■当会が2018年2月、高崎渋川線バイパスに投棄されたスラグの実態を初めて群馬県に情報提供してから2年半が経過した東邦亜鉛の非鉄スラグ問題ですが、昨日9月10日、群馬県廃棄物リサイクル課により、ようやく廃棄物認定されました。当会が指摘してから2年半もかかってその有害性が広く認知されることになります。
ZIP ⇒ 20200911vmxo.zip
**********上毛新聞2020年9月11日
東邦亜鉛 スラグ 県が産廃認定
処分業90日停止処分
東邦亜鉛(東京都)の安中製錬所(安中市)が出荷した非鉄スラグに土壌環境基準を超えるヒ素や鉛が含まれていた問題で、県は10日、このスラグを土壌汚染の恐れがある産業廃棄物と認定したと発表した。スラグの取引で無許可業者に運搬を委託していたなどとして、産業廃棄物処理法に基づき同社の産廃処分業を11日から90日間停止する行政処分を決めた。処分は10日付。
県によると、同社は亜鉛の生産工程で発生するスラグを道路の基礎とする路盤材の原料などとして出荷。この際、スラグの代金を上回る金額を、別の業者を介して受入れ業者に支払っていた。「逆有償取引」と呼ばれるこうした形態や、有害物質を含むスラグの性質を踏まえ、県は同精錬所で業者に引き渡したスラグは廃棄物だと判断。2014年6月~16年3月の取引量は路盤材原料向け約2万3千トン、建材用なども含めるとやく7万トンに上るとみられる。
県は取引に関わった石井商事(埼玉県八潮市)、岡田工務店(高崎市)について、いずれも産業廃棄物の収集運搬業を11日から10日間停止する行政処分を決めた。このほかスラグを受け入れていた大野工業(前橋市)、岡田興業(高崎市)については、廃棄物処分業の許可権限を持つ前橋、高崎両市が行政処分を含めて対応を検討する。
同製錬所から出たスラグは、これまでに県内の公共工事1カ所、民間工事103カ所での使用が判明。8割近い地点のスラグから、基準を超える有害物質が検出された。いずれも撤去済みか、立ち入り禁止などの措置が取られている。土壌への汚染は確認されていない。
東邦亜鉛は取材に対し、「処分を重く受け止めている。県などの指導に従い、再発防止策を徹底したい」とした。行政処分を受け、役員報酬の一部を返納する。亜鉛生産への影響はないとしている。
山本一太知事は10日の定例記者会見で「県民の安全安心を確保するため、今後も法令の適正な執行に努めたい」とした。
■東邦亜鉛のスラグ問題を巡る経緯
2006年6月・東邦亜鉛が石井商事とスラグの運搬契約締結
18年2月・県民の情報提供で県が問題を把握
10月・県が東邦亜鉛にスラグを路盤材として使わないよう指示
19年8月・東邦亜鉛がスラグの一部に基準超のヒ素や鉛が含まれていたと発表
20年9月・県が東邦亜鉛などの行政処分を発表
**********
この問題を初めて報道した毎日新聞も報道しています。
*****2020年9月11日毎日新聞デジタル
https://mainichi.jp/articles/20200911/ddl/k10/040/063000c
有害スラグ 3業者に行政処分 東邦亜鉛など 県、産廃と認定 /群馬
金属メーカー「東邦亜鉛」の安中製錬所(安中市)が出荷した有害スラグが県内で建設資材として流通していた問題で、県は10日、東邦亜鉛など3業者に対し廃棄物処理法違反で業務停止の行政処分を出した。土壌汚染の可能性があることや取引実態などから産業廃棄物と判断した。
県によると、スラグを路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛やヒ素による土壌汚染の可能性がある▽東邦亜鉛が取引業者に対しスラグの販売代金を上回る運賃補助を支払うなど「逆有償取引」が行われていた――ことなどから、証拠書類が確認できた2014年6月~16年3月に出荷されたスラグを産業廃棄物と認定した。
駐車場や庭などで使われ、今年7月末時点で使用箇所は榛東村の公共工事1カ所と民間工事103カ所の計104カ所。土壌環境基準を超える有害物質が検出された箇所があるが、土壌汚染は確認されていないという。すでに74カ所は撤去し、30カ所は立ち入り禁止や注意喚起を行っている。16年4月以降、スラグは路盤材原料として出荷されていない。
行政処分は、排出者である東邦亜鉛=産業廃棄物処分業の停止90日間など▽スラグを運搬した石井商事(埼玉県八潮市)と仲介をした岡田工務店(高崎市)=ともに産業廃棄物収集運搬業の停止10日間。【道岡美波】
**********
地元のNHK前橋放送局もこの件をいち早く報道しました。
**********群馬 NHK News WEB 2020年09月10日18:03
スラグ問題で東邦亜鉛に行政処分
安中市の製錬所から建設資材として出荷された「スラグ」と呼ばれる金属製のくずに、環境基準を大幅に超える鉛などが含まれていた問題で、
県は、この会社に産業廃棄物処分業などの停止を命じる行政処分を行いました。
行政処分を受けたのは、東京の金属メーカー「東邦亜鉛」です。
去年、この会社の安中市の製錬所から建設資材として出荷されたスラグに、環境基準を大幅に超える鉛やヒ素が含まれていたことが分かり、県が調査を進めてきました。
その結果、平成26年から28年にかけ、許可を受けていない仲介業者などを通じて、建設業者などに販売していたことが分かったということです。
このため県は10日、会社に対し、産業廃棄物処分業や処理施設の使用を90日間にわたって停止するよう命じる行政処分を行いました。
また、スラグを無許可で運搬するなどしていた2つの会社についても行政処分を行い、産業廃棄物の収集や運搬業を10日間にわたって停止するよう命じました。
このスラグは、県内の住宅の庭や砂利など104か所で使用されていることが分かっていますが、土壌汚染は確認されていないということです。
山本知事は「県民の安心安全のために法律の適正な執行に努めたい」と話しています。
**********
NHKの報道をご覧いただきましたが、「県内の住宅の庭や砂利など104か所で使用されていることが分かっています」と県民の住宅が被害にあっているのに、東邦亜鉛に対して「会社に対し、産業廃棄物処分業や処理施設の使用を90日間にわたって停止するよう命じる行政処分」では、処分が甘すぎると言わざるを得ません。
大同スラグ問題では(株)佐藤建設工業の廃棄物許可は取り消されました。なぜ県は東邦亜鉛を優遇するのでしょうか?
