↑当日朝、事務棟前から見た安中製錬所の様子↑
■安中公害は、昭和12年に安中製錬所が操業を開始すると同時に始まりました。操業にともなって出る有毒な煙のために、周囲の桑が枯れ、蚕がバタバタと死んでいきました。市民の憩いの場だった雉(きじ)観音の数十本のサクラもすべて枯死してしまいました。戦後の工場の大拡張、生産量の急増にともない、増大する重金属や亜硫酸ガスなどを含む排煙、排水のため、農作物被害は激しくなるばかりで、周辺に住む住民の農業経営と生活環境が破壊されるところまで追い込まれたのです。
そのため、周辺の農業を営む住民は、長い間苦渋に満ちた生活を強いられてきましたが、昭和44年、東邦亜鉛安中製錬所の違法増設工場許認可取り消しの行政不服審査請求に立ち上がり、工場の拡張を阻止することができました。そして、昭和47年4月1日、東邦亜鉛を被告として公害による「農業経営と生活破壊」に対する損害賠償を求める訴えを提起しました。
この裁判は、10年の審理ののち、昭和57年3月30日東邦亜鉛の「故意責任」を認める判決を下しましたが、損害の認容額が請求金額のわずか5%という低額であったため、東京高等裁判所に控訴して争われ、昭和61年9月22日、和解によって解決しました。
この和解成立と同じ日に、周辺被害住民は、東邦亜鉛との間で「公害防止に関する協定」を締結しました。この協定に基づいて、昭和62年から毎年一回、周辺住民による立ち入り調査が行われました。この間専門の科学者のアドバイスや協力を得て、住民らによる立ち入り調査を充実したものとしながら、住民による発生源の監視を強めてきました。
そして、平成3年4月14日に安中公害裁判原告団・安中公害弁護団と東邦亜鉛株式会社の間で確認書が交わされ、同日、安中公害裁判原告団は「安中緑の大地を守る会」に呼称をあらためるとともに、新たに東邦亜鉛との間で協定書を締結し、それに基づき、毎年4月(コロナ禍を除く)に安中製錬所工場視察会を開催してきました。今回、第33回目となる工場視察会には、地元から15名の住民が参加しました。
↑当日朝9時半からの工場視察会の開始前に、事務棟1階の待合用会議室に集う参加者の皆さん↑
■当日、朝9時30分からの視察会開始に合わせて、関係者が安中製錬所の事務棟2階の会議室に参集しました。そして、9時30分定刻に視察会が始まりました。
司会:大丈夫でしょうか。えー、皆様、おはようございます。(場内:おはようございます)事務部環境管理室を担当しています中島(正治)でございます。本日、工場視察会におきまして、会社側の司会を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず、会社側の出席メンバーの紹介をさせていただきます。まず、本社のメンバーからですが、本日、業務都合によりましてWEBでの参加となるものがおります。まずはモニターのほう、ご覧ください。常務執行役員総務本部長の大久保(浩)でございます。
総務本部長:大久保でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
司会:次に、現地参加となります。総務本部長の高橋(宏)でございます。
総務部長:高橋でございます。よろしくお願いいたします。
司会:続きまして、環境安全室長の石井(光)でございます。
環境安全室長:石井です。本日はよろしくお願いいたします。
司会:再度、モニターをご覧ください。本社からWEBで参加となります、総務部顧問の安堂(英次)でございます。
総務部顧問:安堂でございます。よろしくお願いいたします。
司会:続きまして、総務部課長の山田(昌吾)でございます。
総務部課長:山田です。よろしくお願いします。
司会:続きまして、安中製錬所のメンバーでございますが、所を代表します常務執行役員所長の森田(英次)でございます。
所長:森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
司会:副所長の原澤(浩之)でございます。
副所長:おはようございます。原澤です。よろしくお願いいたします。
司会:次に製造部長の鈴木(達也)でございます。
製造部長:鈴木です。よろしくお願いします。
司会:それと私、事務部環境管理室を担当しております中島でございます。本日の工場視察会をこのメンバーで対応させていただきます。どうぞ、今日、よろしくお願いいたします。では、続きまして朝の代表者の挨拶を頂戴したいと思います。安中緑の大地を守る会会長、大塚義枝様。よろしくお願いします。
会長:皆さん、おはようございます。(場内:おはようございます)春爛漫のこの良き日に、本当に、会員の皆さんはじめ、弁護団の皆さん、また、市議会のほうの皆さん、大変ありがとうございます。私、あの、このような会長を引き受けるわけではなったのですけれども、時代と共に、やはり、こう、どんどんと、いなくなりまして。跡を継ぐ、今後この後、次ぐひとたちも、もうこれで、いろいろなことがわからなくなってきていると思います。でも、私たちの代で、この安心して暮らせる、これからを作って行ければなと思います。また、考えています。もうこれ、33回ですね。私の舅である父が、弁護団の団長をしまして、その後亡くなって、まあ、私ごとで申し訳ないのですけど、私の家も主人が亡くなって4年になります。あっという間ですが、長かったような、短かったような出来事であります。