■12月4日に発足したばかりの国家安全保障会議(NSC)が23日にさっそく打ち出した方針が、南スーダンで国連部隊に銃弾1万発を提供したことでした。特定秘密保護法の制定と合わせて、今回の方針決定の背景に関する情報開示が十分かどうかを検証してみました。
南部スーダンでは、スーダン政府(イスラム教・アラブ系)とスーダン人民解放運動・軍(キリスト教・アフリカ系)の対立が長年続き、約200万人ともいわれる犠牲者を出した挙句、2005年1月、両者はCPA(南北包括和平合意)に署名し、紛争は終結しました。同年3月、CPA履行支援等を任務とする国連スーダン・ミッション(UNMIS)が設立され、我が国は2008年10月以降、UNMIS司令部要員として自衛官2名を派遣していました。
2011年1月、UNMISの支援も受けて、南部スーダン住民投票を実施した結果、有効投票総数の約99%が南部スーダンのスーダンからの分離を支持。同年2月、スーダン政府はこの結果を受け入れました。2011年7月9日の南スーダン独立に伴い、UNMISがその任務を終了する一方、平和と安全の定着および南スーダンの発展のための環境構築支援等を目的として、国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立されました。
我が国は、国連事務総長からの協力要請に基づき、同年11月に司令部要員を派遣し、2012年1月から施設部隊等を順次派遣していて、現在約343名が現地で活動しています。派遣部隊は、インフラ整備などにより、南スーダンの自立的発展への寄与が期待されており、国連施設の整備や道路補修、国際機関の敷地整備等の施設活動を実施する中で、ODAやNGO等とも連携しています。
参考:http://www.mod.go.jp/j/approach/kokusai_heiwa/s_sudan_pko/pdf/gaiyou.pdf
■12月24日付けの報道記事によれば、銃弾1万発の武器支援の顛末は、概ね次のとおりです。
**********2013年12月24日 東京新聞朝刊
政府、初の武器提供 南スーダンPKO 韓国軍に銃弾1万発
政府は二十三日の国家安全保障会議(NSC)と持ち回り閣議(当会注:閣議を招集せず、首相から閣議書を各大臣に回し署名を得て閣議決定とすること)で、治安情勢が悪化している南スーダンに国連平和維持活動(PKO)で展開する国連部隊に銃弾一万発を無償で譲渡する方針を決定した。日本時間同日夜に韓国軍に提供された。PKO協力法に基づき日本が他国軍に武器を提供するのは初めて。「緊急の必要性・人道性が極めて高い」とする官房長官談話を出し、国連の厳しい管理を前提に、武器輸出を基本的に禁じている「三原則」の例外とした。
今回の措置には、安倍晋三首相が外交・安全保障の理念として掲げる「積極的平和主義」を国際社会に示す狙いがある。
防衛省によると、南スーダン東部ジョングレイ州に派遣されている韓国軍が活動拠点としている国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況だという。
国連は国連施設を警備する韓国軍に銃弾が不足し、提供がなければ韓国軍や避難民の生命に危険が及ぶ可能性が高い事態だと判断。日本時間二十二日午前に、日本政府に提供を要請した。銃弾は「89式五・五六ミリ小銃」と呼ばれる武器用で、在庫があったのは、南スーダンで展開しているPKO部隊の中では、韓国軍のほかは日本の自衛隊だけだった。
PKO協力法では平和維持活動の協力のために必要なときは、閣議決定によって「物資」を提供することができると規定している。しかし従来の政府見解では物資として武器や弾薬を想定しておらず、例外措置が必要となった。これまでの三原則の例外措置としては、二〇〇四年の米国とのミサイル防衛共同開発・生産や、〇六年のインドネシアへの巡視船艇供与などがある。
<南スーダンPKO> 2005年まで20年以上続いた内戦を経てスーダンから分離独立した南スーダンの安定と開発への支援を目的とする国連平和維持活動(PKO)。正式名称は「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」。日本政府は2011年11月から首都ジュバのPKO司令部への派遣を開始。今年10月には派遣部隊を400人規模とした。
**********
■新聞記事やその他の情報によると、次のことがわかります。
①日本時間12月22日午前、国連が日本政府に提供を要請。銃弾は「89式5.56㎜小銃」と呼ばれる武器用弾薬1万発。
②韓国軍と同じ弾薬(5・56ミリ小銃弾)を使っているのは自衛隊だけ。
③自衛隊は比較的治安が安定しているジュバに駐屯しているので、さしあたって反乱軍への対応の懸念がないことから、国連からの銃弾提供要請に応えることにした。
④事情を踏まえ、日本政府は12月23日に国家安全保障会議(日本版NSC)4大臣会合を開いて対応を協議。「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と判断し、持ち回り閣議で提供を決めた。
⑤日本時間12月23日夜、国連を通じて韓国軍の宿営地に届けた。
⑥南スーダンでは、12月中旬から、軍の部隊同士の衝突が続いていて、韓国軍は治安が悪化している地域の東部ジョングレイ州で活動している。
⑦その韓国軍から、弾薬提供の要請があったので、日本政府は、緊急性が極めて高いとして、PKO協力法に基づく、物資協力の一環として、提供することを決めた。
⑧物資協力に関し、これまで日本政府は「国際機関から、武器・弾薬の提供の要請があるとは考えていない。仮にあったとしても断る」などと、国会で答弁していた。
⑨12月23日夜、小野寺防衛相は「今までの考え方というのは、緊急時に例外が全部ないというところまで想定していない。緊急時に、人道的な見地で、例外は当然あるだろう」と述べた。