また「土壌汚染は確認されない」となっていますが、廃棄物認定の理由に土壌と接する方法により使用すると土壌を汚染する恐れがあることを挙げていますので、全く信用できません。繰り返しますが今回被害にあっているのは県民が住む住宅の庭などです。一般市民はスラグの危険性やスラグ直下の土壌の調査の必要性など知らない方も多いかと存じます。
群馬県から、これほど東邦亜鉛を優遇する様を見せつけられると、怒りすらこみあげてくるのは当会だけでしょうか。
【9月12日追記】
**********東京新聞2020年9月12日
群馬県 東邦亜鉛に行政処分 スラグに基準越えの鉛やヒ素
東邦亜鉛安中製錬所(群馬県安中市)が出荷した非鉄スラグの一部に土壌環境基準を超す鉛やヒ素が含まれていた問題で県は十日、同社など三事務所に、廃棄物処理法違反で業務停止などの行政命令を出した。
スラグは亜鉛の製造工程で出る砂利のような物質。同社はセメントや道路の路盤材として販売していた。
県はスラグが土壌と接する方法で使われた場合、土壌汚染の恐れがあるほか、東邦亜鉛が取引業者に対し運賃補助として代金以上を支払う「逆有償取引」が二〇一四年四月~一六年三月にあったと判断。スラグは廃棄物と認定した。
県は十一日から、東邦亜鉛に産業廃棄物処分業の停止九十日間などの行政処分をした。取引に関わった石井商事(埼玉県八潮市)と岡田工務店の行政処分は産業廃棄物収集運搬業の停止十日間。
スラグを受け入れた大野工業(前橋市)と岡田興業(高崎市)については、廃棄物処分業の許可権限のある前橋と高崎の両市が対応を検討する。
県によると、東邦亜鉛安中製錬所から搬出されたスラグが使われたのは公共工事が榛東村の一カ所、民間工事は百三カ所。これまでの調査では、基準を超える土壌汚染は確認されていない。
(池田知之、市川勘太郎)
**********
■ここで、今回も報道のポイントを整理してみましょう。
ポイント①非鉄スラグが廃棄物に認定されたこと。
ポイント②処分が甘いこと。
ポイント③スラグ不法投棄現場が少なすぎること。
それではそれぞれのポイントごとに検証してみましょう。
ポイント①
非鉄スラグが廃棄物に認定されたこと。
「県によると、スラグを路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛やヒ素による土壌汚染の可能性がある▽東邦亜鉛が取引業者に対しスラグの販売代金を上回る運賃補助を支払うなど「逆有償取引」が行われていた」、ことなどから東邦亜鉛排出の非鉄スラグが廃棄物に認定されました。しかし「証拠書類が確認できた2014年6月~16年3月に出荷されたスラグを産業廃棄物と認定した。」となっており、こんな儲け話がたった2年で終わるはずはなく、「2018年10月・県が東邦亜鉛にスラグを路盤材として使わないよう指示」するまで非鉄スラグが投棄されていたとみるべきでしょう。なぜか群馬県が東邦亜鉛を擁護する姿勢が見て取れます。
しかし東邦亜鉛のスラグがその有害性から廃棄物認定されたことで、年代に関わらずヒ素や鉛の環境基準値が設定されてからは全て廃棄物と考えるべきであり、当会はさらに非鉄スラグ問題を追及してまいります。
ポイント②
処分が甘いこと。
過去に公害問題をおこした東邦亜鉛が排出する非鉄スラグの投棄問題に対し、群馬県が課した行政処分は「産廃処分業を11日から90日間停止する」です。これでは甘すぎます。大同スラグ問題では(株)佐藤建設工業は廃棄物処理の許可を取り消されました。
また群馬県により公表された資料によると「東邦亜鉛は、廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項の規定に違反して産業廃棄物の運搬及び処分を委託した」となっており、大同スラグ問題同様「運搬及び処分の委託」業務違反として行政処分したことが伺えます。
東邦亜鉛は過去に公害事件を起こした企業ですので、不法投棄問題として行政処分し、躊躇なく刑事告発をすべきです。当会は微力ながら全力でこの事件が不法投棄問題として処分されるよう尽力します。
ポイント③
スラグ不法投棄現場が少なすぎること。
大同スラグ問題の場合は、(株)佐藤建設工業が“スラグ20%混合”などとする、スラグ混合情報を、材料試験成績書に表示していました。(実際にはあらゆる場所にスラグが投棄されていました)
しかし東邦亜鉛非鉄スラグの場合には、岡田興業などの業者が、何の計画性もなくその販売する建設資材に投棄していました。どこに非鉄スラグが入っているかわからない状態ですから、岡田興業などの業者が販売した砕石類全てを疑ってかかるべきです。もちろん悪質な業者に対する行政処分は、処理や運搬の許可の取り消し、そして不当投棄された非鉄スラグ撤去の措置命令が発出されるべきです。今後の前橋市や高崎市の発表を注視していきましょう。
■ポイント➁でも触れたように、東邦亜鉛株式会社は過去にカドミウム公害事件を起こした企業として有名です。同社は、1937年に碓氷郡安中町(1958年より安中市)で操業を開始した日本亜鉛製錬株式会社(現・東邦亜鉛株式会社)安中製錬所を発祥としています。
戦時下だった当時、ヘルメット用の「高度鋼」という兵士の命を守る大事な金属を生産する国策工場だという触れ込みで地元住民を騙して、現在の群馬県安中市中宿に進出しました。このため、筆者の祖母や近所の同年代のかたがたは、東邦亜鉛安中製錬所のことを、晩年まで「コードコー」と呼んでいました。
「コードコー」は、工場設置のその日から、亜鉛製錬を開始するとともに、カドミウムなどを含む排煙、排水などを周囲に排出して周辺環境を汚染し、特に当時盛んに行われていた養蚕に大きな被害を与えました。高度経済成長期を迎えると、製錬所の事業が拡大され、被害は一層深刻化していった。
この状況を変える契機となったのは、四大公害の発生とその周知です。1950年代から1970年代にかけて四大公害が深刻化するとともに社会の関心が高まり、1967年には公害対策基本法が定められました。高まる世論に後押しされて数々の公害反対運動が各地で展開されました。安中公害においても、東京での運動やイタイイタイ病原告団との交流など多様な運動が展開され、1986年には裁判所による和解勧告に基づき、同社と地元住民から構成される安中公害原告団との間で協定書締結と補償金支払いで合意されました。
しかし、東邦亜鉛安中製錬所はその後も、公害防止の徹底には腰が引けており、今回の非鉄スラグにしても、鉛・ヒ素など高濃度の重金属を含んでいるのに、「鉱さい」と呼ばず「K砕」と呼称し、廃棄物ではないとしています。そのため、未だに加盟する業界団体の「日本鉱業協会」の傘下にあるスラグ委員会に参加していません。
■東邦亜鉛安中製錬所は、信越線安中駅の南側の丘陵地の北側斜面に、現在55ヘクタールまで、工場の敷地を拡大し、さらにその周辺の山林や原野を買収しており、丘陵地の上に位置する北野殿地区内に約1.5ヘクタールの民地や農地を保有しています。
なぜ、農業者でない企業法人が農地を取得できたのか、行政関係者も首をひねっていますが、かつて地元から雇用した農家出身の従業員の名義で、書類を偽装し、農地法を歪めて所有権移転手続きをしたのではないか、という疑惑があります。
また、現在、スラグ置場になっている場所は、以前、変電所でしたが、農免道路を隔てて、その東側には、現在、野球のできるグラウンドになっている高崎信用金庫(“たかしん”)所有の土地があります。本来、変電所のある土地は、東邦亜鉛の公害により作物ができなくなった農地でしたが、これを東邦亜鉛が所有する農家のかたがたの足元を見て買いたたき、さらに拡大するのを阻止するため、公害に悩まされていた地元西岩井地区に住む農地所有者のかたがたは、東邦亜鉛と関係のない(と思った)“たかしん”に売却しました。
