■9月2日の地元紙の社会面に、当会のみなかみ支部会員がみなかみ町を相手取り係争してきた裁判で、前日9月1日に前橋地裁民事第1部の田中芳樹裁判長が、原告棄却の敗訴判決を言い渡した記事が掲載されました。みなかみ町政を揺るがせてきた元町長の岸良昌とその取り巻き連中が起こした未曽有の組織ぐるみの犯罪的行為に、またもや前橋地裁は、行政を過剰に忖度する無責任判決を下しました。さっそく報道記事を見てみましょう。
**********上毛新聞2021年9月2日
ZIP ⇒ 20210902vlirdflj.zip
みなかみRDF 原告の請求却下 前橋地裁判決
みなかみ町内の一般ごみを再利用した廃棄物固形燃料(RDF)実証実験事業を巡り、町が計約2億3500万円の損害を受けたとして、元町議の男性が町に対し、元町長と当時の担当課長に損害額を請求するよう求めた住民訴訟の判決言い渡しが1日、前橋地裁であり、田中芳樹裁判長は原告側の請求を却下した。
原告側は、実験施設が町議会の議決を経ていない協定書に基づいて町有地に建設されるなど市、岸良昌元町長と契約変更に関わった当時の担当課長が待ちに損失を与えたと指摘していた。
判決理由で田中裁判長は、原告側は協定締結を知ってから約1年後に監査請求をしたと指摘。「訴えは適法な監査請求を前提にしたものではない」とした。
判決について、原告の男性は「検討すらせずに『却下』としたいいかげんな判決。控訴するか検討する」とした。一方、町の担当者は「判決書が届いていないのでコメントは差し控えるが、こちらの考えが認められたと考えている」とした。
**********
■みなかみ町のたくみの里近くの日帰り温泉「遊神館」の一角に、「RDF実証試験施設」なるものが建てられたのは、平成30年でした。しかし、議会の議決を経ないまま署名された協定書にもとづき、建てられたこの施設でRDF実証試験の目途は立たず、行く先を失ったRDFが保管庫から溢れ、あわてて2017年6月から別の業者とRDFの引取り契約を交わしたら、それまでの2倍の処理費用の1トン当たり3万8000円となり、みなかみ町は泣き面にハチという状況です。
そのため、こうした事態を招いた背景を調べるため、当会みなかみ支部の会員が2020年10月30日に住民訴訟を前橋地裁に提起しました。そして、これまでに、以下のとおり7回にわたる口頭弁論が開かれてきました。
①2020年1月15日 第1回口頭弁論(被告は擬制陳述で欠席)
訴状:URL ⇒ https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3068.html 参照
訴状訂正:URL ⇒ https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3093.html 参照
答弁書=被告準備書面(1):URL ⇒ https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3132.html 参照
②2020年3月11日 第2回口頭弁論(コロナ蔓延のため寸前にキャンセル)
③2020年6月17日 第2回口頭弁論(変更後)
④2020年9月30日 第3回口頭弁論
⑤2020年12月2日 第4回口頭弁論
⑥2021年2月3日 第5回口頭弁論
⑦2021年3月24日 第6回口頭弁論
⑧2021年6月2日 第7回口頭弁論(弁論終結)
なお、この事件のこれまでの経緯については、次のブログ記事を参照ください。
○2019年10月13日:スッポン養殖に目がくらみ禁断のRDFに手を出したみなかみ町に住民監査請求↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3050.html
○2019年11月2日:禁断のRDFとみなかみ町・・・お粗末過ぎる住民監査結果を通知された当会会員が住民訴訟提起↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3068.html
〇2019年12月22日:禁断のRDFとみなかみ町・・・RDF問題に光を当てる住民訴訟の第1回弁論期日が1月15日10時に決定↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3093.html
○2020年2月15日:禁断のRDFとみなかみ町・・・1月15日住民訴訟第1回弁論で町側が争う姿勢、次回期日は3月11日↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3123.html
○2020年3月8日:禁断のRDFとみなかみ町・・・第1回弁論で争う姿勢を見せたみなかみ町がようやく準備書面(1)を提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3132.html
■6月2日の第7回口頭弁論で、それまでの渡邊和義裁判長(今年4月に東京高裁の判事に異動)から後任として赴任し本事件を担当することになった田中芳樹裁判長が、いきなり結審を宣言し、「判決言渡しは9月1日水曜日13時30分とします」と告げたのでした。
そして当日、裁判所には傍聴席にみなかみ町の住民の皆さんや、町職員、そして中央部には記者席が設けられ、マスコミ関係者も多数詰めかけて、コロナ対策で減数となった傍聴席は満席の状態でした。さらに、司法修習生の若い男女2名が、法的内の向かって麦側に設えられた司法修正用の席に着きました。
原告の当会みなかみ支部会員が、法廷内に入って原告席で待機していると、まもなく定刻に少し遅れて田中裁判長が陪席裁判官2名を従えて、入ってきました。全員起立して一礼したあと、橋本書記官が「令和元年(行ウ)第20号」と事件番号を読み上げました。
そして田中裁判長がうつむいたまま、判決文を取り出し「主文、1、本件訴えをいずれも却下する。2、訴訟費用は原告の負担とする」と読み上げました。傍聴席につめかけたみなかみ町の住民の皆さんは、えっ?と何がどうなっているのか、怪訝そうな表情を浮かべました。
マスコミ関係者はさっそく記事をかくためか、あるいは判決文を確認するためか、それとも、住民の皆さんから感想を聞くためか、外の廊下に出て行きました。
当会は4名の会員が傍聴していましたが、原告の会員とともに、3階にある民事第1部の窓口に行き、「判決文」の交付を求めました。まだ、担当の橋本書記官が引き続き行われている別の裁判で戻っていなかったため、他の同僚職員に交付を求めると「当事者以外は外で待っていてください」と言われ、外にあるベンチで待機していました。
3分ほど経過すると原告の当会会員が判決文を手にして民事第1部の窓口から出てきたので、さっそく県庁2階の県民センターにあるコピー機でコピーすることにしました。
1階に降りると、ロビーに上毛新聞と読売新聞の記者が待っていました。ロビーで取材を受けると、守衛が裁判所の総務課の職員に通報して、排除されるため、外で取材を受けるため、地裁の入口前の水路に係る橋の脇で取材を受けました。そのときの当会のコメントが冒頭の新聞記事にある「検討すらせずに却下とした、いいかげんな判決」です。
果たしてどんな判決だったのか、棄却ではなく却下でしたので、傍聴席で「棄却する」という田中裁判長の声を聴いた途端、直感で気に「ああ、これは門前払いの判決だな」と確信し、傍聴席にいたみなかみ町の住民の皆さんにも、判決後、退室する際に、そのように感想をお伝えしました。
■では、実際にどのようなトンデモ判決だったのでしょうか。以下に田中芳樹裁判長によるヒラメぶり極めつけの呆れ果てた判決文をご覧いただきたいと思います。
*****9/1判決文*****ZIP ⇒ 20210901irdf1ij.zip
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令和3年9月1日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 橋本勇一
令和元年(行ウ)第20号 RDF違法事業費用損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和3年6月2日
判 決
群馬県利根郡みなかみ町布施339-1
原 告 鈴 木 章 二
群馬県利根郡みなかみ町後閑318
被 告 みなかみ町長 鬼頭春二
同訴訟代理人弁護士 増 田 智 之
同 山 崎 由 恵
同 川 住 岳 央
同訴訟復代理人弁護士 小 林 浩 暉
主 文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,岸良昌(以下「岸」という。)及び高橋孝一(以下「高橋」という。) に対し,2億3423万9025円及びこれに対する平成29年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