これから、このような私でも、どうしても皆さんに、「この会長を引き受けてくれ」と言われたのですけれども、このような立場になる資格も何もないですけれども、将来を考えますと、どうしても、これを引き受けて、次の世代には、安心してね。あのう、暮らせるような、最後の舅だった父が願った、土の入れ替え。まあ岩井のほうは済みましたけど、野殿地区の土の入れ替え。それが、目的を達成できるように、これからも皆さま方のご協力を得まして、ぜひとも私どもの世代に、成し遂げていきたいと思います。また、会社のほうもいろいろ大変でしょうけど、本日に当たって、いろいろ準備してくださいまして、ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします、挨拶にかえさせていただきます。(場内:拍手)
↑弁護団の皆さん↑
司会:ありがとうございました。えー、続きまして、会社を代表しまして所長の森田よりご挨拶を申し上げます。
所長:皆さん、おはようございます。(場内:おはようございます)所長の森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。新型コロナ感染もですね、まあ昨年、2類から5類とか、いうふうに変わりまして、まだまだ撲滅とか、消滅とか、そこまでには至っておりませんが、折からの円安もあって、このあたりでも多くの外国の人も見かけるようになりまして、もうそろそろ終わりかな、というふうに思っております。そんな中で、本年度に入りまして、安中緑の大地を守る会の役員さん方と、いろいろと本日に向けまして、お打ち合わせをさせていただきました。そういうことで本日4月6日、穏やかな日にですね、を迎えまして、やっとおもてのサクラも咲き始めたところでございますが、こういうことで33回目になりますか、工場視察会を開催するにあたりまして、まあ、行なうことができましたということでございます。この機会ですので、当製錬所のですね、足元の状況をですね、簡単にお話させていただきます。創立、今度の18日で、この工場も87周年を迎えることになります。もう、かなり古い工場でございますが、まあ、そういうなかで、冒頭お話しました長引くコロナの関係で、ですね、なかなか私たち事業を取り巻く環境も、ですね、まあ、なかなかモノがなかなか売れていないと言う状況でございまして。まあ、皆さんもご承知のとおりですね、もう2年にわたるロシアのウクライナ侵攻から始まりまして、最近では、イスラエルによる侵攻によりまして、ヨーロッパ全体が非常に景気が悪い、ということで、国際商品でございます我々の亜鉛につきまして、非常にそういうところに影響を受けるということでございます。まあ、そういう中で、まあ、お隣り中国の不動産バブルがはじけまして、非常に、ひところの景気がないという背景にございます。その中で既にご案内の通りでございますが、昨年度の中間決算においてですね、当社10年に及ぶですね、鉱山経営を行っておったわけなんですが、非常に不振でございまして、まあ、これを見限り整理をするということで、報告がされたことは皆さんにもご案内のとおりでございます。まあ、本年度の最終決算、ならびに厳しい新年度の計画に向けまして、現在企画進行中という状況でございます。まあ、年始早々ですね、能登半島の地震、また今は台湾に地震がありまして、非常に不安定な状況でございまして、1-2月は逆にこのあたりは非常になんですか、温暖で、どういうことかなという状況ではございましたが、3月に今度は急に冷え込んでいるということで、体調管理も大変な今年ではないか、というふうに思いますが、やっとですね、桜も咲き始めてきましたので、今日の良き日に、ですね、どうぞ工場の中をご覧いただきまして、本日の工場視察会を進めさせていただければ、というふうに思っております。本日はよろしくお願いします。簡単ではございますがご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。(場内:拍手)
司会:続きまして、本日の視察コースや受け入れにつきまして製造部長の鈴木よりご説明をさせていただきます。
製造部長:製造部の鈴木です。よろしくお願いします。例年と同じく、製錬所内の製造工程並びに公害防止設備を中心にご案内させていただきます。操業につきましては順調でしたので、安定して事業を進めている状況をご視察いただければ幸いです。最近、インフルエンザ等の感染症流行懸念もあり、予防対策としての会議等でのマスク着用ルール、所内では引き続き実施しておりますので、私の声が聞こえづらいかもしれませんがご了承をお願いします。視察についてですが、お手元の資料で、3頁になりますかね、工場視察会、視察コース、そちらのほうをご覧ください。今年もマイクロバスを1台、ワゴン車2台をご用意いたしました。健脚コースの第1班は視察場所ごとにバスから降りてのご案内となりますので、ヘルメットの着装をお願いします。案内は私、鈴木が案内いたします。楽々コースの第2班につきましては、ワゴン車の中からの視察となります。視察中はワゴン車の乗り降りは致しませんので、乗り降りがつらくなられた方の乗車をお勧めいたします。ヘルメットは不要です。案内は総務課の長岡が担当致します。では、工場視察前に注意事項についてご説明いたします。マスク着用は、個人判断ですが多人数での車での視察となりますので、引き続き着用を宜しくお願い致します。場内での写真撮影はご遠慮いただきます。カメラ等を場内に持ち込まないようご協力をお願いします。また、携帯電話につきましては持ち込み可能ですが、撮影機能の使用はご遠慮をお願いします。健脚コースの方は、バスを降りて工場内を歩いていただきますが、安全確保を最優先としまして、昨夜の雨で路面が濡れているところもございますので、お足もとにご注意いただくとともに、設備や製品には絶対に手を触れないようお願いします。今回も例年通り4月ということで、まあ、気温のほうも上昇したり下降したりと不安定ですが、視察中にご気分が悪くなられたり、体調に異変を感じられた場合は、遠慮なく申し出てください。注意事項は以上でございます。よろしくお願いします。