⑩菅官房長官は12月23日夜、今回の弾薬提供について、「韓国隊の隊員と避難民の生命・身体の保護のためにのみ使用されること」などを前提に、「武器輸出3原則等によらない」とする談話を発表した。
■ここでいう.武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策のことです。これは1967年4月21日、当時の佐藤総理が衆院決算委における答弁で表明したものです。
1.武器輸出三原則
(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合
その後、1976年2月27日に、当時の三木総理が衆院予算委における答弁で「武器輸出に関する政府統一見解」として表明した.武器輸出に関する政府統一見解も、これに関連します。
2.武器輸出に関する政府統一見解
「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。
(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
我が国の武器輸出政策として引用する場合、通常、「武器輸出三原則」(上記1.)と「武器輸出に関する政府統一見解」(上記2.)を総称して「武器輸出三原則等」と呼んでいます。
■では、前述のマスコミ報道された①から⑩までの項目について、検討してみましょう。
①国連が日本政府に提供を要請した銃弾は「89式5.56㎜小銃」用とありますが、実は、南スーダンでPKO活動中の陸上自衛隊は、主要な武器として9mm拳銃計84丁、89式小銃計297丁、5.56mm機関銃MINIMI計5丁を携行しています。機関銃5丁と小銃297丁は両方とも5.56㎜口径の銃弾が使えます。実際には、機関銃は1分間に 約750~1,000発の銃弾を発射でき、小銃も1分間に約650~850発の銃弾を発射できます。したがって、1万発の銃弾を機関銃5丁と小銃297丁に均等に分けた場合、1丁当たり33発となり、3秒たらずで撃ち尽くすことになります。PKOの陸自は、韓国軍に1万発を提供してもなお十分な予備があるとしていることから、おそらくその何十倍も弾薬としてストックしているはずです。
②韓国軍と同じ弾薬(5・56ミリ小銃弾)を使っているのは自衛隊だけ、と報じられていますが、実際には、韓国軍と同じ5.56㎜K2型機関銃を持っているのはバングラデシュ軍もあります。また、インド軍も5.56㎜銃弾を使用する火器を持っており、ネパール軍もベルギーからもらった5.56㎜機関銃MINIMIを装備しています。したがって、この報道は正しくありません。
③ということになると、「自衛隊は比較的治安が安定しているジュバに駐屯しているので、さしあたって反乱軍への対応の懸念がないことから、国連からの銃弾提供要請に応えることにした」という報道も疑ってかかる必要があります。もし韓国軍が国連に1万発の手配を相談した場合、国連は、同じく5.56㎜銃弾をストックしている他国の軍隊にも、提供の有無を確認している可能性があるためです。
④事情を踏まえ、日本政府は12月23日に国家安全保障会議4大臣会合を開いて対応を協議し「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と判断し、持ち回り閣議で直ちに提供を決めたそうですが、国連からの要請が本当に緊急性を帯びていたのかどうかは判然としません。少なくとも、口頭で即決する、などということはありえないはずです。
⑤日本時間12月23日夜、国連を通じて韓国軍工兵中隊の宿営地に届けたそうですが、1発80円といわれる銃弾は弾頭重量約4グラム、薬きょうを含んだ総重量は約63グラムになることから、1万発だと正味重量で約630キロになります。したがって、乗用車では運搬は不可能なので、大きめの小型トラックかそれ以上の車両で輸送されたものとみられます。
⑥韓国軍の工兵中隊は、南スーダンの民族対立で政府軍と反乱軍との間の衝突により治安が悪化している地域の東部ジョングレイ州で活動していますが、ジョングレイ州にはインド軍の歩兵・医療部隊も広範囲に展開しています。また、同州の南部ではネパールの歩兵部隊が駐屯しています。日本の陸自が駐屯している首都ジュバのある東エクアトリア州から、韓国軍工兵中隊がいるジョングレイ州の州都ボルまでは130キロほどあります。
⑦その韓国軍から、弾薬提供の要請があったので、日本政府は、緊急性が極めて高いとして、PKO協力法に基づく、物資協力の一環として、提供することを決めたとしていますが、本当の経緯は誰にもわかりません。そこで、この件で防衛省広報課に電話取材をして事実関係を確かめた市民がいます。それによると、韓国軍に銃弾1万発を送ることを判断したのは日本政府と防衛省で、「南スーダン東部ジョングレイ州に派遣されている韓国軍が活動拠点としている国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況」という情報は、国連から日本政府に来たものであり、現地にいる陸自施設隊を含め自衛隊には直接来た情報はなかったということです。また、国連機関への弾薬提供については「PKO法には規定されていないが、内閣官房長談話なので違法性はない」とのことです。つまり、今回の措置はPKO法ではなく、内閣官房長官の談話に基づいた武器提供だということのようです。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/96_abe/20131223danwa.html