2 被告は,岸及び高橋に対し,120万円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
みなかみ町長であった岸は,同町を代表して,平成29年5月22日,株式会社ウィズウェイストジャパン(以下「WWJ社」という。)及びサンエコサーマル株式会社(以下「SES社」という。)との間で,一般廃策物(固形
<P2>
燃料RDF)運搬処理業務委託契約(以下,「本件業務委託契約」という。)を締結し,同年7月1日,同契約について,業務委託変更契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。また,岸は,同町を代表して,平成29年10月3日,みなかみエネルギーサービス株式会社(以下「MES社」という。)との間で,みなかみ町遊神館RDFボイラー実証試験協定(以下「本件協定」という。)を締結し,MES社は,同協定に基づいて,RDFボイラーを町有地である町営奥平温泉遊神館(以下「遊神館」という。)内に設置した。
みなかみ町民である原告は,①岸が同町役場の生活水道課長であった高橋の手引きで,違法に上記各契約を締結して同町に損害を被らせ,②岸及び高橋が,MES社が町有地内に違法にRDFボイラーを設置している 状況を放置して同町に損害を被らせたと主張して,同町の執行機関である被告を相手に,地方自治法242条の2第1項 4号本文に基づいて,岸及び高橋に対し,不法行為による 損害賠償請求として,上記①について2億3423万9025円及びこれに対する平成29年6月30日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金,上記②について120万円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで上記同様の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう請求することを求めた。
1 本件に関する法令の定め
(1) 地方自治法(以下「法」という。)の定め(抜粋)
普通地方公共団体の議会は,次に掲げる事件を議決しなければならない。(96条1項5号,6号)
ア その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
イ 条例で定める場合を除くほか,財産を交換し,出資の目的とし,若しくは支払手段として使用し,又は適正な対価なくしてこれを譲渡し,若しく
<P3>
は貸し付けること。
(2) みなかみ町議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(以下「本件条例」という。)の定め(抜粋)
法96条1項5号の規定(前記(1)ア)により議会の議決に付さなければならない契約は,予定価格5000万円以上の工事又は製造の請負とする。(2条)
2 前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認めることができる。
(1) 岸は,みなかみ町長として,平成29年5月22日,WWJ社及びSES社との間で,WWJ社がみなかみ町から発生する一般廃棄物(固形燃料RDF)を同町が指定するSES社所有施設へ運搬し,SES社が同廃棄物の中間処理を行い,WWJ社が中間処理後に発生する一般廃棄物(焼却残渣)を同町の指定するWWJ社所有施設へ運搬し,最終処分を行うことを内容とする,本件業務委託契約を締結した。(甲6の1)
また,岸は,みなかみ町長として,平成29年7月1日,WWJ社及びSES社との間で,本件業務委託契約の契約金額を1t当たり4万1040円から同4万2120円に変更することなどを内容とする,本件変更契約を締結した。(甲6の2)
(2) 岸は,みなかみ町長として,平成29年10月3日,MES社との間で,同町の製造するRDFを燃料としたRDFボイラーを遊神館内に設置して温泉施設の加温実証試験を行うことを目的とする,本件協定を締結した。(乙5)
(3) MES社は,本件協定に基づいて,遊神館内にRDボイラーを設置した。(甲8)
(4) 原告は,平成30年5月1日から同年8月6日までの間,みなかみ町
<P4>
議会議員であった。
(5) 原告は,平成30年6月8日,みなかみ町議会の厚生常任委員会に委員として出席した。
同委員会では,町職員から,WWJ社に対して一般廃棄物としてRDFの焼却処理委託を行い,SES社が中間処理を行った後,草津町の最終処分場で埋立て処分をしていること,遊神館内に設置されたRDFボイラーについては,実証実験による実績を検証した上で有効性が確認できれば本格稼働ヘ移行することが協議されたこと及び土地の使用許可が未決であること等が説 明された。(乙2)
(6) 原告は,平成30年7月27日,みなかみ町議会の全員協議会に出席した。
同協議会では,RDFに関する事実経過,本件協定の内容,運搬業務委託先としてWWJ社を選定した経緯等が話し合われた。
また,同協議会で出席者に配布された「遊神館RDF経過(説明)」と題する書面には,平成29年度より,RDFを一般廃棄物としてWWJ社に委託処理していること,みなかみ町とMES社との間で本件協定を締結したこと,遊神館内にRDFボイラーが設置されたこと等が記載されている。(甲8,乙3)
(7) 読売新聞は,平成30年7月27日,本件協定に基づいて設置されたRDFボイラーが稼働していないこと等を報道した。
また,同新聞は,同月31日,RDFボイラーの設置について,町有地の使用許可がされていないこと等を報道した。(甲1の2・3)
(8) 原告は,令和元年8月1日,みなかみ町監査委員に対し,RDFに関連した事業について,住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。(甲1の1)
(9) みなかみ町監査委員は,令和元年9月30日付けで,本件監査請求の
<P5>
一部に理由があるとしてみなかみ町長に対して勧告を行ったことを原告に対して文書で通知し,原告は,同年10月3日,これを受け取った。
なお,上記勧告の内容は,みなかみ町長に対し,遊神館内に設置された RDFボイラーに関して町有地の行政財産使用許可を出すことによって財産の管理を怠る事実を解消すること等を求めるものであった。(甲4)
(10)原告は,令和元年10月30日,本件監査請求の結果を不服として,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実)
3 争点及びこれに対する当事者の主張
(1) 適法な監査請求の前置の有無(争点1)
(被告の主張)
ア 監査請求期間の経過について
原告は,平成29年5月22日の本件業務委託契約の締結行為,同年7月1日の本件変更契約の締結行為及び平成29年10月3日の本件協定の締結行為を財務会計上の行為として主張しているところ,本件監査請求は,令和元年8月1日に行われており,財務会計上の行為があった日から1年を経過している。
イ 法242条2項ただし書の「正当な理由」がないことについて
原告は,平成30年5月1日から同年8月6日までの間,みなかみ町議会議員として在職しており,また,新聞報道及び同町が発行する「議会だより」に接することによって,住民監査請求をするに足りる程度の情報を知り得たというべきである。したがって,相当な期間の経過後である令和元年8月1日に住民監査請求がされているのであるから,「正当な理由」は存在しない。
(原告の主張)
ア 監査請求期間について
本件監査請求について,みなかみ町監査委員から,手続そのものの違法性については何ら指摘されていない。したがって,本件監査請求は適法である。
<P6>
また,原告は,岸及び高橋が遊神館内にRDFボイラーが存在している状態を放置しているという怠る事実についても本件監査請求をしているのであり,当該怠る事実については,監査請求期間の制限はない。
イ 「正当な理由」があることについて
被告は,監査請求期間の経過を主張するが,本件監査請求の端緒となったのは,みなかみ町議会のゴミ処理調査特別委員会が平成31年4月15日までにまとめた中間報告書であり,原告は,これを入手し,内容を精査して必要な分析を踏まえた上で本件監査請求をしたものである。
また,原告がみなかみ町議会議員であった当時は,町長のセクハラ問題で町政は大揺れの状態であり,RDFについては時々討議の中に出てきたが,RDFという言葉さえ初めて聞いたほどで,この問題の本質など分かるはずもなかった。
(2) 本件各行為の違法性の有無(争点2)
(原告の主張)
岸が,平成29年5月22日,高橋の手引きで,WWJ社及びSES社との間で,本件業務委託契約を締結し,同年7月1日,本件変更契約を締結した行為について, いずれも法96条1項5号に基づき,町議会の議決を経るべきであったにもかかわらず,これを怠った違法がある。