司会:では、工場視察に入っていただきますが、出発前に2階のテラスで、ですね、工場をバックに記念撮影をしたいと思っております。トイレ等を済ませていただきまして、テラスのほうにご移動をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
午前9時45分に、ちょうど工場のサイレンの吹鳴と同時に、ほぼ三分咲き程度のサクラを背景に記念撮影をしました。その後9時50分にマイクロバスに分乗して、工場視察に出発しました。筆者は連年通り健脚コースのバスに乗車しました。
構内に入ると、鈴木部長がマイクを手にとって、説明をしてくれました。
製造部長:皆様、あらためて、おはようございます。(車内:おはようございます)場内視察をご案内いたします製造部の鈴木です。よろしくお願いします。先ほどご説明しましたが、まず製錬所のほうの上側ですね、最上部に上がってから、降りながら、順次、視察していただきますので、よろしくお願いします。弊社は主に亜鉛、鉛、銀の地金、その他ですけれども、電子部品、および粉末冶金部品などの生産を行っております。ここ、安中製錬所につきましては亜鉛地金、亜鉛合金地金、薄硫酸、粉末冶金による焼結部品などの生産を行っております。亜鉛につきましては年間14万トン、月に1万トンの生産能力を持ちまして、国内の20%強の生産力を誇っております。精算しました亜鉛につきましては、60%程が自動車などに使用される薄板鋼板メッキ、そちらの用途に使われております。それでは最上部の排煙脱硫工程のほうへ行きますので、お待ちください。
当会:鈴木さん?
製造部長:はい。
当会:今のご説明で、薄硫酸とおっしゃっていましたが、この薄硫酸は、まだここで製造していらっしゃるのですか?
製造部長:えっ?
当会:さっき「薄硫酸を使って」というか、私、ちょっと聞き取れなかったんですが。
製造部長:薄硫酸のほうは、弊社の小名浜製錬所のほうで、そちらで硫酸を今作っておりますので、そちらのほうをこちらに持ってきて、水で薄めて98%から75%の硫酸にして、ここから販売のほうをしています。
当会:焙焼炉を休止して、硫酸プラントを止めたけれども、やはり、販路は一定の維持をしなければならないので、それで、小名浜でつくったのを、こっちに持ってきて捌いているということですね?
製造部長:あと、工程上におきまして、硫酸ですが、こちらのほうで使う必要がございます。そういうことです。
当会:はい、分かりました。それと、どのように運んでいますか。
製造部長:ローリーですね。毎日運んでいます。
当会:折角小名浜から来るのだから、貨車でもいいのかと思ったんですけど。
製造部長:貨車はかなり昔に硫酸用の車両があったんですけど、今はもうないので。
当会:わかりました。
参加者:貨車も短くなったよね。
当会:うん、今は無蓋貨車がなくなってタンク貨車のみですね。
参加者:なんか大分短くなった。
当会:だから生産量が4割くらい少なくなったわけだ。
参加者:むかしは、何両あるか、踏切で数えたものだね。
当会:踏切の待ち時間が短くなった。
午前10時ちょうどに、排煙脱硫装置の施設脇に到着しました。一同、バスを降りて説明に耳を傾けました。
製造部長:こちらの看板のほう、見ながらご説明させていただきます。こちらが排煙脱硫工程となっております。ロータリーキルンで発生する排ガスですね。こちらのガスは、ガスクーラーで冷却してバグフィルターで、粗酸化亜鉛ダストを回収致しまして、こちらの排煙脱硫工程へ送付されます。ダストを除塵後に、こちらの排煙脱硫工程では、亜硫酸ガスである排ガス処理として、亜鉛華TCA、苛性TCA,水TCAと、3段で脱硫、水洗浄、こちらで排ガスを、手前のほうに見えます高さ37mの排気塔より大気放出しております。排ガスの硫黄酸化物の測定は、赤外線分析計を、水TCA等の出口に設置いたしまして、硫黄酸化物の濃度測定を常時行い、管理しています。また、煤塵等の測定は、2か月に1度、定期的に行っています。後ろに見えますのが、亜鉛華TCAです。手前に見えます2つの塔が苛性ソーダTCAと水TCAになっております。質問等無ければ、次の工程に行きたいと思います。
当会:「2か月に1度、排ガスの測定やっている」ということですが、これは、行政のほうには報告していますか。
製造部長:そうですね。はい。
参加者一同はマイクロバスに午前10時5分に戻り、出発したバスは坂を下り始めました。
参加者1:下の娘がよく視察会に何回か来ていたよ。この間39歳になったもの。小学校の時よくついてきた。上(の娘)は年が違うから、ついてこなかったけど。
参加者2:排ガスの脱硫は、昔より負荷が減っている?
