市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

南スーダンで国連経由韓国軍に1万発の銃弾を自衛隊に提供させた我が国政府の思惑と背景

2013-12-25 23:42:00 | 国内外からのトピックス
■12月4日に発足したばかりの国家安全保障会議(NSC)が23日にさっそく打ち出した方針が、南スーダンで国連部隊に銃弾1万発を提供したことでした。特定秘密保護法の制定と合わせて、今回の方針決定の背景に関する情報開示が十分かどうかを検証してみました。

 南部スーダンでは、スーダン政府(イスラム教・アラブ系)とスーダン人民解放運動・軍(キリスト教・アフリカ系)の対立が長年続き、約200万人ともいわれる犠牲者を出した挙句、2005年1月、両者はCPA(南北包括和平合意)に署名し、紛争は終結しました。同年3月、CPA履行支援等を任務とする国連スーダン・ミッション(UNMIS)が設立され、我が国は2008年10月以降、UNMIS司令部要員として自衛官2名を派遣していました。

 2011年1月、UNMISの支援も受けて、南部スーダン住民投票を実施した結果、有効投票総数の約99%が南部スーダンのスーダンからの分離を支持。同年2月、スーダン政府はこの結果を受け入れました。2011年7月9日の南スーダン独立に伴い、UNMISがその任務を終了する一方、平和と安全の定着および南スーダンの発展のための環境構築支援等を目的として、国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立されました。

 我が国は、国連事務総長からの協力要請に基づき、同年11月に司令部要員を派遣し、2012年1月から施設部隊等を順次派遣していて、現在約343名が現地で活動しています。派遣部隊は、インフラ整備などにより、南スーダンの自立的発展への寄与が期待されており、国連施設の整備や道路補修、国際機関の敷地整備等の施設活動を実施する中で、ODAやNGO等とも連携しています。
参考:http://www.mod.go.jp/j/approach/kokusai_heiwa/s_sudan_pko/pdf/gaiyou.pdf

■12月24日付けの報道記事によれば、銃弾1万発の武器支援の顛末は、概ね次のとおりです。

**********2013年12月24日 東京新聞朝刊
政府、初の武器提供 南スーダンPKO 韓国軍に銃弾1万発
 政府は二十三日の国家安全保障会議(NSC)と持ち回り閣議(当会注:閣議を招集せず、首相から閣議書を各大臣に回し署名を得て閣議決定とすること)で、治安情勢が悪化している南スーダンに国連平和維持活動(PKO)で展開する国連部隊に銃弾一万発を無償で譲渡する方針を決定した。日本時間同日夜に韓国軍に提供された。PKO協力法に基づき日本が他国軍に武器を提供するのは初めて。「緊急の必要性・人道性が極めて高い」とする官房長官談話を出し、国連の厳しい管理を前提に、武器輸出を基本的に禁じている「三原則」の例外とした。 
 今回の措置には、安倍晋三首相が外交・安全保障の理念として掲げる「積極的平和主義」を国際社会に示す狙いがある。
 防衛省によると、南スーダン東部ジョングレイ州に派遣されている韓国軍が活動拠点としている国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況だという。
 国連は国連施設を警備する韓国軍に銃弾が不足し、提供がなければ韓国軍や避難民の生命に危険が及ぶ可能性が高い事態だと判断。日本時間二十二日午前に、日本政府に提供を要請した。銃弾は「89式五・五六ミリ小銃」と呼ばれる武器用で、在庫があったのは、南スーダンで展開しているPKO部隊の中では、韓国軍のほかは日本の自衛隊だけだった。
 PKO協力法では平和維持活動の協力のために必要なときは、閣議決定によって「物資」を提供することができると規定している。しかし従来の政府見解では物資として武器や弾薬を想定しておらず、例外措置が必要となった。これまでの三原則の例外措置としては、二〇〇四年の米国とのミサイル防衛共同開発・生産や、〇六年のインドネシアへの巡視船艇供与などがある。
<南スーダンPKO> 2005年まで20年以上続いた内戦を経てスーダンから分離独立した南スーダンの安定と開発への支援を目的とする国連平和維持活動(PKO)。正式名称は「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」。日本政府は2011年11月から首都ジュバのPKO司令部への派遣を開始。今年10月には派遣部隊を400人規模とした。
**********

■新聞記事やその他の情報によると、次のことがわかります。

①日本時間12月22日午前、国連が日本政府に提供を要請。銃弾は「89式5.56㎜小銃」と呼ばれる武器用弾薬1万発。
②韓国軍と同じ弾薬(5・56ミリ小銃弾)を使っているのは自衛隊だけ。
③自衛隊は比較的治安が安定しているジュバに駐屯しているので、さしあたって反乱軍への対応の懸念がないことから、国連からの銃弾提供要請に応えることにした。
④事情を踏まえ、日本政府は12月23日に国家安全保障会議(日本版NSC)4大臣会合を開いて対応を協議。「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と判断し、持ち回り閣議で提供を決めた。
⑤日本時間12月23日夜、国連を通じて韓国軍の宿営地に届けた。
⑥南スーダンでは、12月中旬から、軍の部隊同士の衝突が続いていて、韓国軍は治安が悪化している地域の東部ジョングレイ州で活動している。
⑦その韓国軍から、弾薬提供の要請があったので、日本政府は、緊急性が極めて高いとして、PKO協力法に基づく、物資協力の一環として、提供することを決めた。
⑧物資協力に関し、これまで日本政府は「国際機関から、武器・弾薬の提供の要請があるとは考えていない。仮にあったとしても断る」などと、国会で答弁していた。
⑨12月23日夜、小野寺防衛相は「今までの考え方というのは、緊急時に例外が全部ないというところまで想定していない。緊急時に、人道的な見地で、例外は当然あるだろう」と述べた。
⑩菅官房長官は12月23日夜、今回の弾薬提供について、「韓国隊の隊員と避難民の生命・身体の保護のためにのみ使用されること」などを前提に、「武器輸出3原則等によらない」とする談話を発表した。

■ここでいう.武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策のことです。これは1967年4月21日、当時の佐藤総理が衆院決算委における答弁で表明したものです。

1.武器輸出三原則
(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合


 その後、1976年2月27日に、当時の三木総理が衆院予算委における答弁で「武器輸出に関する政府統一見解」として表明した.武器輸出に関する政府統一見解も、これに関連します。

2.武器輸出に関する政府統一見解
 「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。
(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。


 我が国の武器輸出政策として引用する場合、通常、「武器輸出三原則」(上記1.)と「武器輸出に関する政府統一見解」(上記2.)を総称して「武器輸出三原則等」と呼んでいます。

■では、前述のマスコミ報道された①から⑩までの項目について、検討してみましょう。

①国連が日本政府に提供を要請した銃弾は「89式5.56㎜小銃」用とありますが、実は、南スーダンでPKO活動中の陸上自衛隊は、主要な武器として9mm拳銃計84丁、89式小銃計297丁、5.56mm機関銃MINIMI計5丁を携行しています。機関銃5丁と小銃297丁は両方とも5.56㎜口径の銃弾が使えます。実際には、機関銃は1分間に 約750~1,000発の銃弾を発射でき、小銃も1分間に約650~850発の銃弾を発射できます。したがって、1万発の銃弾を機関銃5丁と小銃297丁に均等に分けた場合、1丁当たり33発となり、3秒たらずで撃ち尽くすことになります。PKOの陸自は、韓国軍に1万発を提供してもなお十分な予備があるとしていることから、おそらくその何十倍も弾薬としてストックしているはずです。

②韓国軍と同じ弾薬(5・56ミリ小銃弾)を使っているのは自衛隊だけ、と報じられていますが、実際には、韓国軍と同じ5.56㎜K2型機関銃を持っているのはバングラデシュ軍もあります。また、インド軍も5.56㎜銃弾を使用する火器を持っており、ネパール軍もベルギーからもらった5.56㎜機関銃MINIMIを装備しています。したがって、この報道は正しくありません。

③ということになると、「自衛隊は比較的治安が安定しているジュバに駐屯しているので、さしあたって反乱軍への対応の懸念がないことから、国連からの銃弾提供要請に応えることにした」という報道も疑ってかかる必要があります。もし韓国軍が国連に1万発の手配を相談した場合、国連は、同じく5.56㎜銃弾をストックしている他国の軍隊にも、提供の有無を確認している可能性があるためです。

④事情を踏まえ、日本政府は12月23日に国家安全保障会議4大臣会合を開いて対応を協議し「緊急の必要性・人道性が極めて高い」と判断し、持ち回り閣議で直ちに提供を決めたそうですが、国連からの要請が本当に緊急性を帯びていたのかどうかは判然としません。少なくとも、口頭で即決する、などということはありえないはずです。

⑤日本時間12月23日夜、国連を通じて韓国軍工兵中隊の宿営地に届けたそうですが、1発80円といわれる銃弾は弾頭重量約4グラム、薬きょうを含んだ総重量は約63グラムになることから、1万発だと正味重量で約630キロになります。したがって、乗用車では運搬は不可能なので、大きめの小型トラックかそれ以上の車両で輸送されたものとみられます。

⑥韓国軍の工兵中隊は、南スーダンの民族対立で政府軍と反乱軍との間の衝突により治安が悪化している地域の東部ジョングレイ州で活動していますが、ジョングレイ州にはインド軍の歩兵・医療部隊も広範囲に展開しています。また、同州の南部ではネパールの歩兵部隊が駐屯しています。日本の陸自が駐屯している首都ジュバのある東エクアトリア州から、韓国軍工兵中隊がいるジョングレイ州の州都ボルまでは130キロほどあります。

⑦その韓国軍から、弾薬提供の要請があったので、日本政府は、緊急性が極めて高いとして、PKO協力法に基づく、物資協力の一環として、提供することを決めたとしていますが、本当の経緯は誰にもわかりません。そこで、この件で防衛省広報課に電話取材をして事実関係を確かめた市民がいます。それによると、韓国軍に銃弾1万発を送ることを判断したのは日本政府と防衛省で、「南スーダン東部ジョングレイ州に派遣されている韓国軍が活動拠点としている国連施設に避難民が逃げ込み、対立する武装勢力が接近している状況」という情報は、国連から日本政府に来たものであり、現地にいる陸自施設隊を含め自衛隊には直接来た情報はなかったということです。また、国連機関への弾薬提供については「PKO法には規定されていないが、内閣官房長談話なので違法性はない」とのことです。つまり、今回の措置はPKO法ではなく、内閣官房長官の談話に基づいた武器提供だということのようです。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/96_abe/20131223danwa.html

⑧物資協力に関し、これまで日本政府は「国際機関から、武器・弾薬の提供の要請があるとは考えていない。仮にあったとしても断る」などと、国会で答弁していたそうですが、そもそも国連に対して我が国はこれまでも巨額の資金を支払っており、その資金で国連の職員の人件費や機材が調達されているので、ましてや武器・弾薬の提供要請など、あるわけがないと考えていたことでしょう。

⑨ということで、12月23日夜、小野寺防衛相は「今までの考え方というのは、緊急時に例外が全部ないというところまで想定していない。緊急時に、人道的な見地で、例外は当然あるだろう」と、政府お得意の「想定外の事態」を強調したことになります。

⑩菅官房長官の談話の骨子は「韓国隊の隊員と避難民の生命・身体の保護のためにのみ使用されること」などを前提に、「武器輸出3原則等によらない」としています。となると、これが前例となり、同じ5.56㎜弾を使っているインド軍、ネパール軍、バングラデシュ軍にも直ちに適用できる道を拓いたことを意味します。

■ところで、南スーダンの陸上自衛隊が携行している5.56㎜機関銃MINIMIについては、先日気になる事件が発生しました。この機関銃を製造して防衛省に納入していた住友重機械工業が、機関銃の試験データを長年にわたり改ざんしていたことが平成25年12月23日に防衛省の発表で明らかになりました。

 防衛省によると、改ざんや虚偽記載があったのは3種類の機関銃で、1974年度から調達契約している7.62㎜機関銃の約1350丁と、1984年度から契約している12.7㎜重機関銃の約4千丁は、同社が納入当初から要求性能を満たす機関銃を量産できないと認識しながら、試験の書類にウソを書いて合格させていました。

 具体的には、7.62㎜機関銃は1分あたりの発射速度が要求性能を下回っており、12.7㎜重機関銃は実際には5千発以降は発射速度が遅くなっていたにもかかわらず1万発を撃った時の耐久性試験の結果を偽っていました。このほか、5.56㎜機関銃は1993年度から約4900丁が納入されているのに、合格と不合格の割合は把握できていないというのです。こうしてデータ等を偽って納入された機関銃は1万丁以上になり、同社を指名停止5カ月の処分にし、防衛省としても、改ざんを見抜けなかった検査態勢を見直すとしています。

 南スーダンの陸自が携帯している5.56㎜機関銃5丁も、住友重機械工業が製造したものとみられます。なお現地の陸自が約300丁携行している89式5.56㎜小銃は豊和工業製で、こちらは品質に問題はないようです。