また,岸が,平成29年10月3日,高橋の手引きで,MES社との間で本件協定を締結した行為について,法96条1項5号又は6号に基づき,町議会の議決を経るべきであったにもかかわらず,これを怠った違法がある。
さらに,岸及び高橋が,遊神館内にRDFボイラーが存在している状態を放置していることについても,RDFボイラー設置の根拠となった本件協定の締結行為が町議会の議決を経ていないとの違法がある。
(被告の主張)
本件業務委託契約及び本件変更契約は,一般廃棄物(固形燃料RDF)運搬
<P7>
処理業務の委託を内容とする契約であり,法96条1項5号及びこれに基づく本件条例2条所定の契約に該当しない。
また,本件協定は,RDFボイラーの実証試験を行うことに関する協定であり,法96条1項5号,6号及び本件条例2条所定の契約に該当しない。
したがって,上記のいずれについても,町議会の議決を経ることを要しないから,原告主張に係る違法はない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(適法な監査請求の前置の有無)について
(1) 怠る事実について監査請求期間の制限が及ぶか
ア 普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして法242条1項の規定による住民監査請求があった場合に,その監査請求が,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているもの(いわゆる不真正怠る事実)であるときは,当該監査請求については,上記怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定を適用すべきものと解される(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決民集41巻1号122頁参照)。
イ 原告は,岸及び高橋が,遊神館内にRDFボイラーが存在している状態を放置していることを財産の管理を怠る事実とし,その違法事由として,RDFボイラー設置の根拠となった本件協定の締結行為が,みなかみ町議会の議決を経ていないことを主張する。すなわち,原告は,本件協定の締結行為が違法,無効であることに基づいて,SES社に対する何らかの実体法上の請求権が発生しており,岸及び高橋がこれを行使しないことをもって財産の管理を怠る事実と主張するものと解される。
ウ したがって,上記財産の管理を怠る事実は,いわゆる不真正怠る事実に該当
<P8>
するから,その監査請求は,本件協定の締結行為がされた 平成29年10月3日(前提事実(2))を基準として法242条2項の規定を適用すべきである。
(2) 監査請求期間の経過の有無
前記前提事実(1),(2)及び(8)によれば,平成29年5月22日に本件業務委託契約の締結行為が,同年7月1日に本件変更契約の締結行為が,同年10月3日に本件協定の締結行為がそれぞれされているところ,本件監査請求は,令和元年8月1日にされており,上記各行為のあった日から1年の監査請求期間を経過していると認められる。
(3) 「正当な理由」の有無
ア 普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかにより判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。もっとも,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成14年10月15日第三小法廷判決・裁判集民事208号157頁)。
イ 前記前提事実(4)から(6)までによれば,原告は,みなかみ町議会議員として平成30年6月8日の厚生常任委員会及び同年7月27日の議会全員協議会に出席し,これらの会議において,RDFに関する問題として,本件業務委託契約や本件協定,RDFボイラーが設置された土地等に関する議論に参加していることが認め
<P9>
られる。また,前提事実(7)によれば,原告は,平成30年7月27日及び同月31日の新聞報道により,RDFボイラーの稼働や同ボイラーが設置された土地の使用について問題が生じていることを知ることができたことが認められる。
したがって,原告は,遅くとも平成30年7月31日までには,監査請求をするに足りる程度に本件業務委託契約の締結行為,本件変更契約の締結行為及び本件協定の締結行為の存在及びその内容を知ることができたと解される。このような原告の状況に基づいて考えると,上記同日から約1年後である令和元年8月1日にされた本件監査請求は,相当な期間内にされたものということはできず,本件監査請求について法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとはいえない。
ウ 本件監査請求に至る事情について原告はるる主張するけれども,原告が監査請求をするに足りる程度に上記各行為の存在及びその内容を知ることができたか否かの判断は,原告が主張するような事情の有無によって左右されるものではない。
2 結論
以上によれば,本件訴えは適法な監査請求を前置したものでなく,いずれも不適法であるから却下を免れない。
前橋地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官 田 中 芳 樹
裁判官 杉 浦 正 典
<P10>
裁判官 清 水 瑛 夫
<P11>
これは正本である。
令和3年9月1日
前橋地方裁判所民事第1部
裁判所書記官 橋 本 勇 一
前橋 20-006850
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■ご覧のとおり、裁判所は、争点1として「違法な監査請求の前置の有無」しか判断していません。
しかも、原告が、監査請求は実際に有効だとして受理され、勧告迄出されており、その勧告の内容が不十分だったことから、当事者らの責任を問うために提起した住民訴訟であり、監査請求を有効に前置した上での提訴であることは誰が見ても明らかです。
また、協定書の締結から1年を経過しても、依然としてみなかみ町は町有地を不法に無償提供している状態なので、住民監査請求は有効であること、また、RDFの運搬・処理業務委託契約については、現在もなお引き続いて継続している契約行為であり、これも住民間請求の対象として有効であることを、原告は一貫して主張してきたにもかかわらず、田中芳樹裁判長は、そうした原告の主張を一顧だにせず、ただただ期限徒過だけを前面に押し出して、この裁判の本質に踏み込まないまま、門前払い同然の「却下」判決を言い渡したのでした。
■行政を相手取った住民訴訟の勝訴率は、ふつう数パーセントと言われますが、ここ群馬県では、前橋地裁は各支部の裁判所において、住民側が勝訴した試しは、すくなくとも当会市民オンブズマン群馬としては、沼田土木事務所管内での公共工事における談合問題で勝訴し、談合業者から損害を回収させた事例を除き、他に記憶がありません。
当然、このような理不尽な判決は、前例として放置しておけませんので、控訴すべきだとする声もあります。しかし、別の観点からすると、裁判所が、このような明らかな利権の乱用行為が自治体内部で組織的に行われている実態について、自らメスをいれることができず、だから判断も出来ないため、こういう門前払い判決しか、出せないのが現在の我が国の司法の実態であると考えられなくもありません。
原告の当会会員は、記者からのインタビューに対して「控訴するか検討する」と答えていますが、日本の司法がこのような体たらくであるため、9月15日の期限までに控訴しても東京高裁で再び「一審の判断を指示する」などという判決が出される可能性が高いため、別の方法を模索したいとする意向も示しています。
控訴する場合でも、そうでない場合が選択されたとしても、引き続き当会はみなかみ町政を巡る黒い霧を晴らすために努力を続けている当会のみなかみ支部会員を全力でサポートしてまいる所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報「みなかみ町RDF問題に関する町内配布チラシ」
今年5月にみなかみ町の市民団体が、この問題を住民に周知すべく新聞折込などを通じて庁内に配布したチラシ。この事件の弁論でも、かならず町民の方々が傍聴されていました。住民の皆様の関心の高さがうかがえます。
**********ZIP ⇒ 20210511rdfv.zip
こんなこと許せますか? 削減のはずの処理費が倍加
みなかみ町のごみ問題をご存じですか。
1つは、遊神館の施設内に町の使用許可もなくRDF実証実験ポイラーが設置されたこと。もう1つは、RDF処理業者を変更したことで、ごみの委託費が2倍近くに膨らんだことです。(令利元年5月25日付の読売新聞が報道)
問題点を明らかにし、今後の町のごみ処埋のあり方を検証したいと思います。
疑問点①
何故、誰も責任を取っていないのか?