⑧物資協力に関し、これまで日本政府は「国際機関から、武器・弾薬の提供の要請があるとは考えていない。仮にあったとしても断る」などと、国会で答弁していたそうですが、そもそも国連に対して我が国はこれまでも巨額の資金を支払っており、その資金で国連の職員の人件費や機材が調達されているので、ましてや武器・弾薬の提供要請など、あるわけがないと考えていたことでしょう。
⑨ということで、12月23日夜、小野寺防衛相は「今までの考え方というのは、緊急時に例外が全部ないというところまで想定していない。緊急時に、人道的な見地で、例外は当然あるだろう」と、政府お得意の「想定外の事態」を強調したことになります。
⑩菅官房長官の談話の骨子は「韓国隊の隊員と避難民の生命・身体の保護のためにのみ使用されること」などを前提に、「武器輸出3原則等によらない」としています。となると、これが前例となり、同じ5.56㎜弾を使っているインド軍、ネパール軍、バングラデシュ軍にも直ちに適用できる道を拓いたことを意味します。
■ところで、南スーダンの陸上自衛隊が携行している5.56㎜機関銃MINIMIについては、先日気になる事件が発生しました。この機関銃を製造して防衛省に納入していた住友重機械工業が、機関銃の試験データを長年にわたり改ざんしていたことが平成25年12月23日に防衛省の発表で明らかになりました。
防衛省によると、改ざんや虚偽記載があったのは3種類の機関銃で、1974年度から調達契約している7.62㎜機関銃の約1350丁と、1984年度から契約している12.7㎜重機関銃の約4千丁は、同社が納入当初から要求性能を満たす機関銃を量産できないと認識しながら、試験の書類にウソを書いて合格させていました。
具体的には、7.62㎜機関銃は1分あたりの発射速度が要求性能を下回っており、12.7㎜重機関銃は実際には5千発以降は発射速度が遅くなっていたにもかかわらず1万発を撃った時の耐久性試験の結果を偽っていました。このほか、5.56㎜機関銃は1993年度から約4900丁が納入されているのに、合格と不合格の割合は把握できていないというのです。こうしてデータ等を偽って納入された機関銃は1万丁以上になり、同社を指名停止5カ月の処分にし、防衛省としても、改ざんを見抜けなかった検査態勢を見直すとしています。
南スーダンの陸自が携帯している5.56㎜機関銃5丁も、住友重機械工業が製造したものとみられます。なお現地の陸自が約300丁携行している89式5.56㎜小銃は豊和工業製で、こちらは品質に問題はないようです。
防衛省の発表に合わせて、住友重機械工業は次の内容のプレスリリースを平成25年12月18日に行いました。
**********
http://www.shi.co.jp/info/2013/6kgpsq0000001ms0-att/6kgpsq0000001msi.pdf
平成25年12月18日
各位
会社名 住友重機械工業株式会社
代表者名 代表取締役社長 別川 俊介
(コード番号 6302 東証第一部)
問合せ先IR広報室長 佐藤 常芳
(TEL.03-6737-2333)
防衛装備品の納入に関する不適切な処理の判明について
当社の防衛装備事業部門の機関銃製造過程において、下記のとおり不適切な処理があったことが判明しましたので、報告いたします。
このような事態になり、関係する皆様には多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。今後の対応につきましては防衛省と協議しながら、進めてまいります。
1.経緯について
当社は、本年5月22日に「12.7㎜重機関銃」の本年度の耐久射撃試験を終了し、翌23日、品質保証責任者より事業部長に「本年度不合格、過去にも性能未達があった」旨の報告がされたことから、直ちに実態の把握と調査を行い、「12.7㎜重機関銃」の耐久射撃試験において不適切な処理が過去になされたことを確認したため、6月13日に防衛省に対して事態を自主的に報告した上で、調査対策委員会を設置しました。
その後、当社は、「12.7㎜重機関銃」の耐久射撃試験だけでなく、防衛省に納入している他の防衛装備品にも対象を広げて、広範な調査を実施し、11月22日に防衛省に対して調査報告書を提出しました。
2.不適切な処理について
(1)試験結果の改ざん
「12.7㎜重機関銃」の銃身の耐久射撃試験において、仕様書の規定を満たしていない結果を契約当初(昭和59年)から出していながら試験成績書の試験結果を改ざんして納入していました。
「74式車載7.62mm機関銃」の昭和49年度から平成14年度契約分の発射速度試験において、仕様書の規定を満たさないものがありましたが、試験成績書の試験結果を改ざんして納入していました。
(2)虚偽の報告
「12.7 ㎜重機関銃」の特定年度における発射速度試験において、発射速度が規定値を満たさなかったにもかかわらず合格とし、納入するなどの行為がありました。
「74 式車載7.62mm 機関銃」の特定年度における発射速度試験において射撃が停止し、調整の上再射撃をすべきところを実施せず、納入するなどの行為がありました。また、平成22 年度以降の契約分においては、発射速度の規格を満たすための改造を実施していましたが、事前に防衛省の了承許可を得ていませんでした。
「5.56 ㎜機関銃MINIMI」の特定年度契約分の一部において、命中精度試験で仕様書の規定に沿った抜取検査をしていませんでした。
(3)その他
上記の他に、部品の受入検査・中間検査・完成検査等において、損傷等があるにもかかわらず不適切な判定により合格として納入していました。
3.防衛省に対して納入済みの各製品(既納製品)の安全性について
製品に発生するリスクの度合いを評価するハザード分析を行い、検証した結果、安全性は確保されることを確認いたしました。
また、過去のクレーム情報について調査を行った結果、今回の不適合品の流出が原因となるクレームはありませんでした。
以上については防衛省に報告し、その内容を了承いただいております。