司会:一時期よりは、一番やっていたころよりは、多少低いですね。
製造部長;ガス量はあまりかわらないですね。
司会:処理量が減っているからその分だけ負荷が減っていますね。
バスは、エンジンブレーキを掛けながら急坂を下りてゆきます。
司会:そこ、左に入ってください。はい。
参加者3:視察会の為にシートを張っている。
司会:いらっしゃっていただくのできれいにはしました。何とか見るに堪えられるところは変えていないんですけれども、見るに堪えられないところは、こうしてあります。
参加者1;昔の建物そのままですもんね。
司会;そうですね。
当会:スクラップ&ビルドをしていないんですよ。よごれっぱなしなんですよ。
車内各所で話がはずんでいるうちに、ロータリーキルンのある場所に着きました。
司会:ここで回ってもらえますか。
午前10時9分にバスがRC脇の狭いスペースで何とか切り返しを繰り返して、法転換が完了しました。
司会:はいここで、開けてみてください。ちょっとだけ30、50㎝だけバックします。はい、大丈夫です。
バスを降りると相変わらずの騒音です。すぐわきに酸素ボンベを格納したパレットが置いてありました。太陽日酸とあり、次回検査25年3月、前回検査は24年11月との記載が見えました。
製造部長:はい、先ほど視察いただいたのは排煙脱硫工程になりますが、そこに行くガスのもとは、こちらのロータリーキルン工程になっております。このロータリーキルンに投入する原料は、一次鉱滓といいますが、先に、この計器室の裏側にあるんですが、ドライヤーに入れまして、水分を、乾燥をさせます。次に、乾燥した一次鉱滓にコークスを混ぜてロータリーキルンへ投入します。ロータリーキルンの炉の先端にはバーナーが設置されておりまして、重油燃焼によりまして、炉内の温度は一番高いところで約1300度くらいまでに加熱します。そうすることによりまして、一次鉱滓中の亜鉛が還元揮発しまして、揮発した亜鉛、これが空気とまた、再接触することによりまして、酸化物、粗酸化亜鉛になることによって、炉尻ですね、炉の後ろのほうに流れます。流れたガスと一緒に、ガスクーラーやバグフィルターを使用しまして、粗酸化亜鉛を捕集しております。この酸化物、粗酸化亜鉛と称しますが、亜鉛原料として回収されます。キルンの炉前から出て来る鉄分が濃縮された廃棄物。こちらのほうはクリンカーと呼んでおりまして、これが、クリンカー、そのクリンカーは冷却、粉砕、したあとに、K砕出荷場へ運んでおります。ガスクーラーにつきましては、排ガスの冷却と同時に熱回収を行っておりまして、その熱は、またバーナー用の空気などに再利用されております。ちょうど今こちらに見えるのが、ロータリーキルンの炉尻側ですね。ガスが逃げていく方になります。その左隣にある設備がガスクーラー。後ろにある設備がバグフィルターとなっておりまして、そちらのほうで粗酸化亜鉛の捕集を行っております。はい、ロータリーキルンの工程につきましては以上となります。
午前10時14分にロータリーキルンの工程説明が終了しました。
当会:このバグフィルターからは、これはホッパーは要らないのですか?入らない。ここでは何が取れます。まだ揮発していないですよね。
製造部長:ドライヤーの排ガスをこちらのほうで。
当会:除塵中のチリのなかの重金属はどうやって処理するのか?
製造部長:後ろのほうに電気集塵機。後段にございます。電気集塵機を通してから回収します。
当会:最終的には工程に戻す?溶かす?