この問題は、現在も未解決で誰も責任をとっていません。契約変更で膨らんだ委託費用は、現在も続いています。いまだに知らない方も多いし、広く知らされていません。問題を知れば怒らない町民はいないはすですa
現在も続くRDF事業は、ごみを固形燃料化(RDF化)し有効利用しようというものでした。
旧3町村による共同事業(月夜野水上新治衛生施設組合)として、平成10年に開始しました。当初はRDFを奥利根アメニティパーク内発電の燃料としてきましたが、平成18年8月に熱交換器等不具合事故で発電施設が稼働停止となり、状況は一変しました。
それまでは、RDFを有効利用しようというものでしたが、 この時点で逆有償(1トンあたり1000円で販売、運搬費21000円)となり、事実上RDF事業は破綻したといえます。にもかかわらず10年以上も転換をはかることなく事業を継統してきたことは行政の怠慢としかいえません。
さらに、経費割減すべきところを平成29年5月、当時の担当課長が独断(調査委員会報告)でRDF処理業者を変更したことで、処理費用が2倍近くに膨らみました。委託変更により1トンあたり39000円+消費税となりました。かってな判断で町に損失を与えたわけですから大変な事件ではないでしょうか?さらにRDF事業には、従来の焼却方式を変革し環境に配慮、資源化率100%をめざす。(アメニティパークパンフ)という大義があったわけですが、結果これを無視して一般廃棄物として焼却処理することになりました。一般廃棄物として処理するためにわざわざ高い費用をかけてゴミをRDF化する必要はありません。
みなかみ町の「ごみ問題」
一連の関連報道
廃棄物燃料で源泉加温、みなかみ遊神館、臭い、有害物を懸念 (上毛新聞・平成30年7月 24日)
RDF稼働「検証必要」町議会特別委中間報告、町長「実施難しい」(朝日新聞・令和元年5月22日)
RDF事業「一部職員らで複雑化」みなかみ町議会特別委最終報告案(令和元年9月3日)
RDF事業に是正勧告、監査委 安全性確認を指摘(上毛新聞・令和元年10月1日)
RDF処理費節減を勧告、みなかみ町監査委員 町長「対応したい」(上毛・読売新聞・令和元年10月1日)
みなかみの固形燃料問題「元町長へ賠償請求を」提訴(朝日新聞・令和元11月1日)
ごみ処理巡り答弁拒否連発、みなかみ町長、訴訟を理由にRDF課題多く、再検討含め岐路に(令和2年1月2日発行議会だより)
<RDFの取り扱い推移>
アメニティパークの燃料(平成10年~平成18年8月)
1トンあたり1, 000円で販売、21,000円の運搬費
※逆有償ながら有価物として取り扱う(平成18年8月~平成29年4月)
1トンあたりの委託費39,000円+消費税
※一般廃棄物として焼却(平成29年5月~現在)
<現在のRDF1トンあたりの処狸費>
ごみをRDF化するのに約8,500円
RDFを処理委託するのに39,000円+消費税
<平成29 年度の一人あたりのごみ処理経費>
みなかみ町 24,000円
全国平均 16,103円
志布志市 約8,000円
(志布志市は徹底した分別資源化をめざしています)
疑問点②
何故、RDF処理業者を変更したのか?
議会には、取り引き先から断られたと報告されていたが、事実はみなかみ町側から契約を解除。調査委員会は当時の担当課長が独断で判断したというが、そんな権限はない。何を忖度(そんたく)しておこなわれたのか疑問が残る。
ごみ処理経費を削減する必要(平成27年、奥利根アメニ ティバークの経費削減計画)から、町内でRDFを燃料として使おうとしたことはわかるが、なぜこのようなことになったのでしょうか。
これらの問題を明らかにするため、町にごみ処理調査特別委員会を設置しました。
遊神館のボイラーについて、安全性及び安全運転上の様々な対策が必要であると指摘、また、北海道富良野市のボイラーでみなかみ町のRDFを燃焼し、燃焼が可能であると報告されていたが、排ガスで基準値の7倍以上のダイオキシンが発生していたことを明らかにした。
そのうえでポイラー設置の経過については、真相究明されることなく「不充分な実態解明のまま限界を感じた」として令和元年9月、最終報告をおこない調査委員会を解散した。
関係者から確認すべき調査をおこなったとしながらも、RDFボイラー実証試験協定書を結んだみなかみエネルギーサービスや当時の町長からの聴取はおこなわれていません。
なぜ聴取がおこなわれなかったのでしょうか。
協定書が結ばれたのは当時の町長が落選する直前であり、その半年前には、ある議員が関わる業者から町長宛に施設建設の見積りが提出されています。
疑問点③
何故、調奎委員会は、不充分な実態解明のまま限界を感じたのか?
協定書を結んだ当事者には聴取がおこなわれていない。委員会の力関係で聴取はおこなわれなかった。
その後の議会でも、ごみ問題について取り上げたのは、1人の議員が令和元年12月議会に取り上げただけです。議会も現段階ではこの問題にふれようとしていません。
町長も訴訟(この問題で住民から訴訟がおこされている)を理由に真相についても、今後のごみ処理についての方針も明らかにしていません。
疑問点④
今、協定書は?
みなかみ町製造のRDFを燃料にRDFボイラーを遊神館に建設し温泉施設の加温実証実験を行うことを目的とした実証試験協定書は、平成29年10月3日にみなかみ町とみなかみエネルギーサービス(株)とで締結されている。一連の問題は協定書に沿っておこなわれたのか?協定はどうなっているのか?
そもそもみなかみ町のRDFは、有価物5要件をみたしていないためボイラーでは燃焼させることができない,
疑問点⑤
何故、RDF事業にこだわるのか?