 防衛省の発表に合わせて、住友重機械工業は次の内容のプレスリリースを平成25年12月18日に行いました。

**********
http://www.shi.co.jp/info/2013/6kgpsq0000001ms0-att/6kgpsq0000001msi.pdf
平成25年12月18日
各位
                    会社名 住友重機械工業株式会社
                    代表者名 代表取締役社長 別川 俊介
                    (コード番号 6302 東証第一部)
                    問合せ先IR広報室長 佐藤 常芳
                    (TEL.03-6737-2333)
          防衛装備品の納入に関する不適切な処理の判明について
当社の防衛装備事業部門の機関銃製造過程において、下記のとおり不適切な処理があったことが判明しましたので、報告いたします。
このような事態になり、関係する皆様には多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。今後の対応につきましては防衛省と協議しながら、進めてまいります。
1.経緯について
当社は、本年5月22日に「12.7㎜重機関銃」の本年度の耐久射撃試験を終了し、翌23日、品質保証責任者より事業部長に「本年度不合格、過去にも性能未達があった」旨の報告がされたことから、直ちに実態の把握と調査を行い、「12.7㎜重機関銃」の耐久射撃試験において不適切な処理が過去になされたことを確認したため、6月13日に防衛省に対して事態を自主的に報告した上で、調査対策委員会を設置しました。
その後、当社は、「12.7㎜重機関銃」の耐久射撃試験だけでなく、防衛省に納入している他の防衛装備品にも対象を広げて、広範な調査を実施し、11月22日に防衛省に対して調査報告書を提出しました。
2.不適切な処理について
(1)試験結果の改ざん
「12.7㎜重機関銃」の銃身の耐久射撃試験において、仕様書の規定を満たしていない結果を契約当初(昭和59年)から出していながら試験成績書の試験結果を改ざんして納入していました。
「74式車載7.62mm機関銃」の昭和49年度から平成14年度契約分の発射速度試験において、仕様書の規定を満たさないものがありましたが、試験成績書の試験結果を改ざんして納入していました。
(2)虚偽の報告
「12.7 ㎜重機関銃」の特定年度における発射速度試験において、発射速度が規定値を満たさなかったにもかかわらず合格とし、納入するなどの行為がありました。
「74 式車載7.62mm 機関銃」の特定年度における発射速度試験において射撃が停止し、調整の上再射撃をすべきところを実施せず、納入するなどの行為がありました。また、平成22 年度以降の契約分においては、発射速度の規格を満たすための改造を実施していましたが、事前に防衛省の了承許可を得ていませんでした。
「5.56 ㎜機関銃MINIMI」の特定年度契約分の一部において、命中精度試験で仕様書の規定に沿った抜取検査をしていませんでした。
(3)その他
上記の他に、部品の受入検査・中間検査・完成検査等において、損傷等があるにもかかわらず不適切な判定により合格として納入していました。
3.防衛省に対して納入済みの各製品(既納製品)の安全性について
製品に発生するリスクの度合いを評価するハザード分析を行い、検証した結果、安全性は確保されることを確認いたしました。
また、過去のクレーム情報について調査を行った結果、今回の不適合品の流出が原因となるクレームはありませんでした。
以上については防衛省に報告し、その内容を了承いただいております。
4.指名停止などの措置について
(1)指名停止措置
平成25 年12 月18 日 ~ 平成26 年5 月17 日(期間:5 カ月)
(2)損害賠償請求
「12.7 ㎜重機関銃」の銃身について、債務不履行による損害賠償金62,474,916 円の請求を受け、本日支払いをいたしました。
5.今後の対策について
(1)既納製品に関する対応
既納製品に関する対応および今後の試験方法などについては、当社の品質問題に起因する不適合流出品は自主的に改修させていただくこととし、その詳細については防衛省と協議の上対処いたします。
(2)再発防止策
防衛装備品の製造過程における手順の明確化や試験記録の厳格化、不適合製品を流出させない体制構築等を含む再発防止策を策定して防衛省に報告いたしました。既に段階的に実施をしています。また、従業員に対するコンプライアンス遵守教育を一層徹底いたします。
6.業績への影響について
本件に関わる業績への影響は軽微です。
                    以上
**********

■実は、住友重機械工業は、昨年平成24年5月にと防衛省から指名停止処分を受けています。

**********時事通信2012年 5月 25日 20:12 JST
住友重機も水増し請求=機関銃―防衛省が指名停止
 住友重機械工業は25日、防衛省に納入した機関銃の契約などで水増し請求していたと発表した。防衛省は、同社に事実関係の解明を命じる一方、過払い金の返還と再発防止策の報告があるまで指名停止にする。防衛省の装備品をめぐる水増し請求は、三菱電機でも1月に発覚している。
 今回の水増し請求は、住友重機が2007年度に納入した機関銃や関連機材の契約と、子会社の住重特機サービスが11年度に行った銃器の保守点検・修理サービス。いずれも作業時間を過大に計上し、請求金額に上乗せしていた。 
**********

 こうした不祥事件多発の原因として、防衛省と同社との間の癒着が背景にあることをうかがわせます。

 もともと、我が国の機関銃の開発製造は戦前、日本特殊鋼という会社が手掛けており、戦後は、日本特殊鋼と中島航空金属㈱が1955年に資本提携して発足した日特金属工業が、自衛隊向けに機関銃を開発製造していましたが、1982年に住友重機械工業と合併し、住友重機の田無工場として、機関銃の開発・製造を続けています。

 この過程で、日特金属や住友重機械では多くの自衛隊関係者の天下りを受け入れており、その癒着がこうした不祥事件の温床となり、事件が発覚しても、根本的な構図にメスを入れられないため、いまだに撲滅できずにいるわけです。

 こうした背景から、今回南スーダンに派遣されている陸自では、長時間の連射に問題のある5.56㎜機関銃MINIMIの使用を控えていると考えられるため、過剰な弾薬となった5.56㎜銃弾1万発を、他国軍にくれてやってもよいと判断した可能性があります。

 いずれにしても、今後、次第に、韓国側からの情報も含め、事の真相が明らかになってくると思われます。

【ひらく会情報部】

※参考資料
平成25年12月23日
国際連合南スーダン共和国ミッションに係る物資協力についての内閣官房長官談話
1.我が国は国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成4年法律第79号)制定以来、国際連合平和維持活動等に積極的に参加、貢献してきた。
2.この際、同法制定に先立つ平成3年9月19日の関係省庁了解(平成13年12月7日一部改正)によって、国際平和協力業務に従事する自衛官等が使用を認められている武器(弾薬を含む。以下同じ。)については、武器輸出三原則等によらないこととする一方、自衛官等が携行する武器以外については、同法に基づく物資協力を含め、武器輸出三原則等により厳正に対処するものとしてきたところである。
3.我が国は、国際連合南スーダン共和国ミッション(以下「UNMISS」という。)に施設部隊約400名を派遣し、2011年に独立を果たしたばかりの南スーダン共和国の国づくりに協力を行ってきているところであるが、現在UNMISSは、同国中部のジョングレイ州ボルに所在する韓国隊宿営地において、反政府勢力等による争乱行為等により発生した避難民約1万5千名を受け入れている。このような状況を受け、今般、国際連合から日本国政府に対し、緊急事態に対応し、韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体を保護するために、我が国施設部隊がUNMISSの活動に際して持ち込んだ小銃弾のうち、約1万発の提供について要請があった。
4.今般の要請については、我が国も参加するUNMISSが行う活動の一環として行われるものであるところ、韓国隊の隊員及び避難民の生命・身体を保護するために一刻を争い、また、UNMISSに派遣されている韓国隊が保有する小銃に対して適用可能な弾薬を保有するUNMISSの部隊は日本隊のみであるという緊急事態であり、緊急の必要性・人道性が極めて高いことに鑑み、UNMISSへの5.56mm普通弾1万発の物資協力については、当該物資が韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体の保護のためのみに使用されること及びUNMISSの管理の下、UNMISS以外への移転が厳しく制限されていることを前提に、武器輸出三原則等によらないこととする。
5.なお、政府としては、国際連合憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念は引き続き維持しつつ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えの下、今後とも国際社会の平和と安定により一層貢献していく考えである。


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大澤知事の知事公舎愛人連れ込みによる目的外使用事件で最高裁第一小法廷から棄却通知

2013-12-23 23:10:00 | オンブズマン活動
■市民オンブズマン群馬は、この事件に関して、平成23年7月13日発行の週刊新潮で衝撃的なスクープ記事が掲載されたのを契機に、知事のモラル及び責任を追及すべく、事実確認のための情報公開請求を行い、開示された情報をもとに、知事に知事公舎のラブホテル化(一審の途中で裁判官の指摘により「妾宅化」と呼称変更)のために投入した公金の返還を求める住民監査請求を行いました。しかし、群馬県監査委員らに却下されたため、住民訴訟を提起し、一審、二審ともに棄却(一部却下)されたため、平成25年9月30日に最高裁に上告をしていたところ、この度、平成25年12月19日付で、最高裁判所第一小法廷から簡易書留で、棄却通知が調書(決定)の様式で送られてきました。


 さっそく最高裁からの書面の内容を見てみましょう。

**********

                    裁判長認印 ㊞
          調書(決定)
事件の表示   平成25半(行ツ)第460号
        平成25年(行ヒ)第497号
決定日     平成25年12月19日
裁判所     最高裁判所 第一小法廷
裁判長 裁判官  金   築   誠   志
    裁判官  櫻   井   龍   子
    裁判官  横   田   尤   孝
    裁判官  白   本       勇
    裁判官  山   浦   善   樹
当事者等    別紙当事者日録記載のとおり
原判決の表示  東京高等裁判所平成25年(行コ)第139号(平成25年8月9日判決)
裁判官全員一致の意見で,次のとおり決定。
第1 主文
 1 本件上告を棄却する。
 2 本件を上告審として受理しない。
 3 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする。
第2 理由
 1 上告について
  民事事件について飯高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
 2 上告受理申立てについて
  本件申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
       平成25年12月19日
          最高裁利所第一小法廷
           裁判所書記官 佐 古 智 昭 ㊞


          当事者目録
上告人兼申立人  鈴  本     庸
上告人兼申立人  小  川     賢
被上告人兼相手方 群馬県知事 大 澤 正 明


これは正本である。
 平成25年12月18日
    最高裁判所第一小法廷
     裁判所書記官  佐 古 智 昭 (最高裁判所裁判所書記官印)
**********

■これをみると、典型的な「三行決定」となっております。

 この三行決定は、調書の形で出る場合と決定書の形で出る場合の2種類があるそうですが、今回は調書の形で出されました。

■公務員である県知事が、公金で整備された公的施設である知事公舎に単身を装って入居手続きをして、実際には、週末に20年来の愛人を頻繁に連れ込んで政務ならぬ「性務」に励んでいたという、県民の負託を受けた者としてあるまじき行為を行っていたことから、市民オンブズマン群馬のメンバー2名は、憲法第15条の観点から、県民への奉仕者である公務員の知事が、任命権者の県民に対する信頼を裏切ったことを問題視して、上告及び上告受理申立をしました。

 ところが、最高裁判所は、この事件について、踏み込んだ判断をせず、書記官による三行判決の調書のみで門前払いをしたのです。

 最高裁の判決・決定の9割以上が三行判決(三行決定)だとする報告もあり、公務員である裁判官も、この事件については群馬県知事と同様に、公費で整備をした官舎等に単身を装って入居し、実際には愛人を頻繁に連れ込んで宿泊しても、コンプライアンス上、全く問題は無いと判断したことになります。

 このため、上告書類で述べたとおり、次のアクションをとる必要があると考えます。

(1)地方公務員法第33条の改正を国に求めること
地方公務員法第33条について、「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。ただし、公舎を使って不倫をする場合であっても、職の信用を傷つけたことにならないし、職員の職全体の不名誉となるような行為とならない」というふうに、但し書きを付け加えるように法務省や総務省など関係省庁に働きかけを行うこと。

(2)公舎管理規則第8条の改正を群馬県に求める
 相手方の群馬県には、当然のことながら、群馬県公舎管理規則第8条(遵守事項)の第1項第三号に禁止行為のひとつとして定めのある「職員と生計を一にする者(使用人を除く)を同居させること」に加えて、但し書きとして、「但し、ここでいう『使用人』には、愛人、妾、2号とよばれる配偶者以外の者も含む」という記載を付記させるように改正を求め、今後、公務員が公舎や官舎を舞台に類似の行為を行っても、判断に二重基準が生じないような措置を取るよう促すこと。

(3)知事公舎の解体撤去更地化にむけた群馬県の動きを監視する
 今回の最高裁の画期的な判断を受けて、群馬県は、多額の公金(2000万円以上か)を投じた知事公舎を解体、撤去、更地化して、前橋市に駐車場として売り渡すための具体的な準備に入るものと見られます。もし、具体的な動きを察知したら、情報公開で事実関係を確認したうえで、住民監査請求を行い、公金を無駄にした群馬県の責任をあらためて問うこと。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

