることに口出しできない、あるいは口出しすれば、あとで当事者として何か言われれるから、という配慮が職員らにあり、こうしたそっけない回答になった可能性があります。本来は、原審判決が示した通り、行政はコンプライアンスを遵守しなければなりませんが、渋川市は大同が本件裁判にあれこれ口をはさんでくるのを黙ってみているしかないのでしょう。ここまで一企業の軍門に下っている自治体も珍しいかも(安中市と東邦亜鉛の関係も似たり寄ったりですが)。
【質問4】
補助参加人が提出した準備書面(1)は渋川市が依頼したものでしょうか? それとも渋川市が認めたものでしょうか? 貴見解をお聞かせください。
4 質問4について
補助参加人が提出した準備書面(1)については、補助参加人が自ら補助参加人として民事訴訟法上、認められている行為を行ったと認識しています。
⇒【当会コメント4】渋川市長の言い分としては、「これは大同が勝手に訴訟参加したもので、民訴法で認められている行為だ」と述べていますが、他方で、上記2のとおり、補助参加するのは、裁判長の諾否次第だ、とも言っており、渋川市としては仮に大同に対して「しゃしゃり出てくれるな」と言いたくても、言えない事情があるため、こうした第三者的なコメントをしてきたのかもしれません。渋川市民としては、本当に市民のための行政なのだろうか、と懸念されるところです。
【質問5】
補助参加人名義による控訴審への参加が為されていることから、スラグの対応方針(案)を導き出した「鉄鋼スラグ連絡会議」を構成する国土交通省・群馬県県土整備部・渋川市の他、大同特殊鋼株式会社が補助参加しているとの印象を受けます。鉄鋼スラグ連絡会議の対応方針を考えるにあたり、大同特殊鋼株式会社に意見を求めたのでしょうか? 貴殿のご見解をお聞かせください。
5 質問5について
意見は求めておりません。
⇒【当会コメント5】「意見は求めていない」ということは、大同に対して、国も県も渋川市も忖度していた、ということがうかがえます。公害企業の東邦亜鉛の場合もそうですが、大同に対して役所の職員らが特別視していることが窺えます。渋川市の場合、市長も変わり、年月も経ち当時の鉄鋼スラグ連絡会議に関わった部長クラスは既に市役所を去っています、その中で「意見は求めておりません」と簡単に返答する態度は不誠実ととられても仕方がありません。行政とは事務事業の「継続性」がもっとも特徴的であり、これが行政の本質とも言えます。つまり、当時の部長クラスが皆退職したとしても、その後任となっている職員らもまた、以前の部長クラスがしたのと同じ判断をしてしまう・・・つまり、人材が変わっても、前任者のやったことが否定できず、ましてや悪口など言えないのであり、「わかりません」と言えば、自分自身が無責任であることを認めるというふうに考えており、「意見は求めておりません」と当時の部長クラスのやり方を否定せずに回答するのが役人の習性なのでしょう。安中市のタゴ51億円事件の場合も、既に当時の事件関係者の役人も議員もリタイアしましたが、その後継者である現職の幹部らも、依然として、この忌まわしい事件を隠そうとし続けています。役所や役人に、自主性や誠実性は期待できないものなのでしょうか。
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■当会は本件控訴審について、今後の進展模様を慎重に見守ってゆく所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】