すでにRDF事業の破綻は明らかなのに、RDFをつくり続けるのか,議会も町長も真相究明して問題を明らかにし、新たなごみ処理方針を提起しないのか、問題は解決していない。
一緒にごみ問題を考えましょう
この間題に対し、住民監歪隋求や訴訟が行われています。また、私たちも「みなかみ町のごみ処理を考える会」で取り組みをすすめています。
真相の究明と問題点を明らかにすること。RDF事業の見直しを求めて、町と懇願、要望書を提出してきました。
いまだに知らない方も多いこの問題は放置したままでいいのでしょうか。ごみ処理問顆の解決には多くの町民の協力と理解が必要です。
地球温暖化や異常気象による自然災害対策が叫ばれる昨今です。ごみ処理のあり方も見直す必要があります。
一刻も早く、RDF事業を転換するため、一緒にごみ問題を考えましょう。
↑RDF↑
※RDF固形化施設の廃止とごみ行政の見直しを求める要望書(署名)にご協力下さい。
要望事項
1、RDF固形然料化施設の廃止計画を迅速にすすめること。
2、ごみ分別資源化の推進、ごみ処理費用の削減。
3、高いごみ袋を無料にしてください。
みなかみ町のごみ問題を考える会
連絡先代表 大坪 進 みなかみ町新巻1225 TEL64-1663
**********毎日新聞2012年9月2日
みなかみRDF住民訴訟 元町議の訴え却下 地裁判決 /群馬
ごみ固形化燃料(RDF)を利用したボイラー実証試験事業を巡ってみなかみ町に損害を与えたとして、鈴木章二元町議が岸良昌元町長らに約2億3500万円を請求するよう鬼頭春二町長に求めた住民訴訟で、前橋地裁(田中芳樹裁判長)は1日、訴えを却下する判決を言い渡した。
判決などによると、岸氏は2017年10月、RDFを熱源とする温泉施設の加温実証実験を行う協定を民間会社と締結。だが、後任の前田善成前町長らが計画を問題視して事業は停止され、18年7月に問題が報道された。
鈴木氏は19年8月、原因究明を求めて住民監査請求をしたが、岸氏が現職だった際に議会の議決なく支出されたRDF処理費用などの損害が町監査委員の勧告で指摘されていないことを不服として、住民訴訟を起こした。
判決は「鈴木氏は遅くとも18年7月の報道で問題を知ることができた」と指摘。そもそも地方自治法で定める住民監査請求の請求期間(1年)を過ぎており、期間を延長する正当な理由もないとした。【川地隆史】
**********
**********上毛新聞2021年9月2日
ZIP ⇒ 20210902vlirdflj.zip
みなかみRDF 原告の請求却下 前橋地裁判決
みなかみ町内の一般ごみを再利用した廃棄物固形燃料(RDF)実証実験事業を巡り、町が計約2億3500万円の損害を受けたとして、元町議の男性が町に対し、元町長と当時の担当課長に損害額を請求するよう求めた住民訴訟の判決言い渡しが1日、前橋地裁であり、田中芳樹裁判長は原告側の請求を却下した。
原告側は、実験施設が町議会の議決を経ていない協定書に基づいて町有地に建設されるなど市、岸良昌元町長と契約変更に関わった当時の担当課長が待ちに損失を与えたと指摘していた。
判決理由で田中裁判長は、原告側は協定締結を知ってから約1年後に監査請求をしたと指摘。「訴えは適法な監査請求を前提にしたものではない」とした。
判決について、原告の男性は「検討すらせずに『却下』としたいいかげんな判決。控訴するか検討する」とした。一方、町の担当者は「判決書が届いていないのでコメントは差し控えるが、こちらの考えが認められたと考えている」とした。
**********
■みなかみ町のたくみの里近くの日帰り温泉「遊神館」の一角に、「RDF実証試験施設」なるものが建てられたのは、平成30年でした。しかし、議会の議決を経ないまま署名された協定書にもとづき、建てられたこの施設でRDF実証試験の目途は立たず、行く先を失ったRDFが保管庫から溢れ、あわてて2017年6月から別の業者とRDFの引取り契約を交わしたら、それまでの2倍の処理費用の1トン当たり3万8000円となり、みなかみ町は泣き面にハチという状況です。
そのため、こうした事態を招いた背景を調べるため、当会みなかみ支部の会員が2020年10月30日に住民訴訟を前橋地裁に提起しました。そして、これまでに、以下のとおり7回にわたる口頭弁論が開かれてきました。
①2020年1月15日 第1回口頭弁論(被告は擬制陳述で欠席)
訴状:URL ⇒ https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3068.html 参照
訴状訂正:URL ⇒ https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3093.html 参照
答弁書=被告準備書面(1):URL ⇒ https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3132.html 参照
②2020年3月11日 第2回口頭弁論(コロナ蔓延のため寸前にキャンセル)
③2020年6月17日 第2回口頭弁論(変更後)
④2020年9月30日 第3回口頭弁論
⑤2020年12月2日 第4回口頭弁論
⑥2021年2月3日 第5回口頭弁論
⑦2021年3月24日 第6回口頭弁論
⑧2021年6月2日 第7回口頭弁論(弁論終結)
なお、この事件のこれまでの経緯については、次のブログ記事を参照ください。
○2019年10月13日:スッポン養殖に目がくらみ禁断のRDFに手を出したみなかみ町に住民監査請求↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3050.html
○2019年11月2日:禁断のRDFとみなかみ町・・・お粗末過ぎる住民監査結果を通知された当会会員が住民訴訟提起↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3068.html
〇2019年12月22日:禁断のRDFとみなかみ町・・・RDF問題に光を当てる住民訴訟の第1回弁論期日が1月15日10時に決定↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3093.html
○2020年2月15日:禁断のRDFとみなかみ町・・・1月15日住民訴訟第1回弁論で町側が争う姿勢、次回期日は3月11日↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3123.html
○2020年3月8日:禁断のRDFとみなかみ町・・・第1回弁論で争う姿勢を見せたみなかみ町がようやく準備書面(1)を提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3132.html
■6月2日の第7回口頭弁論で、それまでの渡邊和義裁判長(今年4月に東京高裁の判事に異動)から後任として赴任し本事件を担当することになった田中芳樹裁判長が、いきなり結審を宣言し、「判決言渡しは9月1日水曜日13時30分とします」と告げたのでした。
そして当日、裁判所には傍聴席にみなかみ町の住民の皆さんや、町職員、そして中央部には記者席が設けられ、マスコミ関係者も多数詰めかけて、コロナ対策で減数となった傍聴席は満席の状態でした。さらに、司法修習生の若い男女2名が、法的内の向かって麦側に設えられた司法修正用の席に着きました。
原告の当会みなかみ支部会員が、法廷内に入って原告席で待機していると、まもなく定刻に少し遅れて田中裁判長が陪席裁判官2名を従えて、入ってきました。全員起立して一礼したあと、橋本書記官が「令和元年(行ウ)第20号」と事件番号を読み上げました。
そして田中裁判長がうつむいたまま、判決文を取り出し「主文、1、本件訴えをいずれも却下する。2、訴訟費用は原告の負担とする」と読み上げました。傍聴席につめかけたみなかみ町の住民の皆さんは、えっ?と何がどうなっているのか、怪訝そうな表情を浮かべました。
マスコミ関係者はさっそく記事をかくためか、あるいは判決文を確認するためか、それとも、住民の皆さんから感想を聞くためか、外の廊下に出て行きました。
当会は4名の会員が傍聴していましたが、原告の会員とともに、3階にある民事第1部の窓口に行き、「判決文」の交付を求めました。まだ、担当の橋本書記官が引き続き行われている別の裁判で戻っていなかったため、他の同僚職員に交付を求めると「当事者以外は外で待っていてください」と言われ、外にあるベンチで待機していました。
3分ほど経過すると原告の当会会員が判決文を手にして民事第1部の窓口から出てきたので、さっそく県庁2階の県民センターにあるコピー機でコピーすることにしました。
1階に降りると、ロビーに上毛新聞と読売新聞の記者が待っていました。ロビーで取材を受けると、守衛が裁判所の総務課の職員に通報して、排除されるため、外で取材を受けるため、地裁の入口前の水路に係る橋の脇で取材を受けました。そのときの当会のコメントが冒頭の新聞記事にある「検討すらせずに却下とした、いいかげんな判決」です。
果たしてどんな判決だったのか、棄却ではなく却下でしたので、傍聴席で「棄却する」という田中裁判長の声を聴いた途端、直感で気に「ああ、これは門前払いの判決だな」と確信し、傍聴席にいたみなかみ町の住民の皆さんにも、判決後、退室する際に、そのように感想をお伝えしました。
■では、実際にどのようなトンデモ判決だったのでしょうか。以下に田中芳樹裁判長によるヒラメぶり極めつけの呆れ果てた判決文をご覧いただきたいと思います。