【12月25日追記】
**********毎日新聞 2013年12月25日 地方版
大沢知事:女性宿泊問題 原告の敗訴確定 最高裁、上告棄却 /群馬
 大沢正明知事が知事公舎に知人女性を宿泊させたのは公舎の目的外使用にあたり規則に反するなどとして、市民オンブズマン群馬のメンバーが大沢知事に対し約1956万円を県に返却するよう求めていた訴訟で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は24日までに、原告による上告の棄却を決定、原告の請求を棄却・却下した1、2審判決が確定した。決定は19日付。【塩田彩】
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東京ガスの大量未不臭ガス放出で事後報告に係る情報が黒塗りされ異議申立をしたら安中市が審査会に諮問

2013-12-18 22:05:00 | 東京ガス高圧パイプライン問題
■東京ガスが、平成25年9月19日深夜から翌20日の午前にかけて、安中市北野殿にある安中バルブステーション施設構内にある放散塔から、周辺住民に内緒でこっそりと大量の生ガスを放出した事件で、東京ガスが、ガス放出から1週間近く経過してから、安中市役所に事後報告しました。当会は、事実関係を確認すべく、平成25年10月29日付で安中市長に対して行政文書開示請求書を提出したところ、安中市が東京ガスの報告者から聞き取ったメモのうち、肝心の報告者の所属や氏名などを黒塗りにしたため、これでは市民の安全・安心は担保できないと判断した当会は、11月20日付で異議申立を安中市長宛に提出していたところ、12月9日付で、情報公開・個人情報保護審査会に諮問した旨、通知がありました。


**********
                    安法発第1590号
                    平成25年12月9日
小 川  賢  様
                    安中市長 岡 田 義 弘
          情報公開・個人情報保護審査会への諮問について
 平成25年11月20日付けで提出のありました情報公開に関する別紙異議申立書につきましては、市民部安全安心課において受理し、平成25年12月6日付けで安中市情報公開・個人情報保護審査会に諮問いたしましたので、安中市情報公開条例第19条の規定により通知します。
 なお、事務手続き上、大変時間がかかり、申し訳ございませんが、決定までの予定は次のようになっております。ご不明な点につきましては、下記までご連絡ください。
(審査・決定手続)
異議申立書の受付・受理→
情報公開・個人情報保護審査会へ諮問→
実施機関に対し理由説明書の提出を求める(期限4週間程度)→
理由説明書の提出→
理由説明書を異議申立人へ送付し、意見書の提出を求める(期限4週間程度)→
意見書の提出→
情報公開・個人情報保護審査会の開催→
答申→
実施機関による異議申立てについての決定
 ※決定が出るまで、順調に進んで約3ケ月程度かかります。
                 事務局:法制課法務係(内線1043)
                 担当課:安全安心課 生活安全係(内線1131)
                     電話(382)1111
**********

■安中市が部分開示として黒塗りをしてきた主な箇所は次の箇所です。

9月25日 16:30頃 東京ガス 群馬支社 ■■■■ ■■氏
                     設備部 ■■■■■■■■ ■■氏 来庁

 おそらく、この2人は当会が、未不臭ガス放散事件で10月25日午後2時10分から3時まで、東京ガス群馬支社で面談した同支社総務部の栗原操部長と設備部の柴田睦部長の可能性が高いと思われます。しかし、本当に彼らが安中市や北野殿地区の周辺住民に事後報告をしたのかどうかは、安中市の安全・安心課がきちんと情報開示してくれないと、確認のしようがありません。

 これら2名のかたがたは東京ガス群馬支社を代表して、安中市や地元住民に当該事件の経緯等を報告したわけですから、個人情報だから、などとして安易に黒塗りすべき情報とは本質が異なります。

 しかも、安中市は、本来、爆発性、引火性のある都市ガスの大量放出について、東京ガスから事前報告を受けなかったわけですから、市民の安全・安心な生活を守る立場から、事後報告であっても当然、再発防止の施策を東京ガスに講じさせる責務がありはずです。

 ところが、安中市は、東京ガスから事後報告を受けても、なんの対応もとりませんでした。本来であれば、東京ガスは、未付臭ガスの放出に先立ち、高崎市や前橋市、渋川市のユーザーに対する注意喚起と同様に、いや、それ以上に、放散塔が設置されている北野殿地区をはじめ、東京ガスの高圧導管敷設ルート沿線住民に広報車を出して、生ガスの大量放出の予告と安全対策の万全性について周知を図るとともに、安中市にも連絡して、防災無線や市民メール配信サービスなどを通じて、住民への情報伝達を徹底するのが当然のはずでした。

 しかし、東京ガスも安中市も、既に済んでしまったことだとして、今後、同じような事態が起きたことなど想定したくもない様子で、何の反省も対策協議もしていません。

 安中市は、せめてもの常識を市民に示す為にも、東京ガスの事後報告者の所属と氏名くらいは、開示すべきです。

■なお、安中市の安全安心課は、11月27日付で、突然「お詫び」と称して、次の文書を郵送してきました。

**********

 小川 賢 様
   行政文書部分開示決定通知書等の差し替えについて(お詫び)
 平成25年11月13日付け安安発第2075号において通知させていただいた行政文書部分開示決定通知書及び行政文書開示請求に関する写しの一覧において、下記のとおり誤った記載がありました。
 つきましては、大変御手数ですが、同封の行政文書部分開示決定通知書(差し替え)及び行政文書開示請求に関する写しの一覧(差し替え)と差し替えていただきますようお願いいたします。御迷惑をお掛けし、大変申し訳ございません。

 正)個人の職名及び氏名
 誤)個人の職名及び氏名、住所、印影、電話番号、FAX番号、メールアドレス
以上
                    平成25年11月27日
          安全安心課 生活安全係
          電話 382-1111(内線1131)
          FAX 382-0503

【差し替え通知】


                        安安発第2075号
                        平成25年11月13日
          行政文書部分開示決定通知書(差し替え)
 安中市野殿98()番地
 小 川  賢  様
                    安中市長 岡田 義弘
 平成25年11月6日に請求のありました行政文書の開示について、次のとおり一部を除いて開示することに決定しましたので、安中市情報公開条例第11条第1項の規定により、通知します。
<開示請求に係る行政文書の内容又は件名>
平成25年10月26日付東京新聞群馬版の記事によれば、東京ガスが9月18日~19日にかけて臭いが消えたままのガスを高崎・前橋・渋川地区に供給した問題発生の処理の過程で、東京ガスが野殿地区に設置したガス中継基地にある高さ30mの放散塔から生ガスを19日深夜から20日昼にかけて上空に放出したことについて、東京ガスが問題発生の1週間後の同年9月25日に、この生ガスの上空への放出についてについて安中市に報告したことが報じられています。この東京ガスよるガス放出に関連する次の情報。
(1) 東京ガスから安中市に対して、ガス放出の件で連絡や報告のあったことを示す一切の情報
<実施方法>   ① 闇 覧  ② 写しの交付  3 視聴
<開示の日時>  平成25年11月19日(火)午前10時  分から
<開示の場所>  安中市役所 総務部 法制課内
<開示しない部分の概要及び理由>
(開示しない部分の概要) 個人の職名及び氏名 (開示しない理由)安中市情報公開条例第7条第2号に該当
 個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの
<事務担当課>電話番号 027-382-1111

【行政文書開示請求に関する写しの一覧(差し替え)】

<開示請求の件名>
平成25年10月26日付東京新聞群馬版の記事によれば、東京ガスが9月18日~19日にかけて臭いが消えたままのガスを高崎・前橋・渋川地区に供給した問題発生の処理の過程で、東京ガスが野殿地区に設置したガス中継基地にある高さ30mの放散塔から生ガスを19日深夜から20日昼にかけて上空に放出したことについて、東京ガスが問題発生の1週間後の同年9月25日に、この生ガスの上空への放出についてについて安中市に報告したことが報じられています。この東京ガスよるガス放出に関連する次の情報。
(1) 東京ガスから安中市に対して、ガス放出の件で連絡や報告のあったことを示す一切の情報
<行政文書の名称>報告書
<開示の別>部分開示
<不開示とした箇所>個人の職名及び氏名
<不開示とした理由>
 安中市情報公開条例第7号第2号に該当(個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの)
<開示請求に対する説明>―
<数量>20
(2) 東京ガスの報告を受けて、安中市が対応した内容や時期等がわかる一切の情報。
<行政文書の名称>―
<開示の別>不存在
<不開示とした箇所>―
<不開示とした理由>―
<開示請求に対する説明>―
<数量>お0
 該当行政文書計:0

■どうやら、冒頭に黒塗りされた箇所は、報告者の所属部署と姓のみのようです。しかし、実際に開示されて見ないと断定は出来ません。その意味でも、黒塗りのまま、本件を幕引きすることは、なんとしてでもあってはならないことです。

【ひらく会情報部】

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高崎経済大学入試合格者の入学料1週間延納申入れを高崎市が拒否した事件の第3回裁判傍聴記録(その2)

2013-12-17 00:59:00 | オンブズマン活動
■これに対して、高崎市側は、10月31日に準備書面(2)で、反論を試みてきました。この中で高崎市は「高崎経済大学授業料等徴収条例やその施行規則は高崎市のホームページに公開されており、何人も確認可能な状況であった」と主張しています。しかし、現在、ネットで「高崎経済大学授業料等徴収条例」をキーワードにして検索しても、全然ヒットしません。やはり、きちんと学生募集要項に丁寧に明記すべきです。

**********【平成25年10月31日 被告準備書面(2)】
平成25年(ワ)第99号 損害賠償請求 慰謝料請求事件
原告 大城 ■■
被告 高崎市
          準備書面
                  平成25年10月31日
前橋地方裁判所高崎支部 民事部D係 御中
               被告訴訟代理人弁護士 渡辺明男
1 入学料減免制度について学生募集要項に記載しなかったことについて
 高崎経済大学学生募集要項に「授業料又は入学料の分割徴収又は減免」措置の存在ならびにそれらの申請手続き方法等を記載していないことを非難しているが、学生募集要項に記載する項目、内容は、それぞれの大学において学生募集を行うにあたり必要と思われる事項を記載しているものである。
 本学においては、募集人員、出願資格、入学試験日等のほか、入学手続に必要な事項を記載している。
 同募集要項における入学手続に関する事項では、「入学までに必要な納入金」として、入学料、前期授業料等合計665,535円が必要であること、「入学手続上の注意」として、入学手続期間内に手続きが完了しない場合には入学を辞退したものとして取り扱う旨の記載をしている。(甲3号証)
 原告は、他大学の募集要項に入学料の減免制度が記載されている例について触れているが(甲3号ないし5号証)、高崎経済大学と同様の公立大学の募集要項においては、入学料の減免、延納制度の有無について記載のない大学もあり、記載事項はそれぞれの大学の判断によるものである。
(乙2号証、3号証、4号証、5号証)
 高崎経済大学授業料等徴収条例、及び同条例施行規則は、高崎市ホームページに公開されており、何人も確認可能な状況であった。
 なお、原告は甲15号証の判例を引用し、受験生及び入学許可された者に対する配慮義務について論じているが、甲15号証の判例は産業廃棄物中間処理施設の許可申請が条例制定前に提出され、そのことを了知していた地方自治体が、申請後に当該施設等の設置を制限する内容を含む条例を制定した場合における、条例制定前の申請者に対する地方自治体の配慮義務について判示したものであって、本件とは全く事案を異にしているものである。
2 竹田玲子の対応について
 平成22年4月24日、原告から電話があり、高崎経済大学入試課職員竹田玲子が対応をしたが、原告からの申し出は入学料延納についてのものであった。
 そのため、入学料延納の制度は高崎経済大学においては定められておらず、納期の延長はできないことを応えたまでである。高崎経済大学が入学料に延納制度を設けていない理由については、授業料の場合とは異なり、入学料の納入をもって、入学者の確定を行う(入学手続者が募集定員身〔ママ〕満たない場合には、直ちに追加合格の手続きを行う必要がある。)という特別な理由があるからである。
 この点、高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則第3条第3項(甲12号証)において、入学料の減免の対象となる者は次の2つの要件のいずれかに該当する者と定められている。
①天災その他不慮の災害を受け、学資の負担に堪えられなくなった者の子弟
②前号以外で必要と認められる者
 そこで、仮に原告主張のとおり、竹田玲子が入学料減免制度について説明を行い、当該申請が原告から行われたとした場合に、入学料が減免されたかどうかについて検討すると、以下のように考えられる。
 原告において入学料等が納入できない具体的な理由としては、平成22年4月14日(木)高崎市職員課職員深尾耕至が原告と面談した際の原告からの説明によれば、「高崎経済大学に受験した当時、入学料を払える資力はあったが、暴力団ともめ事があって借金が発生し、その支払いにまわしてしまった。入学料は友人から借金して支払うつもりで有ったので鴛鴦をお願いした」とも受け取れる回答があった(乙6号証)。
 また、原告が提出した甲6号証の平成22年6月4日付東京新聞の記事によれば、「仕事上のやむを得ない出費」による明日までに入学料を納付することができなかったとされている。
 これらの事情は、高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則第3条第3項第1号に定める「天災その他不慮の災害を受け、学資の負担に堪えられなくなった者の子弟)の要件に該当しないことは明らかである。
 さらに、同条同項第2号に定める「前号以外で必要と認められる者」に該当するかどうかであるが、同条同項第2号の適用は、具体的事例を挙げた同条同項第1号に類する状況、すなわち、自然災害に起因する場合ではないものの、これに類する事情により学資負担者本人の意思にかかわらず学資の負担が困難となった場合を指すものと解され、本人の都合による支払いの優先順序によって入学料を支払えない事情まで勘案するものではない。
 したがって、仮に原告に対し入学料減免制度を竹田玲子が説明したとしても、入学料の減免の適用は困難であったと考えられる。
**********