ところが、“たかしん”と“東邦亜鉛”と結託しており、現在、“たかしん”グラウンドのあった農地をひそかに買収していた東邦亜鉛は、地元農家が“たかしん”に売った農地とたちまち等価交換をして、変電所設備を設置し、東電とも結託して、電気亜鉛増産のための送電線を強引に高崎の観音山方面にある特別高圧幹線から引き込もうとしたのでした。
このように、なぜ農地を自由自在に企業が購入できたのかも不思議なことですが、東邦亜鉛やその取引先にしてみれば、行政さえも政治力を使えば自由にコントロールできたのでした。そうした政治環境風土は、今回、群馬県の環境行政が示した「コードコー」への大甘な行政処分からも、依然として連綿と続いていることが窺い知れます。
■筆者はさっそく9月11日午後5時頃、県庁16階にある廃棄物・リサイクル課を訪れ、畠中次長や富田係長と面談し、今回の県の行政処分に対して、地元住民として慰労の言葉を伝えました。そして非鉄スラグの安全対策の観点から、今回の非鉄スラグ不法投棄問題を契機に、同社のスラグ処理プロセスの抜本的対策として、温度が最高1300℃までしか上げられないロータリーキルン方式の撤廃が不可欠であることを説明しました。
すなわち、沸点1749℃の鉛を揮発させることができる電気炉などの設備の導入によって、非鉄スラグから鉛の回収、もしくは、内陸地にある安中製錬所から有害な鉛・ヒ素入りスラグを排出するのではなく、鉛精錬事業を手掛ける同業他社に処理を委託するなどの方法が考えられます。
具体的な一案として、福島県いわき市にある同社小名浜工場から亜鉛精錬原料として亜鉛精鉱・焼鉱を毎日搬入している「安中貨物」とよばれる鉄道輸送の復路の貨車の空きスペースを利用して、鉛・ヒ素入りの非鉄スラグを運搬し、小名浜港から瀬戸内海にある同社の鉛製錬事業を行っている契島工場に海上輸送して、安全に鉛等を除去したうえで、環境に負荷のかからない安全なスラグにしてから、再利用することを、「コードコー」に求めていく方針を伝えました。
公害体質を引きずるブラック企業がいつまでも内陸という不利な立地条件で存続できるのか。厳しい国際間の企業競争に晒される同社は、本気で取り組まざるを得ない状況に直面しているはずです。行政が依然としてコードコーに配慮を示す現状では、今回の行政処分措置を契機に、同社経営陣に直訴して、今度こそ、徹底的な組織改革と、安中製錬所の公害防止対策の徹底化を申し入れることが最も重要だと考えています。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※関連情報
**********産経新聞2020年9月11日
非鉄スラグ問題 廃棄物処理法違反で東邦亜鉛など処分 群馬
東邦亜鉛の安中製錬所(安中市)が道路の基盤材などとして出荷した非鉄スラグの一部に土壌環境基準を超えるヒ素や鉛などが含まれていた問題で、県は10日、廃棄物処理法に基づき、東邦亜鉛に対し産業廃棄物処分業を90日間停止するなどの行政処分を行った。
県によると、東邦亜鉛は平成26年6月~28年3月に非鉄スラグ約7万846トンを出荷したが、県は実質的に廃棄物と認定。東邦亜鉛が、許可を受けていない岡田興業(高崎市)と、法的記載事項を満たさない契約書に基づいて産廃処理業の石井商事(埼玉県八潮市)に非鉄スラグの運搬をそれぞれ委託した。
また、岡田興業を仲介した土木建築業の岡田工務店(高崎市)と石井商事に対しても産廃収集運搬業を10日間停止にする行政処分を行った。いずれも10日付。
県の調べでは、非鉄スラグは公共工事で1カ所、民間工事で103カ所で使われたが、土壌汚染は確認されていないという。
**********群馬県HP 2020年9月10日
https://www.pref.gunma.jp/houdou/e17g_00031.html
【9月10日】東邦亜鉛(株)安中製錬所から排出された非鉄スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果及び関係者に対する行政処分について(廃棄物・リサイクル課、環境保全課)
東邦亜鉛株式会社(東京都千代田区丸の内一丁目8番2号。以下「東邦亜鉛」という。)の安中製錬所(以下「安中製錬所」という。)の亜鉛の生産・製造工程において発生する非鉄スラグ(以下「非鉄スラグ」という。)が、路盤材原料として出荷され、建設資材として使用されたことについて、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づき調査を行ってきたところ、その結果は次のとおりです。
また、調査の結果に基づき、関係者に対する行政処分を行いました。
1 調査等の経過
(1)立入検査(廃棄物処理法第19条第1項)
平成30年5月10日 東邦亜鉛
平成30年5月10日 有限会社岡田興業(群馬県高崎市箕郷町松之沢32番地の1。以下「岡田興業」という。)
平成30年5月10日 株式会社岡田工務店(群馬県高崎市箕郷町矢原1062番地79。以下「岡田工務店」という。)
平成30年6月29日 株式会社大野工業(群馬県前橋市横沢町906番地7。以下「大野工業」という。)
平成30年7月24日 石井商事株式会社(埼玉県八潮市鶴ヶ曽根943番地。以下「石井商事」という。)
(2)報告の徴収(廃棄物処理法第18条第1項)
平成30年11月5日 東邦亜鉛、石井商事、岡田工務店
(3)行政指導
平成30年10月17日 東邦亜鉛に対し、非鉄スラグを路盤材及び敷砂利として使用しないよう指示
平成31年 1月 4日 県建設業協会及び県再生骨材協会に対し、有害物質を含有する建設資材が工事に使用されることがないよう周知を依頼
令和 元年 5月31日 東邦亜鉛に対し、非鉄スラグのリスクについての注意喚起とともに、住民等からの問い合わせ窓口を設置し、速やかにその旨を周知広報することを指示
令和 元年10月 1日 東邦亜鉛に対し、「調査の加速化」「使用箇所への対応措置の早急な実施」「周知広報の徹底」を改めて指示
令和 2年 2月 5日 東邦亜鉛に対し、令和元年10月の指示内容を重ねて指示
2 廃棄物該当性の調査結果(別紙1参照)
非鉄スラグは、路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛や砒素による土壌汚染の可能性があり、また、関係者の間で逆有償取引が行われていた。
物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すると、平成26年6月から平成28年3月(以下「認定期間」という。)において、東邦亜鉛が石井商事又は岡田興業に安中製錬所で引き渡した時点における路盤材原料向け非鉄スラグは、廃棄物と認められる。
3 産業廃棄物処理業者に対する行政処分等(別紙2参照)
2の調査結果に基づき、群馬県知事が産業廃棄物処理業等を許可した東邦亜鉛、石井商事及び岡田工務店に対して、別紙2のとおり、行政処分を行った。
また、東邦亜鉛から路盤材原料向け非鉄スラグを受け入れた岡田興業及び大野工業を所管する高崎市長及び前橋市長、鉄源・建材用原料(遮音材)向け非鉄スラグを受け入れている石井商事を所管する埼玉県知事に対して、2の調査結果等について情報提供するとともに、行政処分の結果を通知した。
4 非鉄スラグの使用箇所の解明及び対応措置等の状況(別紙3参照)
(1)安中製錬所から搬出された非鉄スラグの使用が確認された箇所は、別紙3のとおり公共工事で1箇所、民間工事で103箇所である。
(2)これまでの調査の結果では、使用箇所における建設資材から土壌環境基準又は土壌汚染対策法の指定基準(以下「土壌環境基準等」という。)に相当する値を超過する有害物質が検出された箇所はあるが、土壌汚染は確認されていない。
(3)県では、東邦亜鉛に対して、引き続き使用箇所の全容解明に当たるとともに、判明した使用箇所における環境調査の加速化と結果の報告、及び生活環境の保全上支障が生じないよう必要な措置を指示した。
(4)これを受けて、東邦亜鉛は別紙3のとおり、非鉄スラグの使用が確認された104箇所全てにおいて対応措置を講じているところである。