*****9/1判決文*****ZIP ⇒ 20210901irdf1ij.zip
<P1>
令和3年9月1日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 橋本勇一
令和元年(行ウ)第20号 RDF違法事業費用損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和3年6月2日
判 決
群馬県利根郡みなかみ町布施339-1
原 告 鈴 木 章 二
群馬県利根郡みなかみ町後閑318
被 告 みなかみ町長 鬼頭春二
同訴訟代理人弁護士 増 田 智 之
同 山 崎 由 恵
同 川 住 岳 央
同訴訟復代理人弁護士 小 林 浩 暉
主 文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,岸良昌(以下「岸」という。)及び高橋孝一(以下「高橋」という。) に対し,2億3423万9025円及びこれに対する平成29年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
2 被告は,岸及び高橋に対し,120万円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
みなかみ町長であった岸は,同町を代表して,平成29年5月22日,株式会社ウィズウェイストジャパン(以下「WWJ社」という。)及びサンエコサーマル株式会社(以下「SES社」という。)との間で,一般廃策物(固形
<P2>
燃料RDF)運搬処理業務委託契約(以下,「本件業務委託契約」という。)を締結し,同年7月1日,同契約について,業務委託変更契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。また,岸は,同町を代表して,平成29年10月3日,みなかみエネルギーサービス株式会社(以下「MES社」という。)との間で,みなかみ町遊神館RDFボイラー実証試験協定(以下「本件協定」という。)を締結し,MES社は,同協定に基づいて,RDFボイラーを町有地である町営奥平温泉遊神館(以下「遊神館」という。)内に設置した。
みなかみ町民である原告は,①岸が同町役場の生活水道課長であった高橋の手引きで,違法に上記各契約を締結して同町に損害を被らせ,②岸及び高橋が,MES社が町有地内に違法にRDFボイラーを設置している 状況を放置して同町に損害を被らせたと主張して,同町の執行機関である被告を相手に,地方自治法242条の2第1項 4号本文に基づいて,岸及び高橋に対し,不法行為による 損害賠償請求として,上記①について2億3423万9025円及びこれに対する平成29年6月30日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金,上記②について120万円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで上記同様の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう請求することを求めた。
1 本件に関する法令の定め
(1) 地方自治法(以下「法」という。)の定め(抜粋)
普通地方公共団体の議会は,次に掲げる事件を議決しなければならない。(96条1項5号,6号)
ア その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
イ 条例で定める場合を除くほか,財産を交換し,出資の目的とし,若しくは支払手段として使用し,又は適正な対価なくしてこれを譲渡し,若しく
<P3>
は貸し付けること。
(2) みなかみ町議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(以下「本件条例」という。)の定め(抜粋)
法96条1項5号の規定(前記(1)ア)により議会の議決に付さなければならない契約は,予定価格5000万円以上の工事又は製造の請負とする。(2条)
2 前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認めることができる。
(1) 岸は,みなかみ町長として,平成29年5月22日,WWJ社及びSES社との間で,WWJ社がみなかみ町から発生する一般廃棄物(固形燃料RDF)を同町が指定するSES社所有施設へ運搬し,SES社が同廃棄物の中間処理を行い,WWJ社が中間処理後に発生する一般廃棄物(焼却残渣)を同町の指定するWWJ社所有施設へ運搬し,最終処分を行うことを内容とする,本件業務委託契約を締結した。(甲6の1)
また,岸は,みなかみ町長として,平成29年7月1日,WWJ社及びSES社との間で,本件業務委託契約の契約金額を1t当たり4万1040円から同4万2120円に変更することなどを内容とする,本件変更契約を締結した。(甲6の2)
(2) 岸は,みなかみ町長として,平成29年10月3日,MES社との間で,同町の製造するRDFを燃料としたRDFボイラーを遊神館内に設置して温泉施設の加温実証試験を行うことを目的とする,本件協定を締結した。(乙5)
(3) MES社は,本件協定に基づいて,遊神館内にRDボイラーを設置した。(甲8)
(4) 原告は,平成30年5月1日から同年8月6日までの間,みなかみ町
<P4>
議会議員であった。
(5) 原告は,平成30年6月8日,みなかみ町議会の厚生常任委員会に委員として出席した。
同委員会では,町職員から,WWJ社に対して一般廃棄物としてRDFの焼却処理委託を行い,SES社が中間処理を行った後,草津町の最終処分場で埋立て処分をしていること,遊神館内に設置されたRDFボイラーについては,実証実験による実績を検証した上で有効性が確認できれば本格稼働ヘ移行することが協議されたこと及び土地の使用許可が未決であること等が説 明された。(乙2)
(6) 原告は,平成30年7月27日,みなかみ町議会の全員協議会に出席した。
同協議会では,RDFに関する事実経過,本件協定の内容,運搬業務委託先としてWWJ社を選定した経緯等が話し合われた。
また,同協議会で出席者に配布された「遊神館RDF経過(説明)」と題する書面には,平成29年度より,RDFを一般廃棄物としてWWJ社に委託処理していること,みなかみ町とMES社との間で本件協定を締結したこと,遊神館内にRDFボイラーが設置されたこと等が記載されている。(甲8,乙3)
(7) 読売新聞は,平成30年7月27日,本件協定に基づいて設置されたRDFボイラーが稼働していないこと等を報道した。
また,同新聞は,同月31日,RDFボイラーの設置について,町有地の使用許可がされていないこと等を報道した。(甲1の2・3)
(8) 原告は,令和元年8月1日,みなかみ町監査委員に対し,RDFに関連した事業について,住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。(甲1の1)
(9) みなかみ町監査委員は,令和元年9月30日付けで,本件監査請求の
<P5>
一部に理由があるとしてみなかみ町長に対して勧告を行ったことを原告に対して文書で通知し,原告は,同年10月3日,これを受け取った。
なお,上記勧告の内容は,みなかみ町長に対し,遊神館内に設置された RDFボイラーに関して町有地の行政財産使用許可を出すことによって財産の管理を怠る事実を解消すること等を求めるものであった。(甲4)
(10)原告は,令和元年10月30日,本件監査請求の結果を不服として,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実)
3 争点及びこれに対する当事者の主張
(1) 適法な監査請求の前置の有無(争点1)
(被告の主張)
ア 監査請求期間の経過について
原告は,平成29年5月22日の本件業務委託契約の締結行為,同年7月1日の本件変更契約の締結行為及び平成29年10月3日の本件協定の締結行為を財務会計上の行為として主張しているところ,本件監査請求は,令和元年8月1日に行われており,財務会計上の行為があった日から1年を経過している。
イ 法242条2項ただし書の「正当な理由」がないことについて
原告は,平成30年5月1日から同年8月6日までの間,みなかみ町議会議員として在職しており,また,新聞報道及び同町が発行する「議会だより」に接することによって,住民監査請求をするに足りる程度の情報を知り得たというべきである。したがって,相当な期間の経過後である令和元年8月1日に住民監査請求がされているのであるから,「正当な理由」は存在しない。
(原告の主張)
ア 監査請求期間について
本件監査請求について,みなかみ町監査委員から,手続そのものの違法性については何ら指摘されていない。したがって,本件監査請求は適法である。
<P6>
また,原告は,岸及び高橋が遊神館内にRDFボイラーが存在している状態を放置しているという怠る事実についても本件監査請求をしているのであり,当該怠る事実については,監査請求期間の制限はない。
イ 「正当な理由」があることについて
被告は,監査請求期間の経過を主張するが,本件監査請求の端緒となったのは,みなかみ町議会のゴミ処理調査特別委員会が平成31年4月15日までにまとめた中間報告書であり,原告は,これを入手し,内容を精査して必要な分析を踏まえた上で本件監査請求をしたものである。