製造部長:出てきたダスト類は工程に戻します。
当会:はい。
製造部長:それではバスのほうに移動します。
現場では間欠的にブザーの吹鳴音が鳴り響いており、相変わらず酷い騒音でした。参加者がホッパーの振動かと理由を聞くと、バグフィルターのホッパーのダンパーの音だということです。
午前10時15分に、再びマイクロバスに乗り、ロータリーキルン工程を後にしました。
先ほど下ってきた坂に合流する前に、バスの車窓からかつて使用していたスラグ置場が右側に見えました。
当会:質問いいですか?質問。
製造部長:はい。
当会:あの、右手に見えるこの昔のスラグ置場は、もう使っていないということだったが、今回、これ見ると散水していますし、いろいろこの・・・。
司会:すいません、小川さん。これ、今からご説明しますので、ちょっとお待ちいただいてよろしいですか?
当会:はい、じゃあ、丁寧にお願いします。
参加者1:まだ、入っているじゃない?
製造部長;はい、先ほどですね、ロータリーキルンから発生しましたクリンカーですね。こちらのほうはベルトコンベアで、こちらのK砕出荷場に送られます。一応、ここは「中央」K砕出荷場と呼んでおりまして、このあと見学します「東」K砕出荷場を稼働する前に使用していた元のK砕出荷場となります。以前の「東」K砕出荷場ですね、こちらのほうは、広さとコンクリート敷を活かしまして、まあ、ちょっと、新規事業のほうに使用を検討しておりまして、一時的にこの「中央」K砕出荷場。これを使用して、またさらに後で見学いたします第一電解跡地、こちらのほうに、K砕出荷場をさらにまた移設したいと、今のところ検討しております。
当会:ええ!よくわからないな。なにか事業をされるために、今の東側にある、まあこれから見せていただくところが、なにか改築もしくは改装するために、一時的にここを、昔使っていたところのここを再使用しているとこういう認識でよろしいですか?
製造部長:はい。で、更にその、こちらのほうからまた、西のほうに移設すると。
当会:えっ、まあ、その辺は、後でじっくりお聞きしたいと思うんですけどね。これ昔使っていて、ここ一応問題があったわけですよ、例えば、全部コンクリートで地下浸透しないようなかたちになっていないということもあって、だけど、そこまた使っていいんですか?このような形で。こう見ますと、側壁のところは、何かユンボでひっかいたような爪の跡がありますけども、ああいうところから、このスラグは重金属が非常に多く含まれていることはご承知ですよね。
製造部長:ええ。
当会:ここにこれだけまた再度使用して、堆積させて使用しても構わないという十分な措置はとられたんですか?今、これ見て、私、びっくりしたんですけど。
製造部長:・・・。
当会:まあ、すぐ答えられないのであれば、あとでいいですよ。
製造部長:はい。
当会:まずは、スケジュールをこなしてください。
製造部長:わかりました。
参加者4:この水はどうしているんですか?
当会:この水をどうしているのかも含めて、これを排水処理施設に誘導しているのかどうかも分からないですよ。
参加者4:これが、田んぼでも入ったらね、困るね。
当会が質問したため、一時的に止まっていたバスは再び始動し、急坂を下りて、製錬所構内の一番東にあるK砕出荷場に向かいました。車内では引続き、元のスラグ置場を再使用している現状について意見が飛び交っていました。
当会:だから、こういうところが無頓着なんですよ、昔これ使っていてやばいからというので、あそこにきちんとコンクリートで全部浸透しないように、隔離したかたちで、管理するストックヤードを作る、という話だった。そのためにこのベルトコンベアであそこまで誘導しているんですよ。今日見たらあそこ使っているから、えっと思ったので、操業量が減っている筈なのに、なぜまたあそこを使っているのかというのはやっぱり、すぐ「おかしいな」と思ったんですけどね。あのように、コンクリートで覆われていない側壁などから、重金属を含んだ雨水が地下浸透してしまうわけです。で、地下水を汚染するわけです。もう汚染されていますけど。
参加者を乗せたマイクロバスはエンジンブレーキを掛けながら坂を下っていきます。午前10時21分に「東」K砕置場に到着しました。
司会:(運転手に)右側におりていただいて、いいです。
運転手:はい。
参加者1:こっちは、きれいになっているじゃない。ねえ。
司会:そうですね。こちらはゼロにしました。(運転手に)このまま中でぐるっと回っていただいて。
参加者1:ここよりあそこのほうが近くていいよね、距離が長すぎるので相当電気量が要るんじゃない。あそこなら安くて済むよね。
参加者2:このあれ、電気設備とか昔のPCBがあって、まだそのまま残っているんじゃないの?