4.指名停止などの措置について
(1)指名停止措置
平成25 年12 月18 日 ~ 平成26 年5 月17 日(期間:5 カ月)
(2)損害賠償請求
「12.7 ㎜重機関銃」の銃身について、債務不履行による損害賠償金62,474,916 円の請求を受け、本日支払いをいたしました。
5.今後の対策について
(1)既納製品に関する対応
既納製品に関する対応および今後の試験方法などについては、当社の品質問題に起因する不適合流出品は自主的に改修させていただくこととし、その詳細については防衛省と協議の上対処いたします。
(2)再発防止策
防衛装備品の製造過程における手順の明確化や試験記録の厳格化、不適合製品を流出させない体制構築等を含む再発防止策を策定して防衛省に報告いたしました。既に段階的に実施をしています。また、従業員に対するコンプライアンス遵守教育を一層徹底いたします。
6.業績への影響について
本件に関わる業績への影響は軽微です。
以上
**********
■実は、住友重機械工業は、昨年平成24年5月にと防衛省から指名停止処分を受けています。
**********時事通信2012年 5月 25日 20:12 JST
住友重機も水増し請求=機関銃―防衛省が指名停止
住友重機械工業は25日、防衛省に納入した機関銃の契約などで水増し請求していたと発表した。防衛省は、同社に事実関係の解明を命じる一方、過払い金の返還と再発防止策の報告があるまで指名停止にする。防衛省の装備品をめぐる水増し請求は、三菱電機でも1月に発覚している。
今回の水増し請求は、住友重機が2007年度に納入した機関銃や関連機材の契約と、子会社の住重特機サービスが11年度に行った銃器の保守点検・修理サービス。いずれも作業時間を過大に計上し、請求金額に上乗せしていた。
**********
こうした不祥事件多発の原因として、防衛省と同社との間の癒着が背景にあることをうかがわせます。
もともと、我が国の機関銃の開発製造は戦前、日本特殊鋼という会社が手掛けており、戦後は、日本特殊鋼と中島航空金属㈱が1955年に資本提携して発足した日特金属工業が、自衛隊向けに機関銃を開発製造していましたが、1982年に住友重機械工業と合併し、住友重機の田無工場として、機関銃の開発・製造を続けています。
この過程で、日特金属や住友重機械では多くの自衛隊関係者の天下りを受け入れており、その癒着がこうした不祥事件の温床となり、事件が発覚しても、根本的な構図にメスを入れられないため、いまだに撲滅できずにいるわけです。
こうした背景から、今回南スーダンに派遣されている陸自では、長時間の連射に問題のある5.56㎜機関銃MINIMIの使用を控えていると考えられるため、過剰な弾薬となった5.56㎜銃弾1万発を、他国軍にくれてやってもよいと判断した可能性があります。
いずれにしても、今後、次第に、韓国側からの情報も含め、事の真相が明らかになってくると思われます。
【ひらく会情報部】
※参考資料
平成25年12月23日
国際連合南スーダン共和国ミッションに係る物資協力についての内閣官房長官談話
1.我が国は国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成4年法律第79号)制定以来、国際連合平和維持活動等に積極的に参加、貢献してきた。
2.この際、同法制定に先立つ平成3年9月19日の関係省庁了解(平成13年12月7日一部改正)によって、国際平和協力業務に従事する自衛官等が使用を認められている武器(弾薬を含む。以下同じ。)については、武器輸出三原則等によらないこととする一方、自衛官等が携行する武器以外については、同法に基づく物資協力を含め、武器輸出三原則等により厳正に対処するものとしてきたところである。
3.我が国は、国際連合南スーダン共和国ミッション(以下「UNMISS」という。)に施設部隊約400名を派遣し、2011年に独立を果たしたばかりの南スーダン共和国の国づくりに協力を行ってきているところであるが、現在UNMISSは、同国中部のジョングレイ州ボルに所在する韓国隊宿営地において、反政府勢力等による争乱行為等により発生した避難民約1万5千名を受け入れている。このような状況を受け、今般、国際連合から日本国政府に対し、緊急事態に対応し、韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体を保護するために、我が国施設部隊がUNMISSの活動に際して持ち込んだ小銃弾のうち、約1万発の提供について要請があった。
4.今般の要請については、我が国も参加するUNMISSが行う活動の一環として行われるものであるところ、韓国隊の隊員及び避難民の生命・身体を保護するために一刻を争い、また、UNMISSに派遣されている韓国隊が保有する小銃に対して適用可能な弾薬を保有するUNMISSの部隊は日本隊のみであるという緊急事態であり、緊急の必要性・人道性が極めて高いことに鑑み、UNMISSへの5.56mm普通弾1万発の物資協力については、当該物資が韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体の保護のためのみに使用されること及びUNMISSの管理の下、UNMISS以外への移転が厳しく制限されていることを前提に、武器輸出三原則等によらないこととする。
5.なお、政府としては、国際連合憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念は引き続き維持しつつ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えの下、今後とも国際社会の平和と安定により一層貢献していく考えである。