また,原告がみなかみ町議会議員であった当時は,町長のセクハラ問題で町政は大揺れの状態であり,RDFについては時々討議の中に出てきたが,RDFという言葉さえ初めて聞いたほどで,この問題の本質など分かるはずもなかった。
(2) 本件各行為の違法性の有無(争点2)
(原告の主張)
岸が,平成29年5月22日,高橋の手引きで,WWJ社及びSES社との間で,本件業務委託契約を締結し,同年7月1日,本件変更契約を締結した行為について, いずれも法96条1項5号に基づき,町議会の議決を経るべきであったにもかかわらず,これを怠った違法がある。
また,岸が,平成29年10月3日,高橋の手引きで,MES社との間で本件協定を締結した行為について,法96条1項5号又は6号に基づき,町議会の議決を経るべきであったにもかかわらず,これを怠った違法がある。
さらに,岸及び高橋が,遊神館内にRDFボイラーが存在している状態を放置していることについても,RDFボイラー設置の根拠となった本件協定の締結行為が町議会の議決を経ていないとの違法がある。
(被告の主張)
本件業務委託契約及び本件変更契約は,一般廃棄物(固形燃料RDF)運搬
<P7>
処理業務の委託を内容とする契約であり,法96条1項5号及びこれに基づく本件条例2条所定の契約に該当しない。
また,本件協定は,RDFボイラーの実証試験を行うことに関する協定であり,法96条1項5号,6号及び本件条例2条所定の契約に該当しない。
したがって,上記のいずれについても,町議会の議決を経ることを要しないから,原告主張に係る違法はない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(適法な監査請求の前置の有無)について
(1) 怠る事実について監査請求期間の制限が及ぶか
ア 普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして法242条1項の規定による住民監査請求があった場合に,その監査請求が,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているもの(いわゆる不真正怠る事実)であるときは,当該監査請求については,上記怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定を適用すべきものと解される(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決民集41巻1号122頁参照)。
イ 原告は,岸及び高橋が,遊神館内にRDFボイラーが存在している状態を放置していることを財産の管理を怠る事実とし,その違法事由として,RDFボイラー設置の根拠となった本件協定の締結行為が,みなかみ町議会の議決を経ていないことを主張する。すなわち,原告は,本件協定の締結行為が違法,無効であることに基づいて,SES社に対する何らかの実体法上の請求権が発生しており,岸及び高橋がこれを行使しないことをもって財産の管理を怠る事実と主張するものと解される。
ウ したがって,上記財産の管理を怠る事実は,いわゆる不真正怠る事実に該当
<P8>
するから,その監査請求は,本件協定の締結行為がされた 平成29年10月3日(前提事実(2))を基準として法242条2項の規定を適用すべきである。
(2) 監査請求期間の経過の有無
前記前提事実(1),(2)及び(8)によれば,平成29年5月22日に本件業務委託契約の締結行為が,同年7月1日に本件変更契約の締結行為が,同年10月3日に本件協定の締結行為がそれぞれされているところ,本件監査請求は,令和元年8月1日にされており,上記各行為のあった日から1年の監査請求期間を経過していると認められる。
(3) 「正当な理由」の有無
ア 普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかにより判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。もっとも,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成14年10月15日第三小法廷判決・裁判集民事208号157頁)。
イ 前記前提事実(4)から(6)までによれば,原告は,みなかみ町議会議員として平成30年6月8日の厚生常任委員会及び同年7月27日の議会全員協議会に出席し,これらの会議において,RDFに関する問題として,本件業務委託契約や本件協定,RDFボイラーが設置された土地等に関する議論に参加していることが認め
<P9>
られる。また,前提事実(7)によれば,原告は,平成30年7月27日及び同月31日の新聞報道により,RDFボイラーの稼働や同ボイラーが設置された土地の使用について問題が生じていることを知ることができたことが認められる。
したがって,原告は,遅くとも平成30年7月31日までには,監査請求をするに足りる程度に本件業務委託契約の締結行為,本件変更契約の締結行為及び本件協定の締結行為の存在及びその内容を知ることができたと解される。このような原告の状況に基づいて考えると,上記同日から約1年後である令和元年8月1日にされた本件監査請求は,相当な期間内にされたものということはできず,本件監査請求について法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとはいえない。
ウ 本件監査請求に至る事情について原告はるる主張するけれども,原告が監査請求をするに足りる程度に上記各行為の存在及びその内容を知ることができたか否かの判断は,原告が主張するような事情の有無によって左右されるものではない。
2 結論
以上によれば,本件訴えは適法な監査請求を前置したものでなく,いずれも不適法であるから却下を免れない。
前橋地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官 田 中 芳 樹
裁判官 杉 浦 正 典
<P10>
裁判官 清 水 瑛 夫
<P11>
これは正本である。
令和3年9月1日
前橋地方裁判所民事第1部
裁判所書記官 橋 本 勇 一
前橋 20-006850
*********
■ご覧のとおり、裁判所は、争点1として「違法な監査請求の前置の有無」しか判断していません。
しかも、原告が、監査請求は実際に有効だとして受理され、勧告迄出されており、その勧告の内容が不十分だったことから、当事者らの責任を問うために提起した住民訴訟であり、監査請求を有効に前置した上での提訴であることは誰が見ても明らかです。
また、協定書の締結から1年を経過しても、依然としてみなかみ町は町有地を不法に無償提供している状態なので、住民監査請求は有効であること、また、RDFの運搬・処理業務委託契約については、現在もなお引き続いて継続している契約行為であり、これも住民間請求の対象として有効であることを、原告は一貫して主張してきたにもかかわらず、田中芳樹裁判長は、そうした原告の主張を一顧だにせず、ただただ期限徒過だけを前面に押し出して、この裁判の本質に踏み込まないまま、門前払い同然の「却下」判決を言い渡したのでした。
■行政を相手取った住民訴訟の勝訴率は、ふつう数パーセントと言われますが、ここ群馬県では、前橋地裁は各支部の裁判所において、住民側が勝訴した試しは、すくなくとも当会市民オンブズマン群馬としては、沼田土木事務所管内での公共工事における談合問題で勝訴し、談合業者から損害を回収させた事例を除き、他に記憶がありません。
当然、このような理不尽な判決は、前例として放置しておけませんので、控訴すべきだとする声もあります。しかし、別の観点からすると、裁判所が、このような明らかな利権の乱用行為が自治体内部で組織的に行われている実態について、自らメスをいれることができず、だから判断も出来ないため、こういう門前払い判決しか、出せないのが現在の我が国の司法の実態であると考えられなくもありません。
原告の当会会員は、記者からのインタビューに対して「控訴するか検討する」と答えていますが、日本の司法がこのような体たらくであるため、9月15日の期限までに控訴しても東京高裁で再び「一審の判断を指示する」などという判決が出される可能性が高いため、別の方法を模索したいとする意向も示しています。
控訴する場合でも、そうでない場合が選択されたとしても、引き続き当会はみなかみ町政を巡る黒い霧を晴らすために努力を続けている当会のみなかみ支部会員を全力でサポートしてまいる所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報「みなかみ町RDF問題に関する町内配布チラシ」
今年5月にみなかみ町の市民団体が、この問題を住民に周知すべく新聞折込などを通じて庁内に配布したチラシ。この事件の弁論でも、かならず町民の方々が傍聴されていました。住民の皆様の関心の高さがうかがえます。
**********ZIP ⇒ 20210511rdfv.zip
こんなこと許せますか? 削減のはずの処理費が倍加
みなかみ町のごみ問題をご存じですか。
1つは、遊神館の施設内に町の使用許可もなくRDF実証実験ポイラーが設置されたこと。もう1つは、RDF処理業者を変更したことで、ごみの委託費が2倍近くに膨らんだことです。(令利元年5月25日付の読売新聞が報道)
問題点を明らかにし、今後の町のごみ処埋のあり方を検証したいと思います。
疑問点①
何故、誰も責任を取っていないのか?