■こうして、被告高崎市は、「入学料の減免制度はあるが延納制度はない」という主張に変えてきました。「減免はするが、延納は認めない」という主張には相当な無理があると思われますが、高崎市はなんとかして不作為の責任を回避するために必死の論理を展開しています。そこで、原告の大城さんは、今回の3回目の弁論で、次の準備書面(2)を陳述しました。

**********【平成25年12月10日 原告準備書面(2)】
平成25年(ワ)第99号 損害賠償請求事件
原告 大城 ■■
被告 高崎市(代表者市長 富岡 賢治)
          準備書面(2)
                    平成25年12月10日
前橋地方裁判所高崎支部民事D係 御中
               原告 大城 ■■
 頭書事件につき、原告は、以下のとおり弁論を準備する。
第1章 補足事項
平成25年10月8日の前回期日において、裁判官殿から原告に対する質問があったが、これに関して訴状記載の事実について補足訂正する。平成25年10月8日付原告準備書面(1)5ページ、
  原告は一週間弱で入学料の工面が出来る手筈であったので、「入学料を延納することによって、一週間以内に入学料を支払い、入学手続きをして入学しよう」と考えていたのであり、「入学料をまけて(減免して)もらって安く入学してやろう」とは考えていなかった。とにかく、入学手続きを済まそうと考えていたのである。
 とは、平成22年3月21~24日、の初めて高崎経済大学に電話する前後の心境であって、請求の原因としては言葉足らずであった。同6ページ『被告は条例の配慮(説明)義務を怠り、入学許可者は入学料の特別な取扱いについて全く分からないのだから、「学長判断で延納措置が認められたら」との期待の下、原告は延納願いを申し出た』のであって、その根拠として、四日間の延納措置が減免措置に比べてハードルが低い、との原告の認識に拠るものであった。なお、原告が減免措置の存在について知ったのは平成22年の秋ごろになってからであった。
 原告の目的は入学であって、その目的達成の為には延納・減免のどちらでも、入学できればどの手段でもよかった。
第2章 被告準備書面(2)に対する反論
1 乙2ないし5号証について
 被告は乙2ないし5号証を提出して色々と述べるが、原告の主張に対する反論の体をなしていない。乙2号証には入学料・授業料の規定の有無だけでなく、その規定の内容も証拠として提出すべきであり、争点である要件事実を正確に捉えていれば、乙2ないし5号証に付随して、これら公立大学を法人化以前に所轄していた自治体で入学料の延納や減免措置に関する条例の内容を示す必要がある。被告は、①要件事実を正しく理解していないか、②要件事実を意図的に矮小化しようとしているか、③この点にのみにおける行政行為の慣習を挙げて、「ほとんど他の自治体も(他の自治体の条例の内容は不明だが、仮に被告と同様だとすると)同じなのだから不法行為に該当するはずがない」と主張する意図を有しているとしか考えられない。
 ③について、消費者金融会社に対する不当利益返還訴訟の例を挙げて説明する。グレーゾーン金利適用は違法であるとの最高裁の判例が下る以前は全ての消費者金融会社がグレーゾーン金利を適用して不当に利得を得ていた。原告には消費者金融会社経営陣の認識など知る由もないが、そのような会社には東証一部上場企業も存在したし、金融当局からグレーゾーン金利の是正を勧告されるような動きが無かった(原告の記憶では)ことから、「違法」であると認識していた経営陣は皆無であったと思われる。そして、もしも、誰も消費者金融会社を訴えなかったら未だにグレーゾーン金利が適用され続けていたかもしれない。原告がなにを主張したいかというと、「周りも同じことをしている」という慣習を持ち出して、「それが違法ではない」とはならないということである。そしてその慣習が現時点まで続いている理由として、本件事件における原告のような対応に遭った受験生は多くなく、訴訟に至ることがなかったからだと強く推測される。
 よって、本件事件は慣習による被告の主張はナンセンスであり、その上、他自治体の規則について具体的に明らかにしていないので反論の体をなしていない。本件事件は慣習ではなく憲法や法で判断されるべきである。そして、被告は教育基本法4条の解釈について触れていないし説明義務の法的解釈についてほとんど触れてはいない。
2 乙6号証と被告高崎市職員に対する話し合いについて
 乙6号証の内容について認める。録音した内容と一致する。さて、乙6号証を被告が自発的に提出したということは、本準備書面(2)と共に提出する文書提出命令申立書の対象文書2は被告高崎市においては、明らかに民事訴訟法220条各号に該当しないということの証左である。訴状8ページに記載の通り、高崎経済大学においては業務上で文書を残すことがほとんどないと断言した。しかし、本件事件は東京新聞の記者が原告に取材し竹田他と原告との電話録音を聴いて、竹田や大学関係者への取材を経て、社会的に注目すべきであるから甲6号証のとおり新聞沙汰になったと言え、当時の大学事務局長も「担当者の対応に問題がなかったとは言えない。」(甲6号証参照)との見解を示していることから、客観的に見て被告高崎市の職員の行政行為に問題があったことに疑いようがない。このような問題が表面化した以上、被告は当該職員が当該行政行為に至った経緯を調査し、改善ないし検討のため乙6号証の陳述者深尾氏のように被行政行為者から当該問題に関する相談を正確に記録していることは当然である。
 (だからこそ、このように裁判沙汰になったときに証拠として提出されることになる。)したがって平成22年6月11日10時より原告と共に市民オンブズマン群馬代表及び事務局長の三人で本件事件についての話し合いにおいて高崎市役所において対応した高崎経済大学職員も同様に話し合いの内容を正確に上司に報告し、被告高崎市が検討ないし改善の為に当該報告文書を作成・保管してしかるべきであることに疑いようはない。若い深井氏は原告の相談に熱心に耳を傾け必死にメモを取っていた。一方、オンブズマンメンバーとの話し合いに対応した年配の高崎経済大学職員はベテランの余裕からか全くメモも取らずにいたが、驚異的な記憶力でその後の業務(文書の作成。保管)を遂行していることは行政として当然である。
 そして、この当然作成されるべき文書には被告高崎市が本件事件に関する被告自身(高崎経済大学職員を含む高崎市職員)の率直な意見や問題点及び改善点が記載されているはずであり、裁判所がこれを証拠として吟味し事実認定を行う必要性は極めて高い。
 しかし、万が一、文書を作成していない場合は行政の恣意的な不行使であり、原告の人権を無視することであり、本件事件とは別に慰謝料を請求すべき事案である。
 また、乙6号証1ないし2ページ「自分の落ち度は、お金の都合つかないのに高崎経済大学を受けてしまったことと、延納・免除の制度が無いのに事務局に言ったことだ。それはミスだと思う。それは認める。」の部分について、深尾氏に相談した時点で免除=減免の制度が存在することを原告は知らなかった。
 検察と金融庁に関する言及について、原告は4日間で入学料を支払える状況であった。その大元の原因は検察にある。今は詳細に触れない。被告の対応は酷いものであるが、金融庁はそれ以上で、原告に対し「金融庁職員(国家公務員)は一般の方(国民)を相手にしない・・・」と断言するという常識では到底考えられない対応をした。金融庁職員のこの暴言を(録音を)他の金融庁幹部補佐に聞かせたところ、青ざめて手のひら返したような対応になったのと同じく、竹田玲子の対応を聞かせたら被告も驚くことであろう。なお、原告は金融庁と未だに東京地裁の合議体で争っている(上記暴言が主要な争点ではない)。
 なぜ延納せざるを得ない状況であったか、なぜ、高崎経済大学を受験したのか原告は客観的な証拠と共に述べることが出来るが、その必要性があるかどうか裁判官殿に打診してから行いたい。
3 高崎経済大学の抱える問題点
 乙6号証の内容において、本件事件とは無関係な記述があるが、これによって原告が悪質なクレーマーだという心証(原告にとってマイナス)が形成される可能性が排除されないから、これらが事実であることを述べ、更に、高崎経済大学の内部管理体制には以前より重大な問題があり、大学職員が行政の権力の恣意的な不行使を繰り返し行っていることを立証することは被告高崎市職員に対する心証を形成(原告にとっては相対的にプラス)するので客観的に述べる。
慢性的といえる大学財源 甲19号証より、公立大学の財政は厳しいことが述べられているが、特に高崎経済大学は専任教員一人当たりの学生数は43人と突出して高く、大学の財政難の程度は甚だしく、入学料の減免措置適用は大学にとって厳しいものかもしれない。なお、トヨタのおかげで税収が多いはずの愛知県の愛知県立大では、「県の財政悪化で他部署(役所のことと思われる)と同様に大学も海外出張の予算が付かない時代が8年続いた。」と述べている。
公金の横領 当時の学長と事務局長は公金を横領している。甲20号証の1ないし2より、吉田俊幸と坂巻賢治は一泊8200円の宿泊施設に宿泊するにあたって、それぞれ14100円、12500円を請求し甲21号証で示される条例で定められているように市からの過払い金を返納せず横領した。甲20号証で示される鶴鷹祭だけでも4万円を職員が横領した。
大臣・事務次官級の旅費請求 甲22号証の旅行法のように国家公務員の規定ではあるが、国外出張においてファーストクラス(最上級)の運賃が支給される者は大臣や事務次官等に限られているが、高崎経済大学では准教授・教授の地位で、甲23号証の1ないし2で示した通りファーストクラスで出張することが出来る。上記①を参照にすると問題があることに疑いようはない。
学長の不正単位認定 甲24号証で示すとおり、本件事件当時の学長吉田俊幸の前任者小暮至元学長は自身の担当ゼミで授業回数が不足しているにもかかわらず、不正に単位を認定していた。この自分自身の不正な単位認定問題と学生の自殺が相次いだことの責任を取って辞任した。大学のトップですら不作為を行い、隠蔽行為を行っていたことは明らかである。
相次ぐ学生の自殺とアカハラ 甲25号証で示すとおり、半年間の間で学生が4人自殺している。2007年1月15日の自殺以外の個々の事情は不明であるが、小規模な大学でこの短期間に4人も自殺者がでることは大学に重大な問題があることに疑いようはない。女子学生をアカハラで自殺に追い込んだ准教授は前任の国立茨城大学でも問題を起こしていたが、これを高崎経済大学では把握していないと公言したことを鑑みると、大学内の審査の杜撰さは疑いようもなく、「教員が欲しい→公募→ろくに調べず採用」との図式は、①ないし③も考慮すると、「(仮に)入学料減免申請→大学職員の予算が減るから自分たちは困る→学生の個別事情をろくに審査せず(行政権力の恣意的な不作為)に申請却下」との図式にも繋がる。
 以上、実際に起きていない事象に関して要件事実とは無関係な要素を持ち出して、帰納的に入学料減免採用の蓋然性を評価することは好ましいことではないが、次章で述べるとおり、被告の「たられば」を用いて反論することに対する原告の攻撃防御方法であることを特筆しておく。
第3章 減免措置適用の蓋然性
 被告は、仮に原告に対し入学料減免制度を説明しても入学料の減免の適用は困難であっただろうと主張する。
 さて、著名な村上ファンド事件の第一審判決において「実現可能性はあれば足り、高低は問題にならない。」(甲26号証)との実務家を唖然させるものがあったが、これを原告が援用すれば、例えば、「原告が高崎経済大学に入っていてならば、卒業後、地方公務員もしくは法を学び法曹の道に進んでいた可能性が少なからずあり、よって、それが実現していればその経済的利益は1億円を下ることはなく、被告高崎市の行為によって、その実現が不可能になったのであるから、原告に1億円支払え。」などの無茶な請求も不自然ではなくなる。原告はこのような請求をしないが、被告が減免措置適用の蓋然性の高低を持ち出すことに違和感を覚える。
 例えば、AがBを車で跳ねてBを死に(即死)至らしめた。しかし、実は事故直前にBは余命一か月を宣告されていたことから、Aは、「事故がなくてもBはその後生存する蓋然性が著しく低いので事故がなかったとしてもBは死亡していたのだから私(A)はなんら刑事・民事上責任を負わない。」と主張した。
 被告の主張はこれと同値であり、自らの不法行為について認めず蓋然性の低さを持ち出して開き直る。
 本件事件においては憲法(教育基本法4条)の解釈が当該蓋然性に因果関係を有する。そして、憲法の存在の下、国は同条の規定を地方公共団体に政策を委ね、その結果被告高崎市においては当該条例が制定され、被告高崎市はその条例を適切に運用すべき義務を負っていたのであって、被告はその配慮義務(説明義務)を怠り更に裁判においても憲法の解釈や条例の配慮義務にも殆ど触れていない。被告は「高崎経済大学授業料等徴収条例、及び同条例施行規則は、高崎市ホームページにおいて公開されており、何人も確認可能な状況であった。」(被告準備書面(2)2ページ)と述べるが、甲2号証のどこにも被告高崎市のホームページの確認を促すような記載は一切無い。
 被告の反論は要件事実や法解釈を軽んじ争点を矮小化しているとしか言いようがない。逆に言えば、被告は反論の術がないことの証左とも言える。
 原告は原告自身に極めて特段の事情を有し、高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則第3条第3項第2号に該当する蓋然性の程度、その他を客観的な証拠を用いて述べることはできるが、「たられば」の議論の前に実際に起きた要件事実に関する法的検討の議論を完結すべきである。減免可否についての議論は裁判官殿の心証(損害の算定における当該議論のウェイトと審理の長期化との衝量)を確認して必要があれば客観的な証拠の提出と共に述べる。
          以上
**********