南部スーダンでは、スーダン政府(イスラム教・アラブ系)とスーダン人民解放運動・軍(キリスト教・アフリカ系)の対立が長年続き、約200万人ともいわれる犠牲者を出した挙句、2005年1月、両者はCPA(南北包括和平合意)に署名し、紛争は終結しました。同年3月、CPA履行支援等を任務とする国連スーダン・ミッション(UNMIS)が設立され、我が国は2008年10月以降、UNMIS司令部要員として自衛官2名を派遣していました。
2011年1月、UNMISの支援も受けて、南部スーダン住民投票を実施した結果、有効投票総数の約99%が南部スーダンのスーダンからの分離を支持。同年2月、スーダン政府はこの結果を受け入れました。2011年7月9日の南スーダン独立に伴い、UNMISがその任務を終了する一方、平和と安全の定着および南スーダンの発展のための環境構築支援等を目的として、国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立されました。
我が国は、国連事務総長からの協力要請に基づき、同年11月に司令部要員を派遣し、2012年1月から施設部隊等を順次派遣していて、現在約343名が現地で活動しています。派遣部隊は、インフラ整備などにより、南スーダンの自立的発展への寄与が期待されており、国連施設の整備や道路補修、国際機関の敷地整備等の施設活動を実施する中で、ODAやNGO等とも連携しています。
参考:http://www.mod.go.jp/j/approach/kokusai_heiwa/s_sudan_pko/pdf/gaiyou.pdf
■12月24日付けの報道記事によれば、銃弾1万発の武器支援の顛末は、概ね次のとおりです。
**********2013年12月24日 東京新聞朝刊
政府、初の武器提供 南スーダンPKO 韓国軍に銃弾1万発
政府は二十三日の国家安全保障会議(NSC)と持ち回り閣議(当会注:閣議を招集せず、首相から閣議書を各大臣に回し署名を得て閣議決定とすること)で、治安情勢が悪化している南スーダンに国連平和維持活動(PKO)で展開する国連部隊に銃弾一万発を無償で譲渡する方針を決定した。日本時間同日夜に韓国軍に提供された。PKO協力法に基づき日本が他国軍に武器を提供するのは初めて。「緊急の必要性・人道性が極めて高い」とする官房長官談話を出し、国連の厳しい管理を前提に、武器輸出を基本的に禁じている「三原則」の例外とした。
今回の措置には、安倍晋三首相が外交・安全保障の理念として掲げる「積極的平和主義」を国際社会に示す狙いがある。
防衛省によると、南スーダン東部ジョングレイ州に派遣されている韓国軍が活動拠点としている国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況だという。
国連は国連施設を警備する韓国軍に銃弾が不足し、提供がなければ韓国軍や避難民の生命に危険が及ぶ可能性が高い事態だと判断。日本時間二十二日午前に、日本政府に提供を要請した。銃弾は「89式五・五六ミリ小銃」と呼ばれる武器用で、在庫があったのは、南スーダンで展開しているPKO部隊の中では、韓国軍のほかは日本の自衛隊だけだった。
PKO協力法では平和維持活動の協力のために必要なときは、閣議決定によって「物資」を提供することができると規定している。しかし従来の政府見解では物資として武器や弾薬を想定しておらず、例外措置が必要となった。これまでの三原則の例外措置としては、二〇〇四年の米国とのミサイル防衛共同開発・生産や、〇六年のインドネシアへの巡視船艇供与などがある。
<南スーダンPKO> 2005年まで20年以上続いた内戦を経てスーダンから分離独立した南スーダンの安定と開発への支援を目的とする国連平和維持活動(PKO)。正式名称は「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」。日本政府は2011年11月から首都ジュバのPKO司令部への派遣を開始。今年10月には派遣部隊を400人規模とした。
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■新聞記事やその他の情報によると、次のことがわかります。
①日本時間12月22日午前、国連が日本政府に提供を要請。銃弾は「89式5.56㎜小銃」と呼ばれる武器用弾薬1万発。
②韓国軍と同じ弾薬(5・56ミリ小銃弾)を使っているのは自衛隊だけ。
③自衛隊は比較的治安が安定しているジュバに駐屯しているので、さしあたって反乱軍への対応の懸念がないことから、国連からの銃弾提供要請に応えることにした。
④事情を踏まえ、日本政府は12月23日に国家安全保障会議(日本版NSC)4大臣会合を開いて対応を協議。「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と判断し、持ち回り閣議で提供を決めた。
⑤日本時間12月23日夜、国連を通じて韓国軍の宿営地に届けた。
⑥南スーダンでは、12月中旬から、軍の部隊同士の衝突が続いていて、韓国軍は治安が悪化している地域の東部ジョングレイ州で活動している。
⑦その韓国軍から、弾薬提供の要請があったので、日本政府は、緊急性が極めて高いとして、PKO協力法に基づく、物資協力の一環として、提供することを決めた。
⑧物資協力に関し、これまで日本政府は「国際機関から、武器・弾薬の提供の要請があるとは考えていない。仮にあったとしても断る」などと、国会で答弁していた。
⑨12月23日夜、小野寺防衛相は「今までの考え方というのは、緊急時に例外が全部ないというところまで想定していない。緊急時に、人道的な見地で、例外は当然あるだろう」と述べた。
⑩菅官房長官は12月23日夜、今回の弾薬提供について、「韓国隊の隊員と避難民の生命・身体の保護のためにのみ使用されること」などを前提に、「武器輸出3原則等によらない」とする談話を発表した。
