婦人科検診で総合判断 遺伝子検査、リスク把握 山梨県立中央病院
40代女性。人間ドックで、卵巣がんの腫瘍マーカーの値が高いと言われました。婦人科検診はしばらく受けていません。卵巣がんと必要な検査について教えてください。
【回答者】山梨県立中央病院 婦人科部長・ゲノム検査科部長 坂本育子医師
-どんな検査が必要か。
腫瘍マーカーの値が高いだけで、必ずしも婦人科のがんというわけではありません。子宮内膜症や月経中でも数値が高くなることがあり、がんかどうかや何のがんかは、腫瘍マーカーだけでは確定できません。ドックで婦人科検診をしていなければ、まず産婦人科を受診しましょう。超音波や触診、内診などで卵巣の様子を確認し、がんの疑いがあるか総合的に判断します。
-卵巣がんとは。
卵巣がんは初期の自覚症状がほとんどなく、早期発見が難しいがんの一つです。人間ドックで問題がなくても、3カ月後にステージ3、4と進行した状態で見つかることもあります。卵巣は子宮の左右に一つずつある楕円形の臓器です。骨盤内の深い部分にあることから、おなかの上から針を刺したり子宮から管を入れたりして組織を採取・検査することができません。がんかどうかを調べるには手術が必要です。超音波検査などで卵巣の腫れ方を見て、MRIやCTなどの画像検査を行い、手術、卵巣を摘出するかどうかを判断します。
-難しいがんか。
卵巣がんのピークは50~60代。罹患率は乳がんの10分の1以下ですが、35~59歳に限ると、子宮と卵巣のがんを合わせた死亡率は乳がんに並びます。卵巣の腫瘍は50種類以上あり、上皮性腫瘍、胚細胞腫瘍、性索間質性腫瘍の3種類に大別され、それぞれ良性と悪性、境界悪性があります。悪性腫瘍で最も多いのは上皮性卵巣がんで6~7割を占めるとされ、漿液性がん、類内膜がん、粘液性がん、明細胞がんの4種類が有名です。卵管上皮に由来するといわれる漿液性がんは発見が難しく、進行した状態で見つかることが多いです。
-治療法、早期発見の手だては。
卵巣がんの種類やステージに応じて、手術でがんを取り除き、薬物療法を行います。早期に見つかるほど生存率が上がります。ただ、見つかりにくい卵巣がんの中には、遺伝でなるケースがあります。DNAの傷を修復する働きを持つBRCA遺伝子に生まれつき変異がある人は、乳がんや卵巣がんを発症する可能性が高いことが分かっています。漿液性がんや、ステージ3、4に限ると特に多いです。
遺伝子検査は、カウンセリングで家族歴などを確認し、必要かどうかを判断します。がんを発症していない人は原則自費となりますが、乳がんや卵巣がんになったことのある人は、条件により保険適用で検査ができます。遺伝子検査をすることで、薬の効きやすさを判断することなどができ、治療を進める上でも有効です。最近ではがん遺伝子パネル検査という、がんの原因遺伝子を網羅的に調べる検査も保険適用となりました。県立中央病院でもゲノム解析センターでがん遺伝子パネル検査をしていて、がんゲノム医療がより身近に提供できる体制をつくっています