5 今後の対応
(1)今後とも非鉄スラグの使用箇所の解明を進め、新たに使用箇所が判明した場合は、これまでと同様の方法で環境調査を行い、その結果を速やかに公表する。
(2)判明した使用箇所は全て県がリスト化し、今後も継続して、地下水概況調査の中で、環境への影響について監視を行っていく。
(3)東邦亜鉛に対しては、使用箇所における必要な措置を早期に完了させるよう引き続き指導を行う。
別紙1 廃棄物該当性の調査結果
1 非鉄スラグの取扱い
非鉄スラグは、東邦亜鉛が安中製錬所にロータリーキルンを導入した昭和56年以降、亜鉛の生産・製造工程において副産物として発生している。
東邦亜鉛は、非鉄スラグを、鉄源・建材用原料、路盤材原料等として出荷する一方、セメント原料として廃棄物処理していた。
2 非鉄スラグの性状
非鉄スラグには、亜鉛鉱石に由来する鉛や砒素が含まれている。
東邦亜鉛は、平成27年9月まで、非鉄スラグに含まれる有害物質が土壌環境基準等に相当する値を超過するかどうかについて、計量証明事業者による試験を行っていなかった。
同年10月以降、計量証明事業者に依頼して実施した試験では、鉛や砒素の溶出量・含有量が土壌環境基準等に相当する値を超過することがあった。
県が、安中製錬所の非鉄スラグを検査した結果、鉛の溶出量・含有量や砒素の溶出量が、土壌環境基準等に相当する値を超過していた。
路盤材原料向け非鉄スラグが使用された複数の箇所で採取した試料についても、鉛や砒素の溶出量・含有量が、土壌環境基準等に相当する値を超過していることが確認されている。
以上から、鉛や砒素が土壌環境基準等に相当する値を超過する性状である非鉄スラグは、路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛や砒素による土壌汚染の可能性があり、土壌汚染対策法の規制にかかるおそれや生活環境の保全上支障が生ずるおそれがある。
3 非鉄スラグの取引
東邦亜鉛は、平成18年6月、岡田興業及び大野工業と路盤材原料向け非鉄スラグの取引について契約を締結し、岡田興業に対しては平成28年3月まで、大野工業に対しては平成27年12月まで出荷していた。なお、平成28年4月以降、路盤材原料向け非鉄スラグの出荷は行われていない。
東邦亜鉛は、平成18年6月、石井商事と路盤材原料向け非鉄スラグの運搬について契約を締結し、安中製錬所から岡田興業構内及び大野工業構内への運搬は石井商事が行っていた。なお、平成27年7月から同年10月までの間は、岡田興業が自社の構内まで運搬した。
路盤材原料向け非鉄スラグは、岡田興業及び大野工業に運ばれた後、敷砂利等の建設資材として使用された。
東邦亜鉛は、平成9年3月、石井商事と鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの取引について契約を締結し、鉄源・建材用原料向け非鉄スラグは、現在も石井商事の八潮工場に出荷され、鉄源や建材用原料として使用されている。
また、安中製錬所から石井商事の八潮工場までの鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの運搬は、石井商事が行っている。
4 非鉄スラグの取引に係る金銭の流れ(図1及び図2参照)
路盤材原料向け非鉄スラグの代金は、取引量1トン当たり500円(消費税抜き。以下同じ。)であるが、岡田興業及び大野工業は、取引量1トン当たり1,000円の販売促進費を石井商事から受け取っていた。
石井商事から岡田興業に支払われた販売促進費は、岡田工務店を経由しており、岡田工務店は取引量1トン当たり100円を受け取っていた。
一方、鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの代金は、取引量1トン当たり300円又は600円であるが、東邦亜鉛は、運賃補助として、取引量1トン当たり4,400円又は6,400円を石井商事に支払っていた。
東邦亜鉛は、岡田興業、大野工業及び石井商事から非鉄スラグの代金を受け取る一方、これを上回る運賃補助等を石井商事に支払っており、路盤材原料向け非鉄スラグ及び鉄源・建材用原料向け非鉄スラグに係る一連の取引は、いわゆる逆有償取引であった。
5 認定期間及び取引量
今回の調査において非鉄スラグの取引量やその代金等が関係資料等により確認できた期間は、平成26年6月から平成28年3月までであり、この期間における路盤材原料向け非鉄スラグ及び鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの取引量は次のとおりである。
<認定期間及び取引量>
●用途:路盤材原料向け
⇒出荷先:岡田鋼業
期間:平成26年9月~平成28年3月
取引量:16,323トン
⇒出荷先:大野工業
期間:平成26年6月~平成27年12月
取引量: 7,351トン
小計 23,674トン
●用途:鉄源・建材用原料向け
⇒出荷先:石井商事
期間:平成26年6月~平成28年3月
取引量:47,172トン
合計 70,846トン
別紙2 産業廃棄物処理業者に対する行政処分
○処分対象者1
事業者の名称及び所在:東邦亜鉛株式会社 代表取締役 丸崎 公康
東京都千代田区丸の内一丁目8番2号
許可の番号:第01020007220号群馬県第282-1号
第01070007220号群馬県第359-0号
処分の年月日:令和2年9月10日
処分の内容:産業廃棄物処分業の停止90日間、特別管理産業廃棄物処分業の停止90日間、産業廃棄物処理施設(焼却施設、最終処分場)の使用停止90日間(停止期間:令和2年9月11日から同年12月9日まで)
処分理由:東邦亜鉛は、廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項の規定に違反して産業廃棄物の運搬及び処分を委託した。この行為は、廃棄物処理法第14条の3第1号、第14条の6及び第15条の2の7第3号に該当する。
○処分対象者2
事業者の名称及び所在:石井商事株式会社 代表取締役 石井 正明
埼玉県八潮市鶴ヶ曽根943番地
許可の番号:第01000020703号
処分の年月日:令和2年9月10日
処分の内容:産業廃棄物収集運搬業の停止10日間(停止期間:令和2年9月11日から同月20日まで)
処分理由:石井商事は、東邦亜鉛が違反行為(廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項違反)をすることを助けた。この行為は、廃棄物処理法第14条の3第1号に該当する。
○処分対象者3
事業者の名称及び所在:株式会社岡田工務店 代表取締役 岡田 光正
群馬県高崎市箕郷町矢原1062番地79
許可の番号:第01000017595号
処分の年月日:令和2年9月10日
処分の内容:産業廃棄物収集運搬業の停止10日間(停止期間:令和2年9月11日から同月20日まで)
処分理由:岡田工務店は、東邦亜鉛が違反行為(廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項違反)をすることを助けた。この行為は、廃棄物処理法第14条の3第1号に該当する。
別紙2-2 処分対象者の違反行為の概要
<処分対象者の違反行為の概要>
●処分対象者:東邦亜鉛
主な違反行為:
【廃棄物処理法第12条第5項】
1 無許可の岡田興業に運搬を委託した。
【廃棄物処理法第12条第6項】
2 石井商事に、法定記載事項を満たさない契約書で運搬を委託した。
3 事業の範囲に鉱さいを含まない岡田興業・大野工業に、処分を委託した。
●処分対象者:石井商事
主な違反行為:
4 1に関し、東邦亜鉛から運賃を受け取り、岡田工務店を経由して岡田興業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