■ここでいう.武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策のことです。これは1967年4月21日、当時の佐藤総理が衆院決算委における答弁で表明したものです。
1.武器輸出三原則
(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合
その後、1976年2月27日に、当時の三木総理が衆院予算委における答弁で「武器輸出に関する政府統一見解」として表明した.武器輸出に関する政府統一見解も、これに関連します。
2.武器輸出に関する政府統一見解
「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。
(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
我が国の武器輸出政策として引用する場合、通常、「武器輸出三原則」(上記1.)と「武器輸出に関する政府統一見解」(上記2.)を総称して「武器輸出三原則等」と呼んでいます。
■では、前述のマスコミ報道された①から⑩までの項目について、検討してみましょう。
①国連が日本政府に提供を要請した銃弾は「89式5.56㎜小銃」用とありますが、実は、南スーダンでPKO活動中の陸上自衛隊は、主要な武器として9mm拳銃計84丁、89式小銃計297丁、5.56mm機関銃MINIMI計5丁を携行しています。機関銃5丁と小銃297丁は両方とも5.56㎜口径の銃弾が使えます。実際には、機関銃は1分間に 約750~1,000発の銃弾を発射でき、小銃も1分間に約650~850発の銃弾を発射できます。したがって、1万発の銃弾を機関銃5丁と小銃297丁に均等に分けた場合、1丁当たり33発となり、3秒たらずで撃ち尽くすことになります。PKOの陸自は、韓国軍に1万発を提供してもなお十分な予備があるとしていることから、おそらくその何十倍も弾薬としてストックしているはずです。
②韓国軍と同じ弾薬(5・56ミリ小銃弾)を使っているのは自衛隊だけ、と報じられていますが、実際には、韓国軍と同じ5.56㎜K2型機関銃を持っているのはバングラデシュ軍もあります。また、インド軍も5.56㎜銃弾を使用する火器を持っており、ネパール軍もベルギーからもらった5.56㎜機関銃MINIMIを装備しています。したがって、この報道は正しくありません。
③ということになると、「自衛隊は比較的治安が安定しているジュバに駐屯しているので、さしあたって反乱軍への対応の懸念がないことから、国連からの銃弾提供要請に応えることにした」という報道も疑ってかかる必要があります。もし韓国軍が国連に1万発の手配を相談した場合、国連は、同じく5.56㎜銃弾をストックしている他国の軍隊にも、提供の有無を確認している可能性があるためです。
④事情を踏まえ、日本政府は12月23日に国家安全保障会議4大臣会合を開いて対応を協議し「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と判断し、持ち回り閣議で直ちに提供を決めたそうですが、国連からの要請が本当に緊急性を帯びていたのかどうかは判然としません。少なくとも、口頭で即決する、などということはありえないはずです。
⑤日本時間12月23日夜、国連を通じて韓国軍工兵中隊の宿営地に届けたそうですが、1発80円といわれる銃弾は弾頭重量約4グラム、薬きょうを含んだ総重量は約63グラムになることから、1万発だと正味重量で約630キロになります。したがって、乗用車では運搬は不可能なので、大きめの小型トラックかそれ以上の車両で輸送されたものとみられます。
⑥韓国軍の工兵中隊は、南スーダンの民族対立で政府軍と反乱軍との間の衝突により治安が悪化している地域の東部ジョングレイ州で活動していますが、ジョングレイ州にはインド軍の歩兵・医療部隊も広範囲に展開しています。また、同州の南部ではネパールの歩兵部隊が駐屯しています。日本の陸自が駐屯している首都ジュバのある東エクアトリア州から、韓国軍工兵中隊がいるジョングレイ州の州都ボルまでは130キロほどあります。
⑦その韓国軍から、弾薬提供の要請があったので、日本政府は、緊急性が極めて高いとして、PKO協力法に基づく、物資協力の一環として、提供することを決めたとしていますが、本当の経緯は誰にもわかりません。そこで、この件で防衛省広報課に電話取材をして事実関係を確かめた市民がいます。それによると、韓国軍に銃弾1万発を送ることを判断したのは日本政府と防衛省で、「南スーダン東部ジョングレイ州に派遣されている韓国軍が活動拠点としている国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況」という情報は、国連から日本政府に来たものであり、現地にいる陸自施設隊を含め自衛隊には直接来た情報はなかったということです。また、国連機関への弾薬提供については「PKO法には規定されていないが、内閣官房長談話なので違法性はない」とのことです。つまり、今回の措置はPKO法ではなく、内閣官房長官の談話に基づいた武器提供だということのようです。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/96_abe/20131223danwa.html
⑧物資協力に関し、これまで日本政府は「国際機関から、武器・弾薬の提供の要請があるとは考えていない。仮にあったとしても断る」などと、国会で答弁していたそうですが、そもそも国連に対して我が国はこれまでも巨額の資金を支払っており、その資金で国連の職員の人件費や機材が調達されているので、ましてや武器・弾薬の提供要請など、あるわけがないと考えていたことでしょう。