この問題は、現在も未解決で誰も責任をとっていません。契約変更で膨らんだ委託費用は、現在も続いています。いまだに知らない方も多いし、広く知らされていません。問題を知れば怒らない町民はいないはすですa
現在も続くRDF事業は、ごみを固形燃料化(RDF化)し有効利用しようというものでした。
旧3町村による共同事業(月夜野水上新治衛生施設組合)として、平成10年に開始しました。当初はRDFを奥利根アメニティパーク内発電の燃料としてきましたが、平成18年8月に熱交換器等不具合事故で発電施設が稼働停止となり、状況は一変しました。
それまでは、RDFを有効利用しようというものでしたが、 この時点で逆有償(1トンあたり1000円で販売、運搬費21000円)となり、事実上RDF事業は破綻したといえます。にもかかわらず10年以上も転換をはかることなく事業を継統してきたことは行政の怠慢としかいえません。
さらに、経費割減すべきところを平成29年5月、当時の担当課長が独断(調査委員会報告)でRDF処理業者を変更したことで、処理費用が2倍近くに膨らみました。委託変更により1トンあたり39000円+消費税となりました。かってな判断で町に損失を与えたわけですから大変な事件ではないでしょうか?さらにRDF事業には、従来の焼却方式を変革し環境に配慮、資源化率100%をめざす。(アメニティパークパンフ)という大義があったわけですが、結果これを無視して一般廃棄物として焼却処理することになりました。一般廃棄物として処理するためにわざわざ高い費用をかけてゴミをRDF化する必要はありません。
みなかみ町の「ごみ問題」
一連の関連報道
廃棄物燃料で源泉加温、みなかみ遊神館、臭い、有害物を懸念 (上毛新聞・平成30年7月 24日)
RDF稼働「検証必要」町議会特別委中間報告、町長「実施難しい」(朝日新聞・令和元年5月22日)
RDF事業「一部職員らで複雑化」みなかみ町議会特別委最終報告案(令和元年9月3日)
RDF事業に是正勧告、監査委 安全性確認を指摘(上毛新聞・令和元年10月1日)
RDF処理費節減を勧告、みなかみ町監査委員 町長「対応したい」(上毛・読売新聞・令和元年10月1日)
みなかみの固形燃料問題「元町長へ賠償請求を」提訴(朝日新聞・令和元11月1日)
ごみ処理巡り答弁拒否連発、みなかみ町長、訴訟を理由にRDF課題多く、再検討含め岐路に(令和2年1月2日発行議会だより)
<RDFの取り扱い推移>
アメニティパークの燃料(平成10年~平成18年8月)
1トンあたり1, 000円で販売、21,000円の運搬費
※逆有償ながら有価物として取り扱う(平成18年8月~平成29年4月)
1トンあたりの委託費39,000円+消費税
※一般廃棄物として焼却(平成29年5月~現在)
<現在のRDF1トンあたりの処狸費>
ごみをRDF化するのに約8,500円
RDFを処理委託するのに39,000円+消費税
<平成29 年度の一人あたりのごみ処理経費>
みなかみ町 24,000円
全国平均 16,103円
志布志市 約8,000円
(志布志市は徹底した分別資源化をめざしています)
疑問点②
何故、RDF処理業者を変更したのか?
議会には、取り引き先から断られたと報告されていたが、事実はみなかみ町側から契約を解除。調査委員会は当時の担当課長が独断で判断したというが、そんな権限はない。何を忖度(そんたく)しておこなわれたのか疑問が残る。
ごみ処理経費を削減する必要(平成27年、奥利根アメニ ティバークの経費削減計画)から、町内でRDFを燃料として使おうとしたことはわかるが、なぜこのようなことになったのでしょうか。
これらの問題を明らかにするため、町にごみ処理調査特別委員会を設置しました。
遊神館のボイラーについて、安全性及び安全運転上の様々な対策が必要であると指摘、また、北海道富良野市のボイラーでみなかみ町のRDFを燃焼し、燃焼が可能であると報告されていたが、排ガスで基準値の7倍以上のダイオキシンが発生していたことを明らかにした。
そのうえでポイラー設置の経過については、真相究明されることなく「不充分な実態解明のまま限界を感じた」として令和元年9月、最終報告をおこない調査委員会を解散した。
関係者から確認すべき調査をおこなったとしながらも、RDFボイラー実証試験協定書を結んだみなかみエネルギーサービスや当時の町長からの聴取はおこなわれていません。
なぜ聴取がおこなわれなかったのでしょうか。
協定書が結ばれたのは当時の町長が落選する直前であり、その半年前には、ある議員が関わる業者から町長宛に施設建設の見積りが提出されています。
疑問点③
何故、調奎委員会は、不充分な実態解明のまま限界を感じたのか?
協定書を結んだ当事者には聴取がおこなわれていない。委員会の力関係で聴取はおこなわれなかった。
その後の議会でも、ごみ問題について取り上げたのは、1人の議員が令和元年12月議会に取り上げただけです。議会も現段階ではこの問題にふれようとしていません。
町長も訴訟(この問題で住民から訴訟がおこされている)を理由に真相についても、今後のごみ処理についての方針も明らかにしていません。
疑問点④
今、協定書は?
みなかみ町製造のRDFを燃料にRDFボイラーを遊神館に建設し温泉施設の加温実証実験を行うことを目的とした実証試験協定書は、平成29年10月3日にみなかみ町とみなかみエネルギーサービス(株)とで締結されている。一連の問題は協定書に沿っておこなわれたのか?協定はどうなっているのか?
そもそもみなかみ町のRDFは、有価物5要件をみたしていないためボイラーでは燃焼させることができない,
疑問点⑤
何故、RDF事業にこだわるのか?
すでにRDF事業の破綻は明らかなのに、RDFをつくり続けるのか,議会も町長も真相究明して問題を明らかにし、新たなごみ処理方針を提起しないのか、問題は解決していない。
一緒にごみ問題を考えましょう
この間題に対し、住民監歪隋求や訴訟が行われています。また、私たちも「みなかみ町のごみ処理を考える会」で取り組みをすすめています。
真相の究明と問題点を明らかにすること。RDF事業の見直しを求めて、町と懇願、要望書を提出してきました。
いまだに知らない方も多いこの問題は放置したままでいいのでしょうか。ごみ処理問顆の解決には多くの町民の協力と理解が必要です。
地球温暖化や異常気象による自然災害対策が叫ばれる昨今です。ごみ処理のあり方も見直す必要があります。
一刻も早く、RDF事業を転換するため、一緒にごみ問題を考えましょう。
↑RDF↑
※RDF固形化施設の廃止とごみ行政の見直しを求める要望書(署名)にご協力下さい。
要望事項
1、RDF固形然料化施設の廃止計画を迅速にすすめること。
2、ごみ分別資源化の推進、ごみ処理費用の削減。
3、高いごみ袋を無料にしてください。
みなかみ町のごみ問題を考える会
連絡先代表 大坪 進 みなかみ町新巻1225 TEL64-1663
**********毎日新聞2012年9月2日
みなかみRDF住民訴訟 元町議の訴え却下 地裁判決 /群馬
ごみ固形化燃料(RDF)を利用したボイラー実証試験事業を巡ってみなかみ町に損害を与えたとして、鈴木章二元町議が岸良昌元町長らに約2億3500万円を請求するよう鬼頭春二町長に求めた住民訴訟で、前橋地裁(田中芳樹裁判長)は1日、訴えを却下する判決を言い渡した。
判決などによると、岸氏は2017年10月、RDFを熱源とする温泉施設の加温実証実験を行う協定を民間会社と締結。だが、後任の前田善成前町長らが計画を問題視して事業は停止され、18年7月に問題が報道された。
鈴木氏は19年8月、原因究明を求めて住民監査請求をしたが、岸氏が現職だった際に議会の議決なく支出されたRDF処理費用などの損害が町監査委員の勧告で指摘されていないことを不服として、住民訴訟を起こした。
判決は「鈴木氏は遅くとも18年7月の報道で問題を知ることができた」と指摘。そもそも地方自治法で定める住民監査請求の請求期間(1年)を過ぎており、期間を延長する正当な理由もないとした。【川地隆史】
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