5 2に関し、東邦亜鉛から運賃を受け取り、岡田興業・大野工業まで運搬することで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
6 3に関し、処理費に相当する金銭(販売促進費)を、岡田興業・大野工業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
●処分対象者:岡田工務店
7 1に関し、石井商事から運賃を受け取り、岡田興業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
8 3に関し、処理費に相当する金銭(販売促進費)を石井商事から受け取り、岡田興業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
別紙3 非鉄スラグの使用箇所の解明及び対応措置等の状況
令和2年7月末時点
1.使用箇所数
(1)公共工事
(2)民間工事
2.対応措置等の状況
(注1)「立入禁止」及び「注意喚起」を講じた使用箇所には、撤去工事中の箇所も含まれる。
(注2)「注意喚起」は、撤去が完了するまでの当面の措置として住宅等の所有者に対して行うよう、 東邦亜鉛に指示した。
【非鉄スラグに関する問い合わせ先】
廃棄物・リサイクル課 産業廃棄物係
電話 027-226-2861
メール sanpai@pref.gunma.lg.jp
環境保全課 放射線・土壌環境係
電話 027-226-2833
メール kanhozen@pref.gunma.lg.jp
※報道提供資料 URL ⇒ https://www.pref.gunma.jp/contents/100167609.pdf
ZIP ⇒ ilmjmxo.zip
**********
ZIP ⇒ 20200911vmxo.zip
**********上毛新聞2020年9月11日
東邦亜鉛 スラグ 県が産廃認定
処分業90日停止処分
東邦亜鉛(東京都)の安中製錬所(安中市)が出荷した非鉄スラグに土壌環境基準を超えるヒ素や鉛が含まれていた問題で、県は10日、このスラグを土壌汚染の恐れがある産業廃棄物と認定したと発表した。スラグの取引で無許可業者に運搬を委託していたなどとして、産業廃棄物処理法に基づき同社の産廃処分業を11日から90日間停止する行政処分を決めた。処分は10日付。
県によると、同社は亜鉛の生産工程で発生するスラグを道路の基礎とする路盤材の原料などとして出荷。この際、スラグの代金を上回る金額を、別の業者を介して受入れ業者に支払っていた。「逆有償取引」と呼ばれるこうした形態や、有害物質を含むスラグの性質を踏まえ、県は同精錬所で業者に引き渡したスラグは廃棄物だと判断。2014年6月~16年3月の取引量は路盤材原料向け約2万3千トン、建材用なども含めるとやく7万トンに上るとみられる。
県は取引に関わった石井商事(埼玉県八潮市)、岡田工務店(高崎市)について、いずれも産業廃棄物の収集運搬業を11日から10日間停止する行政処分を決めた。このほかスラグを受け入れていた大野工業(前橋市)、岡田興業(高崎市)については、廃棄物処分業の許可権限を持つ前橋、高崎両市が行政処分を含めて対応を検討する。
同製錬所から出たスラグは、これまでに県内の公共工事1カ所、民間工事103カ所での使用が判明。8割近い地点のスラグから、基準を超える有害物質が検出された。いずれも撤去済みか、立ち入り禁止などの措置が取られている。土壌への汚染は確認されていない。
東邦亜鉛は取材に対し、「処分を重く受け止めている。県などの指導に従い、再発防止策を徹底したい」とした。行政処分を受け、役員報酬の一部を返納する。亜鉛生産への影響はないとしている。
山本一太知事は10日の定例記者会見で「県民の安全安心を確保するため、今後も法令の適正な執行に努めたい」とした。
■東邦亜鉛のスラグ問題を巡る経緯
2006年6月・東邦亜鉛が石井商事とスラグの運搬契約締結
18年2月・県民の情報提供で県が問題を把握
10月・県が東邦亜鉛にスラグを路盤材として使わないよう指示
19年8月・東邦亜鉛がスラグの一部に基準超のヒ素や鉛が含まれていたと発表
20年9月・県が東邦亜鉛などの行政処分を発表
**********
この問題を初めて報道した毎日新聞も報道しています。
*****2020年9月11日毎日新聞デジタル
https://mainichi.jp/articles/20200911/ddl/k10/040/063000c
有害スラグ 3業者に行政処分 東邦亜鉛など 県、産廃と認定 /群馬
金属メーカー「東邦亜鉛」の安中製錬所(安中市)が出荷した有害スラグが県内で建設資材として流通していた問題で、県は10日、東邦亜鉛など3業者に対し廃棄物処理法違反で業務停止の行政処分を出した。土壌汚染の可能性があることや取引実態などから産業廃棄物と判断した。
県によると、スラグを路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛やヒ素による土壌汚染の可能性がある▽東邦亜鉛が取引業者に対しスラグの販売代金を上回る運賃補助を支払うなど「逆有償取引」が行われていた――ことなどから、証拠書類が確認できた2014年6月~16年3月に出荷されたスラグを産業廃棄物と認定した。
駐車場や庭などで使われ、今年7月末時点で使用箇所は榛東村の公共工事1カ所と民間工事103カ所の計104カ所。土壌環境基準を超える有害物質が検出された箇所があるが、土壌汚染は確認されていないという。すでに74カ所は撤去し、30カ所は立ち入り禁止や注意喚起を行っている。16年4月以降、スラグは路盤材原料として出荷されていない。
行政処分は、排出者である東邦亜鉛=産業廃棄物処分業の停止90日間など▽スラグを運搬した石井商事(埼玉県八潮市)と仲介をした岡田工務店(高崎市)=ともに産業廃棄物収集運搬業の停止10日間。【道岡美波】
**********
地元のNHK前橋放送局もこの件をいち早く報道しました。
**********群馬 NHK News WEB 2020年09月10日18:03
スラグ問題で東邦亜鉛に行政処分
安中市の製錬所から建設資材として出荷された「スラグ」と呼ばれる金属製のくずに、環境基準を大幅に超える鉛などが含まれていた問題で、
県は、この会社に産業廃棄物処分業などの停止を命じる行政処分を行いました。
行政処分を受けたのは、東京の金属メーカー「東邦亜鉛」です。
去年、この会社の安中市の製錬所から建設資材として出荷されたスラグに、環境基準を大幅に超える鉛やヒ素が含まれていたことが分かり、県が調査を進めてきました。
その結果、平成26年から28年にかけ、許可を受けていない仲介業者などを通じて、建設業者などに販売していたことが分かったということです。
このため県は10日、会社に対し、産業廃棄物処分業や処理施設の使用を90日間にわたって停止するよう命じる行政処分を行いました。
また、スラグを無許可で運搬するなどしていた2つの会社についても行政処分を行い、産業廃棄物の収集や運搬業を10日間にわたって停止するよう命じました。
このスラグは、県内の住宅の庭や砂利など104か所で使用されていることが分かっていますが、土壌汚染は確認されていないということです。
山本知事は「県民の安心安全のために法律の適正な執行に努めたい」と話しています。
**********
NHKの報道をご覧いただきましたが、「県内の住宅の庭や砂利など104か所で使用されていることが分かっています」と県民の住宅が被害にあっているのに、東邦亜鉛に対して「会社に対し、産業廃棄物処分業や処理施設の使用を90日間にわたって停止するよう命じる行政処分」では、処分が甘すぎると言わざるを得ません。
大同スラグ問題では(株)佐藤建設工業の廃棄物許可は取り消されました。なぜ県は東邦亜鉛を優遇するのでしょうか?