⑨ということで、12月23日夜、小野寺防衛相は「今までの考え方というのは、緊急時に例外が全部ないというところまで想定していない。緊急時に、人道的な見地で、例外は当然あるだろう」と、政府お得意の「想定外の事態」を強調したことになります。
⑩菅官房長官の談話の骨子は「韓国隊の隊員と避難民の生命・身体の保護のためにのみ使用されること」などを前提に、「武器輸出3原則等によらない」としています。となると、これが前例となり、同じ5.56㎜弾を使っているインド軍、ネパール軍、バングラデシュ軍にも直ちに適用できる道を拓いたことを意味します。
■ところで、南スーダンの陸上自衛隊が携行している5.56㎜機関銃MINIMIについては、先日気になる事件が発生しました。この機関銃を製造して防衛省に納入していた住友重機械工業が、機関銃の試験データを長年にわたり改ざんしていたことが平成25年12月23日に防衛省の発表で明らかになりました。
防衛省によると、改ざんや虚偽記載があったのは3種類の機関銃で、1974年度から調達契約している7.62㎜機関銃の約1350丁と、1984年度から契約している12.7㎜重機関銃の約4千丁は、同社が納入当初から要求性能を満たす機関銃を量産できないと認識しながら、試験の書類にウソを書いて合格させていました。
具体的には、7.62㎜機関銃は1分あたりの発射速度が要求性能を下回っており、12.7㎜重機関銃は実際には5千発以降は発射速度が遅くなっていたにもかかわらず1万発を撃った時の耐久性試験の結果を偽っていました。このほか、5.56㎜機関銃は1993年度から約4900丁が納入されているのに、合格と不合格の割合は把握できていないというのです。こうしてデータ等を偽って納入された機関銃は1万丁以上になり、同社を指名停止5カ月の処分にし、防衛省としても、改ざんを見抜けなかった検査態勢を見直すとしています。
南スーダンの陸自が携帯している5.56㎜機関銃5丁も、住友重機械工業が製造したものとみられます。なお現地の陸自が約300丁携行している89式5.56㎜小銃は豊和工業製で、こちらは品質に問題はないようです。
防衛省の発表に合わせて、住友重機械工業は次の内容のプレスリリースを平成25年12月18日に行いました。
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http://www.shi.co.jp/info/2013/6kgpsq0000001ms0-att/6kgpsq0000001msi.pdf
平成25年12月18日
各位
会社名 住友重機械工業株式会社
代表者名 代表取締役社長 別川 俊介
(コード番号 6302 東証第一部)
問合せ先IR広報室長 佐藤 常芳
(TEL.03-6737-2333)
防衛装備品の納入に関する不適切な処理の判明について
当社の防衛装備事業部門の機関銃製造過程において、下記のとおり不適切な処理があったことが判明しましたので、報告いたします。
このような事態になり、関係する皆様には多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。今後の対応につきましては防衛省と協議しながら、進めてまいります。
1.経緯について
当社は、本年5月22日に「12.7㎜重機関銃」の本年度の耐久射撃試験を終了し、翌23日、品質保証責任者より事業部長に「本年度不合格、過去にも性能未達があった」旨の報告がされたことから、直ちに実態の把握と調査を行い、「12.7㎜重機関銃」の耐久射撃試験において不適切な処理が過去になされたことを確認したため、6月13日に防衛省に対して事態を自主的に報告した上で、調査対策委員会を設置しました。
その後、当社は、「12.7㎜重機関銃」の耐久射撃試験だけでなく、防衛省に納入している他の防衛装備品にも対象を広げて、広範な調査を実施し、11月22日に防衛省に対して調査報告書を提出しました。
2.不適切な処理について
(1)試験結果の改ざん
「12.7㎜重機関銃」の銃身の耐久射撃試験において、仕様書の規定を満たしていない結果を契約当初(昭和59年)から出していながら試験成績書の試験結果を改ざんして納入していました。
「74式車載7.62mm機関銃」の昭和49年度から平成14年度契約分の発射速度試験において、仕様書の規定を満たさないものがありましたが、試験成績書の試験結果を改ざんして納入していました。
(2)虚偽の報告
「12.7 ㎜重機関銃」の特定年度における発射速度試験において、発射速度が規定値を満たさなかったにもかかわらず合格とし、納入するなどの行為がありました。
「74 式車載7.62mm 機関銃」の特定年度における発射速度試験において射撃が停止し、調整の上再射撃をすべきところを実施せず、納入するなどの行為がありました。また、平成22 年度以降の契約分においては、発射速度の規格を満たすための改造を実施していましたが、事前に防衛省の了承許可を得ていませんでした。
「5.56 ㎜機関銃MINIMI」の特定年度契約分の一部において、命中精度試験で仕様書の規定に沿った抜取検査をしていませんでした。
(3)その他
上記の他に、部品の受入検査・中間検査・完成検査等において、損傷等があるにもかかわらず不適切な判定により合格として納入していました。
3.防衛省に対して納入済みの各製品(既納製品)の安全性について
製品に発生するリスクの度合いを評価するハザード分析を行い、検証した結果、安全性は確保されることを確認いたしました。
また、過去のクレーム情報について調査を行った結果、今回の不適合品の流出が原因となるクレームはありませんでした。
以上については防衛省に報告し、その内容を了承いただいております。
4.指名停止などの措置について
(1)指名停止措置
平成25 年12 月18 日 ~ 平成26 年5 月17 日(期間:5 カ月)