■準備書面(2)と合わせて、原告の大城さんは、次の文書提出命令申立書も提出しました。

**********【平成25年12月10日 原告による文書提出命令申立書】
平成25年(ワ)第99号 損害賠償請求 慰謝料請求事件
原告 大城 ■■
被告 高崎市(代表者市長 富岡 賢治)
文書提出命令申立書
                    平成25年12月10日
前橋地方裁判所高崎支部民事部D係 御中
                    申立人 原告 大城 ■■
申立人(原告)は、次のとおり文書提出命令を申立てる。
1 文書の表示
(1)「平成22年度高崎経済大学一般入試における、入学を希望するが入学手続き期日までの入学料の納付困難な入学許可者から高崎経済大学長あてに示された入学意思の表示及び入学料延納に関する要請に対する対応とその判断に至る経緯等」に関する調査書及び報告文書。それらに付随する一切の添付資料。
(2)「平成22年6月11日10時より、高崎市役所にて、原告・市民オンブズマン群馬の代表及び事務局長の三人で高崎市職員に対し、入学拒否に関する質疑応答を行ったうえで情報開示請求を行った事」に関する報告文書及びその情報開示請求に関する決済文書。それに付随する一切の添付資料。
2 文書の趣旨
 平成22年度高崎経済大学一般入試における、入学を希望するが入学手続き期日までの入学料の納付困難な入学許可者から高崎経済大学長あてに示された入学意思の表示及び入学料延納に関する要請について対応とその判断に至る経緯(対象文書(1))と、原告らの被告高崎市職員に対して行った対象文書(1)の内容に準ずる質疑に関する被告の見解及び情報開示請求の可否の判断理由(対象文書(2))が記載されている。
3 文書の所持者
 文書(1)ないし(2)について
高崎経済大学 〒370-0801 群馬県高崎市上並榎町1300
  高崎市 〒370-8501 群馬県高崎市高松町35-1
4 証すべき事実
 被告の原告に対する恣意的な行政裁量権の不行使に関する経緯とその判断に至った経緯(下記①)と、被告高崎市外に住む原告に対する被告高崎市の行政上の対応(下記②)。これらに関する被告高崎市自身の率直な意見や問題点及び改善点。
 ①強い入学の意思を持っていた原告に対する大学入学の門前払い。
 ②行政の不作為(①を指す)に対する原告らからの苦情の対応に関する事務処理及び情報開示請求に関する事務処理。
 以上が対象文書(1)ないし(2)が存在する場合の証すべき事実である。
●文書提出命令の手続きにおいては文書の存在と所持の認識が前提となって、文書の表示と趣旨を特定する文書の特定手続き(民事訴訟法222条)を行う必要があると解されている。この特定手続きは文書の表示と趣旨を明らかにすることが「著しく困難であるとき」(本申立の場合は文書の表示を明らかにすることが著しく困難)であり、著しい特定困難とは、当事者照会(民事訴訟法163条)等を用いてもなお特定できない場合とまで厳格に解されていないが、原告は平成22年4月14日、同年6月11日にも被告職員と会し、文書の事前の特定の努力に努めたと解されるので、文書の所持と表示が不明であるが(文書が存在するとなれば、文書の趣旨は特定されている)本件文書提出命令を申し立てたのである。
対象文書(1)ないし(2)の文書は、常識的に考えて被告において作成されているはずである。が、訴状8ページのとおり、高崎経済大学においては業務上で文書を残していないようである。本件事件においては甲6号証で示したとおり、新聞沙汰にもなっており、一度は裁判になったのであるから、高崎市が文書を作成していることは疑いようもない。万が一作成していないならば大問題であり、その場合は追加の裁判をすることとなる。以下は、文書が存在しない場合の証すべき事実である。
対象文書が存在しない場合、被告の原告に対する不作為は著しいものであり、原告の教育を受ける権利の侵害のみならず、原告の存在を否定するかの如き対応は原告の受けた無形の損害額算出の要素となる。
 以上より、文書が存在しようとなかろうと証すべき事実が存在するので裁判所はこれを踏まえた訴訟指揮を行うべきであると解する。
5 文書提出義務の原因
 上記(1)ないし(5)の各文書は、民事訴訟法220条4号イないしハに掲げる文書のいずれにも該当しない文書であり、所持者には提出義務がある。
          以上
**********

■第3回弁論には、被告の高崎市から訴訟代理人の渡辺明男弁護士のほか、5人の職員がやってきました。原告は大城さんと市民オンブズマン群馬代表の2名です。

 10分前に2号法廷の鍵があけられ、傍聴席に入りました。法廷内の原告席では大城さんが、被告側の席には渡辺弁護士と職員1名が座りました。

 すると、事務官から原告に対して「甲19号証がダブっている」との指摘があり、原告が後日郵送で甲27号証として再提出することになりました。

■まもなく11時になり、裁判官が入廷してきました。全員起立して礼をして着席しました。

 最初に、被告から提出された10月31日付け準備書面(2)を陳述しました。次に、原告から12月10日付け準備書面(2)を陳述しました。書証の提出については、被告から乙2号証ないし6号証の提出が行われ、原本2号証と6号証の確認が行われました。

 次いで、原告から甲19号証ないし26号証の提出が行われましたが、事前に事務官からの指摘により、19号証がだぶっているため、募集要項の甲19号証を甲27号証として再度次回までに証拠説明書付きで、提出する旨原告から説明がありました。

 それから裁判官は「原告から12月10日付けの文書提出命令申立が出たので、被告のほうから意見書を出すように」と訴訟指揮がありました。被告の弁護士からは「申立書の1の文書の表示のうち、(1)の文書は不存在で、(2)についてはそれらしいものがある」という説明がありました。裁判官は「文書が存在しない場合は、その理由を書面で出すように」と指揮をしました。

 次に裁判官は被告の高崎市に対して、「原告としては減免制度があったことについて適切な説明が受けられなかったということ主張しているが、入学料の減免については、条例と施行規則がある。そこで、減免について、高崎市に事務処理要領など、内部的な事務取扱いに関する文書があれば、提出するように」との指揮をしました。これに対して、被告の渡辺弁護士から「相談してみたい」と返事がありました。裁判官は「その減免についての必要な資料というものがあるはずだが、どういうものがあるのかを示してほしい」と重ねて指揮をしました。

 続いて裁判官は「被告と原告とから準備書面が提出された。原告の純部署面では詳しく触れられていないが、今回、入学料が期限までに払えなかった事情について明らかにしてもらいたい」と今後は原告に対して指揮をしました。これに対して原告は「そのことを第三者にわかるように、理論的に説明するにあたって、相当な書証の作成に必要な時間が必要になる」と申し述べました。

 裁判官は「そんなに特殊な事情があるのか?」と原告に確認すると、原告は「そうです」と頷きました。

 裁判官は「原告のほうに意識してもらいたいのは、減免を受けられなかったとして慰謝料を請求するからには、減免を受けられたという事情が必要になる。まだ、被告から、条例の施行規則に具体的な記述がないので、減免に必要な要件の詳細は不明だが、その要件があって、特殊な事情があるはずなので、その要件に当たるんだ、ということを、記述するときに意識してほしい。事情があれば、それが減免になるという形で書いてもらいたい」と伝えました。原告は「その事情説明には2カ月くらいかかる」と述べました。

 そこで裁判官は「被告にさきほど言った文書要領等の文書を、1ヶ月程度で出してもらい、その間に原告の事情は事情として書いてもらい、それから被告から出てくるのでそれを踏まえて原告側から文書を出してもらいたい」と丁寧に原告に説明しました。

 最後に、それから次回の弁論期日について、裁判官から、「2月18日ではどうか」と提案がありました。原告から「今日から2ヵ月後に文書を出したい」と希望が述べられると、裁判官は「それを斟酌して、2月はじめごろに次回期日を予定したい。祝日があるのでその前の週で間に合うか?2月4日火曜日では?」と再度打診をしてきました。原告は「火曜日だけだとなると(2月)25日しかない。2月4日は早すぎ、同18日は差しつかえる」と述べました。

 そのため、裁判官は「では2月25日(火)10時15分でどうか?」と言うと、被告側もこれを了承しました。こうして、2月25日(火)10時15分に第4回目の口頭弁論期日が決まりました。

 裁判官は被告に対して、「先ほどの文書は1月10日の年明けの2週目の金曜日でどうか?」と提出期限の確認があり、被告高崎市もこれを了承しました。

 こうして、第3回口頭弁論は、11時14分に終了しました。

■高崎経済大学では、平成19年に学生の自殺が相次ぎ、このうち、宿題をめぐる強圧的指導で、経済学部2年生だった女子学生(当時20)を自殺に追いやったとして、同学部の男性准教授(当時38)が同年4月9日付で懲戒免職処分を受けました。この事件は、准教授が平成18年度後期、2年生のゼミナール「基礎演習」を担当し、平成18年7月ごろ、受講した3人の学生に日本経済新聞の社説の要約や経済学の演習問題計5題を宿題として課した際に、准教授は女子学生に対し「提出が遅れれば、留年させる」とメールで通告したことがあったとされています。提出期限の平成19年1月15日になっても女子学生は宿題のすべてを提出することができず、同日午後7時45分ごろ、群馬県みどり市の渡良瀬川で入水自殺をしました。自殺直前、准教授にメールで「留年することは分かっています。人生もやめます」と伝えていました。

 准教授や同級生らから事情を聴いていた同大調査委員会は「自殺の一要因に准教授の留年通告がある」と断定し、「宿題を提出しなければ留年というのは強圧的で教育としてまともなものとは言えない。女子学生の両親に対する謝罪もなく、教師としての適格性に問題がある」としました。

 そして、高崎経済大学の木暮至学長(当時64)は平成19年5月9日、学内最高決定機関の評議会で、7月末をめどに辞任する考えを表明したのです。自ら担当する2、3年生のゼミの授業回数が大幅に不足しているのに単位を認定したことが4月初めに分かり、学内から批判が出ていたからです。木暮学長は「学長の仕事が忙しく、授業と両立できなかった」とし、教職員や学生に大変迷惑をかけたと謝罪しました。辞任する7月末までに、同大で昨年秋から相次いでいた学生の自殺問題に取り組み、学生環境の改善の総仕上げをしたいということも語りました。

 一方、平成19年に相次いだ不祥事に対して、高崎経済大学は同年6月28日付で「かん口令」を敷いていたことが判明しました。これは、不祥事が相次いだ高崎市立高崎経済大学が木暮至学長名で、教職員に対し、今後、教授会などでの内部情報が漏洩した場合には調査委員会を設置し、漏洩者に対し処罰も辞さないなどとする文書を配布していたことが発覚したのでした。当時、学内からも、「問題を起こした人が悪いのであって、もともと問題がなければ不利益な情報もないはず」などと困惑の声が上がりました。

 このように、同大学は、本質的に情報隠匿体質が特徴となってきたため、今回の入学拒否問題についても、そうした秘密体質が見え隠れしています。

 我らが群馬県の誇る最高学府で起きた問題だけに、二度と同じような被害者が出ないように、裁判の行方を注意深く見守っていきたいと思います。

【市民オンブズマン群馬からの報告・この項おわり】

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高崎経済大学入試合格者の入学料1週間延納申入れを高崎市が拒否した事件の第3回裁判傍聴記録(その1)

2013-12-16 22:52:00 | オンブズマン活動
■平成25年12月10日(火)午前11時から同14分にかけて、前橋地裁高崎支部の3階にある2号法廷で平成25年(ワ)第99号損害賠償請求 慰謝料請求事件(民事部ロ係、裁判官・猪坂剛、書記官・横山雄一)の第3回口頭弁論が行われました。市民オンブズマン群馬は当日の弁論の全てを傍聴しました。

 原告の大城さんは、平成22年に高崎経済大学の入試に合格しましたが、入学金が期日までにどうしても工面できず、大学側に延納願いをするも拒否され、入学ができなくなりました。