また「土壌汚染は確認されない」となっていますが、廃棄物認定の理由に土壌と接する方法により使用すると土壌を汚染する恐れがあることを挙げていますので、全く信用できません。繰り返しますが今回被害にあっているのは県民が住む住宅の庭などです。一般市民はスラグの危険性やスラグ直下の土壌の調査の必要性など知らない方も多いかと存じます。
群馬県から、これほど東邦亜鉛を優遇する様を見せつけられると、怒りすらこみあげてくるのは当会だけでしょうか。
【9月12日追記】
**********東京新聞2020年9月12日
群馬県 東邦亜鉛に行政処分 スラグに基準越えの鉛やヒ素
東邦亜鉛安中製錬所(群馬県安中市)が出荷した非鉄スラグの一部に土壌環境基準を超す鉛やヒ素が含まれていた問題で県は十日、同社など三事務所に、廃棄物処理法違反で業務停止などの行政命令を出した。
スラグは亜鉛の製造工程で出る砂利のような物質。同社はセメントや道路の路盤材として販売していた。
県はスラグが土壌と接する方法で使われた場合、土壌汚染の恐れがあるほか、東邦亜鉛が取引業者に対し運賃補助として代金以上を支払う「逆有償取引」が二〇一四年四月~一六年三月にあったと判断。スラグは廃棄物と認定した。
県は十一日から、東邦亜鉛に産業廃棄物処分業の停止九十日間などの行政処分をした。取引に関わった石井商事(埼玉県八潮市)と岡田工務店の行政処分は産業廃棄物収集運搬業の停止十日間。
スラグを受け入れた大野工業(前橋市)と岡田興業(高崎市)については、廃棄物処分業の許可権限のある前橋と高崎の両市が対応を検討する。
県によると、東邦亜鉛安中製錬所から搬出されたスラグが使われたのは公共工事が榛東村の一カ所、民間工事は百三カ所。これまでの調査では、基準を超える土壌汚染は確認されていない。
(池田知之、市川勘太郎)
**********
■ここで、今回も報道のポイントを整理してみましょう。
ポイント①非鉄スラグが廃棄物に認定されたこと。
ポイント②処分が甘いこと。
ポイント③スラグ不法投棄現場が少なすぎること。
それではそれぞれのポイントごとに検証してみましょう。
ポイント①
非鉄スラグが廃棄物に認定されたこと。
「県によると、スラグを路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛やヒ素による土壌汚染の可能性がある▽東邦亜鉛が取引業者に対しスラグの販売代金を上回る運賃補助を支払うなど「逆有償取引」が行われていた」、ことなどから東邦亜鉛排出の非鉄スラグが廃棄物に認定されました。しかし「証拠書類が確認できた2014年6月~16年3月に出荷されたスラグを産業廃棄物と認定した。」となっており、こんな儲け話がたった2年で終わるはずはなく、「2018年10月・県が東邦亜鉛にスラグを路盤材として使わないよう指示」するまで非鉄スラグが投棄されていたとみるべきでしょう。なぜか群馬県が東邦亜鉛を擁護する姿勢が見て取れます。
しかし東邦亜鉛のスラグがその有害性から廃棄物認定されたことで、年代に関わらずヒ素や鉛の環境基準値が設定されてからは全て廃棄物と考えるべきであり、当会はさらに非鉄スラグ問題を追及してまいります。
ポイント②
処分が甘いこと。
過去に公害問題をおこした東邦亜鉛が排出する非鉄スラグの投棄問題に対し、群馬県が課した行政処分は「産廃処分業を11日から90日間停止する」です。これでは甘すぎます。大同スラグ問題では(株)佐藤建設工業は廃棄物処理の許可を取り消されました。
また群馬県により公表された資料によると「東邦亜鉛は、廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項の規定に違反して産業廃棄物の運搬及び処分を委託した」となっており、大同スラグ問題同様「運搬及び処分の委託」業務違反として行政処分したことが伺えます。
東邦亜鉛は過去に公害事件を起こした企業ですので、不法投棄問題として行政処分し、躊躇なく刑事告発をすべきです。当会は微力ながら全力でこの事件が不法投棄問題として処分されるよう尽力します。
ポイント③
スラグ不法投棄現場が少なすぎること。
大同スラグ問題の場合は、(株)佐藤建設工業が“スラグ20%混合”などとする、スラグ混合情報を、材料試験成績書に表示していました。(実際にはあらゆる場所にスラグが投棄されていました)
しかし東邦亜鉛非鉄スラグの場合には、岡田興業などの業者が、何の計画性もなくその販売する建設資材に投棄していました。どこに非鉄スラグが入っているかわからない状態ですから、岡田興業などの業者が販売した砕石類全てを疑ってかかるべきです。もちろん悪質な業者に対する行政処分は、処理や運搬の許可の取り消し、そして不当投棄された非鉄スラグ撤去の措置命令が発出されるべきです。今後の前橋市や高崎市の発表を注視していきましょう。
■ポイント➁でも触れたように、東邦亜鉛株式会社は過去にカドミウム公害事件を起こした企業として有名です。同社は、1937年に碓氷郡安中町(1958年より安中市)で操業を開始した日本亜鉛製錬株式会社(現・東邦亜鉛株式会社)安中製錬所を発祥としています。
戦時下だった当時、ヘルメット用の「高度鋼」という兵士の命を守る大事な金属を生産する国策工場だという触れ込みで地元住民を騙して、現在の群馬県安中市中宿に進出しました。このため、筆者の祖母や近所の同年代のかたがたは、東邦亜鉛安中製錬所のことを、晩年まで「コードコー」と呼んでいました。
「コードコー」は、工場設置のその日から、亜鉛製錬を開始するとともに、カドミウムなどを含む排煙、排水などを周囲に排出して周辺環境を汚染し、特に当時盛んに行われていた養蚕に大きな被害を与えました。高度経済成長期を迎えると、製錬所の事業が拡大され、被害は一層深刻化していった。
この状況を変える契機となったのは、四大公害の発生とその周知です。1950年代から1970年代にかけて四大公害が深刻化するとともに社会の関心が高まり、1967年には公害対策基本法が定められました。高まる世論に後押しされて数々の公害反対運動が各地で展開されました。安中公害においても、東京での運動やイタイイタイ病原告団との交流など多様な運動が展開され、1986年には裁判所による和解勧告に基づき、同社と地元住民から構成される安中公害原告団との間で協定書締結と補償金支払いで合意されました。
しかし、東邦亜鉛安中製錬所はその後も、公害防止の徹底には腰が引けており、今回の非鉄スラグにしても、鉛・ヒ素など高濃度の重金属を含んでいるのに、「鉱さい」と呼ばず「K砕」と呼称し、廃棄物ではないとしています。そのため、未だに加盟する業界団体の「日本鉱業協会」の傘下にあるスラグ委員会に参加していません。
■東邦亜鉛安中製錬所は、信越線安中駅の南側の丘陵地の北側斜面に、現在55ヘクタールまで、工場の敷地を拡大し、さらにその周辺の山林や原野を買収しており、丘陵地の上に位置する北野殿地区内に約1.5ヘクタールの民地や農地を保有しています。
なぜ、農業者でない企業法人が農地を取得できたのか、行政関係者も首をひねっていますが、かつて地元から雇用した農家出身の従業員の名義で、書類を偽装し、農地法を歪めて所有権移転手続きをしたのではないか、という疑惑があります。
また、現在、スラグ置場になっている場所は、以前、変電所でしたが、農免道路を隔てて、その東側には、現在、野球のできるグラウンドになっている高崎信用金庫(“たかしん”)所有の土地があります。本来、変電所のある土地は、東邦亜鉛の公害により作物ができなくなった農地でしたが、これを東邦亜鉛が所有する農家のかたがたの足元を見て買いたたき、さらに拡大するのを阻止するため、公害に悩まされていた地元西岩井地区に住む農地所有者のかたがたは、東邦亜鉛と関係のない(と思った)“たかしん”に売却しました。
ところが、“たかしん”と“東邦亜鉛”と結託しており、現在、“たかしん”グラウンドのあった農地をひそかに買収していた東邦亜鉛は、地元農家が“たかしん”に売った農地とたちまち等価交換をして、変電所設備を設置し、東電とも結託して、電気亜鉛増産のための送電線を強引に高崎の観音山方面にある特別高圧幹線から引き込もうとしたのでした。
このように、なぜ農地を自由自在に企業が購入できたのかも不思議なことですが、東邦亜鉛やその取引先にしてみれば、行政さえも政治力を使えば自由にコントロールできたのでした。そうした政治環境風土は、今回、群馬県の環境行政が示した「コードコー」への大甘な行政処分からも、依然として連綿と続いていることが窺い知れます。