司会:いや、これはもう全部抜いてあって、クリーニングしてあるので、そっちの心配はないです。ただ、中のモノは残っています。
全部きれいになったね、本当に。
司会:(運転手に)はい、ここでいいです。
製造部長:こちらの方が、ですね。「中央」K砕出荷場の前に使用していた「東」K砕出荷場となっています。磁選機とか、そちらの前方に、左、左前方ですね、見えるのが、ございましたが、こちらの磁選機と一部設備を「中央」のK砕出荷場のほうに移設して、使用しております。あと、出荷待ちで置いておきましたK砕のほうにつきましては、整理して今は、えー、見た通りのカラの状態となっております。
司会:はい、以上でお願いします。(運転手に)それでは電解工場のほうへお願いします。
午前10時23分にマイクロバスは出発し、すぐ近くの電解工場に向かいました。
1分足らずで第3電解工場の前に着きました。参加者はバスを降りて、電解工場前の展示物の前に集まりました。
製造部長:はい、こちらのほうが、第3電解工場です。以前は「新」電解工場として説明しておりましたが、10年経ちますので、いつまでも「新」電解工場というのもなんなので、まあ、「第3」電解というふうに名称を変えております。ここでは、亜鉛の溶解液を電気分解して、金属の亜鉛を採取しております。えー、電解液ですね、こちらのほう、不純物を除去した硫酸亜鉛溶液になるんですけれども、こちらのほうをですね、各電槽、電解槽に供給いたしまして、直流電流を流しまして電気分解をさせることによりまして、こちらの真ん中にあります陰極板、これはアルミニウムでできているんですけれども、こちらの陰極板側に亜鉛が、その右の・・・にあるものですけれども・・・にありますように、亜鉛がアルミ板のほうに電着、析出します。計画された電力量に達しましたら、陰極板に電着した亜鉛カソード板を自動剥離機に搬送して剥離いたしまして、カソード亜鉛。ちょうど一番右に見えます薄い灰色の板状のものなんですけれども、カソード亜鉛として、回収します。電解後の亜鉛濃度の低下した液につきましては、亜鉛尾液として、溶解工場にまた戻しまして原料を溶解する溶液として使用しております。一応、こちらの一番左側ですね。そちらに見えてございますのが陽極板、プラス側ですね。こちらは鉛板になっております。以上が第3電解工場となっております。
当会:すいません。あの陽極板はだんだん消耗すると思うんですけど、どのくらいで替えています?
製造部長:約7年くらい。
当会:そんなですか。メンテナンスはあまり要いらないですね。
製造部長:やはり、表面の付着物がつきますので、それを落としてやらないといけないんです。
当会:では、あまり減耗しないんですか?
製造部長:鉛ですか?
当会:板そのものは?
製造部長:そうですねやはり、析出物とか、物理的に取りますので、そういった時に少しハツリとかしますが。
当会:もっと、この、薄くなってもいい、というか、それは許容値あるわけ?
製造部長:そうですね、やはり鉛なので強度的な問題になります。
当会:鉛はやわらかいですからね。銀を入れたとしてもね。はいわかりました。
製造部長:はい。それでは次の工程に移っていきます。
結局、昨年までのように電解工場の中に参加者は入れてもらえないまま、バスに戻り、午前10時28分に、溶解工程に向けて出発しました。
参加者1:今日は中に入らないのね。
当会:見てもあまり変わりばえしないから。或いは何か見られると困る事情があるのかもね。すぐにそういうふうに考えてしますね。しかし、それにしても、鳴り物入りで1ヘクタール以上のこのストックヤードをつい数年前に作ったのに、もう使わないというのはいくら減産しているといっても、驚きましたね。
参加者5:新規事業と言っていたね。新規事業をすると言っていたが、いったい何をやるのかね?