 他の大学入試案内を見ると、入学金の延納についての記載がされています。「延納できない」との記載も無いうえ、書いていないから延納は絶対認めないなどという対応は問題があると言えます。公立大学であれば、なおさら分納・延納の対応ができた筈です。最近の格差社会の進行により、入学金が一括支払いできないケースは多くなっていると考えられます。

 学業意欲のある有能な若者であれば、就学の機会を与えるのが公的な教育機関としての責務のはずです。

■こうした観点から、市民オンブズマン群馬では、大城さんが直面した問題の再発防止の観点から、高崎経済大学の対応及び同大学を管轄している高崎市の対応を問題視し、改善を要請した経緯があります。

 その後、大城さんは希望した同大学に入学できなかった為、しばらく自分自身の勉学や仕事の両立を見直さざるを得ませんでしたが、高崎経済大学の対応について、しかるべき責任をとらせる必要性を痛感していました。

 そして、平成25年6月6日、大城さんは前橋地裁高崎支部に高崎市を相手取り訴状を提出しました。

 その後、2度の口頭弁論期日を経て、12月10日に3回目の弁論が開かれたのでした。

■それでは、これまでに原告と被告の間で交わされた裁判書類を順番に見てみましょう。

**********【平成25年6月6日 原告からの訴状】
          訴  状(訂正後)
                    平成25年6月6日
前橋地方裁判所高崎支部 御中
                    原告 大城 ■■
 〒290-×××× 千葉県■■市■■××××-×-×××
 電話 080-××××-××××
    04××-××-××××
               被告 高崎市(代表者市長 富岡 賢治)
〒370-8501 群馬県高崎市高松町35番地1
電話 027-321-1111
FAX 027-327-6470
国家賠償請求事件 
訴訟物の価格 金300万円
貼用印紙額 20000円
          請求の趣旨
1 被告は原告に対し、金300万円及びこれに対する平成22年3月24日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
 との判決並びに仮執行宣言を求める。
          請求の原因
第1 当事者及び重要関係人
1 原告
 原告は平成22年度入試において高崎経済大学経済学部に合格し(甲1号証)強い入学の意志を持っていた者が被告、被告職員の違法な行政権不行使により同大学に入学出来なかった者である。
2 被告
 被告高崎市は平成22年当時、文部省の管轄外である公立大学高崎経済大学を管轄する自治体であり、同大学の学長や入試課職員は高崎市の職員という身分と同値であった(平成23年4月には公立大学法人に移行した)。
3 重要関係人
吉田俊幸は、平成22年当時高崎経済大学の学長であった者である。
 竹田玲子は平成22年3月24日午後4時40分において、原告からの初めての電話において対応し、以後も複数回原告と電話のやり取りをした当時、高崎市役所から高崎大学に出向入試課職員である。
第2 本件訴訟にいたる経緯
1 入学手続きについて
 原告は平成22年度入試の中期日程において、高崎経済大学に合格した(合格発表は同年3月21日)。原告は強い入学意志を持っていたが、入学手続き最終日(甲1号証に指定された期限日は同年3月27日であるが、土曜日であった為、事実上の学費納入期限は同年3月26日であった)までに学費納入が困難な状況であり、金策に奔走するが、間に合いそうになく、延納願いを申し出ることにした。
 国公立大学であれば、経済的困窮者である合格者に対して学費の免除や延納に関する書類が同封されているだろうと思っていたが、高崎経済大学においてはそのような書類は同封されておらず、学生募集要項(甲2号証)を確認するも免除や延納について全く言及されていなかった。
 受験を検討していた他の大学の学生募集要項(甲3ないし5号証)を確認したところ、免除や延納に関する記載があり学長判断についても記載されていたことから、これらを参考として原告は当時の高崎経済大学学長であった吉田俊幸に一週間弱の入学金延納願いを申し出するために高崎経済大学に電話をすることにした。
2 常識では考えられない高崎経済大学入試課竹田の対応について
 平成22年3月24日午後4時40分、代表電話の交換手に要件を伝えると入試課職員竹田玲子に電話が回され、延納についてお願いするが、竹田は原告に対しておよそ常識では考えられないほどの高圧的な態度で電話口の対応にあたった。
 原告が強い入学の意志を示し、延納措置をお願いするも断られたため、高崎経済大学学長の判断を仰ぐべく、学長であった吉田俊幸に電話を繋ぐように要請した。
 ところが、入試課職員竹田玲子の説明は「期日までに入学金を納めない者は入学の意思がないものとみなす、と募集要項に書いてある。学長に電話を繋ぐことはない。」というものであった。原告はこの説明を聞いてもう一度要項(甲2号証)をチェックしたが、どこにもそのようなことは書かれていなかった。
 期日までにお金を工面できなかった原告に落ち度があることは認めるものの、入試課職員竹田玲子からは、「入学手続き時の費用は前もって要項に記載されているのに、お金を準備出来ないのに受験するなんてどうかしている。」と、およそ教育機関で働く職員とは思えない台詞が発せられるなどして原告の切実な訴えに対して、入試課職員竹田玲子の対応は、終始不誠実で高圧的であった。
 原告は、再三学長である吉田俊幸に電話を繋ぐよう、入試課職員竹田玲子に懇願するも高圧的に拒否され、原告が裁判にて争う旨を伝え、竹田の名前を聞いたところ(最初の電話で竹田は名前を名乗らなかったので)、無言のまま、電話を一方的に切った(甲6号証 東京新聞記事)。
3 杜撰で隠蔽体質を強く感じさせる高崎市職員らの対応について
 平成22年3月25日16時54分以降も当時高崎経済大学学長であった吉田俊幸に対し要望を伝えるため、高崎経済大学に電話するも、吉田俊幸は不在という大学側の対応であった。この時、電話に出た高崎経済大学の男性職員は、自分の名前を名乗ろうとはせず、原告の切羽詰った(といっても早口でまくし立てて冷静さを失った状態でという意味でない。後に提出する録音で明らかであるが。)電話に対しても無関心で、原告の名前や連絡先すら聞こうとしなかった。
 そのため、原告は、本件が解決されない場合は、訴訟を提起してでも大学側の酷い対応を是正せざるを得ないと決意し、この男性職員に対して、訴訟を提起する旨を伝えた。その際、敢えて原告のほうから原告の名前と連絡先を伝えることを控えた。なぜならば、入学金の取扱に関する重要性について大学側の認識を計ることが目的だったからである。
 結局、原告は高崎経済大学に入学することは出来なかった。
 続いて、原告は、平成22年3月31日16時45分、高崎経済大学に電話をしたが、同大職員は原告の名前、要件、連絡先をやはり聞こうとしなかった。
 同年4月2日13時55分の電話において、ようやく庶務課の学長秘書(当時)であった工藤さんまで繋がれた。その結果、原告が何度も学長の吉田俊幸に電話を繋ぐよう懇願していたにも関わらず、学長秘書の工藤さんが原告の事も要件も全く把握していなかった事が判明した。このことは、学長への電話があった場合でも、学長はおろか学長秘書に対してさえも、報告が行われないということを示すものであり、原告を含め、切実な思いを抱えた合格者や、何かしらの事情を抱え学長に陳情しようとする在学生に対して、極めて非礼で杜撰な対応である。
 この時点で、原告は敢えて詳細を伝えず、原告がなぜ何度も電話しているのか、について、大学職員に対してヒアリングで調査し、学長吉田俊幸から原告に連絡を入れるよう要請した。その後、同日17時21分に工藤さんから電話があったが、工藤さんは、学長である吉田俊幸ではなく、入試課職員竹田玲子に繋いだ。
 原告としてはこの時点で竹田玲子と話すことは何もないし、話を聞く気もないので、再三学長に繋ぐよう、竹田玲子に要請した。ところが、竹田玲子は、またしても、異常と思えるほど頑なに拒否し、「絶対に電話は繋がないし、大学に来ても絶対に会わせない」などと断言したのであった。そのため、原告は「再び工藤さんに電話を繋ぐように」とお願いしたが、竹田玲子はそれすら頑なに拒否をし続けた。このように、入試課職員竹田玲子からは、本件不祥事を隠蔽するために、原告を大学側の誰とも接触させないという意図が非常に強く感じられた。ともあれ、学長秘書の工藤さんが学長吉田俊幸に報告することを期待して連絡を待ったが連絡は無かった。
 平成22年4月12日15時15分、原告は、再び高崎経済大学に電話して、「工藤さんに電話を繋いで欲しい」とお願いした。しかし、電話は工藤さんに繋がれず、なぜか竹田玲子に繋がれる。原告は、竹田玲子に「私(原告)に電話を掛けなおしてほしい」と工藤さんへの伝言をお願いするも、竹田玲子は、「こちらから携帯に電話をすることはやっていませんので」と理解に苦しむ対応であった。高崎市役所職員は業務上でも携帯に折り返しの電話をすることはないようである。
4 原告の高崎市役所職員への相談について
 竹田玲子の一連のあまりに非常識な対応に関して文部科学省に電話で相談したところ、平成22年当時、文部科学省の管轄は国立大学で公立大学は管轄外との事であった。
 そこで、高崎経済大学は高崎市の管轄であることから、原告は、高崎市役所職員に平成22年4月14日14時に高崎市役所にて直接お会いして相談を行った。相談相手は当時職員課の深尾さんという人物であった。
 原告はこの時、深尾さんに対して、高崎経済大学職員の杜撰で隠蔽体質を非常に強く感じる対応の経緯について説明し、以下についての確認をお願いした。
(ア)高崎経済大学学長である吉田俊幸は本件について報告を受け、把握しているのかどうか、把握しているとしたらいつ把握したのか?についての確認。
(イ)高崎経済大学学生募集要項には延納について全く記載されてないが、延納について高崎市長(当時)と学長である吉田俊幸の見解。
(ウ)高崎経済大学では後援会が存在し、入学時に後援会費を7万5千円を徴収している。後援会の目的に大学教育の充実発展とある(甲7号証)が、高崎経済大学の一連の対応はこれと大きく乖離しているが、同大には被告高崎市からも補助金等が入っているのか?
 この結果、平成22年4月23日16時2分、上記(ア)について深尾さんから回答があった。それによると、同年4月2日学長秘書の工藤さんから学長吉田俊幸に報告がなされていて、状況を把握していたことが分かった。しかし、この時点においても吉田俊幸からは連絡がなかった。上記(ウ)については以後準備書面で述べる。
5 市民オンブズマン群馬への相談について
 原告の地元、千葉県市原市市議会議員に本件について陳情したところ、助言を頂き、個人で情報開示するよりもオンブズマンの名前で情報開示請求をしたほうが良いということで、群馬県で活動中の市民オンブズマン群馬にお願いすることにした。
 平成22年5月1日に高崎にて市民オンブズマン群馬の代表、小川賢氏と面会して経緯を話し、一連の電話対応を録音したものを聞いてもらった。小川氏も高崎経済大学側のあまりの酷い対応に驚いていた。そこで、同氏に依頼して、市民オンブズマン群馬の名前で高崎経済大学に対して情報公開開示請求を依頼した。
6 延納に関しての回答について
 上記(イ)に関して平成22年5月7日、高崎市長、学長吉田俊幸の延納に関する見解(甲8号証)に関する資料が送付されてきた。
7 高崎経済大学に対する情報開示請求における大学の対応
 平成22年6月11日10時より高崎市役所にて、市民オンブズマン群馬の代表及び事務局長、そして原告の3人で開示請求を閲覧した。
 高崎経済大学に対して三つの開示請求を行った(甲9号証)が、この中で二つ目の項目、原告の一連の要請に対する対応と判断に至る経緯等を示す一切の情報については、全く的外れで大変不誠実なものであった。そのため、この時対応した高崎経済大学(=高崎市職員)に対して開示請求の内容を改めて説明し、質疑応答により正しく理解させたうえで、再度開示請求を行った。ところが、この日の一連の説明と質疑応答と再度の開示請求に至る話し合いの間、この男性職員はメモすら取らずに話をただ聞くだけであった(上司への報告も成されてないものと思われる。が、後述する甲11号証によると、このような対応が大学にとって誠意のあるものであったらしい)
 さらにこの男性職員の話から、高崎経済大学においては業務上で文書を残すことがほとんどなされていないようであり、文書を残さないことはおろか、事務事業の基本である「ほう・れん・そう」(報告、連絡、相談)が日常的に行われていないようであることが伺えた。(終盤に市民オンブズマン群馬の証人尋問や、この日のやり取りの録音も後日証拠として提出することによって立証する予定である。)
8 学長吉田俊幸に対する質問状の送付について
 平成22年7月12日、原告は当時学長であった吉田俊幸に対して内容証明郵便で送付した(項10号証)。しかし、この質問に対して不誠実と思われる回答を受け取った(甲11号証)。
第3 被告の責任(行政裁量権の恣意的な不行使)
 高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則(甲12号証)第5ないし6条において、「入学金の分割徴収等の申請について、学長に願い出るものとする。」という規則があるにも関わらず、竹田玲子はこの事実を隠し、それどころかこの規則趣旨に反して延納(分割は延納と同値であろう)は絶対に認めないと断言し、原告の再三にわたる切実な、学長に電話を繋いで欲しいとの訴え(原告は当初、この規則の存在は知らなかったのだが)を頑なに拒んだ。
ちなみに甲13号証で示した原告のみずほ銀行の残高証明書によると、高崎経済大学の入学手続き直前の平成22年3月26日に原告の口座には209608円あったのであり、被告がきちんと高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則(甲12号証)を高崎経済大学学生募集要項に記載していれば、また、高崎市役所職員竹田玲子は高崎経済大学に出向していたので入学金分割徴収(延納)の制度、学長への申し出による手続きを知っていたのであるから、定められた制度を適切に運用していれば、入学金の分割徴収は常識的に考えて半額程度だと思われるので、原告は入学出来ていたことは明らかであり、被告や、被告職員竹田玲子の不作為により入学できなかったという有形の損害を被った因果関係は客観的な証拠から明らかである。
 これは行政権力の恣意的な不行使であり、原告は教育を受ける権利を奪われただけでなく、無形の損害、すなわち精神的被害を受けた。
 わが国の教育基本法第4条、「全ての国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、性別、社会的身分、経済的理由によって修学が困難な者に対して、修学の措置を講じなければならない。」とある。
 当時、被告の管轄する高崎経済大学は、甲12号証の規則に則した案内を当時の高崎経済大学学生募集要項に記載せず、また、被告の職員らは、甲12号証で示した規則や、日本国教育基本法4条、4条3に反する公権力の不行使を原告に対して行った。被告の行為は過失、被告の職員らの行為は故意に該当し、国家賠償法第1条1項の「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」に該当する。
 被告の不作為によって原告が有形・無形に受けた損害を金銭的に評価すれば300万円を下ることはない。そして、本件事件は憲法違反(教育基本法第4条違反)でもあるので、法律審である最高裁への上告理由となる。
第4 結語
 以上より原告は国家賠償法第1条1項に基づき、教育を受ける権利を侵害され生じた損害の賠償として、被告に対し、請求の趣旨記載の金員及びこれに対する被告職員の最初の恣意的な行政権の不行使が行われた平成22年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
          証 拠 目 録
甲1号証  平成22年度高崎大学合格通知
甲2号証  高崎経済大学学生募集要項
甲3、4,5号証  京大、一ツ橋大、東工大学生募集要項
甲6号証  東京新聞6月4日夕刊記事
甲7号証  後援会費についての資料
甲8号証  延納に関する高崎市長、被告吉田学長の見解
甲9号証  行政文書公開請求書
甲10、11号証  被告吉田学長に対する質問状と回答
甲12号証  高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則
甲13号証  みずほ銀行残高証明書
               以上
**********