(2)損害賠償請求
「12.7 ㎜重機関銃」の銃身について、債務不履行による損害賠償金62,474,916 円の請求を受け、本日支払いをいたしました。
5.今後の対策について
(1)既納製品に関する対応
既納製品に関する対応および今後の試験方法などについては、当社の品質問題に起因する不適合流出品は自主的に改修させていただくこととし、その詳細については防衛省と協議の上対処いたします。
(2)再発防止策
防衛装備品の製造過程における手順の明確化や試験記録の厳格化、不適合製品を流出させない体制構築等を含む再発防止策を策定して防衛省に報告いたしました。既に段階的に実施をしています。また、従業員に対するコンプライアンス遵守教育を一層徹底いたします。
6.業績への影響について
本件に関わる業績への影響は軽微です。
以上
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■実は、住友重機械工業は、昨年平成24年5月にと防衛省から指名停止処分を受けています。
**********時事通信2012年 5月 25日 20:12 JST
住友重機も水増し請求=機関銃―防衛省が指名停止
住友重機械工業は25日、防衛省に納入した機関銃の契約などで水増し請求していたと発表した。防衛省は、同社に事実関係の解明を命じる一方、過払い金の返還と再発防止策の報告があるまで指名停止にする。防衛省の装備品をめぐる水増し請求は、三菱電機でも1月に発覚している。
今回の水増し請求は、住友重機が2007年度に納入した機関銃や関連機材の契約と、子会社の住重特機サービスが11年度に行った銃器の保守点検・修理サービス。いずれも作業時間を過大に計上し、請求金額に上乗せしていた。
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こうした不祥事件多発の原因として、防衛省と同社との間の癒着が背景にあることをうかがわせます。
もともと、我が国の機関銃の開発製造は戦前、日本特殊鋼という会社が手掛けており、戦後は、日本特殊鋼と中島航空金属㈱が1955年に資本提携して発足した日特金属工業が、自衛隊向けに機関銃を開発製造していましたが、1982年に住友重機械工業と合併し、住友重機の田無工場として、機関銃の開発・製造を続けています。
この過程で、日特金属や住友重機械では多くの自衛隊関係者の天下りを受け入れており、その癒着がこうした不祥事件の温床となり、事件が発覚しても、根本的な構図にメスを入れられないため、いまだに撲滅できずにいるわけです。
こうした背景から、今回南スーダンに派遣されている陸自では、長時間の連射に問題のある5.56㎜機関銃MINIMIの使用を控えていると考えられるため、過剰な弾薬となった5.56㎜銃弾1万発を、他国軍にくれてやってもよいと判断した可能性があります。
いずれにしても、今後、次第に、韓国側からの情報も含め、事の真相が明らかになってくると思われます。
【ひらく会情報部】
※参考資料
平成25年12月23日
国際連合南スーダン共和国ミッションに係る物資協力についての内閣官房長官談話
1.我が国は国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成4年法律第79号)制定以来、国際連合平和維持活動等に積極的に参加、貢献してきた。
2.この際、同法制定に先立つ平成3年9月19日の関係省庁了解(平成13年12月7日一部改正)によって、国際平和協力業務に従事する自衛官等が使用を認められている武器(弾薬を含む。以下同じ。)については、武器輸出三原則等によらないこととする一方、自衛官等が携行する武器以外については、同法に基づく物資協力を含め、武器輸出三原則等により厳正に対処するものとしてきたところである。
3.我が国は、国際連合南スーダン共和国ミッション(以下「UNMISS」という。)に施設部隊約400名を派遣し、2011年に独立を果たしたばかりの南スーダン共和国の国づくりに協力を行ってきているところであるが、現在UNMISSは、同国中部のジョングレイ州ボルに所在する韓国隊宿営地において、反政府勢力等による争乱行為等により発生した避難民約1万5千名を受け入れている。このような状況を受け、今般、国際連合から日本国政府に対し、緊急事態に対応し、韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体を保護するために、我が国施設部隊がUNMISSの活動に際して持ち込んだ小銃弾のうち、約1万発の提供について要請があった。
4.今般の要請については、我が国も参加するUNMISSが行う活動の一環として行われるものであるところ、韓国隊の隊員及び避難民の生命・身体を保護するために一刻を争い、また、UNMISSに派遣されている韓国隊が保有する小銃に対して適用可能な弾薬を保有するUNMISSの部隊は日本隊のみであるという緊急事態であり、緊急の必要性・人道性が極めて高いことに鑑み、UNMISSへの5.56mm普通弾1万発の物資協力については、当該物資が韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体の保護のためのみに使用されること及びUNMISSの管理の下、UNMISS以外への移転が厳しく制限されていることを前提に、武器輸出三原則等によらないこととする。
5.なお、政府としては、国際連合憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念は引き続き維持しつつ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えの下、今後とも国際社会の平和と安定により一層貢献していく考えである。