当会:じゃあ、また何かそこで、何かまたやばいやつだと困るんだよね。新規事業か。あとできいてみよう、また企業機密だというだろうけど。
移動のバスの車窓から見ると、銀さいなど、鉱滓置場の建物も撤去してあったのには驚きました。
参加者1:昔は火が出ていたのでこわかったね。ドロドロしたようなのがね。皆作業服が焦げていた。
当会:やはりかなり減産しているから、今、稼働していないようだね。今、溶解炉使っていないね。今ね。
午前10時31分に、溶解工程の施設の前に到着しました。早速バスから降りて現場視察です。
製造部長:はい、こちらの方がですね、先程の電解工場で生産しましたカソード亜鉛。こちらのほうを溶解して鋳造します鋳造工場になっておリます。えー、亜鉛製品につきましては、100種類を超える品種ですね、多種多様な製品を製造しております。そのうち6割のほうが手前に見えております「調合亜鉛」と呼ばれる製品となっております。調合亜鉛につきましては、高炉メーカーですね、えー、こちらのほうへ納入いたしまして自動車用のボディ、などですね、薄板鋼板メッキ用に使用されております。調合亜鉛には他の金属を添加しない純亜鉛のものや、アルミなどですね、金属を添加する亜鉛合金がありまして、こちらのカソード亜鉛を低周波誘導溶解炉。電気を使用して溶かす炉がありますが、こちらの溶解炉のほうで、500℃まで昇温しまして溶解します。アルミにつきましては、重油バーナー溶解炉で地金のほうを溶解して、手前の中段に見えます調合炉のほうに必要な亜鉛、アルミ、その他金属ですね。こちらのほうの量を調整して、投入しまして、合金を手前の型に流し込んで、生産しております。調合炉につきましては3基ございまして、生産能力としては1日当たり240トン。それ以内になります。調合炉は自動傾倒、手前のほうにこう傾きまして、ユーザー各社指定の金型に流し込みまして、冷却、凝固させます。そのあとにですね、底部から自動押上機というのがございまして、そちらのほうで押して突き出して、製品となっております。じゃあ、続きまして、電気亜鉛のほうの工程のほうに進めて行きますので、ちょっと歩いてで、すいませんが。
午前10時35分に電気亜鉛の工程のほうに移動しました。1分足らずで電気亜鉛製造工程に着きました。いつものとおり、ここはかなりの騒音です。特に金型から亜鉛のインゴットを抜くための振動音がすごいです。
製造部長:はい、こちらほうが、電気亜鉛を製造しております工程となっております。手前の左奥ですね、こちらの方が電気亜鉛を、聞こえません?はい、えー、左の方が電気亜鉛の工程となっておりまして、こちらのほうで電気亜鉛を製造しております。電気亜鉛は、メッキや伸銅製品に使用している純亜鉛の製造で、調合亜鉛同様、カソード板を低周波誘導溶解炉のほうで、500℃で溶解しまして、1枚当たり20キロのインゴットケースで鋳込んでおります。こちらのほうを製錬するのは・・・こちらのほうですね、鋳造、凝固いたしまして抜き出されましたスラブと呼ばれる製品はロボットにて積み上げて結束されます。こちらのスラブのほうはですね、1枚20キロで、50枚積まれて一山1トンで計測されて出荷します。ちょうど後ろにあります。こちらのスラブのほうですね。これが、50枚重なった1トンのものとなっております。一応冷却はしているんですけれども、熱は冷えないので、それもありますので、表面はかなり熱く触ったら火傷するくらいの温度になっております。はい、以上が鋳造工程となっております。では、引き続き次の工程に行きますので、バスのほうへお願いします。
午前10時39分、バスに戻り次の工程に出発しました。
参加者2:塊にSHGと書いてあったけど、あれはグレード?
司会:そうです。スペシャルハイグレードで、日本語で最純度と呼ばれているものです。(当会注:SHGは、亜鉛純度99・995%以上となる亜鉛インゴットの品質を表し、これはLME(ロンドン金属取引所:London Metal Exchange)で取引される亜鉛地金の純度を示す用語。国際市場で取引可能な品質を確認するもので、具体的には、純度99.995%以上の亜鉛を指す)
製造部長:自動車用薄板鋼板向けで、多分メッキの層がでかかったり、小さかったりするので、それに合わせて、ああいうでかいやつや小さいのを使ったりしていると思います。プラスチックの場合は使わないが、鉄の防食用に亜鉛が使われます。
司会:(運転手に)もう少し行ったところで右側に寄せていったところで、水色のタンクの前くらいで。もう少し前で大丈夫です。
午前10時42分排水処理施設前に到着しました。
製造部長:足元に段差がありますので、気を付けて下さい。
参加者6:ここから先、延長放流したあの先、金ケ崎までの流路。そこまでの流路は河床にあるわけですよね。その管理はどうやっているのでしょうか。
当会:何もしていないと思います。この先、市道というか、碓東小学校の裏の、田んぼの間のところ、ちょっと広めの、でもすれ違うのがやっとの道の下に埋設してあるんですが、点検している・・・半世紀絶つけれど、全くないですね。
参加者6:あれば埋設してから50年。もっと?