■被告の高崎市からは、7月5日付で答弁書が出されました。本件で争うつもりであることがわかりました。また高崎市は、本件訴訟代理人として、渡辺明男・弁護士を起用しました。

**********【平成25年7月5日 被告からの答弁書】
平成25年(ワ)第99号 損害賠償請求 慰謝料請求事件
原告 大城 ■■
被告 高崎市
     答 弁 書
                  平成25年7月5日
前橋地方裁判所高崎支部 民事部D係 御中
〒370-0801
 高崎市上浪榎町140番地2 渡辺明男法律事務所(送達場所)
                電 話 027-363-1311
                FAX 027-361-4372
              被告訴訟代理人弁護士 渡辺明男
第1 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
 との判決を求める。
第2 請求の原因に対する答弁
1(1) 請求原因第1項の1につき
 「強い入学の意思を持っていた者」から「入学出来なかった者」までは否認し、その余は認める。
(2) 同第1項の2につき
 概ね認める。
 (3) 同第1項の3につき
 「午後4時40分」の部分は、不知。その余は概ね認める。(但し、4行目「出向入試職員」のうち「出向」ではない。)
2(1) 同第2項の1につき
 ①3ページ上から1行目「原告は」から上から2行目「同年3月21日」までは認める。
 ②3ページ上から2行目「原告は強い入学意思を持っていたが」との典は否認する。
 ③3ページ上から2行目「大学手続き」から上から4行目「同年3月26日であった」までは認める。
 ④3ページ上から4行目「学費納入が」から8行目「間に合いそうになく、延納願いを申し出ることにした。」までは不知。
 ⑤3ページ上から7行目「国公立大学であれば」から上から8行目「思っていた。」までは不知。
 ⑥3ページ上から8行目「高崎経済大学」から上から10行目「されていなかった。」までは認める。
  入学料の延納は無いため募集要項には記載していない。免除については原告から相談されていない。
 ⑦3ページ上から11行目「受験を検討していた」から上から13行目「いたことから」までは不知。
 ⑧3ページ上から13行目「原告は」から上から14行目「電話をすることにした」までは不知。
(2) 同第2項の2につき
 ①3ページ下から6行目「平成22年3月24日から下から5行目「お願いするが」までのうち、「午後4時40分」の部分は不知、その余は概ね認める。
 ②3ページ下から5行目「竹田は原告に対しておよそ」から下から3行目「対応にあたった」までは否認する。
 ③3ページ下から2行目「原告が」から4ページ上から1行目「要請した」までは否認する。
  吉田俊幸に電話を繋ぐよう要請されていない。
 ④4ページ下から2行目「ところが」から上から5行目「書かれていなかった」のうち、「期日までに入学金を納めない者は大学の意思がないものとみなす」との部分は認め、その余は否認する。
 ⑤4ページ上から7行目「期日までに」から上から12行目「であった」までのうち、「入学手続き時の費用は前もって要項に記載されている」との部分は認め、その余は再任する。
 ⑥4ページ上から13行目「原告は」から上から16行目「一方的に切った」までは否認する。
  再三学長に電話を繋ぐよう要請されたことはなく、名前を聞かれたことも泣く、原告が「訴訟だ」と言った後、しばらく言葉を発しなかったことから電話を切られたと思って電話を切ったまでのこと。
(3) 同第2項3について
①4ページ下から8行目「平成22年3月28日」から行末「しなかった」までは否認する。
3月25日原告から問合せの電話があり、男性職員が「入学料は無理だけど、授業料については、延納願いを出していただければ対応する」旨説明した。その後原告は男性職員に訴訟する旨伝えた。続いて学長に電話を繋ぐよう要望があり、電話を転送するが不在であったためその旨答えたものである。
 ②4ページ下から1行目「そのため」から5ページ上から4行目「目的だったからである」までは不知。
 ③5ページ上から5行目「結局」から「出来なかった」までは否認する。
 ④5ページ上から6行目「続いて」から上から7行目「聞こうとしなかった」までは不知。
 ⑤5ページ上から9行目「同年4月2日13時55分」から上から21行目「竹田玲子に繋いだ」のうち「4月2日13時55分」の部分及び「同日17時21分」の部分は不知、電話があり、工藤が出たとの点、竹田玲子が対応したとの点は、それぞれ認め、の余は否認する。
  学校から各課の担当事務ならばその課で対応する旨の指示があったため、竹田に電話を代わったものであった。
 ⑥5ページ下から5行目「原告としては」から下から5行目「聞く気もないので」までは不知。
  5ぺージ下から4行目「再三学校に繋ぐよう、竹田玲子に要請した」との部分は認める。
 ⑦5ページ下から4行目「ところが」から下から2行目「断言したのであった」までは否認する。
  「大学は組織で運営しているので、窓口は人事課になります」と答えたまで。
 ⑧5ページ下から1行目「竹田玲子はそれすら頑なに拒否をし続けた」の部分は否認する。
  学長から各課対応の指示を受けていたので、入試課で対応したまでのこと。
 ⑨6ページ上から1行目「このように」から上から3行目「強く感じる」までは否認する。
 ⑩6ページ上から3行目「ともあれ」から末行まで不知。
 ⑪6ページ上から5行目「平成22年4月12日15時15分」から末行までは否認する。
  こちらから原告に電話を入れる約束はしていなかったので「こちらが電話を入れることはございません」と言ったまで。
(4) 4ページ 同第2項4について
 ①上から1行目「竹田玲子の」から下から3行目「との事であった」までは不知。
 ②上から4行目「そこで」から上から8行目「お願いした」までのうち「平成22年4月14日」の部分は不知、その余は認める(但し、高崎経済大学職員の杜撰で隠蔽多湿を非常に強く感じさせる対応との部分は否認)。
 ③(ア)(イ)(ウ)については否認する。原告から求められたのは、
 ・入学金の延納の件について学長と市長の意見をききたい(金がないものは勉強をする医師がないものと考えているか)。
 ・後援会の会費の使い道について調べたいが、どうやったら情報を公開してくれるのか、方法を教えてほしい、必要ならば書類を送ってほしい。
 ・大学に市からどのくらいお金(補助金)が流れているのか。
 であった。
 ④7ページ上から5行目「この結果」から上から8行目「連絡がなかった」までのうち、「平成22年4月23日16時3分」の部分は不知、その余は認める。
(5) 同第2項の5につき
 不知。
(6) 同第2項の6につき
 認める。
  原告からは入学料の延納の問合せであり、授業料の延納までの話はなかった。
(7) 同第2項の7につき
 ①8ページ上から1行目「平成22年6月11日10時」から上から3行目「三つの開示請求を行った」までは認める。
 ②8ページ上から4行目「原告の一連の要請」から上から5行目「大変不誠実なものであった」までは否認する。
 ③8ページ上から7行目「正しく理解させたうえで」は否認する。
 ④8ページ上から8行目「ところが」から上から10行目「成されてないものと思われる」までは否認する。
 ⑤8ページ上から12行目「さらに」から上から15行目「伺えた。」までは否認する。
(8) 同第2項の8につき
 上から2行目「不誠実」との点は否認し、その余は認める。
3 同第3項につき
 否認する。
 入学料については、延納はない旨説明をしており、何ら責められるべき不法行為を行っていない。
4 同第4項につき
 争う
**********

■高崎市はさらに翌月の8月1日に、準備書面(1)を出してきました。

**********【平成25年8月1日 被告準備書面(1)】
平成25年(ワ)第99号 損害賠償請求 慰謝料請求事件
原告 大城 ■■
被告 高崎市
          準備書面
                  平成25年8月1日
前橋地方裁判所高崎支部 民事部D係 御中
               被告訴訟代理人弁護士 渡辺明男
1 原告は、平成22年3月21日、平成22年度高崎経済大学の経済学部に合格した。
 大学手続の最終日は、本来3月27日であるが、同日は土曜日であったため、事実上の学費納入期限は同年3月26日であった。
2 ところで、平成22年3月24日、原告から電話があり、高崎経済大学入試課職員の竹田玲子が出ると、入学金の延納の申出であった。
3 高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則では、入学金の延納について定められておらず、高崎経済大学においては入学金の延納の制度は存在していない。
 確かに、高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則には、授業料等の減免申請書の提出先が学長であることを定めている。
 そして、高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則第3条第1項では、授業料の分割徴収又は減免の対象となる者は、次に記載した4つの要件のいずれかに該当するときで、分割徴収にあっては授業料を一時に納入することが困難となった者又はその子弟、減免にあっては学費の負担に堪えられなくなった者の子弟としている。
①天災その他不慮の災害を受けたとき。
②生活保護法(昭和25年法律第111号)による扶助を受けることとなったとき。
③学費の負担者が、死亡し、疾病にかかり、又は失業したとき。
④前3号以外で必要と認められるとき。
 一方、同条第3項において、入学金の減免の対象となる者は次の2つの要件のいずれかに該当する者と定められている。
①天災その他不慮の災害を受け、学費の負担に堪えられなくなった者の子弟
②前号以外で必要と認められる者
 高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則の授業料等の分割徴収又は減免制度の概要は、以上のとおりであるが、高崎経済大学が入学金に延納制度を設けていない理由については、授業料の場合とは異なり、入学金の納入をもって、入学者の確定を行うという特別な理由があるからである。
 そのことは、平成22年5月7日に高崎市長松浦幸雄(当時)、高崎経済大学長吉田俊幸(当時)の連名で、原告宛に送付した「入学金の延納について」(甲8号証)記載の、(1)手続期間内に入学料を納付することにより、本学への入学意思の確認及び確定としていること、
(2)入学手続期間(3月21日から27日まで(納入は26日まで))内に入学手続者を確定し、手続者が募集定員に満たない場合には、追加合格の手続きを行う必要があること、と記載したとおりである。
4 原告の問い合わせに対して、竹田は上記入学金延納制度がないことを十分説明した上御断りしたにもかかわらず、原告は理解しなかったものであった。
5 高崎経済大学には入学金の延納制度が存在しないことから、大学の実務上の取扱いとして、事務を担当する職員が対応したものである。存在しない制度について、事務職員が大学運営の事務上の対応をし、個別の電話を学長に取次がないからといって非難されるものではない。
 また、既に述べたとおり、高崎経済大学には入学金の延納制度は存在していない。
 したがって、存在していない制度について、学生募集要項に記載しなかったことが、問題となることはない。
 また、原告は教育基本法第4条を取り上げて、高崎経済大学の奨学措置を非難するが、同条の規定は国や地方公共団体に政策を委ねているものであって、一義的に入学金延納を定めなければならないという結論を導き出すことはできないものであり、被告の定める同施行規則が違法であるということもできない。
**********