■筆者はさっそく9月11日午後5時頃、県庁16階にある廃棄物・リサイクル課を訪れ、畠中次長や富田係長と面談し、今回の県の行政処分に対して、地元住民として慰労の言葉を伝えました。そして非鉄スラグの安全対策の観点から、今回の非鉄スラグ不法投棄問題を契機に、同社のスラグ処理プロセスの抜本的対策として、温度が最高1300℃までしか上げられないロータリーキルン方式の撤廃が不可欠であることを説明しました。
すなわち、沸点1749℃の鉛を揮発させることができる電気炉などの設備の導入によって、非鉄スラグから鉛の回収、もしくは、内陸地にある安中製錬所から有害な鉛・ヒ素入りスラグを排出するのではなく、鉛精錬事業を手掛ける同業他社に処理を委託するなどの方法が考えられます。
具体的な一案として、福島県いわき市にある同社小名浜工場から亜鉛精錬原料として亜鉛精鉱・焼鉱を毎日搬入している「安中貨物」とよばれる鉄道輸送の復路の貨車の空きスペースを利用して、鉛・ヒ素入りの非鉄スラグを運搬し、小名浜港から瀬戸内海にある同社の鉛製錬事業を行っている契島工場に海上輸送して、安全に鉛等を除去したうえで、環境に負荷のかからない安全なスラグにしてから、再利用することを、「コードコー」に求めていく方針を伝えました。
公害体質を引きずるブラック企業がいつまでも内陸という不利な立地条件で存続できるのか。厳しい国際間の企業競争に晒される同社は、本気で取り組まざるを得ない状況に直面しているはずです。行政が依然としてコードコーに配慮を示す現状では、今回の行政処分措置を契機に、同社経営陣に直訴して、今度こそ、徹底的な組織改革と、安中製錬所の公害防止対策の徹底化を申し入れることが最も重要だと考えています。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※関連情報
**********産経新聞2020年9月11日
非鉄スラグ問題 廃棄物処理法違反で東邦亜鉛など処分 群馬
東邦亜鉛の安中製錬所(安中市)が道路の基盤材などとして出荷した非鉄スラグの一部に土壌環境基準を超えるヒ素や鉛などが含まれていた問題で、県は10日、廃棄物処理法に基づき、東邦亜鉛に対し産業廃棄物処分業を90日間停止するなどの行政処分を行った。
県によると、東邦亜鉛は平成26年6月~28年3月に非鉄スラグ約7万846トンを出荷したが、県は実質的に廃棄物と認定。東邦亜鉛が、許可を受けていない岡田興業(高崎市)と、法的記載事項を満たさない契約書に基づいて産廃処理業の石井商事(埼玉県八潮市)に非鉄スラグの運搬をそれぞれ委託した。
また、岡田興業を仲介した土木建築業の岡田工務店(高崎市)と石井商事に対しても産廃収集運搬業を10日間停止にする行政処分を行った。いずれも10日付。
県の調べでは、非鉄スラグは公共工事で1カ所、民間工事で103カ所で使われたが、土壌汚染は確認されていないという。
**********群馬県HP 2020年9月10日
https://www.pref.gunma.jp/houdou/e17g_00031.html
【9月10日】東邦亜鉛(株)安中製錬所から排出された非鉄スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果及び関係者に対する行政処分について(廃棄物・リサイクル課、環境保全課)
東邦亜鉛株式会社(東京都千代田区丸の内一丁目8番2号。以下「東邦亜鉛」という。)の安中製錬所(以下「安中製錬所」という。)の亜鉛の生産・製造工程において発生する非鉄スラグ(以下「非鉄スラグ」という。)が、路盤材原料として出荷され、建設資材として使用されたことについて、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づき調査を行ってきたところ、その結果は次のとおりです。
また、調査の結果に基づき、関係者に対する行政処分を行いました。
1 調査等の経過
(1)立入検査(廃棄物処理法第19条第1項)
平成30年5月10日 東邦亜鉛
平成30年5月10日 有限会社岡田興業(群馬県高崎市箕郷町松之沢32番地の1。以下「岡田興業」という。)
平成30年5月10日 株式会社岡田工務店(群馬県高崎市箕郷町矢原1062番地79。以下「岡田工務店」という。)
平成30年6月29日 株式会社大野工業(群馬県前橋市横沢町906番地7。以下「大野工業」という。)
平成30年7月24日 石井商事株式会社(埼玉県八潮市鶴ヶ曽根943番地。以下「石井商事」という。)
(2)報告の徴収(廃棄物処理法第18条第1項)
平成30年11月5日 東邦亜鉛、石井商事、岡田工務店
(3)行政指導
平成30年10月17日 東邦亜鉛に対し、非鉄スラグを路盤材及び敷砂利として使用しないよう指示
平成31年 1月 4日 県建設業協会及び県再生骨材協会に対し、有害物質を含有する建設資材が工事に使用されることがないよう周知を依頼
令和 元年 5月31日 東邦亜鉛に対し、非鉄スラグのリスクについての注意喚起とともに、住民等からの問い合わせ窓口を設置し、速やかにその旨を周知広報することを指示
令和 元年10月 1日 東邦亜鉛に対し、「調査の加速化」「使用箇所への対応措置の早急な実施」「周知広報の徹底」を改めて指示
令和 2年 2月 5日 東邦亜鉛に対し、令和元年10月の指示内容を重ねて指示
2 廃棄物該当性の調査結果(別紙1参照)
非鉄スラグは、路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛や砒素による土壌汚染の可能性があり、また、関係者の間で逆有償取引が行われていた。
物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すると、平成26年6月から平成28年3月(以下「認定期間」という。)において、東邦亜鉛が石井商事又は岡田興業に安中製錬所で引き渡した時点における路盤材原料向け非鉄スラグは、廃棄物と認められる。
3 産業廃棄物処理業者に対する行政処分等(別紙2参照)
2の調査結果に基づき、群馬県知事が産業廃棄物処理業等を許可した東邦亜鉛、石井商事及び岡田工務店に対して、別紙2のとおり、行政処分を行った。
また、東邦亜鉛から路盤材原料向け非鉄スラグを受け入れた岡田興業及び大野工業を所管する高崎市長及び前橋市長、鉄源・建材用原料(遮音材)向け非鉄スラグを受け入れている石井商事を所管する埼玉県知事に対して、2の調査結果等について情報提供するとともに、行政処分の結果を通知した。
4 非鉄スラグの使用箇所の解明及び対応措置等の状況(別紙3参照)
(1)安中製錬所から搬出された非鉄スラグの使用が確認された箇所は、別紙3のとおり公共工事で1箇所、民間工事で103箇所である。
(2)これまでの調査の結果では、使用箇所における建設資材から土壌環境基準又は土壌汚染対策法の指定基準(以下「土壌環境基準等」という。)に相当する値を超過する有害物質が検出された箇所はあるが、土壌汚染は確認されていない。
(3)県では、東邦亜鉛に対して、引き続き使用箇所の全容解明に当たるとともに、判明した使用箇所における環境調査の加速化と結果の報告、及び生活環境の保全上支障が生じないよう必要な措置を指示した。
(4)これを受けて、東邦亜鉛は別紙3のとおり、非鉄スラグの使用が確認された104箇所全てにおいて対応措置を講じているところである。
5 今後の対応
(1)今後とも非鉄スラグの使用箇所の解明を進め、新たに使用箇所が判明した場合は、これまでと同様の方法で環境調査を行い、その結果を速やかに公表する。
(2)判明した使用箇所は全て県がリスト化し、今後も継続して、地下水概況調査の中で、環境への影響について監視を行っていく。
(3)東邦亜鉛に対しては、使用箇所における必要な措置を早期に完了させるよう引き続き指導を行う。
別紙1 廃棄物該当性の調査結果
1 非鉄スラグの取扱い
非鉄スラグは、東邦亜鉛が安中製錬所にロータリーキルンを導入した昭和56年以降、亜鉛の生産・製造工程において副産物として発生している。
東邦亜鉛は、非鉄スラグを、鉄源・建材用原料、路盤材原料等として出荷する一方、セメント原料として廃棄物処理していた。
2 非鉄スラグの性状
非鉄スラグには、亜鉛鉱石に由来する鉛や砒素が含まれている。
東邦亜鉛は、平成27年9月まで、非鉄スラグに含まれる有害物質が土壌環境基準等に相当する値を超過するかどうかについて、計量証明事業者による試験を行っていなかった。