当会:もっともっと経過していますね。公害で騒がれてからもう半世紀ですから、
製造部長:はい、こちらは、排水処理工程です。製錬工程の雑排水を、集水池になります。集水池に集めておりまして、製錬工程内の、さまざまな水溶液は繰り返して利用しております。そのため、工程外のほうには出ません。ただ、それ以外の雑排水ですね、たとえば床を掃除した洗浄水、道路洗浄した洗浄水、生活排水などの雑排水がこちらの集水池に集められております。集水された排水は、ポンプで揚水されまして、流量を調整して中和槽のほうへ送液されます。中和槽では、苛性ソーダでpHを、アルカリ性ですね、することによりまして、排水中の金属亜鉛が水酸化物として沈殿していきます。次にシックナーと言われる固液分離設備に送りまして、この中和液に凝集剤を添加して沈殿を促進させながら、上澄み液と濃縮スラッジに分離します。濃縮スラッジのほうは自動フィルター濾過機で濾過して、その濾液は再び沈殿池に戻します。濾過滓は、再び亜鉛電解原液で溶解して製錬工程の原液として戻します。シックナーの上澄み液、こちらのほうは、まだ微細な固形分がございますので、それを更に除去するために砂濾過機のほうで濾過しまして、濾液のほうは、また、沈殿池を経由して、pHを調整いたしまして、約8.5前後に中和しています。その水は、延長放流水で、金ケ崎まで導水されて碓氷川のほうに放流されております。逆中和処理につきましては、pHを常時監視しておりまして、pHが異常な場合は、安全ダンパーが作動しまして、再び集水池に回収されます。なお、亜鉛鋳造工程とかで使用しております間接冷却水ですね。そちらの用水につきましては、水量等をチェックしたのち、旧放水水路から柳瀬川のほうに流水されております。はい、こちらの方が排水処理となっております。じゃあ、それでは、次の工程のほうに移りたいと思いますので、バスのほうに、下りましょう。
マイクロバスに戻る際に、たまたま近くに本社から参加した石井環境安全室長がいたので、声がけをしました。
当会:最近たまに(安中に)来ている?
本社環境安全室長:いやあ、なかなか。
当会:もうコロナも空けたし、ここはメイン工場なのでお願いしますよ。
本社環境安全室長:・・・。
午前10時50分、排水処理場前をマイクロバスが出発、第1電解工場跡へ向かいました。車中、付近の参加者と会話が弾みました。
当会:第1電解工場を片付けた跡地で、ここで。客土の仮置場にしたらどうかという話もあった。行政が不熱心なのか、会社側がOKしないのか、私はここが客土の仮置場として一番良いと思います。
製造部長:えー。こちらは「西」K砕設置予定場になっております。第1電解工場の跡地になります。キルンからこちらのほうにクリンカーを運ぶためのベルトコンベア。こちらのほうを持ってきました。設置しまして、さらに「中央」K砕出荷場にあります磁選機。こちらのほうですね、設備を移設して、まあ、建屋を建設して、屋内置場として、する計画となっております。はい。では事務所に向かいます。
当会:すいません。いいですか?移動中で。なぜ移設して、それも建屋の中でストックしなければならなくいけないということになったのでしょうか?なぜ鳴り物入りで・・・。・
製造部長:ああすいません、今ちょっと(ほかのかたからの)質問が。ああ、延長放流?
参加者6:あの放水、延長放流、地下何メートルなんでしょうか?
司会:えーとですね。深いところ浅いところあるんですけど、一概には言えないんですけど。深いところで1m半とか、そんなものかな。浅いところでは1mとか、もっと浅いところもあります。50センチくらいのところもあるでしょうね。
参加者6:掃除は?
司会:そのときどきですね。私になってから2回。ただ全部が全部、できるわけではないですね。マンホールのところは全部開けてやります。私になって、12、13年になりますが、4年に1回くらいですかね。
製造部長:はい、すいません。
当会:あのね、だから今、その、なぜわざわざ鳴り物入りで数年前に1ヘクタールのちょいのK砕ヤードを設置されたにも関わらず、今回こちらのもうこれも7、8年前ですかね。第1電解工場跡地の整理したところに移設、また新たに作るという、それも屋内で行うということは、どういう理由でそのようにされたのですか?イニシャルコストもかかると思いますけどね。
製造部長ら:・・・
当会:企業機密?別に、あのう、屋内でやったほうがいいというのは前々から防塵対策でよいというのは分かっていましたけどね。
司会:屋内でやるというのは、今、小川さんおっしゃるとおりなんです。あの、防塵をしっかりやろうというのがひとつ。屋内にするという理由の一つとしては挙げられる。すいません。移設の件に関しては、ちょっとまだ申し上げられる段階ではないので、ちょっと新しいことを考えての、そういうところまでで、すいません。今日は勘弁していただきたいと思います。
当会:じゃあ、社内で検討、予算とか・・・。
司会:はい、まだ検討中です。確定はしていません。
当会:そうですか、でも(実施は)まちがいないですよね、時期的なところはともかく、答え辛そうだな。
午前10時55分、事務棟に戻りマイクロバスから下車しました。
当会;(運転手に)運転おつかれ様でした。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・後編に続く】
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