■このように、高崎市側では、「高崎経済大学には入学金の延納制度は存在していない」「従って、存在していない制度について、学生募集要項に記載しなかったことは問題ではない」との一点張りで主張しています。

 これに対して大城さんは、「条例に入学料の減免制度が明記されているにもかかわらず、入学料の減免手続きについての案内はおろか、入学料減免の存在についても一切触れられていなかった」として、高崎市の不作為の責任を指摘する準備書面(1)を10月8日の第2回弁論で陳述しました。

**********【平成25年10月8日 原告準備書面(1)】
平成25年(ワ)第99号 損害賠償請求事件
原告 大城 ■■
被告 高崎市(代表者市長 富岡 賢治)
          準備書面(1)
                    平成25年10月8日
前橋地方裁判所高崎支部民事D係 御中
                    原告 大城 ■■
 頭書事件につき、原告は、期日における裁判官殿の訴訟指揮のとおり、要件事実である被告高崎市と竹田玲子の不作為の特定、すなわち国家賠償請求上の違法行為を特定し、以下のとおり弁論を準備する。
第1章 不作為の特定と説明義務
1 高崎市による不作為の特定
A 高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則(甲12号証)を根拠とした場合
 甲12号証によると、高崎経済大学授業料等徴収条例施行規則(以下「規則」という。)の第5条、分割徴収等の申請について、
 授業料の分割徴収等又は入学料の減免を受けようとする者は、授業料(入学料)分割徴収(減免)申請書(第1号様式)に必要書類を添えて学長に願い出るものとする。
 と定められているが、甲2号証のとおり、入学料の減免の手続きについての案内、申請方法はおろか、入学料減免の存在についても一切触れられていなかった。
B 高崎経済大学授業料等徴収条例(乙1号証)を根拠とした場合
 乙1号証によると、高崎経済大学授業料等徴収条例(以下「条例」という。)の第12条で入学金の分割徴収又は減免について、
 市長は、天災その他特別の事情があると認める場合には、授業料については分割徴収又は減免を、入学料については減免することが出来る。
と定められているが、甲2号証のとおり、入学料の減免の手続きについての案内はおろか、入学料減免の存在についても一切触れられていなかった。
 被告は準備書面において、「存在していない制度について、学生募集要項に記載しなかったことが、問題となることはない」(3ページ)と述べるが、以上より、規則ないし条例について、入学料の減免についての取り決めが存在するにも関わらず、高崎市は、高崎経済大学学生募集要項(甲2号証)において、受験生ないし受験を予定している者に対し、「授業料又は入学料の分割徴収又は減免」措置について、また、その手続き(申請)方法を、受験生及び入学を許可された者が認識できるよう学生募集要項に記載すべきであったのに、これを怠った。この不実記載が高崎市の看過しがたい不作為であり、国家賠償請求における不法行為に該当する。
 この不実記載が不法行為に該当することを以下で詳細に述べる。
2 説明義務について
 科学技術の進歩や複雑化した制度の多様化が顕著なこの世の中において、国家や地方団体、企業などは従来よりも深い説明義務を求められてきている。近年では特に契約についての説明義務違反を巡る争いが顕著となってきている。経済大学にちなんで例を挙げると、特に多いのは為替や金利のスワップ取引に係るデリバティブに関する契約の説明義務違反を巡るADRでの和解である。また、金融商品取引法においては、不実記載(虚偽記載)に対しては刑事罰が設けられている。
 被告準備書面2ページにおいて「・・・入学金の納入をもって、入学者の確定を行う・・・」とあるが、これは契約の一種である。契約においては契約に付随する全ての事項を明らかにすべきであり、秘匿したことによって契約しようとする者に不利益を与えた場合は民事上の責任が生じるものと解される。
3 公務員による不作為
 公務員の不作為で国家賠償責任が認められた例としては、大和都市管財事件である(甲14号証)
 旧大蔵省の官僚が良心に従った証言を行ったことにより、高等裁判所は国の恣意的な行政裁量権の不行使を違法として国家賠償請求を認めたものである。
4 条例による配慮(説明)義務
 甲15号証で示された最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決の判旨は、
 自治体が、その自治体の定める条例を、適用されるに値する者に対して適用する場合は、その者の立場を踏まえつつ、十分に協議(コミュニケーション)を尽くし、その者に不利益が被ることの無いよう配慮(説明)すべき義務があったというべきであって、その自治体の行政裁量権の行使(または不行使)が、そのような義務に違反している場合には、その自治体の当該行政裁量権の行使(または不行使)は違法となるといわざるを得ない。
 と、本件事件に則して言い換えることが出来、不合理はない。
 甲2号証、甲12号証及び乙1号証から分かるとおり、被告高崎市は、被告高崎市で定められた条例、少なくとも高崎経済大学授業料等徴収条例による配慮義務を履行していないことは明白である。
 よって、上記の最高裁判決を援用すると、条例(乙1号証)で定められた「授業料又は入学料の分割徴収又は減免」措置について、
 平成22年度高崎経済大学学生募集要項(甲2号証)に記載し、受験生及び入学許可された者に認知させるべき配慮義務を有していたにも関わらず、その配慮義務を怠った。これは行政裁量権の不当な不行使に該当し、本件事件における違法行為の要件事実であることに疑いはない。
5 被告職員竹田による違法行為の要件事実
 訴状記載のとおり、被告高崎市高崎経済大学入試課職員竹田(以下「竹田」という。)の原告に対する対応は終始裁量権を逸脱するものであった。竹田の具体的な対応に関しては竹田他の証人尋問の申請前に録音したやり取りを証拠として提出する予定である。
 甲16号証で示すとおり、竹田は平成21年4月1日付で高崎経済大学事務局入試課入試担当係長に任じられている。
 また、甲17号証で示される高崎経済大学事務分掌規則によると、竹田の所属する入試課は、(1)学生の募集に関すること。(2)入学試験に関すること。(3)大学案内の編集発行に関すること。であるが、他の課には学生募集案内編集に関する権限を有するものは見当たらないので、入試課の上記(1)ないし(3)の内容より、入試課が、高崎経済大学の学生募集要項の編集・作成を所掌していると思われる。
 竹田が原告に与えた無形の損害(精神的苦痛)とは別に、竹田は条例の配慮義務を怠って有形の損害も原告に与えたものと解される。条例の配慮義務を怠ったのは、竹田、入試課課長、坂巻賢司事務局長(全て当時)、そして民法715条により使用者責任を有する被告高崎市であるといえる。
 そして、竹田は係長という立場上、条例(乙1号証)について既知であることは疑いようがない。そして、竹田は、条例を理解していたにも関わらず、入学料減免の存在や手続きについて一切触れず、上記(1)ないし(3)から判断するに、所掌外と思われる入学金の特別な取扱いについての判断を司る立場でないにもかかわらず、原告との電話を一方的に切って条例の配慮義務を怠り、また、その後々の電話対応で自らの違法行為を隠蔽するために常識では考えられない対応を展開し原告に有形・無形の損害を与えたのである。また、仮に、竹田が条例(乙1号証)を知らなかったとしたら、それも大問題であり、被告高崎市の任命責任、ひいては使用者責任に問われる。
 よって、竹田の違法行為の要件事実は、条例の配慮義務を怠った行政裁量権の違法な不行使と、その違法行為を隠蔽するために原告に対して精神的苦痛を与えた行為である。
第2章 被告高崎市の行政感覚
1 行政感覚
 原告は一週間弱で入学料の工面が出来る手筈であったので、「入学料を延納することによって、一週間以内に入学料を支払い、入学手続きをして入学しよう」と考えていたのであり、「入学料をまけて(減免して)もらって安く入学してやろう」とは考えていなかった。とにかく、入学手続きを済まそうと考えていたのである。
 乙1号証より、確かに延納についての制度が無かったことは原告は認めるが、減免手続きによって入学手続きを完了させることが出来ることが可能であったが、それは被告の違法な行政裁量権の不行使により入学手続きは実現されなかった。
 さて、原告は強い入学の意思を示していたのに、入学は門前払いとなった。被告の答弁書や準備書面によると、つまり、「延納措置は存在しないのだから、入学料延納を申し込まれても、この申し出を無下に断り、入学を拒否することは(高崎市の)行政上問題はない。」ということである。
 入学を強く希望する者に対して、被告は条例の配慮(説明)義務を怠り、入学許可者は入学料の特別な取扱いについて全く分からないのだから、「学長判断で延納措置が認められたら」との期待の下、原告は延納願いを申し出たのであって、条例について事前に告知されていないにもかかわらず、「規則(条例)に延納制度は存在しない」と制度(被告準備書面の表現、規則、条例のこと)を盾に(延納制度は確かに存在しないのであるから、これを認めないのはしょうがないとしても)、条例では減免措置が存在するのに入学料の払い込みが困難な入学許可者にそれを秘匿し入学を門前払いすることは、はたして、行政上問題ないといえるだろうか?
 甲15号証の判例より、問題があり、行政裁量権の違法な不行使といえる。しかし、被告高崎市は問題ないと断言する。
 原告は、訴状にて被告高崎市の代表者として、高崎市市長富岡賢治(以下「富岡」という。)を名指しで記載している。そのような訴状に対して上記のように「行政上問題がない」と反論するならば、富岡もそのような見解を有していると思われる。
 その富岡であるが、甲18号証より、富岡は旧文部省のキャリア官僚出身で、当時、被告高崎市が運営していた群馬県立女子大学の学長を経て、現在、被告高崎市の市長となった者である。文部官僚として教育行政に携わり、その後、高崎市の管轄下である公立大学の学長として、被告高崎市の行政裁量権の最終意思決定者として、教育上、行政上の高度な実務感覚を身に付けていることは疑いようもない。しかし、そのような人間、教育通である被告高崎市の行政裁量権を司る特別公務員職である富岡は法令順守義務(地方公務員法32条)を課されているが、教育基本法4条を蔑にする判断を下した、もしくは、それを是認した。
 富岡は本件事件に直接関わりを持たないが、それまでのキャリアと地位を考えるに、教育・行政に関する学識経験者といえることに疑いようはない。そして、行政の学識経験の結果、すなわち、被告高崎市市長という地位の下、本件事件を「知ることができた」のであるから、富岡は、民事訴訟法217条で定める鑑定証人、すなわち、「特別の学識経験によって当該事件に関する事実を知った当該事件の証人」にあたるので証人として尋問する必要がある。鑑定証人は欠格事由、忌避がなく、勾引き(強制的に出廷させる)することができる。
 さて、群馬県の教育界は歴史的に見ても異端である。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)による学制改革において、男女共学を指導したが、群馬県の教育界は従わず、新制高崎高校は男子校を貫いた(通信制は共学であるが)。また、高崎市内に旧制高崎高等女学校を前身とする県立高崎女子高校があるが、やはり、共学化していない。
 これは前橋高校、前橋女子高校も同様である。福田赳夫、中曽根弘康を輩出した高崎高校のOBである富岡、ひいては、高崎市は保守であり、「GHQなどなにするものぞ」との精神が受け継がれているのであろう。被告答弁書及び準備書面からは、「教育基本法(GHQによる憲法)とか、うち(高崎市)では関係ねーから。」との思惑がはっきりと透けて見える。
 以上の本件事件の内容、性質、高崎市の歴史的実情、富岡の学識経験による証言の本件事件における重要性を勘案すれば、竹田との通話記録の証拠を提出し、争点整理が終了した後に富岡への尋問を行うことが不可欠である。原告は富岡に対して鑑定証人として証拠調べの手続きを行うことの準備があることを予告しておく。
2 被告の主張に対する反論  
 被告準備書面3ページ、「原告は教育基本法4条を取り上げて、高崎経済大学の奨学措置を非難するが、同条の規定は国や地方公共団体に政策を委ねているものであって、一義的に入学金延納を定めなければならないという結論を導き出すことはできないものであり、被告の定める同施行規則が違法であるということもできない。」
 と主張する。原告はたしかに、高崎経済大学の奨学措置を非難しているが、被告の定める施行規則を違法と主張しているのではない。規則には分割(延納と同値)、条例には減免の制度が存在していたのに、この規則・条例の配慮義務(説明義務)を怠ったことを要件事実として違法と主張しているのであり、また、竹田は条例で定められた入学料に関する特別な取扱い(減免措置)を入学料の期日までに全額払い込みの困難な原告に秘匿し、さらに、入学料の特別な取扱いに関する判断の可否を下す立場にないものと思われるが、入学を拒否する判断を下し、原告に有形な損害を与え、その後の電話対応において常識では考えられない対応を繰り返し、原告に精神的苦痛を与えるなど無形の損害を与えたことを要件事実として違法であると主張しているのである。
          以上
**********

【市民オンブズマン群馬からの報告・この項続く】

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