同年10月以降、計量証明事業者に依頼して実施した試験では、鉛や砒素の溶出量・含有量が土壌環境基準等に相当する値を超過することがあった。
県が、安中製錬所の非鉄スラグを検査した結果、鉛の溶出量・含有量や砒素の溶出量が、土壌環境基準等に相当する値を超過していた。
路盤材原料向け非鉄スラグが使用された複数の箇所で採取した試料についても、鉛や砒素の溶出量・含有量が、土壌環境基準等に相当する値を超過していることが確認されている。
以上から、鉛や砒素が土壌環境基準等に相当する値を超過する性状である非鉄スラグは、路盤材など土壌と接する方法で使用した場合、鉛や砒素による土壌汚染の可能性があり、土壌汚染対策法の規制にかかるおそれや生活環境の保全上支障が生ずるおそれがある。
3 非鉄スラグの取引
東邦亜鉛は、平成18年6月、岡田興業及び大野工業と路盤材原料向け非鉄スラグの取引について契約を締結し、岡田興業に対しては平成28年3月まで、大野工業に対しては平成27年12月まで出荷していた。なお、平成28年4月以降、路盤材原料向け非鉄スラグの出荷は行われていない。
東邦亜鉛は、平成18年6月、石井商事と路盤材原料向け非鉄スラグの運搬について契約を締結し、安中製錬所から岡田興業構内及び大野工業構内への運搬は石井商事が行っていた。なお、平成27年7月から同年10月までの間は、岡田興業が自社の構内まで運搬した。
路盤材原料向け非鉄スラグは、岡田興業及び大野工業に運ばれた後、敷砂利等の建設資材として使用された。
東邦亜鉛は、平成9年3月、石井商事と鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの取引について契約を締結し、鉄源・建材用原料向け非鉄スラグは、現在も石井商事の八潮工場に出荷され、鉄源や建材用原料として使用されている。
また、安中製錬所から石井商事の八潮工場までの鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの運搬は、石井商事が行っている。
4 非鉄スラグの取引に係る金銭の流れ(図1及び図2参照)
路盤材原料向け非鉄スラグの代金は、取引量1トン当たり500円(消費税抜き。以下同じ。)であるが、岡田興業及び大野工業は、取引量1トン当たり1,000円の販売促進費を石井商事から受け取っていた。
石井商事から岡田興業に支払われた販売促進費は、岡田工務店を経由しており、岡田工務店は取引量1トン当たり100円を受け取っていた。
一方、鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの代金は、取引量1トン当たり300円又は600円であるが、東邦亜鉛は、運賃補助として、取引量1トン当たり4,400円又は6,400円を石井商事に支払っていた。
東邦亜鉛は、岡田興業、大野工業及び石井商事から非鉄スラグの代金を受け取る一方、これを上回る運賃補助等を石井商事に支払っており、路盤材原料向け非鉄スラグ及び鉄源・建材用原料向け非鉄スラグに係る一連の取引は、いわゆる逆有償取引であった。
5 認定期間及び取引量
今回の調査において非鉄スラグの取引量やその代金等が関係資料等により確認できた期間は、平成26年6月から平成28年3月までであり、この期間における路盤材原料向け非鉄スラグ及び鉄源・建材用原料向け非鉄スラグの取引量は次のとおりである。
<認定期間及び取引量>
●用途:路盤材原料向け
⇒出荷先:岡田鋼業
期間:平成26年9月~平成28年3月
取引量:16,323トン
⇒出荷先:大野工業
期間:平成26年6月~平成27年12月
取引量: 7,351トン
小計 23,674トン
●用途:鉄源・建材用原料向け
⇒出荷先:石井商事
期間:平成26年6月~平成28年3月
取引量:47,172トン
合計 70,846トン
別紙2 産業廃棄物処理業者に対する行政処分
○処分対象者1
事業者の名称及び所在:東邦亜鉛株式会社 代表取締役 丸崎 公康
東京都千代田区丸の内一丁目8番2号
許可の番号:第01020007220号群馬県第282-1号
第01070007220号群馬県第359-0号
処分の年月日:令和2年9月10日
処分の内容:産業廃棄物処分業の停止90日間、特別管理産業廃棄物処分業の停止90日間、産業廃棄物処理施設(焼却施設、最終処分場)の使用停止90日間(停止期間:令和2年9月11日から同年12月9日まで)
処分理由:東邦亜鉛は、廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項の規定に違反して産業廃棄物の運搬及び処分を委託した。この行為は、廃棄物処理法第14条の3第1号、第14条の6及び第15条の2の7第3号に該当する。
○処分対象者2
事業者の名称及び所在:石井商事株式会社 代表取締役 石井 正明
埼玉県八潮市鶴ヶ曽根943番地
許可の番号:第01000020703号
処分の年月日:令和2年9月10日
処分の内容:産業廃棄物収集運搬業の停止10日間(停止期間:令和2年9月11日から同月20日まで)
処分理由:石井商事は、東邦亜鉛が違反行為(廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項違反)をすることを助けた。この行為は、廃棄物処理法第14条の3第1号に該当する。
○処分対象者3
事業者の名称及び所在:株式会社岡田工務店 代表取締役 岡田 光正
群馬県高崎市箕郷町矢原1062番地79
許可の番号:第01000017595号
処分の年月日:令和2年9月10日
処分の内容:産業廃棄物収集運搬業の停止10日間(停止期間:令和2年9月11日から同月20日まで)
処分理由:岡田工務店は、東邦亜鉛が違反行為(廃棄物処理法第12条第5項及び同条第6項違反)をすることを助けた。この行為は、廃棄物処理法第14条の3第1号に該当する。
別紙2-2 処分対象者の違反行為の概要
<処分対象者の違反行為の概要>
●処分対象者:東邦亜鉛
主な違反行為:
【廃棄物処理法第12条第5項】
1 無許可の岡田興業に運搬を委託した。
【廃棄物処理法第12条第6項】
2 石井商事に、法定記載事項を満たさない契約書で運搬を委託した。
3 事業の範囲に鉱さいを含まない岡田興業・大野工業に、処分を委託した。
●処分対象者:石井商事
主な違反行為:
4 1に関し、東邦亜鉛から運賃を受け取り、岡田工務店を経由して岡田興業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
5 2に関し、東邦亜鉛から運賃を受け取り、岡田興業・大野工業まで運搬することで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
6 3に関し、処理費に相当する金銭(販売促進費)を、岡田興業・大野工業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
●処分対象者:岡田工務店
7 1に関し、石井商事から運賃を受け取り、岡田興業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
8 3に関し、処理費に相当する金銭(販売促進費)を石井商事から受け取り、岡田興業に支払うことで、東邦亜鉛の違反行為を助けた。
別紙3 非鉄スラグの使用箇所の解明及び対応措置等の状況
令和2年7月末時点
1.使用箇所数
(1)公共工事
(2)民間工事
2.対応措置等の状況
(注1)「立入禁止」及び「注意喚起」を講じた使用箇所には、撤去工事中の箇所も含まれる。
(注2)「注意喚起」は、撤去が完了するまでの当面の措置として住宅等の所有者に対して行うよう、 東邦亜鉛に指示した。
【非鉄スラグに関する問い合わせ先】
廃棄物・リサイクル課 産業廃棄物係
電話 027-226-2861
メール sanpai@pref.gunma.lg.jp
環境保全課 放射線・土壌環境係
電話 027-226-2833
メール kanhozen@pref.gunma.lg.jp
※報道提供資料 URL ⇒ https://www.pref.gunma.jp/contents/100167609.pdf
ZIP ⇒ ilmjmxo.zip
**********
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます